条件関係
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/09/02 03:44 UTC 版)
条件関係とは、行為が、結果に対する条件として、事実としてつながっている関係である。条件関係とは、行為と結果の関係の(比較的)事実的な判断である。 その判断方法として、伝統的には、「その行為がなかったならば、結果も存しなかったであろう」といえるかどうかという判断方法によるとされてきた。これは標語的に「『あれ[行為]なければ、これ[結果]なし』の判断」、あるいは、ラテン語から「conditio sine qua non公式(略してc.s.q.n.公式とも)」と呼ばれている。 しかし、「『あれ』を取り去ると『これ』が消える」ことから「『あれ』と『これ』に因果関係がある」ことを推論するのは因果関係を前提としてしかできない論理の飛躍である(「あれ」と「これ」との存在・消滅に同時性がある理由としては、二者が第三の要素と関係があるからにすぎないとか偶然に過ぎないという事態を排除できない)、といった理論的批判のほか、以下のような種々の事例のうちいくつかを説明するには大きな修正が必要である、といった批判が指摘されるようになった。 こうしたことから、むしろ「あれあればこれあり」といえるような、行為から結果に到るまでの経過を逐一自然法則で吟味しながら追いかけていくべしとする立場がエンギッシュによって提唱された。これを合法則的条件関係説という。 条件関係の問題とされる、因果関係に関する事例 因果関係の断絶同一の結果に向けられた先行条件がその効果を発揮する以前に、それと無関係な後行条件によって結果が発生した場合に因果関係を認めるかという問題である。 結論として一般に条件関係は否定される。 例 XがAを毒殺しようとして毒を飲ませたが、毒が回る前にAが自殺した場合にXに殺人罪が認められるか。 仮定的因果経過現にある行為が発生しているが、仮にその行為がなかったとしても、別の事情から同じ結果を生じたであろうと見られる場合をいう。 例 死刑執行時の執行官がボタンを押そうとしたときに、遺族が執行官を押しのけて自らボタンを押し死刑囚が死亡した場合。(遺族の行為がなくとも、執行官の行為によって死刑囚は死亡したはずと仮定し、遺族の行為と死刑囚の死亡に因果関係を認められないのではないか) 重畳的(ちょうじょうてき)因果関係条件関係を肯定するが、相当因果関係を否定する説が有力である。 択一的競合行為を全体的に考察し、条件関係の公式を修正して条件関係を肯定するのが多数説といえる。 例 A,Bの2人の人間が独立にそれぞれCのコーヒーに致死量の毒を入れて死亡させたときにA,Bはそれぞれ殺人罪となるのか。 不作為犯の因果関係条件関係を肯定するのが通説である。 疫学的因果関係条件関係を肯定する説が有力である。 因果関係中断論特異な介在事情があるときに、条件説を採ったときに因果関係を否定するための理論である。相当因果関係説を採る場合は相当因果関係の特殊事情の問題とすれば足りる。 例 Aを殺害しようとしてナイフで刺したところ、致命傷に至らず、救急車で病院へ運ばれる途中で救急車が事故に遭い、Aが死亡した場合。
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