脱窒のしくみ
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/02/23 02:56 UTC 版)
通性嫌気性従属栄養細菌は分子状酸素が十分に存在する環境では好気性細菌と同じ好気呼吸を行い、酸素で有機物を代謝して生育、増殖する。環境が変化し酸素が乏しくなると、どちらも嫌気呼吸を行うが、通性嫌気性細菌は好気性細菌よりも効率よく対応できる(絶対好気性生物は短時間で死滅) ただし好気性細菌は内生呼吸同様の自己分解状態で、資化や増殖が著しく制限される。一方、発酵を行える嫌気性細菌では資化増殖ともに可能だが、好気呼吸時より著しく効率が悪くなる。 このとき硝酸イオンが存在すれば、硝酸還元菌は硝酸塩呼吸を行い、優位に立てる。硝酸塩呼吸のエネルギー効率は好気呼吸の約半分だが、内生呼吸や発酵に比較すれば圧倒的に有利だからである。 多種の硝酸還元菌が腸内細菌や醸造酒、発酵食品の製造過程などに存在するが、大部分は亜硝酸を還元する能力を持たない。生存競争で優位に立つには硝酸還元能のみで十分で、複雑な硝酸塩呼吸の全代謝系を備えるに至らなかったものと思われる。 硝酸還元菌が生成した亜硝酸イオンは脱窒菌が共存すれば吸収され、脱窒の一部と見なせる。同じ理由で硝化において亜硝酸細菌が優勢で硝酸まで酸化が進んでいなくとも、脱窒は進行する。ただし大腸菌などの腸内細菌には亜硝酸を還元するにあたって窒素ではなくアンモニアにしてしまう非脱窒型の代謝を行うものがあり、これは除かれる。
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