90年代フジテレビ月9ドラマの名作「101回目のプロポーズ」の中国版映画を観に行ってきました。
タイトル:『101次求婚』(101回目のプロポーズ)
出演 : 林志玲(リン・チーリン)、黄渤(ホアン・ボー)、高以翔(ガオ・イーシャン)、秦海璐(チン・ハイルー)、武田哲也、華少(ホアシャオ)
監督 :陳正道(台湾の若手監督)
製作者 :艾秋興、曹華益、韓三平、荒井昭博、桂延文
公開日 :2013年2月12日(バレンタインに合わせて公開)
クレジットとポスターにフジテレビ(中国では富士電視台と表記)と文化庁のロゴが入っています。音楽はチャゲ&飛鳥の「Say Yes」のサントラが使われています。エンドロールで中国語歌詞のものが流れます。
ストーリーの流れとコンセプトはドラマ版を踏襲しており、ふられっぱなしの冴えない男が見るからに高嶺の花の美女に偶然出会って恋をして・・・という展開です。物語の舞台は上海です。
~キャスト~
葉薫(イエシュン)/ リン・チーリン(林志玲) 原版:浅野温子
美人チェロ奏者。3年前の結婚式の当日、婚約者が事故に遭い行方不明になる。30代。
林志玲は台湾出身の美人モデル。1974年生まれですがまったく年齢を感じさせません。この映画自体がリン・チーリンのPVといってもいいくらい、リン・チーリンが美しいです。
黄達(ホアンダー)/ 黄渤(ホアン・ボー) 原版:武田鉄矢
内装工事業者の頭。99回のお見合いはいずれも失敗。歌が得意。
黄渤(ホアン・ボー)は大陸出身の個性派俳優。多くの作品でシニカルな笑いを誘う怪役を演じる。近年「Black and White(劇場版)」「泰囧(LOST IN THAILAND)」「西遊・降魔編」、そして「101次求婚」などヒット作が相次ぎ、現在の中国の映画界で興行成績トップの俳優。
許卓/高以翔:ヒロインの元婚約者。容姿、才能、財産、家柄、すべて揃った理想的な結婚相手。
カナダ出身、195cmの長身。台湾をはじめ中華圏で活躍する俳優。
中国映画版と原版ドラマでは、ヒロインの元婚約者役の設定が異なるせいもあり、中国版の方がライトなストーリーになっています。登場人物が声をかみ殺して泣くような葛藤を表すための泥臭い演出はないです。小道具や背景が豪奢でセンスがよく、映像も洗練されていて視覚的な美しさは申し分ないです。特に上海バンドを背景にした失われた結婚式のシーンは西洋と東洋の美しさが交じり合い印象的です。
リン・チーリンが演じるヒロインの葉薫(イエシュン)はドラマ版と同じくチェロ奏者ですが、日本に音楽留学した経験があり、そのときの恩師が矢吹薫(浅野温子が演じた役)だったという裏設定があり、ドラマ版とシンクロしています。1991年のフジテレビ「101回目のプロポーズ」の20年後の世界が、中国映画版「101次求婚」ということになります。星野達郎役として武田鉄矢が特別出演しています。
興行収入は2月22日の時点で1.5億元(約23億円)を記録しています。「101次求婚」はバレンタインに合わせて2月12日に公開されたのですが、今年のバレンタインは旧正月連休と重なっていました。「101次求婚」は公開第2週目になって興行成績が盛り返すという、中国映画としては珍しい傾向がみられたと報道されています。中国では一人で映画館に映画を観に来る人はほぼいません。それは遊園地に一人で行く人がほぼいないのと同じ理由です。映画はアートではなくアミューズメントであり、デートや家族サービスのために、娯楽として楽しむものです。上映される作品も娯楽大作やアクションもの、またはコメディが圧倒的に多いです。
(1.5億元という興行成績は中国映画としては、まずまずのヒットといえます。年間ベスト5に入る作品は8億~10億の興行収入を出します)
~中国メディアの報道~
2013年2月22日 21CN総合
【「101次求婚」興行成績1.5億元突破。バレンタインを過ぎた後に客足が再び伸びる。】
URL:http://et.21cn.com/gundong/etscroll/2013/02/22/14710164.shtml
【記事の概訳】
報道データによると、映画「101次求婚」の興行収入は2月22日までに1.5億元を突破し、話題作が並ぶ旧正月映画の激戦の中で好成績を収めている。本作は丁寧に作られており、啓発的なメッセージも含まれており、若いカップルだけではなく小学生から中高年まで幅広い年齢の客層を掴んだ。映画館では白髪の老夫婦が手を取り合うほほえましい姿や、早熟な少年が感動の涙を目にためる姿がみられた。
映画館の集計によると、今年はバレンタインと旧正月休暇が重なったこともあり、人々が都会に戻ってきた最初の週末に「バレンタインの埋め合わせ」が行われたようで、かつ「101次求婚」の口コミの評判も良いことから、本作は公開2週目に再び客足が上向いた。
実際に見てみて、想像していたよりもずっと面白かったし、完成度の高い作品でした。脚本は分かり易くテンポがよく、なおかつ通俗的すぎることもなく、センスよくまとめてます。主演の黄渤(ホアン・ボー)がコメディセンスに優れているので、上映中には何度も大きな笑いが起きました。そして20年の時を経ても「Say Yes」は名曲でした。
中国人にとって結婚は人生において必ず通過しなければならないものと考えており、しかるべき年齢になったら結婚しなければという意識は日本よりも強いです。なので、100回お見合いしたことがあるという人は中国には実際けっこういると思います。何度もふられながら最後には美女と結ばれる主人公に感情移入し、励まされる男性は多いのでは・・・女性よりも男性が感動して涙を流す映画になっています。
なお、上海など都市部のオフィスでは女性が活躍しており、特に外資系企業は職場が女性だらけです。女性の方が高学歴・高収入で、適当な結婚相手がなかなか見つからないと悩む声もあります。
~プロダクト・プレイスメント(埋め込み広告)~
トヨタ、ハーゲンダッツ、湾仔碼頭(餃子、麺などの冷凍食品メーカー)、Boloni(家具)等などが協賛企業となっており埋め込み広告が作品中に現れます。特に室内シーンでは「あ、埋め込み広告だ」とすぐ分かります。中国の都市生活を舞台にした現代ものの映画は、もともとこの手の埋め込み広告がすごく多いです。本作もプロダクト・プレイスメントが多いですが、現在の中国の流行やファッションをふんだん且つ巧みに組み込んでいると思います。
「101回目のプロポーズ」は20年前のバブルで景気が良かった時代に作られた物語です。2013年の日本と比べると、結婚観、恋愛観、人生観などが大分変わっているので、いま日本でリメイクしても「バブルだったあの頃へのノスタルジー」になってしまうかもしれません。しかし今の中国は、ある意味で20年前の日本なので、当時の日本の価値観がちょうど今の中国に当てはまるところがあります。時代と国を越えた価値観の重なりが垣間見えるのが面白く、中国の生々しい描写も含まれており、いまの中国の流行や風潮を感じることもできるので、日本の観客にとっても一見の価値がある作品だと思います。
タイトル:『101次求婚』(101回目のプロポーズ)
出演 : 林志玲(リン・チーリン)、黄渤(ホアン・ボー)、高以翔(ガオ・イーシャン)、秦海璐(チン・ハイルー)、武田哲也、華少(ホアシャオ)
監督 :陳正道(台湾の若手監督)
製作者 :艾秋興、曹華益、韓三平、荒井昭博、桂延文
公開日 :2013年2月12日(バレンタインに合わせて公開)
クレジットとポスターにフジテレビ(中国では富士電視台と表記)と文化庁のロゴが入っています。音楽はチャゲ&飛鳥の「Say Yes」のサントラが使われています。エンドロールで中国語歌詞のものが流れます。
ストーリーの流れとコンセプトはドラマ版を踏襲しており、ふられっぱなしの冴えない男が見るからに高嶺の花の美女に偶然出会って恋をして・・・という展開です。物語の舞台は上海です。
~キャスト~
葉薫(イエシュン)/ リン・チーリン(林志玲) 原版:浅野温子
美人チェロ奏者。3年前の結婚式の当日、婚約者が事故に遭い行方不明になる。30代。
林志玲は台湾出身の美人モデル。1974年生まれですがまったく年齢を感じさせません。この映画自体がリン・チーリンのPVといってもいいくらい、リン・チーリンが美しいです。
黄達(ホアンダー)/ 黄渤(ホアン・ボー) 原版:武田鉄矢
内装工事業者の頭。99回のお見合いはいずれも失敗。歌が得意。
黄渤(ホアン・ボー)は大陸出身の個性派俳優。多くの作品でシニカルな笑いを誘う怪役を演じる。近年「Black and White(劇場版)」「泰囧(LOST IN THAILAND)」「西遊・降魔編」、そして「101次求婚」などヒット作が相次ぎ、現在の中国の映画界で興行成績トップの俳優。
許卓/高以翔:ヒロインの元婚約者。容姿、才能、財産、家柄、すべて揃った理想的な結婚相手。
カナダ出身、195cmの長身。台湾をはじめ中華圏で活躍する俳優。
中国映画版と原版ドラマでは、ヒロインの元婚約者役の設定が異なるせいもあり、中国版の方がライトなストーリーになっています。登場人物が声をかみ殺して泣くような葛藤を表すための泥臭い演出はないです。小道具や背景が豪奢でセンスがよく、映像も洗練されていて視覚的な美しさは申し分ないです。特に上海バンドを背景にした失われた結婚式のシーンは西洋と東洋の美しさが交じり合い印象的です。
リン・チーリンが演じるヒロインの葉薫(イエシュン)はドラマ版と同じくチェロ奏者ですが、日本に音楽留学した経験があり、そのときの恩師が矢吹薫(浅野温子が演じた役)だったという裏設定があり、ドラマ版とシンクロしています。1991年のフジテレビ「101回目のプロポーズ」の20年後の世界が、中国映画版「101次求婚」ということになります。星野達郎役として武田鉄矢が特別出演しています。
興行収入は2月22日の時点で1.5億元(約23億円)を記録しています。「101次求婚」はバレンタインに合わせて2月12日に公開されたのですが、今年のバレンタインは旧正月連休と重なっていました。「101次求婚」は公開第2週目になって興行成績が盛り返すという、中国映画としては珍しい傾向がみられたと報道されています。中国では一人で映画館に映画を観に来る人はほぼいません。それは遊園地に一人で行く人がほぼいないのと同じ理由です。映画はアートではなくアミューズメントであり、デートや家族サービスのために、娯楽として楽しむものです。上映される作品も娯楽大作やアクションもの、またはコメディが圧倒的に多いです。
(1.5億元という興行成績は中国映画としては、まずまずのヒットといえます。年間ベスト5に入る作品は8億~10億の興行収入を出します)
~中国メディアの報道~
2013年2月22日 21CN総合
【「101次求婚」興行成績1.5億元突破。バレンタインを過ぎた後に客足が再び伸びる。】
URL:http://et.21cn.com/gundong/etscroll/2013/02/22/14710164.shtml
【記事の概訳】
報道データによると、映画「101次求婚」の興行収入は2月22日までに1.5億元を突破し、話題作が並ぶ旧正月映画の激戦の中で好成績を収めている。本作は丁寧に作られており、啓発的なメッセージも含まれており、若いカップルだけではなく小学生から中高年まで幅広い年齢の客層を掴んだ。映画館では白髪の老夫婦が手を取り合うほほえましい姿や、早熟な少年が感動の涙を目にためる姿がみられた。
映画館の集計によると、今年はバレンタインと旧正月休暇が重なったこともあり、人々が都会に戻ってきた最初の週末に「バレンタインの埋め合わせ」が行われたようで、かつ「101次求婚」の口コミの評判も良いことから、本作は公開2週目に再び客足が上向いた。
実際に見てみて、想像していたよりもずっと面白かったし、完成度の高い作品でした。脚本は分かり易くテンポがよく、なおかつ通俗的すぎることもなく、センスよくまとめてます。主演の黄渤(ホアン・ボー)がコメディセンスに優れているので、上映中には何度も大きな笑いが起きました。そして20年の時を経ても「Say Yes」は名曲でした。
中国人にとって結婚は人生において必ず通過しなければならないものと考えており、しかるべき年齢になったら結婚しなければという意識は日本よりも強いです。なので、100回お見合いしたことがあるという人は中国には実際けっこういると思います。何度もふられながら最後には美女と結ばれる主人公に感情移入し、励まされる男性は多いのでは・・・女性よりも男性が感動して涙を流す映画になっています。
なお、上海など都市部のオフィスでは女性が活躍しており、特に外資系企業は職場が女性だらけです。女性の方が高学歴・高収入で、適当な結婚相手がなかなか見つからないと悩む声もあります。
~プロダクト・プレイスメント(埋め込み広告)~
トヨタ、ハーゲンダッツ、湾仔碼頭(餃子、麺などの冷凍食品メーカー)、Boloni(家具)等などが協賛企業となっており埋め込み広告が作品中に現れます。特に室内シーンでは「あ、埋め込み広告だ」とすぐ分かります。中国の都市生活を舞台にした現代ものの映画は、もともとこの手の埋め込み広告がすごく多いです。本作もプロダクト・プレイスメントが多いですが、現在の中国の流行やファッションをふんだん且つ巧みに組み込んでいると思います。
「101回目のプロポーズ」は20年前のバブルで景気が良かった時代に作られた物語です。2013年の日本と比べると、結婚観、恋愛観、人生観などが大分変わっているので、いま日本でリメイクしても「バブルだったあの頃へのノスタルジー」になってしまうかもしれません。しかし今の中国は、ある意味で20年前の日本なので、当時の日本の価値観がちょうど今の中国に当てはまるところがあります。時代と国を越えた価値観の重なりが垣間見えるのが面白く、中国の生々しい描写も含まれており、いまの中国の流行や風潮を感じることもできるので、日本の観客にとっても一見の価値がある作品だと思います。