エル‐エス‐アイ【LSI】
LSI
別名:大規模集積回路
【英】Large Scale Integration
LSIとは、多数のトランジスタやダイオード、抵抗、コンデンサなどの電子部品(素子)を、一つの半導体チップに組み込んだ集積回路(IC)のことである。ICとほぼ同じ意味で用いられることも多い。
半導体集積回路は、「ムーアの法則」で表現されているように、時代とともに集積度と性能が指数関数的に向上している。1970年代には、1つの半導体チップに1000個~10万個の素子が集積されていたが、1980年代には、10万個~1000万個のレベルとなり、今日では、10億個以上の素子が集積されている集積回路も存在する。
半導体集積回路は、素子の集積度に応じて、次のように呼び分けられることがある。これによると、LSIは、集積回路の集積度の区分の一つにすぎない。しかし、実際に集積度に応じて呼び分けることは今日ではほとんど行われず、集積度にかかわらず「LSI」や「チップ」と総称される場合のほうが多い。
名称 | 日本語 | 集積される素子の数 |
SSI | 小規模集積回路 | 100個未満 |
MSI | 中規模集積回路 | 100個~1000個 |
LSI | 大規模集積回路 | 1000個~10万個 |
VLSI | 超大規模集積回路 | 10万個~1000万個 |
ULSI | 超々大規模集積回路 | 1000万個以上 |
LSIの種類や用途は多岐にわたり、おおよそ以下のような分類において多用されている。以前はもっぱらコンピュータ部品として用いられてきたが、最近ではいわゆる情報家電における需要が急速に増大している。
マイクロプロセッサ(CPU)として。ここでは、LSIは計算処理を行うための装置として用いられる。コンピュータにおける計算処理だけではなく、いわゆるマイコン制御の家電製品やAV機器、産業機器などの制御装置としても利用されている。
メモリ(記憶装置)として。ここでは、LSIはデータやプログラムを記憶するための装置として用いられる。メモリの構造によって、DRAMやSRAMなどの揮発性メモリ、マスクROMやフラッシュメモリなどの不揮発性メモリなどの種類がある。
ASIC(カスタムIC)として。ここでは、LSIは携帯電話機やゲーム機といった特定の電子機器向けに、その機器専用に設計された集積回路として利用される。
LSIは、高速化・省電力化のために微細化がほぼ極限まで進んでいる。例えば、素子の絶縁体(ゲート酸化膜)の幅は原子数個分にすぎなくなっている。既存の技術では微細化の限界が見えており、LSIの新しい素材や構造に関する研究が進められている。
集積回路
![]() | この記事は検証可能な参考文献や出典が全く示されていないか、不十分です。(2018年9月) |


集積回路(しゅうせきかいろ、英: integrated circuit, IC)は、半導体の表面に、微細かつ複雑な電子回路を形成した上でパッケージに封入した電子部品である。
集積回路は、シリコン単結晶などに代表される「半導体チップ」[注釈 1]の表面に、不純物を拡散させることによって、トランジスタ・コンデンサ・抵抗器として動作する構造を形成したり、アルミ蒸着とエッチングによって配線を形成したりすることにより電子回路が作り込まれている電子部品である[注釈 2]。
多くの場合、複数の端子を持つ比較的小型の[注釈 3]パッケージに封入されており、パッケージ内部で端子からチップに配線され、モールドされた状態で出荷され、半導体部品(電子部品)として流通している。
1940年代末のトランジスタの発明に次いで1950年代に考案され、製造技術、微細化技術の進歩により内蔵される部品数がムーアの法則で増え続け、性能が向上し続けている。(→#歴史)
製造工程はフォトリソグラフィという光学技術を利用し、微細な素子や配線をひとつずつ組み立てることなく大量生産できるため(→#製造工程)、現在のコンピュータや電子機器を支える主要な技術の一つとなっている。
歴史
集積回路の誕生
実際に集積回路を考案したのは、レーダー科学者ジェフリー・ダマー(1909年生まれ)であった。彼はイギリス国防省の王立レーダー施設で働き、1952年5月7日ワシントンD.C.でそのアイデアを公表した。しかし、ダマーは1956年、そのような回路を作ることに失敗した。各企業は集積回路の実現を目指して、RCAのマイクロモジュール、ウェスティングハウス・エレクトリックのモレキュラーエレクトロニクス、テキサス・インスツルメンツのソリッドステートサーキットが開発された[1]。
初期の集積回路の概念は、モノリシックICというより後のハイブリッドICに近いもので、この概念にしたがって、基板に真空蒸着で抵抗素子やコンデンサを形成してトランジスタと組み合わせる薄膜集積回路や、現在のプリンテッドエレクトロニクスに相当する印刷技術により抵抗や配線、コンデンサなどを1枚のセラミック基板上に集積した厚膜集積回路が開発されていった[1]。
また、1958年にはウェスティングハウスから「Molectronics」という名称の集積回路の概念が発表され[2]、1960年2月にSemiconductor Product誌に掲載された記事に触発されて、電気試験所でも同年12月に、見方次第ではマルチチップ構造のハイブリッドICともいえる、ゲルマニウムのペレット3個を約1cm角の樹脂容器に平行に配列した集積回路の試作に成功した[3][4]。
1961年2月には、ウェスティングハウスと技術提携した三菱電機から、11種類のモレクトロンが発表された[1]。日本で最初のモノリシック集積回路は、東京大学と日本電気 (NEC) の共同開発とされる[5]。
著名な集積回路の特許は、アメリカ合衆国の別々の2つの企業の、2人の研究者による異なった発明にそれぞれ発行された。テキサス・インスツルメンツのジャック・キルビーの特許「Miniaturized electronic circuits」は1959年2月に出願され、1964年6月に特許となった (アメリカ合衆国特許第 3,138,743号)。フェアチャイルドセミコンダクターのロバート・ノイスの特許「Semiconductor device-and-lead structure」は1959年7月に出願され、1961年4月に特許となった(アメリカ合衆国特許第 2,981,877号)。しかし、「キルビー特許紛争」などと呼ばれるように(ちなみに「キルビー特許」に対し、ノイスの特許は「プレーナー特許」と呼ばれることがある)多くの議論を発生させることとなった。
技術的な内容とはほぼ無関係に、業界の権益争いとして、特許優先権委員会においてどちらの特許が「集積回路の特許として有効であるか」を、法的に認定させる争いが勃発した(技術的な判断が目的なのではなく、あくまで「法的にどちらが有効か」を認めさせることが目的である)。キルビーの特許出願から10年10か月を経て決着し、ノイスの勝利が確定した。しかし、そのような法的勝利は、実際にはほとんど意味がなかった。
ライセンスビジネス的には、1966年にテキサス・インスツルメンツとフェアチャイルドセミコンダクターを含む十数社のエレクトロニクス企業が、集積回路のライセンス供与について合意に達していたからであり、技術と法律とビジネスというものについて、教訓的な事例となっている。またさらに日本では、20年の紆余曲折を経て1989年に特許となったことで、莫大な額の請求等を伴う紛争となり「サブマリン特許制度」のタチの悪さを際立たせるという役割を担う結果となった。
キルビーとノイスは後に、ともにアメリカ国家技術賞を受け、全米発明家殿堂入りをした。
SSI・MSI・LSI
SSI, MSI, LSI というのは、集積する素子の数によってICを分類定義[6]したものである。「MSI IC」のようにも言うものであるが、今日ではほぼ使われない。比較的小規模のものを単にIC、比較的大規模のものを単にLSIとしているが、現在ではICとLSIを同義語として使うことも多い。
初期の集積回路はごくわずかなトランジスタを集積したものであった。これをSSI (Small Scale Integration) とするのであるが、後にMSI (Middle Scale Integration) やLSI (Large Scale Integration) という語と同時に作られたと思われる、おそらくレトロニムであろう。航空宇宙分野のプロジェクトで珍重され、それによって発展した。ミニットマンミサイルとアポロ計画は慣性航法用計算機として軽量のデジタルコンピュータを必要としていた。アポロ誘導コンピュータは集積回路技術を進化させるのに寄与し、ミニットマンミサイルは量産化技術の向上に寄与した。これらの計画が1960年から1963年まで生産されたICをほぼ全て買い取った。これにより製造技術が向上したために製品価格が40分の1になり、それ以外の需要が生まれてくることになった。
民生品として大量のICの需要を発生させたのは電卓だった。コンピュータ(メインフレーム)でのICの採用は、System/360では単体のトランジスタをモジュールに集積したハイブリッド集積回路(IBMはSLTと呼んだ)にとどまり、モノリシック集積回路の採用はSystem/370からであった。
1960年代に最初の製品があらわれた汎用ロジックICは、やがて多品種が大量に作られるようになり、コンピュータのようにそれらを大量に使用する製品や、あるいは家電など大量生産される機器にも使われるようになっていった。1970年代にはマイクロプロセッサが現れた。
集積度の高いMSIやLSIが普通に生産されるようになると、そのうちそのような分類も曖昧になって、マイクロプロセッサなど比較的複雑なものをLSI、汎用ロジックICなど比較的単純なものをIC、と大雑把に呼び分ける程度の分類となった。
VLSI
もとの分類ではLSIに全て入るわけだが、1980年代に開発され始めたより大規模な集積回路をVLSI (Very Large Scale Integration) とするようになった。これにより、これまでの多数のICで作られていたコンピュータに匹敵する規模のマイクロプロセッサが製作されるようになった。1986年、最初の1MbitRAMが登場した。これは100万トランジスタを集積したものである。1993年の最初のPentiumには約310万個のトランジスタが集積されている。また、設計のルール化はそれ以前と比較して設計を容易にした。
また、カーバー・ミードとリン・コンウェイの『超LSIシステム入門』[注釈 4]によりVLSIにマッチした設計手法が提案された。これはMead & Conway revolution(en:Mead & Conway revolution)と呼ばれることもあるなどの影響をもたらした。たとえば、1950年代には、大学で最先端のコンピュータを実際に建造するなどといったこともさかんだったわけであるが、1970年頃以降にはコストの点で現実的ではなくなっていた。それが、CAD等の助けによりパターンを設計してチップ化する、という手法で、大学などでも最先端の実際の研究がまた可能になった、といった変化を齎したのが一例である。たとえば初期のRISCとして、IBM 801、バークレイRISC(SPARCへの影響が大きい)、スタンフォード系のMIPSがまず挙がるが、後者2つにはその影響がある。
ULSI
VLSIに続いて、新たに ULSI (Ultra-Large Scale Integration) という語も作られ、集積される素子数が100万以上とも1000万以上ともされているが、そのような集積度の集積回路も、今日普通はVLSIとしている。
WSI
WSI (Wafer-Scale Integration) は、複数のコンピュータ・システム等の全体をウェハー上に作り込み、個別のダイに切り離さずにウェハーの大きさのままで使用するという構想である[注釈 5]。現状では、1品もので、コストが非常に高額であっても良いというような特殊な用途・特殊な要求に基づき生産するような装置で採用されている。たとえば、人工衛星や天体観測望遠鏡の光学受像素子では、つなぎ合わせて作ると歪みや隙間が生ずるので、1枚のウェハーの全面を使用した物が作られている。
SoC
System-on-a-chip (SoC) は、従来別々のダイで構成されていたものを統合することで、独立して動作するシステム全体をひとつの集積回路上に実現するものである。例えば、マイクロプロセッサとメモリ、周辺機器インターフェースなどを1つのチップに集積するものである。
固体撮像素子
集積回路技術の進歩の一例であるが、以前は撮像管などと呼ばれる真空管だった、映像を撮影する撮像素子も、電荷結合素子 (CCD) の技術開発が進み、固体撮像素子としてCCDイメージセンサが作られ、家庭用ビデオカメラの大幅な小型化などにまず貢献した。続いてCMOSイメージセンサも作られた。やがて静止写真用にも十分な解像度を持つようになり、デジタルカメラが銀塩カメラを一掃した。
伸縮・折り畳み可能なシリコン集積回路
このシステムは、単結晶硅素の無機の整列アレイを含む無機電子材料と、極薄のプラスチックやエラストマー基板を統合している。[7]
回路設計
製造工程
(集積回路に限らず)半導体製造は、ウェハー上に素子や回路を形成する前工程と、そこで作られたウェハーをダイに切断し、パッケージに搭載した後に最終検査を行う後工程に大きく二分される。なお、これらの工程は一般に複数の工程専門企業がそれぞれの工場で順次行っていくものである。1社ですべての工程を行うケースはほぼなく、あったとしても非常に稀である。
一般的には、設計・ウェハー製造・表面処理・回路形成・ダイシング・基材製造・ボンディングの各工程に専業企業が存在し、デザイン・ウェハー切り出し・アンダーフィリング・検査が前記から分かれて専業化している場合、加えて各工程で使用される材料・加工にも専業メーカーが存在する。一つの集積回路パッケージが出来上がるまでに関わるメーカーの数は少なくとも5、多いときには30社とも言われる。
ウェハー製造
集積回路の母材となるウェハーの原材料は、半導体の性質を持つ物質である。一般的な集積回路ではそのほとんどがシリコンであるが、高周波回路では超高速スイッチングが可能なヒ化ガリウム、低電圧で高速な回路を作りやすいゲルマニウムも利用される。
集積回路の歩留まりとコストは、ウェハーの原材料である単結晶インゴットの純度の高さと結晶欠陥の数、そして直径に大きく左右される。2007年末現在のウェハーの直径は300 mmに達する。インゴットのサイズを引き上げるには、従来の技術だけでは欠陥を低くすることが難しく、多くのメーカーが揃って壁に突き当たった時期があった。シリコン単結晶引き上げ装置のるつぼを超伝導磁石で囲みこみ、溶融したシリコンの対流を強力な磁場で止めることで欠陥の少ない単結晶が製造可能になった。
前工程

前工程は、設計者によって作られた回路のレイアウトに従ってウェハー上に集積回路を作り込む工程である。光学技術、精密加工技術、真空技術、統計工学、プラズマ工学、無人化技術、微細繊維工学、高分子化学、コンピュータ・プログラミング、環境工学など多岐にわたる技術によって構成される。
表面処理
集積回路は半導体表面に各種表面処理を複数実施して製造される。まずウェハーにはイオン注入によってドープ物質を打ち込み、不純物濃度を高める措置が行われる(最初に作られるこの層がゲートなどの集積回路の中枢となる)。さらにSOIではウェハーに絶縁層を焼きこむか張り合わせることで漏れ電流を押さえ込む処置が行われる。そしてレジスト膜の塗布、ステッパーによる露光、現像処理によるレジスト処理を複数行い、その間に回路構造物の母体となるシリコンの堆積、イオン注入によるドープ物質の注入、ゲートや配線の土台となる絶縁膜の生成、金属スパッタリングによる配線、エッチングによる不要部分の除去などが行われる(フォトリソグラフィ)。集積回路の立体的な複雑さを配線層の枚数で数えることから4層メタル・6層メタル等と表現する。この表面処理技術は現在進行形であり、2014年現在ではHigh-K絶縁膜、添加物打ち込み、メタルゲート、窒化物半導体素子など新たな技術が導入されている。さらに新しい技術は、より微細化したプロセス・ルールと共に世に出ると言われている。
クリーンルーム
半導体工場の生産ラインは、それ自体が巨大なクリーンルームとなっている。生物学的クリーンルームよりも、半導体製造現場のほうが遥かに清浄度が高い。ウェハー上の1つの細菌細胞は、トランジスタ100個近くを覆い隠す。2008年の先端プロセス・ルールである45nmは、ウイルス以下の大きさである。製造中の半導体は、人間がいる環境ではどこにでもあるナトリウムに大変弱く、それが絶縁膜に浸透するため、特にCMOSトランジスタには致命的欠陥になる。
半導体工場のクリーンルーム内に導入される空気は、部屋や場所ごとに設定されたクリーン度に応じて、何度もHEPAフィルターやULPAフィルターで、空中微粒子を濾しとられたものが使われる。また水はイオン交換樹脂とフィルターによって、空気同様に水中微粒子を徹底的に除去された超純水を使用している。
大量のナトリウムを含み、皮膚から大量の角質細胞の破片を落下させ、振動をもたらすヒトは、半導体プロセスにとって害をなす以外の何物でもなく、クリーンスーツ、いわゆる“宇宙服”を着て、製造ラインを汚染しないようにしている。もっとも工場は高度に自動化されており、人間が製造ラインに出向くのは、機械の故障といったトラブルがあった時だけである。
ウェハーテスト
ウェハー上への回路形成が完了したら、半導体試験装置を用いて回路が正常に機能するかを確認するウェハーテストを行う。半導体の動作特性は温度にも左右されるため、常温に加え高温や低温下での試験も行われる。
ウェハーテストの結果はダイにマーキングされ、後述する後工程では良品とマークされたダイのみが組み立て対象となる。
欠陥救済
ダイ面積の大きい超大規模集積回路では、チップ上に一つも欠陥がない完璧な製品を作ることは非常に難しい。そこで、設計段階で予備の回路を前もって追加し、ウェハーテストで不良が検出されたときにそこを予備回路で補うことで歩留まりを上げる救済が行われる。回路の切り替えは、回路上に形成されたヒューズを、レーザーまたはウェハーテスト中に電流を流して切断することで実現している。
DRAMやフラッシュメモリでは、製品で決められた容量に加え予備のメモリ領域を用意しておき、不良箇所をテストで見つけた時点で配線のヒューズを切り予備領域に切り替えることが一般的に行われる。また、CPUでオンダイのコプロセッサや、マルチコアプロセッサの各コアなど、その内部に不良があった場合にはそれを切り離して、ラインナップ中の低グレードの製品とする、あるいは最初から全てが機能することは期待しない、といった手法もある。例えば、Cellプロセッサは
後工程

前工程で良品としてマーキングされた回路をウェハーから切り出し、シートに貼り付けてパッケージに搭載する。端子との配線や樹脂で封止し、最終製品の形になる。その後、初期不良をあぶり出すバーンイン試験や製品の機能を確認するファイナルテストを経て出荷される。
ダイシング
ダイシング工程では、前工程で製造されたウェハーをチップの形に切り離す。ダイシングには、薄い砥石を用いて切断する方法と、レーザーを用いる方法が主流である。
ボンディング

チップをパッケージ基板に搭載し、チップ側の端子とパッケージの端子を接続する工程はボンディングと呼ばれる。主なボンディング手法を下に示す。
ワイヤ・ボンディング
フリップチップボンディング
- チップ上にバンプと呼ばれる接続用の突起を載せ、その面をパッケージ基板に合わせて接続する方法。チップ全面を接続に使えるため、端子数が多くかつチップ面積が小さい集積回路でよく利用される。
封止
ボンディングによる配線が完了したら、外部からの衝撃や水分から集積回路を保護する封止を行う。一般的な集積回路では、モールド剤でチップやボンディングワイヤーを保護するための注入成形を行う。集積回路の黒い外見はこの樹脂によるものである。樹脂が固まった後、チップ毎に切り離せば集積回路は完成する。近年のCPUやGPU、液晶ドライバICなどの超精密集積回路にはモールド剤を用いず、アンダーフィルと呼ばれる一液硬化の樹脂を用いる。ボンディングの後、基材とIC間に注入を行いキュア炉と呼ばれる装置でリフローし、硬化させる。
バーンイン

集積回路の故障率は一般的にバスタブカーブと呼ばれる確率分布に従う。バスタブカーブでは、使用開始直後に高い不良率を示す初期不良期間を経て、低い不良率を維持する偶発故障期間に移行する。劣化を加速する条件下で短時間集積回路を動作させることでこの初期不良をあぶり出す工程がバーンイン(burn-in、焼入れ。エイジングとも)である。バーンインであぶり出された初期不良は次の品質検査によって取り除かれる。
具体的には、高温下で一定時間集積回路に電流を流すことで劣化を加速している。これは、劣化を化学反応として捉えた場合、劣化速度と温度はアレニウスの式の関係に従うとの考え方によるものである。
品質検査
最後に、集積回路が製品として正常に機能するかを確認する検査を行う。封止樹脂に欠けやひび、リードフレームやBGAパッケージのボール端子に異常が無いかを確認する外観検査、ボンディングによる電気接続が確実に行われ、チップが完全に動作するかを半導体検査装置で確認する電気検査が行われる。
プログラム書き込み
EEPROMやフラッシュメモリなどの記憶素子を混載した製品では、プログラムをそれらに書き込む作業も行われる。プログラムの内容を切り替えることで、同一のマスクから異なるグレードや入出端子の異なる集積回路を作り出すことができる。またCPU等の製品で、実際に動作可能な最高速度に応じたクロック倍率を後処理で設定することで、グレードの異なる製品を同一生産ラインから製造している。
プロセス・ルール
プロセス・ルールとは、集積回路をウェハーに製造するプロセス条件をいい、最小加工寸法を用いて表す。プロセス・ルールによって、回路設計での素子や配線の寸法を規定するデザイン・ルールが決まる。
通常、最小加工寸法はゲート配線の幅または間隔である。ゲート配線幅が狭くできれば、金属酸化物電界効果トランジスタ (MOSFET) のゲート長が短くなるから、ソースとドレインの間隔が短くなり、チャネル抵抗が小さくなる。したがって、トランジスタの駆動電流が大きくなり、高速動作が期待できる。このため、プロセス・ルールは、高速化を期待して、ゲート長のことを指す場合もある。特にDRAMプロセスでは、ゲート長はゲート配線の最小寸法を使わない場合があるし、拡散層とメタル層を導通させるコンタクトの径が最小加工寸法の場合もある。つまり、プロセス・ルールは、製造上の技術的な高度さや困難さを示す指標と言える。
プロセス・ルールが半分になれば、ダイの外部配線部を除けば、同じ面積に4倍のトランジスタや配線が配置できるため、同じトランジスタ数では4-1倍 (4分の1) の面積になる。ダイ面積が4分の1に縮小できれば1枚のウェハーから取れるダイが4倍になるだけでなく、歩留まりが改善されるためさらに多くのダイが取れる。トランジスタ素子が小さくなればMOSFETのチャネル長が短くなり、ON/OFFの閾値の電圧 (Vth) を下げられ、低電圧で高速のスイッチング動作が可能となるため、リーク電流の問題を考えなければ、消費電力を下げながら性能が向上する。
伝播遅延 モノリシック集積回路は1片のチップに、トランジスタ、ダイオード、抵抗器などの回路素子を形成し、素子間をアルミニウムなどの蒸着によって配線した後、数mm - 十数mm角の小片に切り出したものである。組み立て工数が少ないため安価である。
シリコン(Si、珪素)単結晶基板上に平面状に構成するトランジスタ(プレーナ型トランジスタ)を発展させたものである。アナログICとデジタルICのどちらも1960年代から発展が始まっているが、1990年代には製造プロセスの進歩により高度なアナログ・デジタル混在回路も見られるようになった。
比較的小さいプリント基板に、多数の個別部品や複数のチップ(マルチチップモジュール)などを直接、高密度さらには立体的に実装・配線し、さらにモールドするなどして一体の部品としたものである。
制御回路が一体化された大電力の増幅回路やスイッチング回路(インテリジェントパワーモジュール)や、高密度実装が要求される携帯機器・自動車・航空機・軍事用、集積回路同士の距離が演算速度に影響を与えるスーパー・コンピュータやメインフレーム・コンピュータなどに用いられる。メインフレームコンピュータやスーパーコンピュータで使われるマルチチップモジュールは100層を超えるセラミック基板を焼結生成した非常に高度な立体回路を構成している。プリント基板においてもビルドアップと呼ばれる、複数の多層基板を貼り合わせて回路を構成する技術が開発されているため、ハイブリッド集積回路の多層化製品とプリント基板の多層化製品の境目は無くなっている。
コンピューターに耐タンパー性能を与えるためのSystem-on-a-chipモジュール。I/Oポートと電源端子のみを備え、マイクロコントローラーとして全てのロジックをワンチップに収納してある。鍵管理・鍵ブロックの登録と払い出し・Worm機能などが盛り込まれ、中間者攻撃やサイドチャネル攻撃からコンピューターシステムを防御する。世界で最も多く使われているセキュリティチップがICカードである。システム防衛の要として使われるが、通常スタンドアロンで動作する物は無い。バックエンドシステムにデータベースを備え、そのデータベースにアクセスする鍵が格納される(過去に実データを格納するICカードもあったが耐タンパー性の悪さから、B-CASカード等限定受信システム以外は撤退している。日本、EUではカードが解析・改ざんされ限定受信システムが崩壊した)。おサイフケータイ・Suicaなどで知られるワイヤレス電子マネー・電子発券システムもセキュリティチップである。このシェアはソニーが開発したFelicaが主流であり、NFCとしてISOで標準化された。携帯電話のSIMカードもセキュリティチップである。Microsoft WindowsはWindows Vistaから、セキュリティチップの本格採用を始めた。セキュリティチップに電子証明書を格納し、ハードディスクを暗号化する。それ以前は電子署名ベースのEFSを搭載していたが、ユーザープロファイルの消滅がユーザー証明書の喪失につながりデータを損失する事故があった。またシステム全体を暗号化することができなかった。インテルはvProとしてWindows NTにセキュリティチップをオプションで採用した暗号化システムを提供していた。しかし一般ユーザーには利用されず、主にITプロフェッショナルが運用する大規模システムでつかわれた。
耐タンパー性技術は日々進歩しており、長い鍵を処理できる高性能プロセッサの搭載、光消去EPROMによるチップ取り出しの困難化(チップに光を当てるとフローティングゲートから電荷が流出してデータが消滅する)など改良が重ねられている。
ハイブリッド集積回路
パッケージ
機能別分類
ASIC、システムLSI(特定用途向け IC・LSI)
ASSP
デジタル制御用LSI
汎用メモリ
専用メモリ
アナログ集積回路
複合製品
セキュリティチップ
脚注
注釈
出典
参考文献
関連項目
外部リンク
「LSI」の例文・使い方・用例・文例
- A社が開発した通信制御用のLSIは、複数の通信規格に対応している。
- 記憶容量が1メガビットを超える超LSI
- 絶縁体の結晶基板上にシリコンのICやLSIをのせて作る素子
- 半導体LSIを作る際,基本となる論理ゲートを基板上に配列しておき,注文に応じて配線設計する技術
- 超LSIの記憶容量がメガビットの桁になった時代
- 水溶性フォトポリマーという,LSI製造に使用される物質
- 第四世代コンピューターという,超LSIを使ったコンピューター
- LSI技術がもたらした新しい生活文化
- 半導体チップ,LSIを中心とする技術
- LSIなど半導体技術の進歩によってもたらされた第二次情報革命
- コンピューターの中央処理装置部をLSI化したもの
- トランジスタ10万個以上の能力をもつLSI
- ワンチップマイクロコンピュータという,一つのLSIチップ上にその要素を集積した完全なマイクロコンピュータ
- LSIのページへのリンク