絶対格
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2015/08/14 09:03 UTC 版)
絶対格(ぜったいかく、absolutive case)とは、格の一つであり、能格言語(能格的な格配列の言語)において自動詞文の主語(自主)と他動詞文の目的語(他目)が取る格がこう呼ばれる[1][2]。
ごくわずかの例外を除いて、絶対格は形式的にも機能的にも無標である[3]。つまり、他の格形式の元になる形であり、名詞の引用形式として用いられる。
名称
能格言語における自主と他目の格を最初に absolutive(絶対格)と呼んだのはエスキモー語の研究者で、20世紀後半にはこの呼称が一般的になった[2]。それ以前は nominative(主格)と呼ばれており、現在でもそう呼ばれることがある[2][4][注釈 1]。すでに廃れたものとしては、casus passivus (Jespersen 1924: 166) や casus indifferens (Pilhofer 1933: 44) という呼び方も存在した[2]。
注釈
出典
参考文献
- Bickel, Balthasar and Johanna Nichols (2011) Case marking and alignment. In: Malchukov & Spencer (eds.), 304-321.
- Dixon, R. M. W. (1994) Ergativity. Cambridge: Cambridge University Press.
- Haspelmath, Martin (2011) Terminology of case. In: Malchukov & Spencer (eds.), 505-517.
- Jespersen, Otto (1924) The philosophy of grammar. London: G. Allen & Unwin.
- König, Christa (2011) Marked nominative. In: Malchukov & Spencer (eds.), 535-548.
- Malchukov, Andrej and Andrew Spencer (eds.) (2011) The Oxford handbook of case. Oxford: Oxford University Press.
- Pilhofer, Georg (1933) Grammatik der Kâte-Sprache in Neuguinea. Berlin: Remier.
- 角田太作 (2009)『世界の言語と日本語:言語類型論から見た日本語』改訂版. くろしお出版.
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絶対格
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まず絶対格は叙述名詞や自動詞、他動詞の主語、また他動詞の目的語を表す。 例: wíst γ-cítx° グロス: 高い abs-家 訳: 「家が高くそびえ立っている」 また、絶対格は所有表現の2番目の要素としても現れる。 例: cítx°-s γ-k°úk°py̓ グロス: 家-3poss abs-首長 訳: 「首長の家」 この例では「被所有物-所有者」の語順となっており、Dryer (2013f) はこの例が含まれている Kuipers (1974:78) のほか p. 95 も根拠として、属格と名詞との順に関しては、シュスワプ語では「名詞-属格」の順が優勢であるとしている。しかし、p. 78 にはそれとは対照的に以下のような「所有者-被所有物」の順の例も挙げられている。 例: t-k°ósw γ-sq̓°éx̌t-s グロス: rel-豚 abs-足-3poss 訳: 「豚の足で/と共に」すなわち「ハム」
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