6月14日にアイススケートショー「氷上雅姿」(ARTISTRY ON ICE)を観に行ってきました。このアイスショーはアムウェイの化粧品ブランド「ARTISTRY」が冠スポンサーとなり、世界の名スケーターを集めてきています。中国で「氷上雅姿」が行われるのは今年で4年目、2013年は北京、上海、広州、台北で開催されました。
■2013年アイススケートショー「氷上雅姿」(ARTISTRY ON ICE)上海公演の出場者
男子シングル
パトリック・チャン
ジョニー・ウィアー
ステファン・ランビエール
カート・ブラウニング
女子シングル
イリーナ・スルツカヤ
アリッサ・シズニー
ジョアニー・ロシェット
ペア
アリオナ・サフチェンコ、ロビン・ゾルコーヴィ
アイスダンス
ナタリー・ペシャラ、ファビアン・ブルザ
アート・オン・アイス(氷上サーカス)
エカテリーナ・チェスナ、アレクサンダー・チェスナ
ウラジミール・ベセディン&アレクセイ・ポーリッシュク
中国人選手
女子シングル:李子君
男子シングル:閻涵
ペア:彭程 王昊
ゲスト
曲婉婷(チュー・ワンティン)カナダのレーベルからデビューした女性歌手。2012年に中華圏全体で大人気に。
DJ“問号”
チケット代:1280元、1080元、880元、580元、380元、280元、180元
場所:東方スポーツセンター(東方体育中心)
2013年6月14日(金)上海 19:30~22:20
各種目のトップスケーターがどっさり現れ豪華なラインナップに驚いたのですが、「氷上雅姿」は毎年メダリストを集められるだけ集めたのではと思うような顔ぶれで、浅田真央やプルシェンコも出場したことがあります。
■記者会見中のランビエールとジョニー・ウィアー。二人ともこのアイスショーに参加するのは今年が初めてではありません。(写真出典ニュース)
このアイスショーは華やかな光線、CG、映像、音楽を一体化した演出により、氷上のビジュアルアートを作り出しています。とにかく派手です。ブラウニングの「雨に濡れても」では本当にリンクに雨を降らすなど舞台効果も凝っています。また、DJ、バイオリニスト、ポップシンガーとのコラボレーションもあり、ジャンルを越えたバラエティ豊かなアイスショーです。
■オープニングセレモニー
■自ら作詞作曲した「我的歌声里」が大ヒットした女性シンガー曲婉婷(チュー・ワンティン)。前半ではジョアニー・ロシェットと、後半では閻涵とコラボレーション。閻涵のスケートに合わせて氷上で「我的歌声里」(You exist in my song)を歌う。
構成としては、オープニングセレモニー→前半演技→休憩(リンク調整)→後半開始セレモニー→後半演技→終演セレモニーという流れで、全部で約3時間です。出場スケーターは前半と後半に1回ずつ演技を披露するので、2種類のプログラムを見ることができます。セレモニーを合わせると、好きな選手の演技を少なくとも5回見ることができます。2人の司会者が進行を司どり、一人は上海の女性テレビラジオ司会者ですが、もう一人はペアの中国人メダリスト趙宏博です(パートナーは申雪)。
オープニングセレモニー
パトリック・チェン
ステファン・ランビエール
中国人選手は4人出場しますが、彼らはオープニングセレモニーには参加しませんでした。たまたま今回は4人とも若い選手ばかりのためか、多くのメダルを取った実績のあるゲストスケーターたちとは扱いに差が設けられているのでしょうか。
会場で直接フィギュアスケートの大会を見るのはこれが初めてです。
一流のスケーターたちが次々に登場しますが、まさに百花繚乱、次々と繰り出される技を追いかけることしかできず、約3分間のプログラムはあっという間に終わってしまいます。どの選手も素晴らしいのですが、何をどう評価してよいのか分りません。
何故かというと、いつもテレビで見ているときの実況解説がないからです。
「いまのトリプルサルコーはきれいに入りました」
「コンビネーションジャンプ、着地がちょっとぶれましたね」
といった実況解説がないと、技術的なことが全く分かりません。
テレビを見ているときは解説がうるさいと思ったこともありますが、実際に解説がないと、いまのジャンプが2回転半だったのか3回転だったのかも分かりません。
パトリック・チャンのジャンプの高さと力強さは、素人目に見ても突出していることが分ります。しかし、技術的な面でいうとその程度のことしか判断がつきません。あとは「みんな本当に素晴らしかった」です。
技術ではなく演技としてみると、特に印象深かったのはスルツカヤの「愛のベネチア」です。抑えた滑りの中にラテンダンスのような情熱と深みがあります。ランビエールのプログラムも物語性のあるスケートで、フィギュアの中にもモダンバレエのような要素があるのだと初めて感じました。
中国女子シングル希望の星・李子君は「danzarin of tango lorca」と「サウンド・オブ・ミュージック」を披露しました。素質に恵まれた非常に才能がある選手です。1996年生まれでなので、2014年のソチオリンピックが初の五輪になります。
■李子君(愛称は氷上天使、君君)
「サウンド・オブ・ミュージック」では赤いエプロンドレスに黒い髪を垂らして、愛称のとおり「氷上の天使」でした。前半の「danzarin of tango lorca」では危なげなく演技をこなしたのですが、後半の「サウンド・オブ・ミュージック」では最初のジャンプで大きく転倒してしまったのです。一瞬座り込んでしまい、立ち上がろうとするのに足がもつれているようにも見えました。その姿は全速力で走っていた小鹿が急につまづいて転んだかのように見えて、
あああっ、がんばって!!!
会場中から心の声が聞こえたような気がしました。客席にいる人たち全員がお母さんになったようでした。
そして、どこからともなく拍手が起きたのです。
選手がジャンプに成功したときに大きな拍手が鳴り響くのは分りますが、ジャンプに失敗しても拍手をすることもあるんだと初めて知りました。拍手の音色は成功したときとのものとは異なり、応援するように静かに響きました。
初めてフィギュアを生で見て感じたことは、ジャンプ、スピン、ステップ・・・数々の高度な技は綿密に計算された規定の動きを正確に行わないと実現不可能だということです。
例えば料理であれば、思いつきで調味料を加えてみたら案外美味しくできましたということがあります。しかし、ケーキはきちんと材料の分量を計算して手順どおりに作らなければ上手く膨らみません。それと同じで、フィギュアのジャンプの場合、「適当に飛んでみたら3回転できました」ということは恐らくありえないです。
標準とされる型にできるだけ近づけることが、技の精度・成功率を上げることにつながります。しかし、精度を高めるために標準化すれば、没個性の方向に働くのではないでしょうか。だからこそ、高度な技を正確に繰り出しつつ自分の個性があるスケートをすることは、本当に難しいことで、一流の中の一流の選手にしかできないことなのだと感じました。
個性の表現という点ではやはりジョニー・ウィアーが突出しています。
オリンピックでは選手たちが技に対する執念のエネルギーを燃やしますが、それと同じくらい、ジョニーのアイスショーは個性の表現に対する気迫を感じました。これは確かな技術がある上に成り立つものです。
また、多くの名スケーターがいっぺんに中国にやってきましたが、メインスターはジョニーです。ジョニーは2010年第1回「氷上雅姿」北京公演から4年連続で出演しています。愛称は「氷上のLADY GAGA」です。ジョニーが出場するときだけ控え室からリンクまでレポーターが追跡するという特別映像が加えられていました。司会者が「いつも私たちに嬉しい驚きを与えてくれるジョニー・ウィアーの登場です!」と叫ぶと客席から拍手と歓声が沸き起こります。
前半は黒い上着に黒ストッキングという個性的なファッションで「Army of Me」(ビヨーク)を、後半は真っ白な衣装をファーとスワロフスキーで飾り、Lady GAGAの「Born this way」を披露しました。
■動画URL 台湾公演の「Army of Me」(ジョニー・ウィアー):http://v.youku.com/v_show/id_XNTcyMDk1OTEy.html
今回のアイスショーの前のインタビューでジョニーは、
「中国のファンはLADY GAGAの曲を使ったスタイリッシュな類のプログラムを特に好むようなので、今回もそういう路線のプログラムを用意しました。」と語っています。これに対して中国主催側は「プログラムに合わせて光線や映像などの演出を準備した。プログラムにマッチして高い演出効果を発揮すると思う。」とコメントしています。
■動画:http://v.youku.com/v_show/id_XNTcyMzQzMzAw.html
エンディングセレモニーでは全選手が一緒にアイスショーのテーマソング、伍佰/ウーバイの「花朵舞」に合わせて踊ります。お客さんも一緒に踊ります。欧米の選手がC-POPの中華的なノリの振り付けを楽しそうに踊るのが面白かったです。オリンピックや世界選手権では見れない、少し気の抜けた姿も見ることができました。アイスショーは得点を競うものではなく、「氷上雅姿」(ARTISTRY ON ICE)は美と楽しさを競うことをコンセプトとしているようです。
■2013年アイススケートショー「氷上雅姿」(ARTISTRY ON ICE)上海公演の出場者
男子シングル
パトリック・チャン
ジョニー・ウィアー
ステファン・ランビエール
カート・ブラウニング
女子シングル
イリーナ・スルツカヤ
アリッサ・シズニー
ジョアニー・ロシェット
ペア
アリオナ・サフチェンコ、ロビン・ゾルコーヴィ
アイスダンス
ナタリー・ペシャラ、ファビアン・ブルザ
アート・オン・アイス(氷上サーカス)
エカテリーナ・チェスナ、アレクサンダー・チェスナ
ウラジミール・ベセディン&アレクセイ・ポーリッシュク
中国人選手
女子シングル:李子君
男子シングル:閻涵
ペア:彭程 王昊
ゲスト
曲婉婷(チュー・ワンティン)カナダのレーベルからデビューした女性歌手。2012年に中華圏全体で大人気に。
DJ“問号”
チケット代:1280元、1080元、880元、580元、380元、280元、180元
場所:東方スポーツセンター(東方体育中心)
2013年6月14日(金)上海 19:30~22:20
各種目のトップスケーターがどっさり現れ豪華なラインナップに驚いたのですが、「氷上雅姿」は毎年メダリストを集められるだけ集めたのではと思うような顔ぶれで、浅田真央やプルシェンコも出場したことがあります。
■記者会見中のランビエールとジョニー・ウィアー。二人ともこのアイスショーに参加するのは今年が初めてではありません。(写真出典ニュース)
このアイスショーは華やかな光線、CG、映像、音楽を一体化した演出により、氷上のビジュアルアートを作り出しています。とにかく派手です。ブラウニングの「雨に濡れても」では本当にリンクに雨を降らすなど舞台効果も凝っています。また、DJ、バイオリニスト、ポップシンガーとのコラボレーションもあり、ジャンルを越えたバラエティ豊かなアイスショーです。
■オープニングセレモニー
■自ら作詞作曲した「我的歌声里」が大ヒットした女性シンガー曲婉婷(チュー・ワンティン)。前半ではジョアニー・ロシェットと、後半では閻涵とコラボレーション。閻涵のスケートに合わせて氷上で「我的歌声里」(You exist in my song)を歌う。
構成としては、オープニングセレモニー→前半演技→休憩(リンク調整)→後半開始セレモニー→後半演技→終演セレモニーという流れで、全部で約3時間です。出場スケーターは前半と後半に1回ずつ演技を披露するので、2種類のプログラムを見ることができます。セレモニーを合わせると、好きな選手の演技を少なくとも5回見ることができます。2人の司会者が進行を司どり、一人は上海の女性テレビラジオ司会者ですが、もう一人はペアの中国人メダリスト趙宏博です(パートナーは申雪)。
オープニングセレモニー
パトリック・チェン
ステファン・ランビエール
中国人選手は4人出場しますが、彼らはオープニングセレモニーには参加しませんでした。たまたま今回は4人とも若い選手ばかりのためか、多くのメダルを取った実績のあるゲストスケーターたちとは扱いに差が設けられているのでしょうか。
会場で直接フィギュアスケートの大会を見るのはこれが初めてです。
一流のスケーターたちが次々に登場しますが、まさに百花繚乱、次々と繰り出される技を追いかけることしかできず、約3分間のプログラムはあっという間に終わってしまいます。どの選手も素晴らしいのですが、何をどう評価してよいのか分りません。
何故かというと、いつもテレビで見ているときの実況解説がないからです。
「いまのトリプルサルコーはきれいに入りました」
「コンビネーションジャンプ、着地がちょっとぶれましたね」
といった実況解説がないと、技術的なことが全く分かりません。
テレビを見ているときは解説がうるさいと思ったこともありますが、実際に解説がないと、いまのジャンプが2回転半だったのか3回転だったのかも分かりません。
パトリック・チャンのジャンプの高さと力強さは、素人目に見ても突出していることが分ります。しかし、技術的な面でいうとその程度のことしか判断がつきません。あとは「みんな本当に素晴らしかった」です。
技術ではなく演技としてみると、特に印象深かったのはスルツカヤの「愛のベネチア」です。抑えた滑りの中にラテンダンスのような情熱と深みがあります。ランビエールのプログラムも物語性のあるスケートで、フィギュアの中にもモダンバレエのような要素があるのだと初めて感じました。
中国女子シングル希望の星・李子君は「danzarin of tango lorca」と「サウンド・オブ・ミュージック」を披露しました。素質に恵まれた非常に才能がある選手です。1996年生まれでなので、2014年のソチオリンピックが初の五輪になります。
■李子君(愛称は氷上天使、君君)
「サウンド・オブ・ミュージック」では赤いエプロンドレスに黒い髪を垂らして、愛称のとおり「氷上の天使」でした。前半の「danzarin of tango lorca」では危なげなく演技をこなしたのですが、後半の「サウンド・オブ・ミュージック」では最初のジャンプで大きく転倒してしまったのです。一瞬座り込んでしまい、立ち上がろうとするのに足がもつれているようにも見えました。その姿は全速力で走っていた小鹿が急につまづいて転んだかのように見えて、
あああっ、がんばって!!!
会場中から心の声が聞こえたような気がしました。客席にいる人たち全員がお母さんになったようでした。
そして、どこからともなく拍手が起きたのです。
選手がジャンプに成功したときに大きな拍手が鳴り響くのは分りますが、ジャンプに失敗しても拍手をすることもあるんだと初めて知りました。拍手の音色は成功したときとのものとは異なり、応援するように静かに響きました。
初めてフィギュアを生で見て感じたことは、ジャンプ、スピン、ステップ・・・数々の高度な技は綿密に計算された規定の動きを正確に行わないと実現不可能だということです。
例えば料理であれば、思いつきで調味料を加えてみたら案外美味しくできましたということがあります。しかし、ケーキはきちんと材料の分量を計算して手順どおりに作らなければ上手く膨らみません。それと同じで、フィギュアのジャンプの場合、「適当に飛んでみたら3回転できました」ということは恐らくありえないです。
標準とされる型にできるだけ近づけることが、技の精度・成功率を上げることにつながります。しかし、精度を高めるために標準化すれば、没個性の方向に働くのではないでしょうか。だからこそ、高度な技を正確に繰り出しつつ自分の個性があるスケートをすることは、本当に難しいことで、一流の中の一流の選手にしかできないことなのだと感じました。
個性の表現という点ではやはりジョニー・ウィアーが突出しています。
オリンピックでは選手たちが技に対する執念のエネルギーを燃やしますが、それと同じくらい、ジョニーのアイスショーは個性の表現に対する気迫を感じました。これは確かな技術がある上に成り立つものです。
また、多くの名スケーターがいっぺんに中国にやってきましたが、メインスターはジョニーです。ジョニーは2010年第1回「氷上雅姿」北京公演から4年連続で出演しています。愛称は「氷上のLADY GAGA」です。ジョニーが出場するときだけ控え室からリンクまでレポーターが追跡するという特別映像が加えられていました。司会者が「いつも私たちに嬉しい驚きを与えてくれるジョニー・ウィアーの登場です!」と叫ぶと客席から拍手と歓声が沸き起こります。
前半は黒い上着に黒ストッキングという個性的なファッションで「Army of Me」(ビヨーク)を、後半は真っ白な衣装をファーとスワロフスキーで飾り、Lady GAGAの「Born this way」を披露しました。
■動画URL 台湾公演の「Army of Me」(ジョニー・ウィアー):http://v.youku.com/v_show/id_XNTcyMDk1OTEy.html
今回のアイスショーの前のインタビューでジョニーは、
「中国のファンはLADY GAGAの曲を使ったスタイリッシュな類のプログラムを特に好むようなので、今回もそういう路線のプログラムを用意しました。」と語っています。これに対して中国主催側は「プログラムに合わせて光線や映像などの演出を準備した。プログラムにマッチして高い演出効果を発揮すると思う。」とコメントしています。
■動画:http://v.youku.com/v_show/id_XNTcyMzQzMzAw.html
エンディングセレモニーでは全選手が一緒にアイスショーのテーマソング、伍佰/ウーバイの「花朵舞」に合わせて踊ります。お客さんも一緒に踊ります。欧米の選手がC-POPの中華的なノリの振り付けを楽しそうに踊るのが面白かったです。オリンピックや世界選手権では見れない、少し気の抜けた姿も見ることができました。アイスショーは得点を競うものではなく、「氷上雅姿」(ARTISTRY ON ICE)は美と楽しさを競うことをコンセプトとしているようです。