絵画技法
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2016/07/19 13:51 UTC 版)
板絵の技法は、チェンニーノ・チェンニーニ (en:Cennino Cennini) が1390年に著した『絵画術の書 Il libro dell' arte』などによって、現在まで伝わっている。数世紀にわたって修正が加え続けられてはいたが、概して面倒で精密な工程が必要だった。 木工細工師が場合によっては複数枚の丈夫な板を組み合わせて、必要な大きさの板を構成する。通常柾目の板が好まれ、木材外側に近い白木質の部分は取り除かれた。イタリアではよく乾燥したポプラ、柳、セイヨウボダイジュがよく使われた。板を平らにしてヤスリがけを行い、大きさや形の必要に応じて複数の板をつなぎ合わせる。 動物の皮から抽出した膠と樹脂との混合物を板に塗り、リンネルを貼り付ける。この作業は熟練した職人かあるいは画家自身が担当する作業だった。 十分に膠を乾かした後、ジェッソ(下塗りに用いる地塗り剤 (en:Gesso))を重ね塗りする。重ね塗りするたびにヤスリがけを行い、絵画制作に必要とされる滑らかで堅い象牙のような表面を得るまでに、ときには15層のジェッソを重ね塗りすることもあった。この工程は16世紀以降は必須のものではなく、もっと暗い色調の地塗り剤が使用されることもあった。 板の下準備が完了すると、多くの場合木炭で下絵が描かれた。彩色に古代で多く使用されたのはエンカウスティークで、溶融した蜜蝋を絵具として使用する絵画技法だった。この技法は10世紀末に展色剤に鶏卵を用いたテンペラの発展とともに見られなくなる。テンペラは絵具と鶏卵の調合液を使って細い筆で描く技法で、細部の表現に優れていた。テンペラはエンカウスティークと同様にすぐに乾き、失敗した場合に挽回することが難しかったため、筆使いには細心の注意が必要とされた。しかしこの難しい技法がより細密な自然描写や新しいスタイルを生み出していくことになる。 15世紀初めに油彩が発明された。油彩はテンペラよりもさらに扱いやすく、初期フランドル派の画家たちの作品に見られる、それまでにない緻密な絵画表現を可能にした。油彩では非常に複雑な幾層もの重ね塗りやぼかし表現が可能だったが、下層が未乾燥で思い通り描けないという事態を避ける場合には、大抵二日以上かけて乾燥させる必要があった。
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