機略戦
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2019/03/06 17:33 UTC 版)
機略戦(Maneuver warfare)は、機動戦コンセプトに心理的側面を加味したものである。その要諦は、機動の速度と意思決定の速度の優越によって敵の先手を打ち、不利な態勢を強要して、戦闘を続行する意思を喪失させることにある。 通常、軍隊組織においては、上級司令部に意思決定を委託して、大掛かりなOODAループが形成される。これに対し、機略戦コンセプトを採択した軍隊においては、このような在来型意思決定モデルに対して速度面の優越を確保するため、各階梯での個々のOODAループの形成が奨励される。すなわち、下級指揮官が自主的に意思決定を行うことにより、上級司令部の指示を仰ぐ時間を省いて、情勢変化に対して迅速に対処できるようにするのである。 古典的な機略戦コンセプトにおいては、意思決定の速度の多くが、下級指揮官の自主性と大胆さに依存しており、下級指揮官が常に正しい意思決定を行える保証はなく、作戦の円滑な遂行は、高度の訓練と多分の運にかかっていた。このことから、アメリカ軍は、高度のC4Iシステムによって各階梯で情報共有を実現することで、各級指揮官の意思決定を確実ならしめるシステムを構築している。これは、ネットワーク中心の戦い(NCW)コンセプトに組み込まれ、全軍で採択されている。 ただし、NCWコンセプトは、高度C4Iシステムへの接続が断たれた場合、遂行することができなくなる。このことから、イラク戦争においては、状況に応じて機略戦コンセプトに立ち返っての戦闘指導がなされたことが報告されている。
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