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一 彼の家系 飛んだ回顧録の御注文を受けて、聊かたぢらはれずには居られぬ。――事が人々の名誉や何かに... 一 彼の家系 飛んだ回顧録の御注文を受けて、聊かたぢらはれずには居られぬ。――事が人々の名誉や何かに係はり、当り触りも多からうから、普通の雑誌であるのなら御断りしたいのであるが、雑誌が専門の雑誌であると云ふので、許せる範囲内で島田君の発狂した原因を、簡単に書いて見る事にする。――島田君の発狂した原因に就ては、殆んど世人が知つて居らぬのだから、これ等の原因の裏面消息を語るのも、研究の一材料となるであらう。 島田君の出世作『地上』に出て来る、彼の故郷は確か大川村としてあつたが、あれは石川県の美川と云ふ処で、手取川の川口にある小港である。 彼の小説では、自分の家を大変の名家のやうに書いてあるが、別に村長でも何でもなく、彼の誇大妄想的な想像から、ああした名家にせねば気がすまなかつたのである。 彼の祖父は誰とか云つて、名を忘れてしまつたが、僕の祖父――千五百石取の小侍であつた――の家の門番をしてゐた