縦置きエンジン
自動車の前後中心線に対して、並行にクランク中心線をもつようにエンジンを搭載する方式。または、車両中心線と並行に搭載するように設計されたエンジン。縦置きエンジンの搭載位置はおおむねフロントで、後輪もしくは4輸を駆動する場合が多い。かつてのルノー5やアウディ(現行モデルも)のように前輪を駆動する例や、リヤやミッドに搭載して後輸を駆動する例もある。横置きエンジンに比べて、レイアウト上の制約が少ないことから、シリンダー配置(直列、V型、水平対向)や気筒数の自由度が大きい。ただし、近年は衝突安全性を高める必要から、クラッシャブルゾーンの確保に不利な全長の長いエンジンは敬遠される傾向にある。
縦置きエンジン
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/02/21 14:03 UTC 版)
自動車工学において、縦置きエンジン(たておきエンジン、英: Longitudinal engine)は、クランクシャフトが車両の長軸、前後方向に沿って配置されている内燃機関である[1][2]。英語では進行方向を地図の北に見立ててnorth-south engine(ノース=サウス・エンジン)という言い方も広く用いられる[3]。
四輪自動車の縦置きエンジン
横置きでは車幅が足りず収まりきらない、直列6気筒や90度大口径V型8気筒といった大型エンジンを収めるための置き方である。一般的にはトラック(貨物自動車)を含め、フロントエンジン・後輪駆動(FR)のレイアウトの自動車に使われる。この場合はプロペラシャフトとセットになる。
同じ後輪駆動でも、リアエンジン(RR)やミッドシップ(MR)エンジンでは、小さくまとめたい等の理由で横置きすることが多い[注釈 1]。
フロントエンジン・前輪駆動配置のいわゆるFF車は横置きが多数派であるが、乗り心地や運動性能にこだわったり、四輪駆動の派生モデルを考慮しているメーカーや車種(例えば欧州のメーカーであればアウディやサーブ、日本のメーカーであれば水平対向エンジンを多く搭載しているSUBARUやFFミッドシップレイアウトを採用したホンダ車)では縦置きした車もある。FF車ではエンジンを縦置きにすることで左右のドライブトレーンの長さが均等になり、トルクステアを防止することができるため走行性能の向上に寄与できる。一方で縦に空間が必要なため、FFの美点である広い居住空間が削られてしまうという欠点もある。
縦置きエンジンを搭載した車は大抵最小回転半径が横置きエンジン車よりも小さい。これはエンジンの側方により広い空間が存在し、大きなタイヤ切れ角が得られるからである。
縦置きを採用したFF車の例
オートバイの縦置きエンジン
オートバイでは、使用される種類は駆動方式に依存する。チェーンまたはベルトドライブの場合は大抵横置きエンジンが使われ、シャフトドライブの場合は縦置きエンジンが使われる。
オートバイにおける縦置きエンジンは、「トルクリアクション」と呼ばれる弱点がある。これはクランクシャフトの境目(tipping point)が、加速した時にジャイロ効果を発生し、車体全体が傾く現象である。これは、ジェネレーターやギアボックスといった一部のコンポーネントをクランクシャフトと逆方向に回転させることによって部分的に解消することができる。ただしこれを縦置きの「味」であると考える好事家もいる。
またオートバイは差動機構が不要なため、回転方向を90度変えるためのかさ歯車を採用する場合もある。
縦置きエンジンの種類
これは自動車に搭載できるエンジンの種類の典型例のリストである。
- 直列エンジン - 2気筒、3気筒、4気筒、5気筒、6気筒、8気筒。
- V型エンジン - V2、V4、V6、V8、V10、V12、V16。
- 水平対向エンジン - フラット2、フラット4、フラット6、それ以上も。
- W型エンジン
脚注
注釈
出典
- ^ Pickerill, Ken (Jun 26, 2009). “Glossary”. In Main, Larry. Automotive Engine Performance. Today's Technician (5th ed.). Clifton Park, NY USA: Cengage Learning. p. 464. ISBN 978-1-43544-520-8. "Longitudinal engine mounting An engine mounted lengthways in the chassis."
- ^ Duffy, James E.; Scharff, Robert (Mar 1, 2003). “Chapter 2: Vehicle Construction Technology”. In Clark, Sandy. Auto Body Repair Technology (4th ed.). Clifton Park, NY USA: Cengage Learning. pp. 25–26. ISBN 0-7668-6272-0. "A longitudinal engine mounts the crankshaft centerline front to rear when viewed from the top."
- ^ MotorFan編集部 (2018年12月31日). “エンジン縦置き/横置きってどういうこと? それがわかれば、チェーンを装着するのが、前輪か後輪かがわかる。スバルのAWDは?”. Motor-Fan.jp. 2022年10月24日閲覧。
縦置きエンジン
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/15 03:46 UTC 版)
横置きが主流となる中で縦置きレイアウトにこだわり続けるメーカーも存在し、アウディとSUBARU(旧・富士重工業)がよく知られている。両社は四輪駆動車を付加価値としているため、四輪駆動化が容易な縦置きレイアウトを積極的に採用しているものである。両社ともエンジンの後方に前車軸を跨ぐようにしてトランスアクスルを配置するレイアウトを採っているが、このような構造は後輪駆動車をベースに四輪駆動としたものと比較して、独立したフロントデフケースおよびトランスファーとフロントデフを連結するプロペラシャフトを必要としない為、部品点数を少なくできるメリットも存在する。 過去にはトヨタ自動車(ターセル及びコルサ)、ルノー、サーブ・オートモービルなどが1980年代前半まで縦置きの前輪駆動車を製造していたが、それらの車種もその後継車種ではすべて横置きレイアウトに変更された。 アメリカ車では1966年のオールズモビル・トロネードが、V型8気筒エンジンとトランスミッションを平行に配置して縦置きするユニタイズド・パワーパッケージと称する手法を採用した。エンジンとトランスミッション間の駆動力は大容量の特殊なチェーンドライブにて伝達され、トランスミッションに直付けされたフロントデフにより前車軸へ駆動力が伝達される。この方式は、ゼネラルモーターズ内の他部門における後輪駆動車向け量産オートマチックトランスミッション(AT)を、内部構造はほぼそのままに流用できるという利点があった。トロネードはAT専用車とすることでチェーンドライブ部分の構造を簡素化し、後輪駆動車より遥かにコンパクトなパワートレインの実現に成功した。同様の構造は1973 - 78年のGMC・モーターホーム(英語版)、1967年以降のキャデラック・エルドラド(英語版)、1979年以降のビュイック・リヴィエラでもほぼそのままの形で採用され、トロネードのエンジンが横置き式に変更される1986年まで存続していた。
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