防衛戦術とは? わかりやすく解説

防衛戦術

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/16 17:00 UTC 版)

硫黄島の戦い」の記事における「防衛戦術」の解説

栗林防御戦術は、日本軍全体島嶼防衛戦術転換前に考案していた「後退配備沿岸撃滅主義」が基本路線であったが、海軍との計算づくの妥協もあって一部水際にも陣地構築しており、いわば「水際撃滅」とのハイブリッド戦術とも言える具体的には「水際自動火器歩兵を置き、主力北方摺鉢山配置する海岸上陸して隠れる場所のない敵上陸部隊に対して火砲ロケット砲集中させて殲滅し、それでも敵が前進してくれば、日本軍はゆっくり後退しながら主陣地よりの砲撃によって大打撃与え続ける」というものであったアメリカ海軍公式戦史を記述した歴史家サミュエル・モリソンはその著書で「硫黄島防御配備は、旧式な水際撃滅戦法と、ペリリュー上陸レイテ島上陸リンガエン湾上陸試みられ新し縦深防御戦術との両方利点共有したものとなった」と栗林戦術評した栗林部下将兵徹底した作戦方針以下の通りアメリカ軍位置露見することを防ぐために、日本軍火砲上陸準備爆撃の間は発砲行わないアメリカ艦艇対す砲撃行わない上陸された際、水際では抵抗行わない上陸部隊が一旦約500m内陸進んだならば、元山飛行場付近に配置した火器による集中攻撃加え、さらに、海岸北へ元山から、南へ摺鉢山から砲撃加える。 上陸部隊可能な限り損害与えた後に、火砲千鳥飛行場近く高台から北方移動する火砲摺鉢山斜面元山飛行場北側高台の、海上からは死角となる位置巧みに隠蔽され配置された。食糧弾薬持久抵抗に必要となる2.5か月分が備蓄された。 1945年1月発令され最終作戦は、陣地死守強力な相互支援要求したもので、従来攻撃偏重日本軍戦術転換するものであった兵力大幅な損耗に繋がる、防護された敵陣地への肉弾突撃突撃厳禁された。 また、栗林は自ら起草した敢闘ノ誓』を硫黄島守備隊全員配布し戦闘方針徹底するとともに士気維持にも努めている。 一 我等全力ヲ奮テ本島ヲ守リ抜カン我等爆薬ヲ抱イテ戦車ニブツカリ之ヲ粉砕セン我等挺進敵中ニ斬込ミ敵ヲ皆殺シニセン 一 我等一發必中射撃ニ依ツテ敵ヲ打仆サン我等ハ敵十人ヲ斃サザレバ死ストモ死セズ 一 我等最後一人トナルモ「ゲリラ」ニ依ツテ敵ヲ悩マサン 特に最後の「一 我等ハ敵十人ヲ斃サザレバ死ストモ死セズ」と「一 我等最後一人トナルモゲリラニ依ツテ敵ヲ悩マサン」は、長期持久戦隷下将兵徹底させる旨の一文であり、この誓い実際戦闘生かされることとなる。 さらに陣地防御持久戦重要視した実践的指導として、同じく栗林起草配布した『膽兵ノ戦闘心得』では以下のように詳述している(膽兵の「膽」とは第109師団兵団文字符)。 戦闘準備十倍敵打チノメス堅陣トセヨ 一刻ンデ空襲中モ戦闘中二 八ヨリ襲フモ撃テル砦トセヨ 火網隙間ヲ作ラズニ 戦友倒レテモ 三 陣地ニハ糧トトヲ蓄ヘヨ 烈シキ砲爆、補給ハ絶エル ソレモ覚悟準備ヲ急ゲ 防御戦闘猛射デ米鬼ヲ滅スゾ 腕ヲ磨ケヨ一発必中近ヅケテ 二 演習ノ様ニ無暗突込ムナ 打チノメシタ隙ニ乗ゼヨ 他ノ敵弾ニ気ヲツケテ 三 一人死ストモ陣地ニ穴がアク 見守ル工事地物ヲ生セ 擬装遮蔽ニヌカリナク 四 爆薬デ敵ノ戦車ヲ打チ壊セ 敵数人戦車ト共に コレゾ殊勲ノ最ナルゾ 五 轟々戦車ガ来テモクナ 速射戦車デ打チマクレ 六 陣内ニ敵ガ入ツテモ驚クナ 陣地死守シテ打チ殺セ 七 広クマバラニ疎開シテ 指導掌握ハ難カシインデ幹部ニ握ラレヨ 八 長倒レテモ一人陣地ヲ守リ抜ケ 任務第一 勲ヲ立テヨ 九 喰ワズ飲マズデ敵撃滅頑張武夫マズ眠レヌトモ 十 一人ノ強サガ勝ノ囚 苦戦ニ砕ケテ死ヲ急グナヨ膽ノ兵 十一 一人デモ多ク倒セバ遂ニ勝ツ 名誉ノ戦死十人シテネルノダ 十二 負傷シテモ頑張リ戦ヘトナルナ 最後ハ敵ト刺シ違ヘ 防御準備最後の数か月間、栗林中将は、兵員建設作業訓練との時間配分腐心した訓練により多く時間を割くため、北飛行場での作業停止した12月前半作戦命令により、1945年2月11日防御準備完成目標日とされた。12月8日アメリカ軍航空部隊硫黄島に800tを超える爆弾投下したが、日本軍陣地には損害をほとんど与えられなかった。以降アメリカ軍のB-24爆撃機がほぼ毎晩硫黄島上空現れ航空母艦巡洋艦小笠原諸島頻繁に出撃した。頻繁な空襲作業妨害され守備隊眠れぬ夜続いたが、実質的に作業進行が遅れることはなかった。1月2日十数機のB-24爆撃機千鳥飛行場空襲損害与えたが、栗林中将応急修理600名を超える人員と、11台の自動貨車および2台のブルドーザー投入し飛行場をわずか12時間後に再び使用可能とした。飛行場確保固執する海軍要請により飛ばす飛行機も無いのに行われた飛行場修復を、のちに栗林中将戦訓電報批判している。 1945年1月5日市丸少将指令所海軍の上将校集めレイテ沖海戦連合艦隊壊滅したこと、そして硫黄島間もなくアメリカ軍侵攻を受けるだろうという予測伝えた2月13日海軍偵察機サイパンから北西移動する170隻のアメリカ軍大船団・艦隊発見する小笠原諸島日本軍全部隊に警報出され硫黄島迎撃準備整えた。 なお、硫黄島守備隊映像ニュース映画)である日ニュースで2回報道されている。「第246号」(「戦雲迫る硫黄島」2分36秒。他3本1945年2月20日公開)では、2月16日頃にアメリカ軍が行った硫黄島空襲対し迎撃対空戦闘を行う海軍部隊様子が。「第247号」(「硫黄島」3分14秒。他2本。3月8日公開)では、硫黄島神社揃って参拝する陸海両軍軍人・木から滴るを瓶で集めて飲料水化・地熱温泉利用する飯盒炊爨など、硫黄島における将兵日常生活、また一〇〇式火焔発射機による火焔攻撃戦車26連隊九七式中戦車改九五式軽戦車仮想敵とした肉薄攻撃など、戦闘訓練模様撮影されていると同時に、「前線指揮所に、敵必殺策を練る我が最高指揮官栗林陸軍中将」とのナレーションのもとわずか数秒足らずではあるものの、両ラペル中将襟章(昭18制)を付した開襟シャツ姿の栗林中将鮮明な映像収められている。

※この「防衛戦術」の解説は、「硫黄島の戦い」の解説の一部です。
「防衛戦術」を含む「硫黄島の戦い」の記事については、「硫黄島の戦い」の概要を参照ください。

ウィキペディア小見出し辞書の「防衛戦術」の項目はプログラムで機械的に意味や本文を生成しているため、不適切な項目が含まれていることもあります。ご了承くださいませ。 お問い合わせ



英和和英テキスト翻訳>> Weblio翻訳
英語⇒日本語日本語⇒英語
  

辞書ショートカット

','','','','','','','','','','','','','','','','','',''];function getDictCodeItems(a){return dictCodeList[a]};

すべての辞書の索引

「防衛戦術」の関連用語










防衛戦術のお隣キーワード
検索ランキング
';function getSideRankTable(){return sideRankTable};

   

英語⇒日本語
日本語⇒英語
   



防衛戦術のページの著作権
Weblio 辞書 情報提供元は 参加元一覧 にて確認できます。

   
ウィキペディアウィキペディア
Text is available under GNU Free Documentation License (GFDL).
Weblio辞書に掲載されている「ウィキペディア小見出し辞書」の記事は、Wikipediaの硫黄島の戦い (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。

©2025 GRAS Group, Inc.RSS