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2025-01

確証バイアスを利用する

 これは失敗する可能性のあるものは必ず失敗する、のか?に関連するエントリです。

 限られた複数のできごとから何らかの法則を見出す考え方を「帰納推論」といいますが、これだけではその法則が正しいかどうかわかりません。「もっともらしい」ことは言える、というくらいで終わることもあります。

 実際の自然科学研究ではもちろん、適当な調査ではなくてもっと厳密にデザインされた研究により帰納推論を補強していきます。

 しかし私たちが日常生活のなかで出会う「法則もの」(たとえば、今このブログでテーマになっている「鏡の法則」)などは、帰納推論の考え方・弱点の見分け方を身に着けてから眺めると、「もっともらしさ」があるだけで、非常に穴だらけの法則であることがわかります。

 しかし、それでも受け入れられているのはなぜかと言うと、それが「良いこと」であり「私たちの心にとってプラスになる(前向きになれる)」という効能があるからだと思えます。この法則を受け入れる人にとって、法則の厳密性や間違い探しなどどうでもいいというのが実際のところでしょう。

 これはバーナム効果でも説明できますし、いわしの頭も信心からということでも説明できます。

 前の関連エントリで示した「目が合う」出来事を思い出してください。偶然3回目が合うということが実際あるとして、そこに何らかの意味を見出そうとするのが私たちの行動です。そして、その「意味」を確認しようとするとき、私たちは自分にとって「肯定的」(この場合は「相手は自分に好意を持っている」ということが肯定的としましょう)な出来事をさらに確認しようとします。たとえば「もう一回目が合う」とか「電車の中でいつもより近くの席に相手が座る」ということをもって、「相手は自分に好意を持っているかもしれない」という判断を強化しがちです。

 このような判断のしかたを「確証バイアス」といいます。バイアスとは偏見とか片寄りという意味です。

 これがなぜバイアス(片寄り)かというと、自分にとって不利となる情報(この場合は「相手は自分に好意を持っていない」ということ)を確認することを怠りがちだからです。

 自分にとって都合のいいことのみに目を向ける、というのが私たちの行動にありがちなんですね。

 本ブログで繰り返し述べている「意味のある偶然の一致」が危うい思考法だということは、この点からもお分かりいただけるのではないでしょうか。

 なぜなら、「偶然の一致」は、常にありえます。そこに何らかの「意味」を見出しがちなのが私たちです。そしていったん意味を見出したらそれを強化する方向に考えがちなのも私たちです。

 私たちの行動にもともとそういう傾向があることを逆に利用し、ビジネスの手法として共時性などという言葉を「もっともらしく」使い「確証バイアス」を積極的にビジネスに利用するのが一部マインドビジネスではないでしょうか。

 それはもはや「正しい経済行為」とは言えないものだと思えますね。

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