2011-04-05(Tue)

花咲くいろは #01 十六歳、春、まだつぼみ

ドラマチックな人生を! 

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予定外?の新番レビューです。

大震災以降生活パターンが変わってしまったため深夜アニメレビューもここらが潮時か…と思っていたけれど、本作の初回があまりにツカミがオッケーだったためとりあえず初回だけかんたんレビューを。

制作の「P.A. Works」によるオリジナルストーリー、コミカライズのマンガ版が出ていますが私は未読です。監督は安藤真裕氏、「CANNAN」の監督以前にも私的にお気に入り作品のコンテ・演出・作画監督を務めた経歴を持つ方なのでメル絵の魅力と合わせて今期随一の注目作と言えましょう。キャラ原案は前述のとおり岸田メル氏、アニメキャラデザはP.A.作品の歴々を手掛けた関口可奈味氏、シリーズ構成もP.A.作品と関わりの深い岡田麿里氏とフルメンバーでありますね。

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ファーストカットは本作の主人公、ドラマチックな人生に憧れる「松前緒花」が台所仕事をしながら母親との会話シーン。パッと見ただけで相当フリーダムな人生を送ってらっしゃる雰囲気の母親は作家かライターか、一方の緒花はそんな母親の扱いも手慣れた様子、この親あってこの子あり?(笑。てな所へ「母親の彼氏」から電話が来ました。このワンシーンだけで松前家の家庭環境をズバリと見せ、さらに緒花が旅立つ理由の伏線まで詰め込む作りはさすが。こりゃ一瞬たりとも目を離せません。

今どき珍しい紺セーラーの制服に身を包んでの学校シーン。男友達の「種村孝一」と並んで座り「缶スープのコーン」についての会話はこの後に描写される告白シーンへ繋がる彼の性格を描写したもの。飲み口を必死に吸ってコーンを取りたい緒花は直球な性格? 対する孝一は「缶に水を入れて浮いてきたら別の入れ物に入れてコーンを摘み取る」という回りくどくも確実な方法を提案します。すなわち「緒花と一番親しい男子は俺、だからいつか自分の気持ちに気付いてくれるに違いない」と急いで直接行動を取らずじっくり待つ回りくどい戦法だったのですが…まあ結果はご存知のとおり。あはは。

二人での帰宅シーンは縁石歩きの緒花が印象的。歩道と車道の境目を孝一から離れてトコトコ歩く緒花は綱渡りのような「ドラマチックな人生」に憧れ、そして孝一のことなど眼中に無いこともチラリと窺わせます。赤信号ギリギリで道路を渡って孝一を振り切ってしまうシーンも二人の感覚差を象徴してました。夕暮れの街にポツポツと灯りが点いて「緒花の行き先」を照らしていくカットも良し。ドラマチックな人生に憧れつつも自分の行き先を示して欲しい、この年頃の揺れ・危うさと反面教師による「着実な人生」が緒花の中に同居している様子がよくわかります。

などなど校舎や街並みを美麗に描いた背景美術も本作の見どころで、各シーンで見せるキャラの繊細な表情描写と合わせて映像を盛り上げます。この辺のクオリティの高さもさすがP.A.ですね。開始数分で本作世界にどっぷり入り込んでしまいました。

さて自宅へ戻った緒花を待っていたのは冒頭でチラリと窺わせた「母親の彼氏」による騒動…借金取りに追われての夜逃げ劇は思わず鼻血を催すほど緒花の人生をドラマチックに変えるものでした。いやはやどんだけフリーダムな母ちゃんなんだか(笑

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突然のお別れを孝一へ告げる緒花、夜の公園にてそれを聞いた孝一は今までの遠回りな態度を改め「好きでした!」と直球な告白へ。過去形なのか!?(笑。突然の告白に目を丸くする緒花、しかし孝一は自分が言いたいことだけマシンガントークすると脱兎の如く去ってしまいました。あははは! 一人残された緒花はボーゼン。後の様子からして緒花的にまんざらでもなかったみたいだけれど…高校一年生にとってこの遠距離は関係の終了を意味したのか孝一は返事を聞くまでもなく諦めてしまった?

道中の列車内にて「飴ちゃん」をくれたお婆ちゃん。未だ見ぬ喜翆荘のお婆ちゃんもこんな優しい人だったらいいな、と自らの運命を知らぬ緒花は甘いこと考えてます(笑。湯乃鷺駅へ到着するとさっそく目的の喜翆荘へゴー! トコトコ歩く道すがらの風景も力入ってました。スゴイね。

「何ということでしょう!?」

そして到着した喜翆荘は映画の一コマみたいな立派な旅館で、これから世話になる場所だというに思わず写真を撮ってしまう辺り今どきのジョシコーセーらしい? 美しい風景の邪魔になる雑草(笑)を引っこ抜いていると現れた黒髪ロングの美少女「鶴来民子」、しかし民子のリアクションは想像を絶するものでした。

「死ね!」

民子の中の人は小見川千明さん。「ソウルイーター」のマカ役以来小見川声中毒の私はたいていの作品でダメ絶対音感に引っかかるのだけれど、いつもの彼女とは思えぬ声に思わず再確認してしまった。いつの間にこんな芝居ができるようになったのだろう。緒花が抜いた草は実は「野蒜(ノビル)」で民子が食用に植えたもの、見知らぬ女がいきなりそれを引っこ抜いている所を見ればお怒りもごもっともですがいきなり「死ね」は無いだろう?(笑。てな具合に緒花&民子は最悪のファーストコンタクト、ただでさえ気難しそうな民子だけれどいろいろ緩い緒花はあまり堪えてない? 民子の暴走を止めに入った内気そうな仲居さんは「押水菜子」、後に明らかになりますがこの三人は同い年ってことで揃って学校へ行くことになりそう? 旅館内だけでなく学校でもいろんな騒動が起こりそうです。

てな様子を上から眺めるお婆ちゃんは喜翆荘の女将「四十万スイ」。斜に影が入った登場シーンからしてタダ者では無さげでしたが…飴ちゃんをくれるお婆ちゃんを想像して表情を緩めた緒花の顔面にいきなり雑巾を投げ付ける厳しさ、きっつー! しかしテンポいいねえ。初回Aパートでここまで描いてしまうとは。

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てなわけでドラマチックな人生を期待していた緒花は想像以上のドラマチック展開に面食らい、一方煙管を吹かしながら厳しい「女将」の立場を崩さないスイとの対比がこれまた素晴らしい。スイと緒花母親は仲が悪いらしいけれどそれでもたいてい「孫はかわいい」もので、おそらく物語終盤にてスイは究極のツンデレになるような気がしますが…とりあえず緒花を「孫娘」ではなくあくまで「従業員」として厳しく扱う流れはこの手のストーリーとして定番、アニメというより昼ドラ、朝の連続テレビ小説のような作りですね。否が応でも同制作による「true tears」を思い出します。あの作品も毎回胃を痛めたっけ。

言い付けどおりにジャージに着替えて廊下を雑巾掛けする緒花、ほとんどヤケクソみたいですが言われたとおり雑用に精を出す素直さは評価できます。てなところへ現れたメガネ男はママの弟(つまり叔父)の「四十万縁」、一直線に雑巾掛けの緒花と衝突して緑色の膨らみをモミモミシーンは…緒花ってこんなに巨乳だったのか!といきなり乳揉みハプニングかと(ケツでした。見るからに軽い調子の縁はいかにも旅館の若旦那、派手なクルマでやってきた経営コンサルタントの女と何か問題を起こしそうな…これもまた旅館モノの定番ネタですね。

噂好きな仲居頭「輪島巴」も旅館モノに無くてはならないキャラ。中の人は繊細なお嬢様キャラが定番の能登さんですが巴の下世話なセリフをいい感じに演じてました。珍しく実年齢に近い役なので本人も楽しんでいるかも?(大きなお世話。巴は緒花を引き連れて旅館内のご案内、緒花と同様に視聴者も喜翆荘の中は初見なので緒花視点で続けられる各紹介も自然に見られます。営繕係の「豆さん」の本名が「電六」ってのはヒネっているようなそのまんまのような(笑。厨房で仕込み中の板長さん、二番板さんと遠目に紹介され、階段にて民子&菜子とバッタリ。ちょうど巴のケータイに呼び出しが掛かったためそこから先の案内は二人に任せることになりました。てなテンポ良い自然な流れで主要キャラを次々と絡めていく作りは上手いなあ。

しかし緒花は民子からわかりやすく嫌われ、案内を続けるのは菜子だけ。内気な菜子は言葉少なに夕陽が眩しい高台から見える街並みから「通っている学校」を示し…綺麗な風景に見とれながらも無口な菜子と会話が続かない沈黙タイムが妙におかしいワンシーンでした。あはは。

民子は喜翆荘にて板前修行中? 桂剥きの厚さについて徹から叱られている民子はいつもの態度と違って殊勝なものです。板前修行は辛いね。てな様子を見かねた緒花は空気を読まずに余計な口出し、思ったことを胸に秘めない素直さ・積極性は評価できるけれどそれを善しとするのは「子供」だけです。

「怒ってばかりじゃ子供は伸びませんよ」

てな緒花のご高説に烈火の如くお怒りの民子。先出の家庭環境からして緒花はそういう教育方針で育てられたのでしょうね。世間知らずを怒鳴ると共に頬を染めているのはいったい何を意味するのか? そんな厨房風景もまた先行きが楽しみ。

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さて今回のハイライト。自分より後に寝て先に起き、厨房にて板前修業に励む民子への気遣い。カビ臭い布団を干してあげようと窓に出した緒花でしたが、挨拶しているうちに布団が下へ落ちてしまいました。あらら。しかもその窓は客室がある表側の窓で、いきなり落ちてきた布団にお客様もさぞかし驚いたことでしょう。

そのお詫びに客室で土下座の女将、世間知らずの緒花が「申し訳ございません」と言えないのもお約束ながらわかりやすいエピソードです。バイトの経験すら無さそうな普通の高校生はこんなセリフが咄嗟に出てくるはずもなく、しかしいざ現場へ出たらそんな甘えは許されない。客に対しつい「ごめんなさい」と言ってしまって足を抓られ顔を歪め…その痛さで一つ一つ覚えていくのでしょうね。これからも。

女将の部屋にて不始末のお説教。緒花の気遣いもわかるけれど住み込み従業員は各自それぞれが生活環境を整えるべきであり、緒花の行ったことは「余計なお世話」以外の何物でもありません。ましてや「客室側」に従業員の布団を干すなど言語道断で、その辺の常識を持ち合わせていない上に正当化する言葉まで発し…降って湧いたような旅館勤めなので仕方ない面もありますが緒花の子供っぷり、いかにも「働いた事がない今どきの子」らしい緒花のリアクション描写は見事ですね。そんな子供が現場で揉まれてどう変わっていくのか楽しみだけれど持ち前の真っ直ぐさは失わないでほしいとも思います。

女将部屋へ呼ばれた民子は訳もわからず女将の前へ座らされ、そしていきなり頬を打たれますが口答えなどいっさいせず謝るばかりでした。理不尽な頬打ちに抗議する緒花、しかし緒花がしでかした事は「万一お客がケガでもしたら」客にとってまさに理不尽であり、それを突き付けられた緒花はようやく事の大きさに気付いたようで殊勝な表情に。しかしまあ初回っからいい感じにギスギスしてて胃を痛くさせますなあ。これが半年続くのか!?

「私も叩いてください!」

自分のせいで迷惑を掛けてしまうのはイヤ。そんな真っ直ぐな緒花を見たスイの表情は厳しいだけの女将では無いことをチラリと窺わせ、三連発のビンタで「叩いてあげた」のです。何という優しさ。この瞬間に私はスイにハートキャッチされてしまいましたよ。厳しいけれどいい婆ちゃんじゃないか! 鼻血を出しながら決して涙を見せず「ありがとうございました!」と頭を下げる緒花も天晴れ、この手のストーリーではベタベタな展開だけれどこういう流れに免疫が無い私はすっかりドハマリしてしまいました。

「死ね」

ビンタ後の洗面所での会話。民子に謝りながらも緒花はスイの愚痴を…判ってないじゃん(笑。そして民子は二度目の死を願いながらその場を立ち去り、残された緒花はボーゼンと立ち尽くすのみです。そんなモヤモヤを抱えながら廊下の雑巾掛けに突っ走る緒花、ビンタでは我慢していた涙を雑巾に落としながら「おーりゃー!」と雑巾掛けの引きカットは緒花の悔しさ、負けず嫌いな一面を見せていましたね。涙を拭って唇を噛む緒花の表情が絶品。負けるな緒花! この先どんなドラマチックな人生が緒花を彩るのか楽しみでなりません。

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今回はEDでしたが次回からおそらくこれがOPでしょう。nano.RIPE歌唱による「ハナノイロ」は歌い出しが雑巾に落ちた緒花の涙とシンクロしてじつに綺麗な入りでした。映像的にはP.A.の作画力をこれでもかと見せ、クルマに煽られひらひら舞うセーラー服から振り返ってアップの表情までいきなりキャッチーです。本編でもそうですがあの繊細なメル絵をここまで再現してくるとは驚き、緒花のふわふわ天パ髪も隙なく描写されすぎていて驚くばかりです。

セーラー服にて朝の駆けっこから仲居姿の風呂掃除、そして旅館内で忙しく走り回る流れも魅せるなあ。捲り上げた裾から伸びる緒花の脚が眩しいけれど洗い場の床に映り込まないギリギリアングルが憎い。同様に水たまりをジャンプして映り込まない絶妙光量が憎い(笑。そのジャンプシーンもさすがアクションがお得意の安藤氏だけあって見事な動きを見せてくれました。このOPだけで丼飯三杯いけそう。列車で待つ緑セーターの子は初回で登場しなかったけれど学校パートで絡んでくるキャラかな。

話の面白さに加え、背景美術もキャラ作画もシャレにならない品質だった今回。はたしてこのクオリティで半年続けられるのか心配だったりするけれど、P.A.ならばきっとやってくれるはず!と期待を込めて先を待ちましょう。もちろん視聴は継続。レビューは冒頭で書いたとおりおそらく今回限りになると思いますが、あまりに面白ければ我慢しきれず書いてしまうかも。「true tears」や「ホワイトアルバム」以来、語らずにいられない作品になりそうですし。

    

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仕事にかこつけて城端に行ったくらいにTTが好きだったんです。ええ、駅ノートに書き込みました。
WhiteAlbumほどにどろどろだと苦しいですが、このキャラ、この絵、そして少し陰のあるキャラ達が織り成すストーリーは、やっぱりNobumaさんの大人のレビューじゃなきゃダメなんですよ。
楽しみにしてますので、是非ぜひレビュー継続お願いします!!
「自粛は二次災害です」よ。

れすれす

>T/Aさん
ありがたいお言葉を!
しかし深夜アニメレビューの休止は自粛ではなくて生活パターンの変化によるものなのです。大震災以来早寝になってしまったので(笑。などと言いながらいろはの第2話も突発レビューしてしまいました。ヒマがあったらどうぞご覧くださいまし。

TT面白かったですよねえ。当時は別の所でレビューを書いていたためここには残っていませんが毎週毎週胃を痛めながら記事を起こしていた記憶があります(笑。どうやらいろははTTほど胃を痛めずに済みそう? 緒花の明るさ、真っ直ぐさは見ていて清々しいです。ちょっと危なっかしいけれどそれもご愛敬(笑
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