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Sunday, March 9, 2014

ウクライナの銀行のモスクワ子会社が突然中央銀行の管理下に

ウクライナの件で、多くの情報が飛び交っているが、先日、MHJ筆者の目を引いた記事があった。

ウクライナ最大で、銀行としての信用力も同国で最高の格付けを得ている Privatbank というのがある。それのモスクワ子会社 Moskomprivatbank が、突然、先週の木曜日、ロシアの中央銀行(Bank of Russia)の管理下に入った。正確には、同国の預金保険機構の管理下に入れられて、銀行業務のアドミニストレーションは同機構が行うことになった、ということらしい。

こちらが、Bank of Russiaが出したステートメント


管理に入らなければならない理由は、「倒産回避するため」。ステートメントには以下のようにある。(赤い太字は筆者)



In compliance with Federal Law No. 175-FZ, dated 27 October 2008, ‘On Additional Measures to Strengthen the Stability of the Banking System in the Period until 31 December 2014’, the Bank of Russia decided to implement measures aimed at preventing the bankruptcy of the Moscow-based Commercial Bank Moskomprivatbank, a closed joint-stock company, involving the Deposit Insurance Agency, a state-owned corporation (hereinafter, the Agency), and to assign the Agency with the provisional administration function with regard to Moskomprivatbank. Seeking to prevent the bankruptcy of Moskomprivatbank the Bank of Russia approved the Plan according to which the Agency will assess the financial standing of Moskomprivatbank.
 


このモスクワの銀行子会社だが、モスクワでの総資産は$1.4Billion、業務はリテール中心ということだ。

しかし、「リテール銀行の倒産」という、銀行業界隈では最悪とされている事態を視野に入れてる割りには、

① モスクワで取り付け騒ぎが起こっているという話がない
② 債務超過で資本注入が必要な状態にいるわけでもない
③ (倒産するかもしれないけど自己資本比率はバッチリだから)銀行ライセンスはそのまま
④ 業務は通常どおり(ただし、アドミは私企業からいきなりロシア政府)
⑤ ウクライナにいる親会社が「なんだとー!」と怒っている

という、極めて面妖な状況である。(冷汗ダラダラダラーー)



ふつうはですね、金融子会社がなんらかの財務的問題に直面し、それがその国(あるいは地域)の金融システムの安定性を脅かす恐れがある場合はですね、まず第一に、その子会社の親会社が資本注入するなり、保証出すなりして、その金融子会社の資本と流動性が枯渇しないよう手配するのが先決である。

その親会社もドツボにはまり子会社に対するサポート能力がなくなっていて、「ダメだこりゃ・・・・」という状況になってると判断されたら、そこでようやく、(国民のお金を預かっている)政府当局がバババーンと登場し、その金融機関にシステミック・サポートとしての策を施す(ただしシステミックリスクがある場合のみ)ってのが、【銀行セクター界隈での常識】というものでして。

それがいきなり、親会社なんてふっとばし、自分の目の前にいるってだけで海外銀行の子会社コマーシャルバンクを「政府管理下に入れちゃう」わけだから、ロシア政府、すごいっちゃーすごい。

しかも、総資産たかだか500億ルーブル(=$1.4ビリオン=1,400億円程度)のリテール銀行に対して、鼻息荒く「バンキングシステム安定化」という究極のお題目を(ドヤ顔で)持ち出してくるのも、これまた、すごい。

この面妖な出来事を、ロイターが伝えている。

Russia puts subsidiary of Ukraine's Privatbank in temporary administration 


この親会社のPrivatbankであるが、ウクライナの本社のほうは、総資産230億ドル、純利益8700万ドルで、同国最大のコマーシャル銀行。 ウィキペディアによると、米国の業界専門誌「グローバル・ファイナンス」で「ウクライナのベストバンク」に選ばれ、イギリスの専門誌「ザ・バンカー」でも同年ウクライナの「バンク・オブ・ザ・イヤー」に選ばれ、格付け機関ムーディーズは銀行財務力でウクライナでベストの判断、別の格付け機関フィッチもこれまたウクライナでベストのレーティング、だそうである。

それの子会社(繰り返しますが、子会社総資産$1.4ビリオンです) が、ある日とつぜん、モスクワで「倒産の懸念でシステミックリスク」。(1,400億円程度なら、日本のメガ銀行さんだったら、一社に貸しつけてる融資額になりそうな数字よ。笑)

上のロイターの記事にもあるが、問題は、この銀行がウクライナにあるというだけじゃなく、この銀行のオーナーが、現職大統領の息がかり、というのが、どうもプーチンには気に食わないらしいんである。この銀行の創始者で現在共同オーナーのひとり イゴール・コロモイスキー(同銀行を34%保有)は数日前、ウクライナの現職大統領であるオレクサンドル・チュルチノフによって、コロモイスキーの出身地である地域の知事に任命されたばかりという。彼はウクライナで3番目の金持ちで、推定純資産$2.4ビリオン、51歳。

いわゆる、『Oligarch』 と呼ばれるひとたちのひとりですな。プーチンは、コロモイスキーのことを、「詐欺師」と呼んで、ロシアのビジネスに悪影響を及ぼす危険人物として毛嫌いしているらしい。

ロシアをめぐる国内情勢・政治情勢は、そもそも私はこの地域にビジネスで深く関わったことが一度もないうえ、登場するひとたちの名前がぜんぜん覚えられないというのもあって、実際、よくわかっていない。

わかっていないんだが、わかっていないながらも、それでも、「ロシア、やっぱ、すげーな・・・」と言わざるを得ない。(←注:いい意味で感心してるわけではない。)

だって、こんな風にサクッと銀行を管理下に入れちゃうなんて、日本も含め西側諸国のフツーの銀行業界隈では、ちょっと考えられないやり方だもの。

以前もどこかで述べたと思うが、筆者は仕事柄、先進国・新興国とりまぜずいぶんいろんな国のバンカーらに実際にあって話を聞いてきましたが、お会いした中でロシアのコマーシャルバンカー達ぐらいツーカーで話ができないひとたちは、他にいなかった。なんていうか、異次元バンキング、とでもいいましょうか・・・。ロシアと比べたら、中国だってエジプトだって南アフリカだって、新興国のバンカーたち、みなフツーすぎてツーカーすぎて怖いぐらい。 ブラジルの銀行群になると、あれは、ポルトガル語を話す米銀、といっても過言ではない。

このロシアの預金保険機構の処置は10日続くらしい。当事者であるPrivatbankのモスクワ子会社はステートメント出して、「今回の措置は、経済的な話(←たとえば財務の問題とか)に立脚しているわけではない。向こう10日間、ロシアの中央銀行は、きちんと業務継続できるよう取り計らってくれるはず」と言っているらしい。

「経済的・財務的な問題はない」。つまり、「100%政治的な動き」だということである。 中央銀行もプーチンの指の動きひとつで、なんでもやるって意味ですね。






Sunday, March 2, 2014

最近、中国関連の記事多い

ここのところ、金融関係の記事を漁っていると、中国関連の記事が多いなと感じる。

下のチャートは、「China」Near 「Hard Landing」 がキーワードになってる記事がブルームバーグで一日にどれだけ配信されたか、というチャートだそうだ。


チャートの紹介元はここ


 2012年とくらべると減っているけど、またちょっと増え出してるのかな、という印象あり。

そして、ついさっき、この記事を読んだ。

コラム:中国で金融危機が起きない理由=カレツキー氏



このコラムの著者は、中国の金融ポリシーの側面からシステムを眺めていて、比較として米国発のリーマンショックを持ち出している。だが中国のバンキングシステムは、米国のそれとは根本的に性格が違う。

そして、金融危機というのは、かならず(【かならず】!)、金融システムのど真ん中に座ってるミクロの金融機関らのバランスシートでジクジクと膿んで久しいAsset Qualityの問題が背後にあって、そこがシステム全体の債務超過の格納庫となって危機発生・爆発するのが世の常なんだが、この記事はそこらへんはあまり触れていない。

中国の銀行をミクロで眺めると、基本的には昔の日本の長期信用銀行群と似たようなモデルやってて、バランスシートの両側にある与信と預金の「量」や「金利」といった面への規制は極めて明快なんだが、不良資産の認識含めアセット・クオリティへの対処に関しては、昔から、中国は「臭い物には蓋方式」という傾向があったから、誰も中国発で発表される公式の不良資産比率が実態を示してるなんて信じてなかったし、現在もたぶんそうじゃないかなと、わたしは、どこか疑っている。

強く規制がかかりコントロールされている既存の銀行システムですらそうなんだから、通常の商業銀行システムの外側のシャドーバンキングが膨れ上がっているいまは、果たしてどんなことになっているのか、想像するのも恐ろしい。もしかすると、通常では考えられないレベルで危うい状態にいたりしたら、どうしよう。わたしがひとりで「どうしよう・・・」と不安になってたから、だからどうなるもんでもないのだが、ついつい、長年バンクアナリストやってた癖(苦笑)が出て、不安になる。

さらに、短期市場の雰囲気。

先月もいろんな記事をナナメ読みしてたら、中国でレポレートが一日で150bps以上も上がり中央銀行が手当てして90bps下がったとかいう記事がたまたま目に入り、嫌~な気分になった。短期で一日で100ベーシスもの幅で上がったり下がったりするなんて。経験則からいって、短期市場が不安定になってるのが目立ち出すと、たいがいロクなことがない。

日本は三洋証券らが短期市場でぶっ飛んで、バブル崩壊後に数年溜め込んでいた実質債務超過の問題が、一気に表面化して、その後5年以上も続く泥沼の開幕となった。

アメリカではABCP市場がリーマンショックの前年夏には事実上の死に体となり、インターバンクで短期市場も乱れだし、ショック前年の秋には短期資金の流れがすっかりフン詰まり起こして、連銀が連日連夜資金をパンピング(pumping)し続けていたのを思い出す。前年からポンプでこれでもかこれでもかと流動性を流し込み続けてましたが、その間にも、ミクロレベルでのアセットクオリティの劣化はとまらず、システム全体の実質債務超過状態は深刻化する一方で、ついに爆発してました。

ギリシャ問題に端を発した欧州だって、欧州のトレーダーらが問題が加速度的に深刻になる前から、「短期資金、完全に止まっちゃってるで~」と喚いてましたね。

まぁ、わたしは、中国の金融システム動向を日々詳しく追いかけ調査したうえでこのエントリーを書いてるわけでもなんでもないんで、思いつきです、いろいろ勉強不足です、はい。(そのうち、中国の銀行アナリストのミクロ分析でも読んで、もう少し勉強することにします。)

ただ、上のコラムを読んで脊髄反射的にアタマの中をよぎったことを、自分の覚え書きとして、メモしておこうと思った。

Saturday, January 25, 2014

投資対象としてのビットコイン

先日、NHKの『クローズアップ現代』がビットコインを取り上げたそうで、わたしのツイッターのTLにやたらとビットコインの言葉が並んだ。(番組のトランスクリプトはこちらを。)

仮想通貨 VS 国家:ビットコインの衝撃


この番組に対応して、日本デジタルマネー協会フェローの大石哲之さんが、ツイッターで、ビットコインについて抑えるべきポイントをわかりやすく解説してました。大石さんのツイートをまとめたTogetterエントリーも読ませていただきました。

【Togetter】 ビットコインについて判りやすい解説


この10年ほどでのアマゾンなど仮想空間でのネットショッピングの成長ぶりをみれば、仮想空間で通用する仮想通貨の構想が生まれ成長してくることに対し、わたしは極端な違和感もなければ、また上の大石さんの解説にもあるように、多大なる成長性を秘めていることを否定するものでもありません。

ただし、このビットコイン、可能性を秘めてるというのはよくわかるけれども、「投資対象」としてみた場合どうよ、という話になると、いろいろ思うところある次第です。

それにつきまして、ウダウダと思いつくままつぶやいた私のツイートはこちらにまとめてあります。

【Togetter】金融資産としてのビットコインについて


上のまとめで、要するにわたしが何がいいたいかというと、

1) 仮想”通貨”と言ったところで、現段階においては、「グローバル通貨」と呼べるようなシロモノからは程遠く、ビットコインそのものは、株や債券といった通常の金融資産と変わらない。

2) 投資対象となる金融資産は、ビットコインだろうが株だろうが債券だろうがコモディティであろうが、その価値は基軸となる通貨(この場合ドル)を用いて価値を測り表示している。

3) ビットコインという名の金融資産の価値は大きく上下している、つまり、ビットコインのボラティリティは非常に高い。

4) 通常の通貨のように国家(あるいは共同体)の信用がくっついていないので、ファンダメンタルズの裏づけがなく、価値は純粋にその場その場のフローとテクニカルでのみで決定する。

5) 発行枚数に限りがあり、流動性は極めて低い。

6) 3+4+5から言えることは、投資対象となる金融資産としては、ビットコインの投機性は極めて高く、まぁハッキリいって、現状のステータスはチューリップの球根と大して変わらんな、ということである。


これら私のつぶやきの中からいくつか拾って、内容を補充しておきたいと思います。






通貨にして通貨にあらず。特定の取引所でドル表示されている金融資産である。(なお、3つ目のツイートの250は25の間違いです。)

「合法マリワナ取り扱い業者が通常の銀行で銀行口座をあけさせてもらえない」という話は、今年1月11日付けのNYタイムズのこの記事のことである。


Banks Say No to Marijuana Money, Legal or Not

 

米国では医療用マリワナの解禁を認める州が相次ぎ、またコロラド州のように嗜好用マリワナの販売も始まった地域もあるが、商業銀行はマネーロンダリングに巻き込まれることを恐れて、合法だろうがなかろうが、マリワナビジネス相手に口座は作ってくれない。ビジネス口座はもちろんのこと、個人口座を用いようとしても、その口座を出入りするマネーがマリワナ販売と関係していることが判明すれば、銀行側はその口座を閉鎖する。そのため、合法ではあるものの、大麻関連ビジネスオーナーらは基本的にキャッシュによるトランザクションに依存せざるを得ない状況におかれている、という内容である。

記事にあるが、合法販売で集めた税金なのに、銀行経由での決済手段を持てないから、何万ドルという$ゲンナマ$を車に積んでビクビクしながら運転して払いに行く、とか、トンデモなことをやってるらしいんである。45年前の三億円事件の時代じゃあるまいし。

しかし、銀行の立場からしてみたら、この新興業界(?)の拡大可能性はあると判断できたとしても、現状の市場サイズから見込めるリターンと、そこと関わることで潜在的にエクスポーズされるリーガル・リスク(マネロンが発覚したときの当局からの銀行への制裁含む)の大きさを天秤にかけたら、口座を作ってあげようというインセンティブなんてあるわけないんだから、当たり前の話である。

合法でも、このザマ。

となると、違法のドラックディーラーにしてみたら、ビットコインなる無法地帯の新通貨は渡りに舟、そりゃー飛びつくでしょう。

で、いまどうなってるかというと、そういう違法取引の現場から差し押さえたビットコインをたんまり保有しているFBIが、「単独ホルダー」としては、現在最大という笑えない話になっている。まとめの最後のほうの会話に出てくるが、ビットコインの最大のホルダー(所有者)は、噂のサトシ・ナカモトさんはじめ一握りのアーリーアダプターであることはそのとおりなのだが、彼らはいくつものウォレットに分散して所有していて、それらを名寄せしてあるひとりのホルダーとして特定することができない。そのため、差し押さえのビットコインをウォレットに溜め込んでいるFBI(=米国政府)が、目下特定できる世界最大のホルダーなのである。


Who Owns the World’s Biggest Bitcoin Wallet? The FBI


また、最初にあげたNHK番組のトランスクリプトでも紹介されていたが、昨年の10月にネット上で違法ドラッグ売買サイト「シルク・ロード」が摘発されたときにFBIが差し押さえた25ミリオンダラーズ分のビットコインは、裁判所からリクイデートしてもいいよという許可おりて、FBIは近くこれらをオークションにかけるとか。下が今年1月16日付けのForbesの記事だ。(この記事以降にくだんの$25ミリオンがどうなってるかは、フォローしてないから、知らない。)

The Feds Are Ready To Sell $25 Million of Bitcoin Seized From The Silk Road



このForbesの記事の最後のほうに、SecondMarketの話が出てくる。

SecondMarketというのはご承知の方も多いだろうが、未上場株式などを扱うトレーディング・サイトで、フェースブック(Facebook)がIPOする前の未上場株も、ここで活発に売買され話題になりましたね。

このSecondMarketは昨年、ビットコインを集めて作ったインベストメント・トラストのシェアを売買できるというビークルを市場に持ち込み、そのままだとちょっと闇市の香り漂うビットコインの取引を、機関投資家でも参加できる取引の形にして、それでも話題になった。

(引用) 
I recently spoke with Barry Silbert of SecondMarket, which famously introduced a Bitcoin Trust last year allowing institutional investors to get their hands on Bitcoin through Wall Street channels rather than through street or online buys. When the fund launched in September, it had nearly 18,000 Bitcoin. Now it has 70,000. I asked him how the firm went about acquiring its bitcoin.

“We purchase it from around the world,” said Silbert. “Directly from merchants, miners and early adopters. We needed to be able to buy Bitcoin without moving the market and we have to make sure we’re not buying from any illicit sellers.”




トラストに蓄積されたビットコインは昨年9月のローンチ時は1万8千枚だったが、わずか3ヶ月かそこらで4倍近くの7万枚に増えている。前述したとおり、流動性が低くボラが高くフローでのみ価値が上下するビットコインを市場にインパクト与えずに買い集めるためには、アーリーアダプターやそれを決済手段として受け入れるマーチャント(ネットショップなど)から直接買い付け、増やしていった、という。

「夢の仮想通貨」も、ウォール街の相場関係者にしてみたら、ボラが高くて触りがいのある話題の金融資産、ということですかね。

(次回につづく)

Thursday, January 9, 2014

シリコン・シティ

わあああ、あっという間に2014年になってしまいました!!

なんと、2013年はついに、ひとつも記事をポストしなかった、という怠けぶり。


2014年は、少しこころを入れ替えてブログ書く時間もみつけようと、いま、決心しました。それで、ブログデザインのテンプレートも変えてみました。 

さて、2012年の夏に長年住んだマンハッタンのアパートを売却し、同年秋に、NY市のすぐ北に位置するウェストチェスター郡に一軒家を購入し引越してきたわけですが、勝手の違う郊外での生活に慣れるまで、実際、まる1年かかりました。

いまでも自分はニューヨーカーと思っていますが、遊びや仕事でシティに出かけると、街いっぱいに溢れる過剰なエネルギーと騒々しさに疲れてきて、静かな郊外の自宅にはやく戻りたいと感じるようになってきています。

以前はビルを出ると目の前にスーパーもレストランもドラッグストアもなんでもある生活をしていたのに、いまはどこに行くにも車です。でもそれにも完全に慣れ、いまや「車のない生活」など想像することすらできません。

犬達はもちろん広々とした庭付き郊外の生活はストレスもなく超ハッピー。シティを出てから、ただの一度も下痢したり吐いたりしません。(マンハッタン時代は、毎月のように、どこか具合悪くなって医者に連れていったりしてたのでした。)

ということで、新生活に慣れるのにかまけているうち、ブログを全く更新しなかったわけですが、いまこうしてこころを入れ替えましたので(笑)、引き続きよろしくお願いいたします。


   ☆     ☆     ☆     ☆     ☆     ☆     ☆    ☆ 


先週は、郊外のご近所さん主催の新年パーティにお呼ばれして出かけ、そこでマンハッタンにオフィス構える大手金融機関で現在セルサイドで証券アナリストとして勤めてる方と知り合い、かつて自分も同業だったことから、初対面なのに話が弾んだ。

彼曰く、ニューヨークシティはたしかに景気盛り上がって調子よくなってきてるけど、ウォール街の大手ハウスにはかつての活気は戻っていないし、トレーディングフロアでも、株価こそ好調なれど基本的に取引ボリュームそのものが足りてないんで、They are not so happy campers. とも言ってました。

米国で業務展開する欧州系の金融機関も、金融危機の負の遺産処理継続と新自己資本規制の重みから、どこも台所事情はかなり苦しいらしい。米国の金融機関は、「まあ、最悪期去って、金利もじゅんぐり上がるだろうし、ボチボチなんとかなるでしょう」というざっくりしたイメージでわたしらは同意しあったけど、ヒャッホーーー!と盛り上がる局面じゃないよねぇ・・・と。

われらアナリスト業界も、危機時にコスト削減し過ぎて中堅・シニアのクビを切りまくったのが祟り、経験も知識も浅い(つまり雇う側からすると安いw)アナリストが割合として増え、また、アナリストひとりあたりの受け持ちがやたら多くて馬車馬のように働かされてる割りには分析は表層的になっているし、仕事は増えても給料増えず、といった暗い話も聞きましたよ。orz



   ☆     ☆     ☆     ☆     ☆     ☆     ☆    ☆ 


ということで、米金融業界の内情を聞いてみると、各社CEO達が決算発表のたびにバラ色ストーリーを振りまいてるほどにはバラ色でもない様子なのだが、ニューヨークシティ全体でみると、シティの経済状況は西のサンフランシスコなどとならび極めて良好で、米国の他の地域から頭ひとつ抜きん出て回復が顕著になっている。

NY市の不動産価格もけっこう好調である。マンハッタンのみならず、川を越えたブルックリンやクイーンズでも、エリアによってレンタル・セールスともに絶好調。New York Daily Newsに、今日付けで、こんな記事。
 

Brooklyn real estate keeps soaring as both sales and rental markets end 2013 on a high note 


1990年代から2000年代中盤までは、ニューヨークシティの経済のけん引役といえば金融セクターだったわけだが、 それがここ数年で相当様変わりしている。その様変わりについて、1月6日のNew York Timesに関連記事があったので、以下に紹介する。

2013年、ニューヨーク経済のけん引役はテクノロジー業界が完全に取って替わったのである。

New York, the Silicon City


以下、拙訳。

『先週、ビル・デブラジオが新市長となりニューヨークシティの地域経済の舵取りを任されることとなったが、金融危機崩壊後、ニューヨーク経済は米国の他地域を大きく引き離し景気拡大が進んでいる。それもマンハッタンの一角でと言う話ではなく、シティ全体で回復が見てとれる。テクノロジー・情報セクターの拡大により、今日のニューヨークは、2007年~2008年にかけての金融セクター主導のブーム時よりもさらに多くのプライベートセクター雇用数を誇っている。

 ここ10年余りをかけて、ニューヨークは、サンフランシスコ、ボストン、シアトルに対抗するテクノロジー・シティに成長した。そして、それは金融・法曹セクターとそれらに便乗するホテル業のようなサービス・接客業への依存からの脱却によって成し遂げられた。デブラジオ新市長に与えられた課題は、このトレンドを引き継ぎすべてのニューヨーカーがそこから利益を得られるようにすることだ。

デブラジオ氏の前任者であるマイケル・ブルームバーグには、ニューヨークが「デジタル・シティ」として勃興するのを可能にした人物として自らを誇るに足る理由がある。彼の指揮下で、テクノロジー・情報セクターは、金融セクターに次ぐ市の第二の最強経済エンジンとしての地位を固めた。「インターネット・パブリッシングおよびウェブサーチ・ポータル」産業に従事する人口は、2007年には6%をやや越える程度だったが、現在では市の10%を占めている。

驚くべきことに、このテク・ブームの恩恵に授かっているグループの中心はマイノリティだ。2010年以来、同市でコンピューターおよび数学関連の職種(国勢調査ではテクノロジー関連業務と呼ばれる仕事)に着く黒人の数は、ここ数年で19.7%増加している。(最新国勢調査データからの予備分析ベース。)

同様に、ヒスパニックの数も25.4%の伸びである。 これと対照的に、同種の職業におけるヒスパニックではない白人人口では2010年以来わずか6.4%の増加にとどまっている。

ニューヨークのテクノロジー関連産業で働くマイノリティの数が急激に増加している背景には、テクノロジー分野で学位を取得するマイノリティ学生が近年大幅に増えていることが理由のひとつにあげられるであろう。例えば、全米教育統計センターによれば、コンピューター・情報科学で学士号を取得したヒスパニックの学生は過去3年で40%増加している。これらの人材サプライがニューヨークの雇用市場に吸い上げられた背景には、同市のテクノロジー・情報産業の雇用市場が逼迫しており、企業側が従来のソースを越えて人材確保に走った事情があげられる。

テク・ブームの恩恵は同市の5つの地区*すべてに行き渡っている。2008年中盤から2013年中盤までの期間中、プライベート・セクターの雇用数の伸びは、マンハッタン区でわずか3%だったのに対し、他の4区では9%だった。これは、金融ブーム下でマンハッタン区の雇用数が他の地区をはるかに凌ぐペースで伸びたのとは逆である。(注*:NY市はマンハッタン、ブルックリン、クイーンズ、ブロンクス、スタテンアイランドの5つのborough=地区から構成されている。

さらに、グーグル社やマイクロソフト社のような企業がNY市からはまだ産まれていないという懸念をよそに、デジタル・シティとしてのニューヨークは成長を続けている。 コンファレンス・ボードのデータを用いたプログレッシブ・ポリシー・インスティチュートの分析では、2013年の最初の11ヶ月間で、コンピューター・数学関連業務の求人広告数は全米で前年比4.0%増だったのに対し、ニューヨーク市では6.8%増を示した。

その代わり、40万人を雇用する娯楽・サービス産業がNY市の弱みだ。総雇用者数は伸びてはいるが、実質給与が下がっている。これはおそらくホテルやレストランの需要を生み出す金融・法曹セクターが引き続き弱いことに起因しているのだろう。この実質賃金の減少は、他の分野で伸びているNY市の地域経済の足を引っ張っている。

これから新市長は何を学ぶことができるだろうか。ニューヨークの経済拡大は、テクノロジー・情報セクター の成長を目指してブルームバーグ政権が積極的に施した刺激策が功を奏した点には疑問の余地はない。これらの施策には、テク・インキュベーターのための資金提供、小規模テク企業支援を目的とした「Made in NY」のマーケティング・キャンペーン、市全体を網羅するブロードバンド・アクセスの急激な拡大、広範囲に渡り市が着手したオープン・データ戦略(公共およびソフトウェア・デベロッパーに対し市のデータを使用可能にする)、コーネル大とイスラエル工科大学テクニオンを選抜しルーズベルト島に広大な新キャンパスを建設、などが含まれる。

デブラジオ氏は新市長就任式のスピーチで立派な公約、特に収入ギャップの縮小をめざすと述べたが、その目標達成のためにも、新市長は上記政策を継続すべきである。テクノロジー・情報産業ブームをこの先も促進し続けねばならない。なぜなら同産業はNY市の隅々まで新規雇用を創出し、金融と不動産に過剰に依存していたかつての状態を是正するのに役立っているからだ。そしてこの状態が続くことで、将来NY市の経済、ひいては税収が、より安定的なものになると考えられるからだ。

就任スピーチでデブラジオ氏はニューヨークのすべての子ども達がよりよい教育を受ける必要があると力説したが、それは正しい。そしてそれについても、テクノロジーを中心に据えた市のアジェンダ継続の一部として実行すべきだろう。学校を改良しテクノロジー分野で優位に立ち続けるために、新市長は市の学校教育でテクノロジーおよび関連分野の強化を図らねばならない。

不均衡の是正と市の繁栄拡大を実現させる主策とは、ニューヨーカーが未来の職に向けて準備を進めるためのより良い教育とトレーニングに他ならない。その実行に成功すれば、デブラジオ氏は偉大な市長としてのレガシーを遺すことができるだろう。』

(投稿者のマイケル・マンデル氏はProgressive Policy Instituteの経済ストラテジストで、South Mountain Economicsという経済分析会社社長。)

(おわり)


Thursday, January 12, 2012

欧州の資金市場は相変わらずナーバス

数日前、ツイッターで、日本の90年代後半の金融危機と07年のグローバル金融危機について、ブツブツとひとりごとをつぶやいていたのだが、それを@Speculatorbidさんがまとめてくださってたので、ありがたく頂戴いたします。





年の暮に市場の大方が予想していたとおり、2012年にはいってからも、欧州問題は一進一退を続けているな。ナーバスな動き。

いろいろな憶測や観測が飛び交って、そのヘッドラインのいちいちにマーケットは浮かれたり落ち込んだりして反応しているけれど、やはり、いちばん根本的なところで、「資金市場の警戒ぶりがハンパない」というのは、重たい事実ですね。

上のツイートまとめのいちばん最後のほうに出てくる「銀行が資金を抱え込んでる」という話、重要ですね。年末を無事越せたものの、政府当局が期待してるようには銀行はスッスッと動いてくれず、抱え込みは解消せず。

市場全体を包み込んでいるFEAR(怖れ)は、そう簡単には消えない。リクイディティを流しこんでも流し込んでも、サラサラ血液のようにお金が循環してくれない・・・。

上のまとめでブツクサ言ってたツイートのうち、どこから情報得たのか裏付けつけていないツイートがいくつかあるので、それの出典(?)のニュース記事リンクを、以下に控えておく。


(1) 「米金融機関が欧州エクスポージャをガクンと落としたというおエラいさんの発言」というのは、テレグラフのこの記事。

Debt Crisis As It Happens: January 9, 2012
(Telegraph, 1/9/2012)

この記事の19:28のところに、アトランタ連銀のロックハートが「欧州ソブリンへのエクスポージャ、特に弱小国へのエクスポージャを相当減らした」と述べたという記述あり。

19.28  Mr Lockhart added that the Fed would not rule out more money printing even if steady growth and "acceptable" inflation made it harder to justify:
Steady even if unspectacular growth accompanied by inflation in the neighborhood of 2pc justifies some reluctance to change, in either direction, the (central bank's) accommodative policy [...] At the same time, I think slow progress toward full employment justifies continuing consideration of whether more can and should be done.   

On European sovereign debt exposure, he said:
American financial institutions have reduced their exposures fairly substantially, particularly to peripheral countries.

 (2) 「欧州銀行のシニア債発行が年明けになって好調」というのは、こちらの記事。

European Banks Learn to Love the Bond Market
(Wall Street Journal, 1/10/2012)

記事の抄訳は以下のとおり。

欧州の銀行債市場は死んだ・・・などと言われていたがそれは誇張だったのではないかという見方が出てきた。1月に入って最初の10日間で、欧州銀行はユーロ建ての無担保シニア債を€14.9 billion ($19.02 billion)発行、ソシエテ・ジェネラルによると、これは2011年後半の半年間に発行された額の26%増し、とか。欧州銀行は、シニア債に加えて、€13.75 billionのカバード・ボンドも発行した。銀行債市場はまだ脆弱ではあるものの、年初は好調なスタート。2012年は欧州銀行債のロールオーバーが€800 billion来る予定。
 発行体はスカンジナビア、オランダ、U.K.など比較的信用力の強い地域に限られているものの、フランスの銀行も市場資金にタップできた。
 背景としては、①ECBの期限3年ローン(※1)が12月に実行され、2月にも2回目の3年ローンが控えており、銀行の突然死シナリオの可能性が後退したこと、②投資するサイドはキャッシュバランスを積み上げていたこと、③銀行側もユーロ圏の危機はすぐには消えることなく当面継続するという見解を受け入れたこと、④銀行自身のデレバレッジングと預金の増加が調達の必要性を和らげたこと、など。モルガン・スタンレーの試算では、銀行によるシニア債新規発行はネットで4年連続マイナス、減少額は€225 billion。
 とはいえ、センチメントが逆転することは多いにありえる。イタリアとスペインの国債スプレッドが拡大基調なのと、ギリシャの債務リストラの進捗が懸念。預金保護を目的とした規制当局の意向、および、カバード・ボンドやECBローンといった有担保調達の増加の両面から、無担保シニア債の劣後化の可能性が潜在的に残っている不安もある。資金市場がどこまでリスクを取るつもりかもはっきりしていない。スペインやイタリアの銀行が発行体の場合、シニア債の新規発行はこれより困難になるだろう。
市場のボラティリティは高いままになろうし、政治リスクが浮上して改善の目を摘んでしまうかもしれない。だがレギュレーターが欧州銀行のバランスシート強化促進に成功すれば、無担保シニア債、特に各国の最良銀行が発行したシニア債は、高いリターンをもたらす可能性はある。

※1 ECBの期限3年ローンと銀行のバランスシート上のブタ積みについては、2011年12月28日付のMHJ記事を参照。


(3) 「日本のCDSが中国のCDSよりワイド」というのは、次のチャートを参照。


オレンジが中国のCDS、緑が日本のCDSで、過去1ヶ月の相対推移。(1ヶ月前を基準値=0とした時に【相対的に】各々がどれぐらい%でワイドニングしたか、というグラフです。絶対値のチャートじゃないことに注意ね。)

スプレッドの「絶対値」でみると、今日1月12日現在では、中国のレベルが146bpsに対し、日本が154bpsで、ややワイド。

まぁ、ソブリンのCDSについては以前も書いたことありますけど、日本のCDS水準が中国のそれに近づいてたのはもうずいぶん前からの話でして(※2)、さらにいうと、絶対値がどこにいるからどうしたといった話でもないんで、ここのところ中国よりワイドになってるからといってギャーギャー騒ぐほどのこともないとは思いますけどね。(今日の日経新聞が書いてたような、「財政再建への取り組みが遅れれば、欧州にかかる市場の圧力が日本にも及びかねません」(ドキドキ)みたいなこじつけっぽい理屈でばかり動いているわけでもないんで。)

ただし、CDSの推移というのは、対象となる債券の発行体に対する市場評価を示唆する数値の一角であることは確かなんで、いちおう目にはいったからには、書き留めておきまする。

(※2)日本のCDSが中国のそれに近づいてるぞという話は、2009年11月30日付MHJ記事『ソブリンCDSについて』に書いてます。2年以上前からだよ。自慢しちゃうけど、先見の明があったので、読んでね~(笑)。

Wednesday, December 28, 2011

外貨逃避への特効薬、わんこポリス

クリスマスは終わり、今年もあと3日を残すだけとなったが、欧州懸念は相変わらずくすぶっている。今年は一年中、欧州に振り回された年であったな。

今朝もユーロはスッコーンと下がって、あっさり1.30割れ。


対円だと10年振りの安値ですと。

(Bloomberg, 12/28/2011)

(記事から引用)“We’re still so far from being out of the woods that even on a day of being positive, people decided that the euro should continue to fall,”
 「状況はまだまだ闇から抜け出れそうもなく、たとえポジティブなニュースのある日でも、ひとびとはユーロは下げ続けるべきと決めている。」

Financial Timesも昨日、ECBのファシリティが貸し方も借り方も増えて【ブタ積み】になってる様を紹介していた。

Record use made of ECB deposit facility
(Financial Times, 12/28/2011)

FTの記事によると、クリスマス前の21日、ECBは空前のリクイディティ需要に答えるため新たにターム3年の融資 €489bn 近くを500超の銀行に貸し付けた。しかしその数日後、ECBのオーバーナイトの預金ファシリティには、これまた空前の€ 452bn が積まれました、という話。

11日のエントリーでも触れたように、年末にかけては市場の流動性が極端に下がるときで、こういう時にあえてアブナイ真似は手控えたほうが無難、というのは万人の知恵。キャッシュを手にしたらキャッシュのままジー・・・とこうべを垂れて年明けを待つという銀行側の考えも当然といえば当然である。

欧州リーダー達の間には「ECBから低利で借りた資金で高利回りのイタリア債を買ってくれるよね♥♥」という思惑(←通称 “サルコジ・トレード”と呼ばれてるww )があるみたいだが、銀行の担当者達は「正気だったら、年明け早々どうなるかわからないイタリア国債なんかに、いま手を出せますかい」とシランプリ決め込んでる風。アナリストの間には、このブタ積み状態が年明け後も継続してしまうのではなかろうか、と懸念持ってるひともけっこういるみたい。

結局こうやって、2011年は欧州問題にこれといった進展もみられずに一年が過ぎていったわけだが、2012年になったら、この膠着状態から抜け出ることは、果たしてできるのだろうか・・・。抜け出るとしたら、それへの触媒はなに・・・?

★    ★    ★    ★

この状況に痺れを切らした市場関係者の中には「アルゼンチンだってやったんだ、しのごの言ってないでサッサとデフォルトさせやがれ」とか言ってる方も散見されますが、アルゼンチンといえば、ロイターのニュースで、こんなの、あった。

自国通貨デバリュエーションのスペキュレーションが止まないアルゼンチンで、ドルの国外への闇持ち出しを阻止するため特別に訓練された犬が国境付近で大活躍中とのこと。苦しい時の犬頼み。



以下、トランスクリプト全文:
The tax man's new best friend In Argentina, sniffer dogs are being trained to detect cash being taken out of the country. The government has been cracking down on the smuggling, at a time when there's much speculation over the devaluation of the peso. Customs director, Maria Siomara Ayaran, has been demonstrating the work her dogs can do on routes into countries like Paraguay and Bolivia. 
 (SOUNDBITE) (Spanish) MARIA SIOMARA AYARAN, CUSTOMS DIRECTOR SAYING: "After many years, we now have around 300 dogs, 50 of which are trained especially to detect foreign currencies, specifically dollars and euros. What we are seeing here is part of customs controls carried at different border points."  
The dogs, seen at this ferry terminal, where boats head to Uruguay, can pick out specific currencies, like dollars and euros, by learning to sniff out the different inks on the notes. The dogs will only react if the amount is over $1000.  
From January to September this year, money leaving Argentina added up to $18.25 billion - almost $7 billion dollars more than in the whole of 2010. The government has limited sales of Dollars in a bid to curb the flight of money from the country. The move came after new foreign exchange controls, which mean the tax agency must pre-approve all currency purchases, sparked an increase in withdrawals of dollar deposits. Having perfected the training with their own dogs, Argentine customs now plan to export their expertise to other countries. Joanne Nicholson, Reuters.

(拙訳)
アルゼンチンの税務署役人に新しい親友ができた。国外に持ち出されようとする現金を嗅ぎ分けるよう訓練された犬たちだ。ペソのデバリュエーションの噂がはびこる中、アルゼンチン政府は現金の違法持ち出しを取り締まるのに躍起になっている。関税職員マリア・シオマラ・アヤランさんは、パラグアイやボリビアといった国々に向かう途中のルートで、訓練された犬達の仕事ぶりを見せてくれた。 
(マリアさんのスペイン語)「長年この仕事に取り組んでいますが、今私達には300頭の犬がいて、うち50頭が特にドルとユーロの外国紙幣のにおいを嗅ぎ分けられるよう訓練されています。いま皆さんにお見せしてるのは、国境付近各所で警備の一環として行われている業務の一部です。」
私たちがいるこのウルグアイ行きボートのフェリー乗り場では、印刷インクのにおいの違いを嗅ぎ分けられる犬達が、ドルやユーロといった特定の紙幣を見つけだす。ただし1000ドル以上のまとまった紙幣にしか反応しない。 
今年1月から9月の間に、アルゼンチンから持ち出された現金は182.5億ドルに上り、前年一年間の総額よりもすでに70億ドルも増えている。アルゼンチン政府はマネーの国外逃避に歯止めをかける目的でドル売買に限度額を設けることにした。新しい外国為替取締法のもと、あらゆる通貨購入に税務署による事前認可が必要となったため、ドル預金の引き出しが急増という結果に。特別訓練犬の成果に自信をつけたアルゼンチンの税関は、他国にこの犬の特技を輸出することを考え始めているという。



Monday, December 19, 2011

システミックリスクのビジュアル化

今日のNY市場も冴えない動き。出来高もスカスカ。金融株が特に弱い。

Bank of America(BAC)は2009年の底値にどんどん接近。数ヶ月前に6ドルを割ったときも、この低水準のまま推移することになるとかなりマズイと思ってたのに、6ドルどころか、いまや5ドルも割ってしまった。

本日3時45分頃に拾ったBACのチャート。かなり痛々しい。



欧州向けのエクスポージャが相対的に大きいという理由から、欧州リスクの懸念が強まるたびに大きくネガティブに反応して売られるモルガン・スタンレー(MS)は、本日もやられている。

こちらはMSの3時45分頃のチャート。



現在、米の大手金融機関の株価はどれもブックを大きく割っている。P/Bレシオをざっとみてみると・・・

  • JPM = 0.66
  • GS=0.63
  • MS=0.47
  • C=0.43
  • BAC=0.23


・・・悲惨な数値であるな・・・orz

ここだけみれば、「バリュエーション的には割安・・・」とつい漏らしたくなる人もいるだろうが、なにせ誰もが2007年の暮れ(リーマンショックの前年の暮れ)に、大手金融株がどいつもこいつも同様にブック割れしていたことを嫌でも覚えてるので、いま、この局面で「割安」の「わ」の字も口にしたくない、というのが本音だろう。

当ブログで数度にわたりシツコク書いてることではあるが、問題をある狭いローカル市場に閉じ込めておくことができるのであればまだマシだったのであろうが、特に90年代後半からは、デリバティブスの台頭もあり、世界の金融市場は文字通りボーダーレスになり、まるで蜘蛛の巣のように絡みあって互いが互いにエクスポーズされる、そういう状態になってしまった。

【エクスポージャの蜘蛛の巣】が絡まれば絡まるほど、ある一箇所で起こった問題が産むリスクは、そのネットワークを経由して、時には増幅されて、問題発生のローカル市場を飛び越えて伝播してゆく。

伝播(Contagion)については1年半も前に『ギリシャの悲劇-Contagion』という記事を書いた。今、去年の5月に自分が書いた記事を読み直してみると、欧州をとりまく状況は、実際何も進展していないという事実にあらためて驚く。

ブロガーのBarry Ritholtz が彼のブログで『 Econometric Measures of Connectedness and Systemic Risk in the Finance and Insurance Sectors 』という学術論文を紹介しており、そこに、「金融セクター同士のエクスポージャ蜘蛛の巣」の図があった。


システミックリスクをビジュアルに感じられて興味深いので、ここにも貼っつけておきたい。


1994年1月~1996年12月



2006年1月~2008年12月



拡大して線のいちいちを精査してどうなるわけでもない図だが、絡まり合い方(Interconnectedness)を見ただけで、世界の金融機関同士がわずか10年かそこらで、どれだけ相互エクスポージャの度合いを強めていったかがわかる。

グローバルに金融セクターへの悲観論が消えることなく弱含み続ける最大の背景は、この図から示唆されるシステミックリスクの深刻さなのだ。


Tuesday, July 19, 2011

【メモ】米銀は米国債のデフォルトの準備をしている??

今日流れてきたツイートで、目を引かれたのは、これ


米銀は米国債がデフォルトする可能性を考えて「準備している」というバンカメのCFOの発言。

ギョ!と思い、この裏づけを検索すると、CNBCのサイトにも同じブリーフが流れていた。確かに、そう言ったらしい。メモしておこう。

米国債の上限引き上げ問題は、まだ完全に決着は出ておらず、上限を引き上げたいオバマ政権との取引条件として共和は「増税絶対反対」の立場を譲らず、膠着状態が続いている。

8月2日が決着のデッドラインとされているが、実質的には、手続きやら何やらもあるため、7月22日までに議会で合意を得ないとヤバイと言われている。

この問題については、本ブログで『合衆国が取れないリスク』という記事を書いたが、その記事の日付が4月18日。あれから実に3ヶ月、内容的にはほとんど進展がなかった、ということにも驚く。日頃温厚なオバマも、先週はキレかけてましたが、そりゃーいいかげん、キレるよね。

格付け機関は(例によって)状況が悪くなればなるほどハシャぐ、といういつもの癖で、ムーディーズもS&Pも、米国債を格下げ方向でウォッチにかけた。しかも、彼らは「上限引き揚げても、格下げにならないという保証はありませんので、そのおつもりで。」と言ってみたり、「法定上限なんていうモノがあること自体がリスクだ、そんなもの、やめてしまえ。」と言ってみたり、底意地の悪さ全開、である。

米国債のみならず、ファニフレのエージェンシー債も相当抱えている米銀セクターとしては、格下げになると、それらの証券が実際にデフォルトは起こさなくとも、これらの保有証券のリスクが高まると判断されるために、自己資本にプレッシャーがかかってくる。

それでなくても、住宅セクターへのエクスポージャでこの先もまだ損失が発生しそうで、自己資本にのしかかるプレッシャーから復配もままならないとささやかれているバンカメからしてみたら、この上さらに米国債とエージェンシー債から「さらなる重し」が発生することになると、まさに泣きっ面にハチ。

上のCNBCの記事で、バンカメのCFOが「デフォルトが起こる可能性とそれが引き起こすエフェクトの研究に余念が無い」と言うのもうなづけますな。

Tuesday, June 21, 2011

【記事】Banking's Moment of Truth

NYTのコラムニスト、Jon Noceraのコラム。

記事の出だしが、こう。

Capital matters. Let me put that another way. The current fight over additional capital requirements for the banking industry, eye-glazing though it is, also happens to be the most important reform moment since the financial crisis broke out three years ago. More important than the wrangling over Dodd-Frank. More important than the ongoing effort to regulate derivatives. More important even than the jousting over the new Consumer Financial Protection Bureau.

Capital matters. 

まさしく。ベーシックにして核心を突く一文。

長年銀行セクターのアナリストをした自分は、この出だしのパラグラフに同意せざるを得ないな。銀行という業態の将来も、事業の行方も、四半期ごとの業績も、すべてはキャピタルとそれをめぐる規制に収斂する。

(NY Times, 6/21/11)

『Basel III』と銘打って、新たな自己資本規制の枠組みがバーゼルから出されているが、そこでは大枠として、今後、銀行が求められる自己資本の額は7%、大手銀行には上限3%として追加キャピタルが要求されるというベース。ここにさらに、各国の事情を考慮し、各国の銀行規制当局がこの枠とは別個に自己資本必要額を決めることもあり。

欧州の銀行群はかつて、表面上のキャピタル・レシオでは米銀よりもはるかに高いレシオを誇っていたものだが、それは現行のバーゼルのルールが随所で「歪んでいる」のが理由であって、欧州の銀行の実質的なキャピタルクッションが厚いからではない。Basel IIIの新たな枠組みについて、欧州の銀行は米銀以上に自己資本を多くつまされることに対して拒否反応を示しているようだ。それについて、Noceraは、米銀に他国よりも厳しい自己資本規制をかけることは米銀の競争力を傷つけるという意見があるが、そんなものは取るに足らない議論だと切り捨てる。

Indeed, every argument put forth by the big banks and their Congressional spokesmen against higher capital requirements have been demolished by Admati as well as Simon Johnson, the banking expert, whose devastating rebuttal can be found in The New York Times’s Economix blog. But the idea that they will make U.S. banks less competitive with European banks deserves particular scorn.

European banks, to be sure, have fought fiercely against higher capital requirements. It’s not really because they hope to get a leg up on the rest of the world, though. It is because these banks are in far worse shape than the banks in other parts of the world; they can’t afford higher capital requirements.

「欧州の銀行たちが厳格な自己資本規制に反対の意向を示すのは、競争力云々の話ではなくて、欧州の銀行の自己資本が世界の他地域よりもずっと酷い状態にあって、実際問題としてそんな金銭的な余裕がないから。」

たしかに、ギリシャ問題がここまで長引くのも、ギリシャのデフォルトは、欧州銀行システムの問題に直結してしまうから。

しかし、だからこそ、自己資本はできるだけ多く持たせろというストレートな意見は、筆者は賛成だな。リスクウェートの算出を小難しいモデル使ってあれこれいじくってみたりしたのが、まさにBasel 2だったわけ。それがクレジットバブル破裂とともに、いかに欺瞞に満ちた規制だったかがバレたのみならず、あれだけグチャグチャ押し問答して多くのリソースを無駄にした上、みごとなばかりにコケたのだから、いまさらキャピタルの「最低」必要額を探るために利用されたBasel 2の二の舞になるよりも、もっとシンプルにキャピタルは分厚くしろ、というイニシャチブを押し通せと筆者も思う。

大きすぎて潰せない(Too Big To Fail)は過去も存在したし、これからも存在する。それが必然的にモラルハザードを誘発して、過度のリスクテイクに繋がってきたし、今後もやっぱり同じメンタリティは続く。小さく分解しろという考えもあるが、それは一般預金者も含めたユーザー側が支払うトランスアクションコストを高くする。大銀行でも潰してしまえという意見には、金融市場のフローの面から最初からリアリティはない。ならば、オペレーションがうまくいっている期間に大規模銀行に課されるキャピタルサーチャージは、将来の救済費用への前倒し払い的意味からも、分厚くしなければダメと思う。