化学進化説
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/08/10 05:09 UTC 版)
「かつて地球上に生命が誕生するまでは地球上には有機物は存在しなかったはずなので、最初に生じたのは無機栄養微生物だったはずだ」と考えられていた時代があった。 だが、20世紀に入り、最初の生命の発生以前に有機物が蓄積していたはずだ、と考える学者が出てきた。これを最初に唱えたのはソ連のアレクサンドル・オパーリンで、1922年に著書『地球上における生命の起源』において「無機物から有機物が蓄積され、有機物の反応によって生命が誕生した」とする仮説を立てた。これを化学進化説と呼ぶ。彼の説は「スープ説」、「コアセルベート説」等とも呼ばれている。化学進化説は最も理解が簡明かつ、基本的な生命発生のプロセスであり、現在の自然科学でも広く受け入れられている。これらの細かなプロセスごとに様々な仮説が提示されているが、その基本は化学進化に依る。オパーリンの説による考察は以下の要点にまとめられる。 原始地球の構成物質である多くの無機物から、低分子有機物が生じる。 低分子有機物は互いに重合して高分子有機物を形成する。 原始海洋は即ち、こうした有機物の蓄積も見られる「有機的スープ」である。 こうした原始海洋の中で、脂質が水中でミセル化した高分子集合体(コアセルベート)が誕生する。 コアセルベートは互いにくっついたり離れたり分裂したりして、アメーバのように振る舞う。 コアセルベートが有機物を取り込んでいく中で最初の生命が誕生し、優れた代謝系を有するものだけが生残していった。 パスツール以降オパーリンがこの説を提唱するまで、生命の起源に関する考察や実験が行われたことはなく、生命の起源に対する化学的考察のさきがけとなった。この化学進化説を基盤として、生命の起源に関する様々な考察や実験が20世紀に展開されることとなる。なお、同説で論じられている初期の生命は有機物を取り込み代謝していることから、従属栄養生物であると考えられている(栄養的分類を参照)。 有機物の生成、蓄積を説明する実験や説としては、ユーリーとミラーによる実験に始まり、ジョン・バーナルらによる表面代謝説や、彗星からもたらされた、とする説などがある。
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