じゅうすい‐ろ〔ヂユウスイ‐〕【重水炉】
重水炉(Heavy Water Reactor : HWR)
【重水炉】(じゅうすいろ)
原子炉のうち、減速材として重水(重水素と酸素の化合物)を使うもの。
重水は中性子を吸収しづらいため、核燃料として天然のウラニウムなどを使うことができる。
しかし大量の重水を用意することは難しく、また使用後の重水は三重水素(トリチウム)を含むため処理の困難な放射性廃棄物となってしまうといった問題点がある。
また、軽水炉に比べてプルトニウムを生成しやすいことから、使用国に核兵器開発の疑惑が持たれることがある。
カナダなど一部の国では原子力発電所に用いられているが、世界的に見れば軽水炉ほど一般的ではない。
これはCANDU炉と呼ばれ、重水が一次冷却水を兼ねる加圧水型の重水炉である。
一方、日本では減速材に重水を、冷却材に軽水を使う新型転換炉が研究され、実験炉「ふげん」が運用されていた。
これは重水の使用量を節約することでコストの低減を図り、さらに核燃料としてプルトニウム混合燃料(MOX燃料)を使用できるようにしたものである。
しかし重水と軽水で個別に循環路を設けるなど機構が複雑なため期待されたほどのコスト低減はできず、また軽水炉でMOX燃料を使うプルサーマルの技術開発がすすんだこともあり、開発中止されている。
重水炉
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/08/14 22:51 UTC 版)
重水炉(じゅうすいろ、HWR: Heavy Water Reactor)は、減速材に重水を用いる原子炉のこと。加圧水型がほとんどであり、特にPHWR(Pressurized Heavy Water Reactor)とよばれる。
重水は高価で、高速中性子の減速能力は軽水に劣る。しかし、中性子吸収量が小さく(軽水の300分の1)減速材として優れており、燃料として安価な天然ウランを使用できる。このため、天然ウラン資源が豊富なカナダが開発に取り組み、1960年代に重水減速重水冷却圧力管型炉(CANDU炉)を実用化した。
現在商業運転されている重水炉は全てこのCANDU炉およびその発展型であり、2010年1月末現在、運転中43基、建設中7基、計画中4基[1]となっている。
主な重水炉
- CANDU炉(圧力管型加圧重水冷却重水減速炉)
- インド型圧力管型重水炉(圧力管型加圧重水冷却重水減速トリウム系燃料炉) - トリウム燃料サイクルを利用している商用動力炉。インドがCANDU炉を発展させてできたもの。
- 圧力容器型重水炉[2] - アルゼンチンで休止中および建設中[3]の、軽水炉と構造が近い商業炉
- 新型転換炉(圧力管型沸騰軽水冷却重水減速炉) - 日本が開発したふげん(ATR)
- ガス冷却重水炉(重水減速炭酸ガス冷却炉)
特徴
- 濃縮していない天然ウランが利用できる
- ウラン燃料炉の場合は、核兵器の製造に適する(核拡散防止に不利)
- 重水が大量に必要
- 発電炉ではトン単位で使用しなければならない重水は、天然水中に微量(0.015574%)しか存在せず、高価である。1968年の記録にはポンド当り28.5USドル(2,250円/100g)とあり、2004年現在、試薬用の純度99%の重水は15,000円 / 100gである。
- 重水の純度維持が必要
- 減速材である重水の濃度は効率に直結し、濃度管理が必要となる。原子炉級重水は濃度99.75wt%以上が要求されるが、運転中に中性子を吸収して放射性のトリチウムが生成したり、冷却材が軽水の場合はこれが混入するなどして濃度が低下(劣化重水)するので、再濃縮プラントを併設する必要がある。
- トリチウムの発生
脚注
- ^ https://atomica.jaea.go.jp/data/detail/dat_detail_02-01-01-05.html 財)高度情報科学技術研究機構
- ^ https://atomica.jaea.go.jp/data/detail/dat_detail_03-02-05-02.html
- ^ es:Central_nuclear_Atucha
関連項目
炉型
重水炉
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2017/11/13 05:22 UTC 版)
重水炉には以下の炉型がある。 カナダ型加圧重水炉(CANDU) 重水減速軽水冷却炉(SGHWR) 新型転換炉はこれの一種。 ガス冷却重水炉(GCHWRまたはHWGCR)
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重水炉と同じ種類の言葉
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