後手角頭歩
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/10 06:35 UTC 版)
初手▲7六歩 △3四歩 ▲2六歩 に対して、△2四歩と突くのが後手角頭歩である。先手は飛車先を交換するために突いているので、▲2五歩と突くのが自然であるが、これには △同歩 ▲同飛 △8八角成 ▲同銀 △3三桂 と跳ねる(第6図)。 △持駒 角歩 ▲持駒 角歩第6図 △3三桂まで 先手は▲2一飛成か▲2三飛成が自然で、▲2一飛成の場合、△2二飛(12手目)とぶつける。これには▲同竜が最善であるが、もし▲1一竜と取った場合、△2九飛成 ▲1八角 △同竜 ▲同香 △4五桂が絶好で、先手は次の△5七桂不成と△4四角を同時に受けることが出来ない。飛車に紐をつけつつ2枚替えを狙った▲2一飛も冷静に△3二銀と躱しておいて後手が指しやすい局面になる。 12手目の△2二飛に▲同竜と取った場合に△同銀と取った時点で、後手が桂馬を跳ねる1手得をしている。以下、▲2三歩 △同銀 ▲2一飛 △3二銀 ▲1一飛成 △2三飛 と進む。先手は歩切れなので、▲3八銀の一手に△2八飛成と進み、後手は△1九竜、△4五桂、△4四角、△8四歩など指す手が多く、優勢となる。 第6図以下、▲2三飛成の場合でも、やはり△2二飛とぶつけ、▲3四竜と逃げるのは△4五角 ▲3五竜 △6七角成である。また▲同竜は先述の変化と同じなので、△2二飛には▲2四歩が工夫の一手で、以下△2三飛 ▲同歩成 △4五桂 ▲4八金 △6二玉と進み、先手は歩切れが解消出来ず、後手が指しやすい局面となる。 2016年9月・王位戦松本佳介対田中悠一でも同様の将棋があったが、△4五桂から▲2五飛△3五角に▲2四角△同角までの手で何か誤算があったのか、わずか20手で先手が投了している。 ▲2四歩 に △3二金 もあり、以下 ▲2二竜 △同銀 ▲2三角 には △3一金 (△2三同銀は ▲同歩成 △同金 ▲2一飛 △4一角 ▲3二銀)▲3四角成 △4五角 で、▲同馬 なら △同桂 ▲2三歩成 △同銀 ▲3五飛 △2二角 に、▲7七角 ならば △4四歩、で次に △5七桂不成 と △2七飛 の狙いが残る。一方で ▲7九角 ならば △4四歩 ▲4六歩 △2六飛 ▲2八歩 △4六飛 であるが、▲4三馬 ならば、△5二金 ▲4四馬 △6七角成 ▲7七桂△6四飛 で馬がどこに逃げても △4九飛成 から △6九飛成、他 ▲4五飛 ならば △8八角成、▲5八玉 ならば △2七飛 ▲2八歩 △2四飛成 ▲1五角 △同竜 ▲同飛 △5七桂成 ▲同玉 △2四角である。 第6図以下、成らずに▲2八飛と引いた場合、△2七歩 ▲同飛 △4五角 ▲2一飛成 △6七角成 ▲7九金 △2二飛 とやはり飛車をぶつける。先述の変化に加え、馬も出来ているので後手有利。 したがって、先手は飛車先交換をせずに▲6八玉や▲7八金と守っておくのが最善だとされていた。△8八角成 ▲同銀 △3三桂 に対しては ▲2三角 と打ち込まれてしまい、6七の歩を守っているために△4五角の返しが効かなくなる。しかし、2016年度第75期B級2組順位戦2回戦、田村康介対鈴木大介の一戦で、後手の鈴木が▲6八玉に対して、△5四歩と突く新手を見せた。その後、向かい飛車に構えて後手の主張が通った(結果は鈴木勝利)。しかし、プロ間での実践例が少ないために、研究があまり進んでいないのが現状である。 2017年度第76期C級2組順位戦10回戦、増田康宏対神谷広志の一戦でも上記と同様の将棋があった。千日手指し直しが起こり、後手となった神谷は△5四歩から向かい飛車に構えた。縺れた終盤で先手玉に即詰みが生じ、後手勝ちであったのだが、神谷はそれに気付かず投了してしまった。 対談:瀬川晶司六段×今泉健司四段「B級戦法は こんなに楽し」(『将棋世界Special 将棋戦法事典100+』(将棋世界編集部編、マイナビ出版)所収)でも△5四歩はなかなか優秀で、以下は角交換振り飛車のような将棋になるので今後増える可能性はあるかもしれないとしている。また角頭歩をやられたら自分らは▲2五歩を突いてみたいとし、2三のと金が働き出したらまずいから、後手も忙しいはずだとしている。 『トップ棋士頭脳勝負』では、▲7六歩△3四歩▲6六歩に後手が△2四歩とした局面を題材に読みを展開している。同書で取り上げるまでに実際に棋戦で2局指されており、後手側を持ったのは田村康介と近藤正和で、田村は敗戦した一方で近藤は持将棋となっている。ところが同書では渡辺明も 佐藤康光も、▲2六歩は6六歩を突いてしまっているので突きづらいとし、以下△4四角や△3三角に▲2五歩以下は前述の進行であるので、結局は▲7七角△3三角で相振り飛車になるのが妥当かつ自然としている。先手は6六歩を突いてしまうと、▲2六歩から▲2五歩は先手が損、なので先手は2五歩と突けないとしている。谷川浩司も、したがって、過剰に反応してもいいことがないので▲2六歩△3三角▲4八銀△2二飛で一局、もしくは▲4八銀△3三角▲6八玉△2二飛▲2六歩と普通に駒組するとしている。久保利明も、▲2六歩は特段後手が不利にはならない、相振り飛車ならばここで△3五歩や△3三角が多いが、△2四歩もそれらの手と同価値だとしている。広瀬章人は、▲2五歩が突けないとなると、最初から▲2六歩がどうかということになる、よって▲4八銀△3三角▲5六歩△2二飛▲2六歩で局面を収めるようにするとしている。
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