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Thursday, June 12, 2014

ホワイトカラー・エグゼンプションについて

6月11日付けの日経新聞に、日本政府が日本にも導入しようとしている「ホワイトカラー・エグゼンプション」についての記事が載っていた。

年収少なくとも1000万円以上 労働時間の規制緩和  (日経新聞)

(以下記事から引用)

政府は11日、働いた時間ではなく成果に応じて給与を払う「ホワイトカラー・エグゼンプション」について、対象者の年収基準を「少なくとも1000万円以上」とすることを決めた。月末にまとめる成長戦略に明記する。職種は金融のディーラーなど「職務の範囲が明確で、高い能力を持つ労働者」と記す。改革が進まなかった労働規制に風穴が開く。

菅義偉官房長官と甘利明経済財政・再生相、田村憲久厚生労働相、稲田朋美行政改革相の4閣僚が協議して合意した。労働政策審議会(厚生労働相の諮問機関)で、具体的な金額など仕組みを詰める。2015年の通常国会に労働基準法の改正案を出し、16年春の施行を目指す。

政府が新たに導入するのは、1日8時間、週40時間という労働時間の規制を外す仕組み。長く働いても残業代や深夜・休日手当が出ないため、仕事を効率的にすませる効果が期待できる。日本では課長以上の管理職はもともと労働時間規制を外しているが、それ以外の社員を対象から外すのは初めてとなる。
(引用終わり)


この「ホワイトカラー・エグゼンプション」だが、日本の記事やブログを読むと、どうも議論が迷走しているような気がしてならない。

「最初は年収1000万円以上なんて言ってるが、その対象年収をそれよりもずっと低いレベルまでなし崩し的に下げてゆくつもりなのではないのか」という懸念、もっと直接的に言うと、「どんなに長時間働いても残業代を出さないつもりだなバッキャロー」という類の反応が目に付き、日本ではこれの導入に関して、かなり感情的に反応してるひとが多いな、という印象である。

しかし、そもそものところで、この「ホワイトカラー・エグゼンプション」というカタカナ語を、どれほど多くの日本人が理解しているのだろうか。

上述の日経新聞の記事中の用語解説では、次のように説明されている。

「ホワイトカラー労働者(主に事務などに従事する労働者)に対して、労働時間規制の適用を免除する措置。現行法では労働時間の長さで給与や報酬を決めること が原則になっている。一方で、管理職や専門職、企画立案などでは働く時間の長さと成果が比例しない職種も多い。自己管理型労働制によって、こうした労働者 が仕事の進ちょくや生活に応じた柔軟な働き方を行うことを可能にする方式として提唱された。経済界を中心に導入を求める声が高まったが、多くの労働組合か ら残業代ゼロをめざすものと反発を受けた。」

言うまでもなく、「ホワイトカラー・エグゼンプション」とは英語の『White Color Exemption』で、これは米国の労働法に関わる制度の一部だ。だが、日本の労働者の多くが、実は、この『White Color Exemption』という英語フレーズの意味をよく咀嚼しないまま、 「残業代を出さずに搾取する制度を作りやがる気だなバッキャロー」というイメージばかりを膨らませているのではなかろうか。

先日、この記事を読んだときに、筆者はツイッターでこんなことをつぶやいた。





これに対し、@aoyaman1 さんから以下のような反応を頂いた。





「欧米と日本の労働形態の違いは、労働法制ではなく、慣行にすぎない」――前々から感じていた、ホワイトカラー・エグゼンプションに関わる議論が日本で迷走する背景は、まさにこれだろうと思った。


前置きが長くなったが、今回のMHJでは、米国で言うところの、White Color Exemption とは何かを紹介しようと思う。

 ★    ★    ★    ★   ★

White Color Exemption―。

まずは、Exemption という英単語の意味からみてみたい。

exemption 【名】免除、免税、免除(品)、(課税)控除、適用除外

「He is exempt from △△△・・・」 と言うと、「彼は△△△の適用を免れる」という意味である。

White Color Exemption のExemption とは、【何か】の適用から除外されているために、exemptionというのである。それは具体的に何なのか。

これについて語るには、まずは、FLSA という法律について語らねばならない。

FLSAとは『Fair Labor Standard Act』の頭文字を取ったもので、要するに、米国版労働基準法である。

この法律の概要は以下の通り。

① 最低賃金について: 現在、1時間あたり$7.25 (ただし、米国の場合は最終的には州が自州内における最低賃金の決定権を持ち、連邦レベルで決められた最低基準を満たす限りこれを超えることが認められている。州ごとの最低賃金一覧はこちら。)

②  残業について: フルタイム従業員の場合は週40時間を基準とし、40時間を越える労働時間に対しては基本時給の1.5倍あるいはそれ以上のレートで残業代を支払わねばならない。

③  就業時間について: 通常業務とみなされる時間の定義としては、「Workplace(職場)」における就業時間を指す。

④ 記録管理について: 雇用主は従業員が仕事に従事した時間および給与を記録・管理しなければならない。

⑤ 児童の就業について: 児童が就業する場合(例えば、こどもの演奏家や芸能人など) に関する規定


米国企業で働く従業員はすべからく、この法律の下に守られており、例えばある企業が労働条件を自社ルールと称して勝手に決めて、「他所さんは知らんけど、うちは週50時間でみんなにやってもらってるんで、給料もうちのやり方で払うから、そこんとこ、文句言わんといてな!」なーんてことは勝手に言ってはいけないんである。

この米国の公正労働基準法で決められた条件のうち、とくに重要になってくるのが①と②で、Exemption と言っているのは、これらの法規定の適用から除外されている(exempt from the FLSA rules)という意味なんである。

要するにですね、FLSAというのは時間給で給料もらっている従業員に関わること細かい規定なわけだが、これらのルールが適用されない従業員、すなわち、「時給ベースではなくて、サラリーがあらかじめ決まった年俸契約で雇用され、何時間働いても残業代はつかないから就業した時間をタイムカード押して記録・管理する必要のない従業員」 のことを、アメリカでは、Exempt Employees と呼ぶのである。

一方、上記のFLSAの規定がいちいちがっつり適用される従業員、すなわち、しっかり毎日タイムカード押して就業時間が記録・管理され、就業時間が週40時間を越えるとベース時給の1.5倍のレートで残業代をもらえる人達は、「FLSA適用免除にならない」ということで、Non-Exempt Employees と呼ばれる。

(次回に続く)

Sunday, March 16, 2014

トランスアトランティック市場は依然として最重要

明日、3月17日は、セント・パトリックス・デー。

司馬遼太郎氏が(たしか、氏の著書「愛蘭土紀行」の中だったとぼんやり記憶するが)、芋飢饉で本国を後にしてアメリカ合衆国を目指したアイルランド移民たちを、「テーブルから転げ落ちる豆のように大西洋に浮かんだ」と表現していたが、その末裔達はアイリッシュ・アメリカンとなり、現在では約3千450万人、合衆国全体の人口の10%以上に増えた。本国の人口460万人の7倍という繁栄ぶりである。

米国では、そうやって移民してきたアイルランド人を差別し(下の古い新聞求人広告を参照)、安価な労働力として劣悪な住環境・労働環境でこき使った暗黒歴史もあるとはいえ、風とともに去りぬのスカーレット・オハラのような南部の大地主たちがいたり、またビジネスで財を成したケネディ一家からはケネディ大統領が生まれ、その後も、レーガン大統領、クリントン大統領・・・と続き、アイリッシュの血はアメリカのメインストリームの隅々で活躍し、現在に至っている。



No Irish Need Apply (アイルランド人お断り)と書かれた昔の新聞求人広告。こういう差別が実際に行われた。



シカゴと並び、アイルランド系移民とその子孫が多いニューヨークシティでは、大規模なパレードが毎年開かれ、マンハッタン5番街を行進する。年中パレードやってるニューヨークでも、セント・パトリック・デーのパレードは別格、群を抜いて見物の人出も多く、パレードの規模としてNYは世界最大だ。ニューヨークは市警官・消防士などの「制服組」にアイリッシュが多いこともあって、バグパイプのおじさんたちや可愛い子どものアイリッシュダンサー達とともに、制服組の行進も延々と続く。






世界中で開かれるセント・パトリックス・デー・パレード。お近くのパレード情報なら、こちらへ。
2014 Parade Worldwide


 ☆   ☆   ☆   ☆   ☆

さて、ここからが本題。

合衆国と欧州の間に横たわる市場を、「Trans-Atlantic Market」と呼ぶ。

かつてアイルランド人が「テーブルからこぼれ落ちる豆のように浮かんだ」大西洋(Atlantic Ocean)を挟んだ貿易圏・経済圏のことである。

ジョンズ・ホプキンズ大学による欧米間経済の研究チームが発表したレポートによると、トランスアトランティック市場はいまだ世界最大市場、ここ数年の欧州経済の不安定さやアジアとの関係(ちなみに、こちらは日本でもTPP(=Trans-Pacific Partnership)でおなじみ、「Trans-Pacific Market」と呼びますね)の成長にも関わらず、米国にとっては最重要のリレーションシップ。



(以下、同大学のリリースから抜粋および拙訳)

U.S. companies are the largest source of onshored jobs in Europe and European companies are the largest source of onshored jobs in America,(中略)・・・Up to 15 million workers are employed in the $5 trillion transatlantic economy, which despite recent turbulence remains the largest and wealthiest market in the world.

米国企業は欧州にとって、また、欧州企業は米国にとって、互いに最大のオンショア雇用ソース。近年の不安定な状況にも関わらず、5兆ドル規模の市場で1500万人の労働者が雇用され、依然として世界最大かつ潤沢な市場である。


The US and Europe are each other's primary source and destination for foreign direct investment. Since 2000 Europe has attracted 56% of US global foreign direct investment and China only 1.2%.

米国と欧州は、相互に、海外直接投資でソースあるいは投資先として最大。2000年以降、欧州は米国のグローバル海外直接投資の56%を引き付けたが、中国は1.2%のみ。


Ireland is the number one export platform in the world for Corporate America. US companies based in Ireland export 3.5 times more to the world than from Mexico and 5 times more than from China. US investment in Ireland is more than 6 times larger than US investment in China.

コーポレート・アメリカにとってアイルランドが世界最大の輸出プラットフォーム。在アイルランドの米国企業の世界への輸出額は、メキシコからのそれより3.5倍、中国からの5倍。米国からアイルランドへの投資は、米国から中国への投資の6倍以上。


US investment in the Netherlands alone is about 4 times greater, and US investment in the UK 3 times greater, than US investment in all the BRIC countries -- Brazil, Russia, India and China.

米国からBRIC4カ国への投資総額と比べても、米国からオランダへの投資のみで4倍、英国へも対BRICの3倍。 (*BRIC=ブラジル、ロシア、インド、中国の4カ国)



Since 2000, Europe has accounted for over 57% of the earnings generated abroad by U.S. companies. US companies earned 7 times more in the Netherlands alone than they did in China.

2000年以降、米国企業が海外で創出した利益の57%が欧州地域で占められている。オランダのみでも、米企業の利益は、中国で得た利益の7倍。


Europe’s sovereign debt crisis has forced European firms scale back their U.S. presence. Even so, Europe’s investment flows to the US were 4 times larger than to China. There is more European investment in a single US state like Georgia, Indiana or Minnesota than all U.S. investment in China, Japan and India.

欧州ソブリン危機の影響で、欧州企業は米国内でのプレゼンスを縮小せざるを得なかったが、それでも、欧州からの米国への投資フローは、中国向けフローの4倍。 ジョージア州、インディアナ州、ミネソタ州への欧州からの投資額は、それぞれの一州向けでも、中国、日本、インドへの米国の投資額を上回る。


45 of 50 US states export more to Europe than to China, and by a wide margin in many cases.

米国50州のうち45州が、対中国よりも対欧州の輸出額が多く、その他の地域向けでははるかに多額になっている。

(抜粋+拙訳、おわり)


さらに詳しく知りたいひとは、こちらがその研究レポートへのリンクです。
Transatlantic Economy 2014


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米国や欧州各国のそれぞれの国の個性の強さを無視し、「欧米は」 とひとつの言葉でくくってしまうと違和感が出る場面は実際多々あるけれど、こうして、「ひとつの経済圏」としてくくって数字をみると、そのリレーションシップの強さはハンパ無いというのも、よくわかる。

よく「欧州のひとはアメリカの田舎者が大嫌いで云々・・・」という話を耳にするが、米国と欧州は古典的LOVE&HATEの間柄、数字はウソつかない。



昨年の記事だが、米国と欧州連合の間のフリートレードを目指す T.T.I.P. (Trans-Atlantic Trade and Investment Partnership)の話し合いのためオバマが欧州に向けて出発するのに先駆けて、イタリアの外務省高官からNYタイムズに投稿されたラブレターである。

Pivot to a Trans-Atlantic Market


この記事の筆者は、両者は「腰で繋がっている間柄」と表現し、欧米間の経済的共同発展構想であるTTIPの重要性を語り、その実現を主張している。

(引用) It may well prove to be a Pacific century, buoyed by Asia’s economic dynamism. But at least for now, the United States and Europe remain bound at the hip — an enduring, perhaps reassuring, reality amid a world in flux.



では、みなさま、

Happy St. Patrick's Day!

Friday, September 9, 2011

アメリカンドリームはゴールド94オンスで買える

米国の一戸建て住宅価格のメディアン値を、ゴールドの1オンスあたりの価格で割ったものが、下のグラフ。

いまなら94オンス分で一戸建て住宅が一軒買える。2001年のピーク時には601オンス必要だった。ピークから84%下落した格好。(元記事はここ

Wednesday, August 3, 2011

デフォルト回避と歳出削減の次のお題は「増税」か

昨日8月2日のデッドラインぎりぎりに、上限引き上げ問題はいちおう(暫定的に)一段落。

(AP, 8/2/11)

しかし、法案が可決されて大統領が正式にサインをしたとたんに、NY株市場は激しいセル・オフ。最終決議が出る前に、ワシントンDCのアホ騒ぎは「終わった話」になっていた。そして、格下げされるぞと脅され続けていた米国債には大きく買いが入り上昇。ドルは沈下、ゴールドは上昇。今日も引き続きゴールドは値を上げて、米株は大きく上下に振れ、10年米国債はさらに上昇。大荒れである。

ダウのトランスポーテーション株は昨日4%ダウン。どこかに明るい話は転がってないかと探してみると、The Big PictureのBarry Ritholtzによると、トランスポーテーションが下がると通常は原油価格低下の伏線になるとのこと。もし毎日往復で70マイル走るひとがいるとすると、ガソリンが$1低下すれば$1500の年間セービングになり、これは消費者にとっては税金の削減効果に等しい、と。

ヤタ!(←空しいけれど、いちおう、言ってみる。)

(The Big Picture, 8/3/11)

しかし、である。

今回法案が通り、米国債デフォルトの危機は回避されたものの、連邦政府はお茶会に突き上げられて歳出削減の証文にハンコ押さされたわけだから、【財政緊縮】の効果はいやおうなく迫ってくる。財務省は来週にも$72Bnの長期債を発行予定で、国家のキャッシュフローはなんとかなるとはいえ、経済がドツボに未だはまっている真っ最中に歳出を切り詰めてゆくとなると、誰もが頭に思い浮かべるのは、1937という呪いの数字。(呪いの数字については、拙ブログ『この道は(ルーズベルトが)いつか来た道?』参照。)

市場のセンチメントが悪化するのも、あたりまえ。

連邦政府の歳出削減のあおりは、当然、州自治体政府への補助金カットという形で跳ね返ってくる。失業率9%から下がらないでいるというのに、補助金も削られて、いったいどうなっちゃうんだろう・・・。我が家も今以上に生活切り詰めて、それこそ引き出しの中に10円玉転がってないか探すようになってしまうのだろうか・・・。

なんとなく気持ちがどよんと暗くなってたところに、ダメ押しの記事を見つけたので、紹介しておく。

(Calculated Risk, 8/3/11)

National Employment Law Project (NELP)が発行した分析レポートによると、失業保険のベネフィットを減少させている州が増えていて、州の失業保険支払い用基金が枯渇してしまった州は連邦政府から借金して失業保険払ってる、というのである。

米国の場合、失業保険の支払いや基金の管理は州にまかされているが、支払い期間は26週(半年)という一種の不文律があって、どの州も過去50年間にわたり、それでやってきた。ところが、州によってはいよいよ無い袖は触れなくなって、州独自の判断により2011年から支払い期間がそれより短くなってしまった州が複数ある、という。

Michigan, Missouri, and South Carolina cut their available weeks down to 20; Arkansas and Illinois cut down to 25; and Florida cut to between 12 and 23 weeks, depending on the state’s unemployment rate. Double-digit unemployment in Michigan, South Carolina, and Florida did not discourage lawmakers there from making the cuts.

... Indiana changed the formula it uses to calculate weekly benefit amounts so that the average unemployment check will drop from $283 to $220 a week.

ミシガン、ミズーリ、サウスカロライナは20週に。アーカンソー、イリノイは25週に。フロリダは州失業率に応じて12週から23週の間に。インディアナは計算フォーミュラを変更して週の失業保険の額を$283から$220に下げた。ミシガン、サウスカロライナ、フロリダは失業率が2桁になっており、やらざるを得なかった。

さらに、連邦政府から借金している分については、

Throughout the recession, states with inadequate unemployment insurance trust fund reserves have relied on loans from the federal government to pay state unemployment insurance benefits. This September, states will begin paying interest on these loans, and starting in 2012, the federal government will raise taxes on employers in borrowing states until loans are paid in full, as required by the law.

リセッションの期間、失業保険用に積み立ててあった基金の残高が不十分な州は、保険金支払いを連邦政府からの借り入れに頼ってきた。この9月から、この借り入れに対し利子が発生する。さらに、2012年からは、連邦政府は借り入れ残高がある州の雇用主に対し、満額返済されるまで、課税額を引き上げるということが法律により決まっている。

失業率は、下がるどころか上がっているわけでして。

えーーー・・・と思っていたら、さらに、こんな記事が。

(WSJ, 8/3/11)

(Market Watch, 8/2/11 - hat tip @masayang)

ホワイトハウスは、共和お茶会がゴリ押しし続けた「増税なき歳出削減」だけでは予算をバランスさせることはできない(財政赤字を減らすことはできない)と考えているわけだ。

上のWSJの記事によると、今回両党が合意したプランのベースになっているのは、3.5兆ドルに登る税収増を見込んでいるらしい。

(WSJより引用)There's a lot of chatter among conservative Republicans that they may have just signed on to a stealth $3.5 trillion tax hike. That's because the "baseline" that congressional scorers use assumes that after 2012, all of the Bush tax cuts will expire and the Alternative Minimum Tax will start to hit up to 25 million tax filers. It also assumes the full implementation of several hundred billion dollars of Obamacare taxes that kick in after 2013.

「増税の《ぞ》の字がひとつでも入っていたら、絶対に絶対に合意なんてしませんからーっ!」と叫んで3度に渡り両党会議をすっぽかした共和だったのに、最終合意案のベースになっていた3.5兆ドルの歳入増分については気がつかなかった、とでもいうのだろうか。

WSJの記事には、「合意」はしたものの、その合意案に書かれている税金の部分については、双方がそれぞれ違う「解釈」をしているようだ、とある。

Which is to say that the two parties are offering very different interpretations of what the debt deal says about taxes. Let's hope it doesn't take three months to get this straightened out.

WSJの結びの文章そのままに、この解釈の違いをハッキリさせるために、また何ヶ月もの時間を費やすなんてことにならないでもらいたい。再びあの猿芝居が始まるのかと想像しただけで、すでに食傷気味の筆者なのである。

Thursday, June 2, 2011

この道は(ルーズベルトが)いつか来た道?

前回、ギリシャの格付けCaa1という記事を書いてポストしたら、やはりM社が、(政争にケリつけられずウダウダがこれ以上続いたら)米国債の長期格付けを引き下げ方向で見直しにかける可能性があると「警告」したというニュースが出た。(「警告」です、あくまで、「警告」。)

(Reuters, 6/2/11)


米国債発行額上限をめぐって、米議会では相変わらず、民主と共和で対立し合ってて、完全に政治問題化している。共和側はオバマが提案した歳出カットでは納得できない、もっともっと歳出へらさなければ、上限引き上げの方だってウンと言わないぞ、と言い張って、上限リミットを「人質」にしてオバマ民主政権を追い詰めることに躍起になっているわけである。

この問題については、4月18日のMHJ記事『合衆国が取れないリスク』にも書いたので参照されたし。

しかし、昨日(6月1日)の午前に出されてきた雇用統計と製造業統計では、往復ビンタ張られた米経済である。

(ウォール・ストリート・ジャーナル日本版、6/2/11)

(以下WSJ日本版より引用)

米サプライマネジメント協会(ISM)が1日発表した5月の米製造業活動は拡大幅が大幅に縮小。一方、別に発表された同月の民間部門の新規雇用数もほとんど増えず、米国の第2四半期(4-6月)経済に対する懸念が増幅されるのは必至だ。 
(引用終わり)

早朝からこのニュースで冷や水ぶっ掛けられた昨日の市場は、10年債は3%割れ、ダウは280ポイントも下落。今日2日も、明日金曜日の雇用統計を控えていて様子見モード、10年金利は冒頭のニュースで3%を戻していたものの、とてもじゃないが積極的にリスク・オン(Risk On)などというムードは、どこにもなし。

なのに、ワシントンDCの舞台に目を移すと、相変わらず「歳出カット歳出カット」と、ナントカの一つ覚えのように絶叫しているわけである。

いまここでディープな歳出カットをマジで実行したらどうなるのか、米国債発行できずに本当にデフォったらどうなっちゃうのか・・・そんな不安は下院議長のベーナーはじめ共和の側だって少なからず抱えているわけだし、「ここで限度超えてやりすぎたらブーメラン・・・」という自覚と計算も働いている。

なのに、それでもやっちゃう内向き政治パフォーマンス。

要するに、この問題はほとんど純粋に「政局化」してるわけだ。(別名:大統領予備選前のオバマいじめ)

こっちは毎日の食費やガソリン代の遣り繰りで忙しいっつーに、アホか。

ん?そういえば、極東のどこかでも、被災地のみなさんほったらかして、首相降ろしの内輪パフォーマンスを延々と繰り広げていた某国がありましたね。

(下の写真は、政局猿芝居を呆れて眺めている国民の目。場所は変われど、目つきは同じ。)



★   ★   ★   ★

ポール・クルーグマンはじめ、ケインズ派のマクロ経済界の重鎮達は、こういう政界アホ芝居が煮詰まるだけ煮詰まって、本当に引き締めモードに突入してしまうかも・・・と警戒しており、最近マクロ経済のフロントでは、あちこちで「1937」という数字が踊る。

1937、つまり、別名『Roosevelt Recession』と呼ばれる1937年~38年にかけての景気後退のことだが、当時のルーズベルト大統領と中央銀行は、大恐慌から回復したという判断のもとに歳出削減と金融引き締めを行い、その途端にまたまたリセッションに逆戻りしちゃった、という過去の失策を象徴する数字である。

クルーグマンは、経済成長が継続すると期待されだした2010年の初めにも、NYタイムズに『あの1937年の雰囲気』という題のコラムを書き、失業率はまだまだ高い、経済指標がちょっと良くなってきたからといって、ここで軽はずみなことはしないほうがよいと釘を刺した。

(NYTimes, 1/3/10)


そして、昨日もまた、自己のブログに『2011年は1937年?』という短い記事を掲載。

(NYTimes, 6/1/11)


この短いエントリーでクルーグマンはNY連銀のエコノミストGauti Eggertssonの記事を紹介し、1937年と現在とで米国のマクロ経済の状況は非常に似通っていると主張している。皮肉屋のクルーグマンらしく、「ただし、連銀は同じ間違いは犯さないと言うGautiの意見には反対だ、そりゃー、(Gautiは連銀の人間だから)連銀のリサーチは間違えないかもしれないけど、ECBはきっと間違いを犯すだろうし、連銀理事会だって政治的なプレッシャーをいまガンガン受けていて何やるかわからないもん」と辛らつな書き方をしている。

MHJ筆者が目を惹かれたのは、「1937年当時の失業率は2011年の現在よりも高かったが、現在と同じ測り方に引き直せば、10%以下になる」という一文。

ちなみに、NYタイムズの記事によると、大統領選の投票日に失業率が7.2%を超えていた政権で再選を果たした大統領は、ルーズベルト以来、ひとりもいないそうである。

Thursday, May 12, 2011

米国の輸出、過去最高

長期でみると合衆国の米国の輸出額は過去最高、文字通り「V字回復」の格好してるぞ、というグラフ。(期間1992年~2011年3月)

Source:Clusterstock

ついでに、ここ2年ほどだけ見ると、輸出入のギャップは赤字幅拡大してるぞ、というグラフ。(期間は2009年3月~2011年3月)


もうひとつ、ついでに、ドル・インデックスの推移。(期間5年)

Source: Finviz



さらに、たった今(5月12日、8:00AM)ロイター速報で入ってきた、「米経済が必要とされるレベルまで回復するには、あと数年(several years)はかかる」というオバマの言。

Tuesday, April 26, 2011

チェルノブイリ事故25周年

25年前の今日4月26日、ソビエトのチェルノブイリで史上最悪といわれる原発事故が発生した。

福島原発の問題解決がほとんど進展していない中での、25周年記念。

今日Nature誌のサイトに25周年を記す記事があり、その中で、福島原発の事故は、a bitter irony (苦々しい皮肉)と表現された。

(Nature, 4/26/11)

皮肉というのは、福島原発の事故勃発で、長いこと人々の記憶から薄れてきていたチェルノブイリ事故に再びフォーカスがあたることになり、ほうぼうからチェルノブイリ事故の研究用にと多額の寄付が寄せられることになりそうで、福島での事故の「最大の恩恵」を受けるのが、よりにもよってチェルノブイリ、という意味だ。

この記事に『チェルノブイリの遺産』という別記事へのリンクが紹介されていたので、合わせて読んだ。

(Nature, March 2011 issue)

記事の内容については、また時間のあるときにでも書くとして、今日は、そこにあった年表だけ紹介したい。

福島原発が撒き散らした放射能は、チェルノブイリのそれよりもずっと少ない、ということはこの記事でも述べられているし、日本のケースはまだ起こったばかりで、いま、なにがどうしたと素人の私がわめいたところで、どうなるものでもない。

ただ、この年表をみながら思ったことは、事故から25年も経ったいまなお、原発施設近くの町はゴーストタウンのまま、チェルノブイリ事故のクリーンアップが「完了」するのは2065年予定という、原発事故の【傷跡の深さ】のほうだ。

これが、その年表。(横に拙訳を入れた)

まずは、事故が起こった年、1986年。


その後の流れ・・・


2065年まで、あと、50年以上―。

福島の事故の後始末にも、非常に長い年月がかかることは必至。日本国はこうした事故を2度と起こさないためにも、また、チェルノブイリで長いこと忘れられていたという放射能の人体に与える健康被害の研究や、その他高度な専門的研究も含め、今後、膨大なおカネを投入し続けてゆく必要があるのだ、ということを改めて思い知らされた。

(大変読み応えある記事で、筆者も、もう一度じっくり読むつもり。)

そしてさらに、チェルノブイリ事故が残した、別の大きなレガシー(遺産)―。

それは、この25年間で新しい原子炉の建設が世界中で目立って減った、という事実だ。

下のグラフは、横軸が原子炉の年齢、縦軸が原子炉の数、である。

これをみると、事故が起こった25年前付近をピークとして、より若いリアクターの数が目に見えて減っている。


原子力発電のクリーンエネルギーという側面を強調した「核ルネサンス」などという言葉がもてはやされ、さらには、経済成長めざましい新興国の電力需要を支えるために思わず目を見張るような数の新原子炉建設計画も出され、それらに興奮した証券市場は、思惑先行で沸きあがり・・・と、福島原発事故前までは、ここ数年、かなり調子いい話ばかり実際やっていたんである。

だが、チェルノブイリ直後からこれだけのインパクトが実際にあり、今回の事故が上塗りともなり、新原発建設が数年前の金融屋の思惑通り盛り上がるとは、考えにくいという気もする。

また、これは、老朽化した原子炉ばかりを抱える米国にとっては、政治的にも経済的にもさまざまなインプリケーションのある話である、ということだ。これについても、もう少し自分の頭を整理してみたい。

最後に、ゴーストタウンと化したプリピャチの街の、今の写真を。(Tumblrで以前紹介したもの)



写真はBBCのフォトアルバム『Chernobyl's Lost City』から。(←この写真集、重い写真ばかりです)

Monday, April 18, 2011

合衆国が取れないリスク

S&P、米国債の格付け見通しをネガティブに変更。

(Standard & Poors, 4/18/11)

週明けの今日は、このニュースが、何と言っても目立つニュースでありました。

CNBC局では一日中、「アウトルックをダウングレード」、「アウトルックをダウングレード」と叫びまくってて、筆者はそのたびにイライラした。

というのも、見通し(Outlook)というのは変更(Revise)されることはあっても、格下げ(Downgrade)されることはないんである。「格下げ」とか「格上げ」という用語は、格付けとしてつけられている【記号】(AAAとか)が実際に変更になるときに用いる言葉。

だから、格付けアクションの3段階それぞれで使われる動詞の用法は、

1) 見通し(Outlook)が変更になるとき
S&P revised (あるいは changed) the outlook to negative.

2) 格付けの見直し(Review/Watch)に入るとき
S&P placed the AAA rating on negative watch.

3) 格付けが変わる(格下げ、格上げ、あるいはそのまま)とき
S&P downgraded the rating from AAA to AA.

と、こうなるわけである。

筆者の知る限り、主要メディアの多くはいつまでもこの違いが理解できない。今日のCNBCなどはその筆頭だが、まぁ、CNBCの場合は、そもそもが株式しか念頭にないような局なので債券オタクの用語など理解する気すらないのは仕方ないとしても、金融関係の記事では筆者もひごろ信頼を置いているロイターまでもが、いつまで経っても同じ間違いを繰り返すというのに、ジャーナリストの学習能力の限界を感じてしまう筆者である・・・

・・・と、いきなり重箱の隅ツツク的オタクな話題で失礼しました。

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しかし、最上級のAAA格のクレジットの「見通しが悲観的」になっただけで、米国債がすわデフォルトなどという話に発展するわけが、そもそものところであるわけないんであって、マーケット的に見れば、今回のS&Pのアクションの背景に、いまさらびっくりする材料があるとも思えず。

だいたい、S&Pが米国債の格付けにプレッシャーかかってるぞとウダウダ言い出したのは、2008年の9月17日、リーマン崩壊直後のことである。

米国マクロ経済はその前年からリセッションに入っており、金融市場の下支えのために連銀は2007年から流動性供給で上へ下への大活躍中、それでも不安定さを抑えられずにグラグラしてるところにリーマンショックで、米経済はグシャッと潰れた。

その後回復に向っているとはいえ、米失業率は依然として高水準で、財政赤字は膨張の一途、住宅価格はまた下降中・・・と、現在の米経済のファンダメンタルズ言うなら、まさに『なにをいまさら―WHAT’S NEW?』の世界である。

ちょうど一年前ほど前にもS&Pは、米政府がすぐすぐ財政緊縮に取り掛かることなどできるはずないのを承知しながら、財政赤字削減策にマジメに取り組まないと米国債トリプルAは維持できんかもしれんからね~、と確信犯的に脅していたんである。(去年3月12日のFT記事

さらに言えば、1週間ほど前の4月11日、米債券ファンド最大手のPIMCOが米国債ショートという報道があった。格付け機関が米政府にコンタクトを取ってるらしいみたいな話は、どこからともなく漏れてくるのは常なので、PIMCOのニュースで「何か」が動いてるんだなと直感した市場関係者だって皆無じゃない。(もうトレーディングフロアの傍にいない私ですら、何か来そう・・・と思ったぐらいなんだから。)

だから、いま、S&Pが出てきて、ネガティブだと言ったぐらいで、エッとおどろいてるような市場関係者がいたら、「あなた、いったい、これまで、どこ見てたんですか?(棒読み)」というような話なわけ。

それでもメディアが「(見通し)ダウングレードだ」とほうぼうで騒ぎ立てるもんだから、たかだかアウトルックがネガティブに変更された程度で心理的にゴーンとやられた米株市場は、前場で一時250ポイントも一気に下げ、【心理的】なオーバーリアクション全開。これで銘柄によっては絶好の買い場ともなり、午後には少し落ち着いてインデックスは140ポイントダウンまで戻した。(心理的にゴーンとやられるのは、株相場ではいつものことw。そういうところ、意外とヤワw)

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S&Pが確信犯でウジウジやってた一年前と比べて、何か決定的に変わったことがあるかといえば、去年の11月に中間選挙でティーパーティの力を借りた共和が下院でマジョリティを奪い、オバマと彼をとりまく民主側と共和側の政局での対立がいっそう深まり、米国債近辺の政治上の不協和音がリスク要因として以前に増して認識されはじめたこと、である。

つい先日も、大統領の予算案で民主と共和が歩み寄りを見せることができず、米国政府がシャットダウンに追い込まれるのではないかという騒ぎにまでエスカレートしたことを見れば、共和側のオバマ政権弱体化に向けた執念と締め付けのすさまじさは、傍目にも感じられるところであろう。

そして、今回のこのS&Pの米国債格付け見通し変更であるが、これはまさに、そこの部分(=政局)に影響を与える話であるわけ。


昨日(17日)のNBC報道番組『Meet The Press』にガイトナー財務長官が出演、米国債発行上限について言及した部分のビデオがここにある。
リンクはこちら:http://www.msnbc.msn.com/id/3032608/



このビデオの冒頭で、ガイトナーはこんなことを述べている。

Congress is going to have to raise the debt limit. They understand that. That's absolutely essential to preserve the creditworthiness of the United States of America. You know, we're a country that meets its obligations, and we have to meet our obligations, and they recognize that. 
議会は発行額上限を引き上げるだろう。彼らもそれは承知している。アメリカ合衆国の信用力(creditworthiness)を維持するためには、それが絶対必要不可欠なのです。支払い期限が来たら約定どおり支払う、必ず支払い義務を果たさなければならない、合衆国とはそういう国家である、彼らはそれを理解しています。

「しかし、議員の中には、上限引き上げ問題を政治的な駆け引きの材料に利用しようとしている者もいるのではないか」というキャスターの質問に対し、

...the leadership understand that you can't play around with this, you can't take it too long.  And those people up there who are telling people that you can take this to the brink because it gives them some leverage, they're going to own the responsibility for the risk that creates for the American economy.
国家の中枢部は、上限問題に遊び半分な気持ちで取り組むことはできないし、ダラダラと時間をかけることもできないというのを理解している。自分の立場をより有利に進めるのを目的にこの問題をギリギリまで先延ばししてやろうとふれ回るような末端の政治家がいるなら、それが米国経済にもたらすリスクについては、彼らが全面的に責任を負うことになるでしょう。

ガイトナーはさらに、こう続けた。

...if you allow people to start to doubt whether the United States of America will meet its obligations, that would be catastrophic, and we can't take that risk.
アメリカ合衆国の債務返済能力に人々が少しでも疑いを抱き始めるようになるのを放置すれば、それは破滅的な状態を導くことになるでしょう。私達はそんなリスクは決して取れないのです。

「私達はそんなリスクは取れない」――そう、アメリカ合衆国がトリプルAじゃなくなるなんて、そんなことは有り得ないし、何が何でも阻止してみせる、ガイトナーはそう言ってるわけですな。

この番組に出演したとき、ガイトナーは、S&Pが見通しをネガティブにするつもりであるというのを、既に知っていた。

ロイターによると、ホワイトハウスがS&Pからその旨を聞かされたのは金曜日だったそう。

格付け会社が、格付けされる側(この場合は米政府)とどんな折衝をして、どんなコミュニケーションとって・・・といったことは、そのプロセスを実際に当事者として体験したことがなければ、なかなか理解されずらいが、こうして公に発表される何週間も何ヶ月も前から、当事者の間では、あーでもねーこーでもねーと、延々と問答がウジウジ繰り返されるわけで、今回のアクションだって、米政府にとっては、寝耳に水でもなんでもない。

これは筆者のスペキュレーションだが、政治的足踏み状態がこれ以上長引き、上限引き上げに手間取ることになれば、アウトルック変更程度では済まないかも・・・と、S&Pの方からヤンワリと示唆されたのではあるまいか。ここで引き上げないとウォッチに載っちゃうかも・・・ドキドキ・・・

しかし、ここで上限上げたからとて、それがすなわち上限を青天井にするという意味にはならない。なぜなら、青天井にして現在のペースで米国債を発行し続けたら、むしろ、米国の信用力はさらに悪化し、本当に見直しのプロセスに突入してしまう恐れがあるわけだから。

「クレジットウォッチに載る」(このエントリーの最初にあげた2番目のアクションね)は、見通しネガティブどころじゃすまないインパクトを生みますからね。ウォッチに入ったら、実際にDOWNGRADEになるかもしれないんだから。

上限引き上げをいかに早急にやらんといけないかというと、実はもう、上限の$14.2trillion超えちゃって、$14.3trillionになってるという話が、今日のZerohedgeに出ていた。秒読み状態。

上限いっぱいになってしまい、必要なときにも発行できない状態が長く続くと、財務の柔軟性が失われて、それはそれで米国の信用力にはネガティブになる。

ということで、ハエのようにうるさい格付け機関を黙らせてアウトルック変更程度で留めておくためにはひとまず上限を引き上げるけれど、共和に対しては、それとの「交換条件」として、オバマ現政権は、財政支出カットの額を共和寄りの条件で飲む方向で議会で圧力かけられること覚悟、そういう話に進んでいってるわけである。

共和リーダーのベーナー下院議長の耳にも当然この話は入っているわけで、ベーナーとて、「米国の信用力が下がって米経済を揺るがすリスクが発生したら、その責任は取ってもらう」など言われてすごまれても、すぐメソメソしちゃって、そこまで責任とれるような器じゃないんで(笑)、引き上げについては、最終的にはうなづいてGOサインを出すだろうというシナリオが市場では走ってる。

ここから共和側に政治的な意味でさらに有利な展開に進むかどうかはまだわからないが、とりあえずは、S&Pの今回のアクションが持つ短期的なインプリケーションは、市場には大してなくとも、政治フロントにはある、と読めるのではないでしょうか。

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最後に、格付け機関について。

見通しネガティブになったのに今日のイールドに影響出てないとか、格付け機関は地に堕ちてもはや影響力ない、とかいう意見も散見されるが、そもそものところでデフォ確率にも、マーケット的にも大して意味のない動き(あったとしても既に読まれていた話)なんだから、そういうどうでもいい話に落としどころを見つけようとしないほうが、いいよ。

格付け機関に対する世間の評価がどうであれ、債券市場における格付けの「存在」そのものは、過小評価しないほうがいい。なんだかんだいって、そこに「ある」。

格付け機関の言ってることなど、しょせん権威もなにもない一介の民間会社の意見、そんなものはどうでもよし、というのは、本質的には、事実その通りであります。

けれどね、そうは言っても、もしも、米国債が本当にAAAから堕ちるなんてことになってごらんなさい、そのときは、「フン、しょせん格付け機関だろ・・・」なんて皮肉な笑い浮かべてなんていられない事態に、きっとなるんだから。

その「しょせん格付け機関、などといってられない事態」こそが、上のビデオでガイトナーが言った「米国の返済能力に対し僅かなりとも人々が疑いの目を向ける」事態であり、それは、アメリカ合衆国が取ることのできないリスク、取るつもりもないリスク、なのである。

Friday, April 1, 2011

ウォルマートCEO「インフレは速いペースでやってくる」

Wal-Mart CEO Bill Simon expects inflation
(USA Today, 3/30/11)

  • 最近米で話題になった動画。米小売の巨人ウォルマートのCEOビル・サイモンがUSA Todayとインタビュー。
  • 「毎日が最安値」を謳い文句にしている同社も、コスト高を強く警戒。
    • (引用:Still, inflation is "going to be serious," Wal-Mart U.S. CEO Bill Simon said during a meeting with USA TODAY's editorial board. "We're seeing cost increases starting to come through at a pretty rapid rate."
  • 原料高に加え、中国の人件費増、ガソリン高による運送費増などがのしかかり、この6月にも店頭の最終小売価格にそれが現れてくると指摘するアナリストも。

Monday, March 14, 2011

日本の復興は世界共通の願いである

3月14日のFinancial Timesに、日本経済の再生を願って、といった趣旨の寄稿文が掲載された。投稿者は、世界最大の債券ファンドPIMCOのCEO、モハメド・エルエリアンである。

How Japan’s economy will eventually rebound
(Financial Times, 3/14/11)

いま日本は大変な災害に見舞われて、人的救援に多くの注意とリソースが裂かれている。でも、日本が再生するには、ヒューマン・インタレストのみならず、経済的な意味での復興というルート抜きにはありえない。この大悲劇がカタリストとなり、日本の再生に向けて歩んでもらいたい。世界中が日本の復興を願っている。

そのとおりであります。

この記事をツイッターで紹介してくれた@gion_mktさんが仰る通り、市場関係者じゃなくても読む価値ありとわたしも感じました。

それで、以下、勝手にザーと訳しました。(細かいこというと意訳しすぎの部分はあるかもしれませんが、急いで訳したんでゆるしてちょ。太字はMHJ筆者によるもの。)

いかにして日本の経済は復興するか
by Mohamed El-Erian

Thursday, February 17, 2011

合言葉は「エジプトの次はウィスコンシン」

財政難に喘ぐウィスコンシン州で、共和党の新知事が歳出カットを断行しようとしたところ、それに反対する住民らが猛反対、とりわけ削減対象となる公務員らを中心にプロテスターと化した群集が広場に集結しデモが繰り広げられている、と話題になっている。

同州ではデモに参加するため教師たちがいっせいに休暇を取り、マジソン市の公立学校は2日間休校になっているそうだ。


Tuesday, January 25, 2011

ダボス会議に出席なさりたい方のために

また、今年もダヴォス会議の時期が近づいてきた。

このダボス会議に実際に出席するために、どれくらいお金がかかるものなのだろうか。

24日のNYTのDeal Bookが、ダボス出席にかかる経費の一部を垣間見せてくれている。

もし貴方がダボス会議に出席なさりたいならば、以下の料金表を参考に。


* <無名の庶民向け> 一番べーシップなプランで、メンバー料金5万スイスフラン($52000)プラス入場チケット一枚$19000、合計$71000。
* <少し顔知れてる方向け> Industry Associate プランにアップグレードなさると、$156000(メンバー料金プラス入場チケット一枚含む)
* <CEOなどハイエンドクラス向け> Industry Partnerプランにアップグレード、$301000(同上)
* <カバン持ちを複数引き連れるレベルのお客様向け> Strategic Partnerプランにアップグレード、メンバー料金$527000、プラス、お連れになるカバン持ち要員それぞれに規定の入場チケットを別途お買い求めいただきます。

また現地での宿泊・交通等につきましては、

Tuesday, January 18, 2011

似てますね

前回のエントリーで、FRBのバランスシートが膨らんでますね(Exitは容易じゃなさそうですね)という話をしましたが、こんなグラフを見たので、いちおう貼るだけ貼っておく。

左は日本銀行のバランスシートの膨れ具合。右はFRB連銀。




Monday, January 10, 2011

FRBの年間の儲け、$81ビリオン

連銀Federal Reserve Banks12行の年間プロフィットが$81ビリオンを記録したというニュース。


Fed profit hits $81 billion (Fortune, 1/10/11)



フツウの銀行がプレスリリースで決算報告をするように、中央銀行もいちおうリリース出すんである。

FRBのリリースはこちら

リリースの概要は以下の通り。

Saturday, January 8, 2011

雇用正常化に4~5年はかかる(by ベン)

あけましておめでとうございます。(もう1月の8日ですが。)今年もよろしくお願いいたします。


(上の年賀状は1951年の絵葉書だそう。画像はこちらから)


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さて、12月いっぱい続いた米株市場のウキウキぶりは止まるところを知らず、今年に入ってからもウキウキ感が続いている。