蒸気機関の製造
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2014/05/26 22:58 UTC 版)
会社は引き続き繊維産業に関する業務を行っていたが、マレーはこの頃から、蒸気機関の設計の改良について検討を始めていた。蒸気機関をより簡潔で軽く、コンパクトなものにしたいと考えていた。また、蒸気機関をそれ自体で完結したものにして、設計通りの精度で現場で簡単に組み立てることができるようにしたいと考えていた。既存の多くの機関は、組み立て時の低い精度のせいで多くの問題があり、修正するのに多大な努力が払われていた。マレーが直面した問題は、ジェームズ・ピッカード (James Pickard) が蒸気機関の往復運動をクランクとフライホイールを使って回転運動に変換する方法の特許を既に取得していたことである。マレーは、内側回転式の歯車を導入することでこの問題を巧妙に回避した。この方法では、内側に歯のある大きな固定リングを使用している。このリングの内側に沿って、外側リングの直径の半分の大きさの小さな歯車が、歯車のリムに取り付けられた蒸気機関のピストンロッドに動かされて回転する。ピストンロッドは前後に直線運動するので、この直線運動は歯車の回転運動に変換される。歯車の軸受けがフライホイールの軸に取り付けられたクランクと接続されている。この内側回転式の歯車を利用することで、従来のものよりコンパクトで軽い機関を作ることができた。しかしマレーは、ピッカードの特許の期限が切れるとこの方式を使わなくなった。 1799年、ボールトン・アンド・ワットで働いていたウィリアム・マードックが、D型スライドバルブ (Slide valve) と呼ばれる新型の蒸気弁を発明した。これは前後にスライドすることによってシリンダーに蒸気を供給するものである。マレーは、蒸気機関の回転軸に接続したエキセントリックによってスライドバルブを駆動するように改良した。 マレーはまた、ボイラーの蒸気圧に応じて自動的に火室のドラフトを調整する装置や、火室に自動的に燃料を供給するホッパーなどの特許を取得した。マレーは、蒸気機関においてピストンを水平方向に設置した最初の人物である。マレーは従業員の高い技量を期待し、フェントン・マレー・アンド・ウッド社はとても高い精度の機械を生産した。マレーはスライドバルブの表面を滑らかに削るための特別な平削り盤を設計した。この機械は鍵の掛かった部屋に保管され、一部の従業員のみこれを使うことが許されていた。
※この「蒸気機関の製造」の解説は、「マシュー・マレー」の解説の一部です。
「蒸気機関の製造」を含む「マシュー・マレー」の記事については、「マシュー・マレー」の概要を参照ください。
- 蒸気機関の製造のページへのリンク