擁護論
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/01/01 05:47 UTC 版)
「ユディカ・コルディーリア兄弟」の記事における「擁護論」の解説
詳細は「失われた宇宙飛行士(英語版)」を参照 それでも、兄弟の音声記録はソ連に批判的な陰謀論者や反共主義者などを中心に、西側諸国で少なからぬ支持を得るに至り、特にトーレバート録音は「失われた宇宙飛行士」の代表例として、50年以上が経過した現在も一定の支持者が存在し続けている。オバーグによると「失われた宇宙飛行士」の俗説は、1958年にヘルマン・オーベルトがカプースチン・ヤールにおける弾道飛行実験の死亡事故の噂として著作に記述した事が始まりで、その後米国社会に陰謀論として広く膾炙されるようになったのは1967年のアポロ1号の死亡事故以降であるとしており、そのうちの一つとしてトーレバート録音も大きな注目を集めたという。 コラブリ・スプートニクなどのソ連の初期の宇宙開発の特異な点であった、「秘密裏に複数の技術開発を行いながら多数の宇宙計画を実行し、成功したもののうち軍事機密に抵触しないものにのみ計画番号を与え、西側世界に公表する。(つまり、成功すらも隠す事例が珍しくなかった)」という、計画責任者以外には全容の把握すら難しいとされた秘密主義的な体制や、ニコライ・エジョフの如く「存在を消された」ネルユボブのような飛行士候補生や、人間と見紛うほど精巧に作られた「宇宙飛行士」のイヴァン・イヴァノヴィチ (ボストーク計画)(英語版)のような存在が実在した事なども、学術的に論破された陰謀論めいた説でも一定の支持層が存在し続ける一因ともなっている。 兄弟の西側メディアへの登場は1965年以降下火となり、兄弟自身も1969年に発足したAMSAT(英語版)にも参加することなく、アマチュア無線の世界から去っていったため、1970年代以降はニーノ・ロー・ベロ(英語版)の配信で、北米の地方新聞に時折その事績が紹介される程度の存在となっていった。 兄弟に再び脚光が浴びせられたのは2004年、アメリカのジョバンニ・アブラテとイタリアのマリオ・アブラテにより、Webサイト「The Lost Cosmonauts」が開設された時である。2006年に兄弟は回顧録である『Dossier Sputnik. «.Questo il mondo non lo saprà.»』を、2010年には『Banditi dello spazio. Dossier Sputnik 2』を相次いで上梓、ネットユーザーを中心に再び彼らの過去の録音が注目されるようにもなった。しかし、かつて兄弟の事績を様々な観点で批判した専門家の間では、「兄弟が上梓した回想録には、過去に指摘された疑惑に対する明確な回答は一切なかった。」との失望の意見も呈された。 2008年、イギリスのジャーナリストであるクリス・ホリントンが兄弟を取材し、フォーティーン・タイムズ(英語版)に寄稿した記事によると、兄弟がイタリア・スイス両国で話題となった1960年代当時、ソ連はソ連国家保安委員会(KGB)のエージェントを接触させ、公然と兄弟の監視活動を行っていたという。このエージェントは後にロシア連邦の大使となっており、チェコ共和国で行われた匿名のインタビューにて、「ソ連は兄弟の行動に重大な関心を示しており、場合によっては暗殺も含む実力行使をも検討していたが、兄弟が純粋に子供じみた好奇心で活動を行っていたことや、後にテレビ番組を中心に兄弟が著名人となってしまったことから、彼らに危害が加えられることは無かった。」と語っている。兄弟に対するKGBの監視に対しては、イタリア政府も同国の諜報機関(英語版)であるSIFARのエージェントを派遣し、防諜と身辺警護を行っていたという。ホリントンはまた、兄弟が1964年にイタリアのクイズ番組であるフィエラ・デイ・ソーニ(イタリア語版)に出演して優勝し、優勝賞品として「アメリカ航空宇宙局への訪問」を希望し、同年2月26日に訪米しているが、この時兄弟と会見したSTADAN(英語版)とNASAの複数の技術者が兄弟の録音テープを聞き、驚嘆したとも記述している。 ホリントンの記事は、兄弟の擁護論者の多くが孫引きする資料ともなっているが、記事の中でも引用されたオバーグ自身は、ホリントンの記述の殆どが事実誤認や虚偽であるとも反論している。オバーグの反論の中には、KGBの要人暗殺に掛かる意思決定プロセスに関するホリントンの事実誤認の指摘が含まれている。KGBが監視対象人物の暗殺を検討するのは、「対象人物が西側諸国への亡命を決断した時のみ」であるといい、兄弟のように単なる好奇心でソ連に対する調査を行っているケースは対象外であると述べている。また、兄弟の1964年の訪米時に面会したとされるNASA職員についても、NASAの人事記録上に存在が確認できなかったとも述べている。 なお、アマチュア無線の分野では、兄弟が残した大きな功績として「事績の真偽はともかくとして、人々、とりわけ子供たちの電子工作や無線通信への興味を大きく掻き立て、結果として欧州におけるアマチュア無線人口の拡大に貢献した。」という評も残されている。 2011年9月28日には、アメリカのサイエンス・チャンネル(英語版)が『ダークマターズ(英語版)』第1シリーズ第5話にて、兄弟の事績を取り上げた。
※この「擁護論」の解説は、「ユディカ・コルディーリア兄弟」の解説の一部です。
「擁護論」を含む「ユディカ・コルディーリア兄弟」の記事については、「ユディカ・コルディーリア兄弟」の概要を参照ください。
「擁護論」の例文・使い方・用例・文例
- 擁護論のページへのリンク