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2025-01

役員構成表を見て驚く春

連日の好天で桜が満開になった。桜並木の下、花見をやろうという話が身の回りで盛り上がっている。今年の冬シーズンは忙しくてインドアのクライミングウォールに行く機会が少なかった。身体がなまったような気がする。ので、今度の日曜日はのっけから外壁なんだけど、落ちないように気をつけたいと思う。

ところで、所属している組織の今期役員構成表(予定)をみて驚いてしまった。私のところに役が二つも付いている。とりあえず、忙しいんですけど。次世代を担う若手を育てたいということのようだが、あまり若手でもないんですけど。

クライミングを楽しむ時間を削られるというのが一番の苦痛だが、仕方ない。今期をやり過ごして次期は(それまでに根回ししてw)楽させてもらおうと思う。

ところで、いつかエントリしようと思っていた話題だけど、平山ユージ氏直筆サイン入りクライミングシューズを撮った画像、どこへやったかなぁ。氏が松本にやってきたとき、クライミング仲間のご子息が、持っていたFIVE_TENのアナサジに書いてもらったもので。私がもらったわけでもないけど、書き立てほやほやだったし、レアですから。見つからないので、こそっとエントリしておこう。

値段をみて驚く春

久々の穏やかな休日、空は晴れ渡りお山は美しい。残雪を頂いた北アルプスの峰が、春霞のなかにほんのりと浮かんでいる。この山脈の向こう、海を隔てた独裁国からロケットが発射されたとは信じがたいほどの、穏やかな風景だった。

南の方からちらほらと、花の便りが届いている。こちらは連翹(レンギョウ)が黄色く色づき始めた。しかしまだ桜の蕾は堅い。日差しだけが、春の訪れを告げている。

陽気に誘われるように、物欲の虫が動き出す。空いた時間を利用して、アウトドア用品店を何軒か廻った。とはいっても、ライトなキャンプ用品を季節に合わせて販売するような一般スポーツ店ではなく、登山・クライミングギアを豊富に扱う専門店ばかり。幸い、すべての店が車で2,3時間移動をかければ廻れる範囲にあるから、昼飯を食べがてらドライブするのにも好都合だ。

なじみの店員さんと軽く雑談したり、ギアをしげしげと眺めたり、新作ウエァを(買う気もないのに)試着したりするのは楽しい。お目当ては秋冬もののソフトシェルか中綿が化繊のミドルウェア。冬物はアウトレットを狙うのが良い。中綿がダウンのものは、水に弱いしメンテが大変なので、あえて避ける。

最後の店でお目当てのものがあった。しかもミドルにもアウターにも使える薄手ソフトシェルと、化繊中綿の超軽量パーカーが、揃って特価で売り出されているではないか。まだこれから梅雨までの冷え込み対策にも使えるし、サイズもちょうど良い。早速手にとってレジに進む途中で目に付いたのが、エントリ末尾に載せた写真のクイックドローだった。

いい。欲しい。軽いし機能的だし。しかし値段を見て驚いた。普通のものなら1セット2,000円(カンプとか)から3,000円(ブラックダイヤモンドとかワイルドカントリーのノーマルクラスとか)程度で買えるのだが、これは5,000円以上する。通常、クイックドローは10セット程度買いそろえるから、全部買ったらたいした出費になる。

今使っているのは、ゲート部分に刻み(この仕組みはポピュラーなものだけど)があって、いささか不便を感じる。ハーネスから外すときに引っかかり気味になるのと、プロテクションから外すときにそれがまた引っかかって、とくにハングの壁だとロープがテンション気味になるので、外すのに四苦八苦することがある。降りるときはまだ良いが、プロテクションに引っかけるときにもたつくのは、焦ったりパニクったりしていると、落ちることに繋がりかねない。
(もっとも、登攀技術を磨いていけばいいのですけど、未熟者ほどなにかとギアに頼ると言うじゃないですか)

ともかく、ペツルのも良かったけど、これのほうがいいなぁ。いつか買おう。

クイックドロー
(c)DMM

雪行

 空が白みはじめるまでまだ暫くかかる。部屋の中は冷たく静まりかえり、外の世界が無くなったかのようだ。こういうときは悪天候だとわかる。降りしきる雪が音を吸収してしまうからだ。窓を吹き抜ける口笛のような音が聞こえないのが救いだろう。風はない。ということは、吹雪で視界を奪われる可能性が無いということだ。いまのところ、それは吉報だろう。窓のカーテンを少し開けると、案の定、一面の銀世界だった。

 冷えた部屋の中で就寝用のアンダーウエアを脱ぎ、たたんでおいた新しいファインウールのアンダーウエアを手早く着込む。その数秒の間でさえ、露出し外気に晒された肌は鳥肌が立ち、体幹の筋肉が反射的にこわばる。薄手のダウンコートを羽織り、ソックスを履き、冷たい板張りの廊下をつま先立ちで歩く。もちろん手探りだが、勝手知った場所だ。

 ストーブのあるキッチンまでたどり着くと、終夜点けておいたヒーターの柔らかい暖気に包まれる。ヒーターのスイッチを切り、灯油ストーブに点火する。コーヒーメーカーをセットし、スイッチを入れる。マグカップを用意し、隣の部屋に移動する。

 部屋の隅に置いてあるダッフルバッグを持ち出し、テーブルに載せる。防水透湿加工を施した中綿入り登山用グローブ、同じ素材のアルパインキャップ、オーバーオールのような形をして腰を冷えから守るように作られた、動きやすいサスペンダー付きのマウンテンビブ、防寒性能の高い高機能素材で固められた中綿入りシェルを次々と広げる。グローブとシェルは長年使っているもので、特にグローブの手のひら部分に張られている革はすり切れているが、構造的な破綻はない。

 ダウンコートを脱ぎ、中厚手のタイツを履き、マウンテンビブをさらに履く。ウェスト部分を調整しつつ、外気温と天候を勘案して、もう一枚ミドルウエアを重ね着するかどうか、少し迷う。おそらく、運動量が多いから、暑くなるだろう。汗をかいた後の冷え込みだけは避けたいところだ。アウターシェルを信頼して、ミドルウエアは着込まない事にした。

 キッチンから、珈琲の淹れ上がったコポコポという音がする。いったん作業を中止し、出来たての珈琲の香りが満ちるキッチンで、立ったままマグカップに珈琲を注ぐ。残りはステンレスの保温瓶に移し替え、テーブルの上に置いておく。珈琲を何口かすするうちに、ようやく、身体の中が暖まり、目が覚めてきた感覚を味わえる。人心地がついたところで、マグカップを置き、作業に戻る。

 アウターシェルを取り上げ、着込む。シェルのジッパーを閉じ、さらにホックでつなぎ目を塞ぐ。腕の半ばまである長いグローブをその上から装着し、肘の部分で紐を止める。これは途中、何らかの理由でグローブを外さざるを得なくなったときの紛失防止に備えてであり、癖になっている。マウンテンキャップを手に取り、耳おおいの部分を持って被る。顎の部分のドローコードを緩めに絞る。

 マウンテンキャップのうえから、ハロゲンのヘッドランプを装着する。位置を調節し、そのレンズが隠れないように、シェルのフードを被る。ジッパーを顎まで引き上げ、風雪が入り込まないようにフードのドローコードを引き絞る。

 通用口の土間に行く。雪が積もりはじめているだろうから、スパッツを使用するタイプの通常のトレイルブーツではなく、防寒性能の高いロングブーツを選んで履く。マウンテンビブの中裾をブーツの中にたくし込み、アウター部分を外側に回して裾のサイドをジップアップする。これで雪は入ってこない。

 壁に掛けてあるスワミベルトを腰の部分に巻き付ける。これは本格的なハーネスとは違い、滑落しそうなところで簡易的にロープで身体を支えるためのベルトだが、十分な強度はある。滑落してぶら下がるようなところへ行くわけではない。

 スワミベルトの正面についているループに、カラビナを通す。これも、現状の使い方ではロック付きでなくてもかまわない。

 ノルディックウォーキング用のポールを2本取り出し、石突き部分のゴムを外し、鋭利な金属の先端を露出させる。アイスバーンでの滑り止め対策になる。ハンドストラップを緩め、グローブで膨らんだ両手を通し、ぶら下げたまま通用口を開ける。

 雪が吹き込んできた。空はまだ暗く、光が漏れる戸口の周囲で、虚空から飛び込んでくる雪の粒子が乱舞する。幸い、雪はまだ足首を埋める程度だ。しかし、このまま降り続けば、すぐに脛を埋めることになるだろう。ヘッドランプのスイッチを入れ、光量を調節する。目の前に、円錐形の白い雪の軌跡がめまぐるしく動く。

 少し離れた場所で、がちゃがちゃと鎖を引っ張る音がした。雪のせいでくぐもった響きだ。

「くうん」

 甘えた声がした。もう察しているらしい。壁に掛かっているリードを手に取り、握りのループを腰のカラビナにかける。反対側の端を持ち、雪の中に歩み出る。

 黒い大きな犬が、雪の中ではしゃいでいた。激しく尻尾を振り、耳を伏せ、いかにも嬉しそうな表情で腰を落としながら私にまつわりつく。いつだったか、近所の子供が、この犬のことをラップランド犬だと言った。本当は由緒ある雑種なのだが、毛並みがそう見えるのかも知れない。もっとも、ラップランド犬というものが本当にいるのかどうか知らないのだが。

 仮称ラップランド犬を繋いでいる鎖を外し、リードに付け替える。とたんにぐうっと腰を引っ張られる。私が小さく舌打ちすると、犬はすまなそうにこちらを振り返って、少し歩を緩める。

 私たちは降りしきる雪の中を歩き出した。空はまだ暗く。犬の吐く息と、降りしきる雪。これから、吹きさらしの平原に向けて、歩いていく。片道30分の散歩。

ひぐれよりみちいそぎあし

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今年一年の登り納めをした。写真は河原のボルダー横で撮ったもので、そこらに落ちている流木や枯れ葉と、持参した薪を混ぜて火を熾しているところ。好天に恵まれたのは良かったが、吹きさらしの場所だった。かじかんだ手を携行型薪ストーブにかざして暖を取る。

冬の季節は日本酒がよく似合う。というか、一口飲んだアルコールは身体を温めてはすぐに消えてしまい、酔っぱらうという感覚にならない。煙突から立ちのぼる煙の香りと酒精の香りが相まって、ボルダリングをやるどころではない。気持ちが良すぎて、だらだらと時を過ごす。

山間部の日暮れは早く、午後三時を回ると気温が下がるとともに日差しが弱くなる。帰りのことを考えて薪ストーブの火力を弱めるために、熾火を火消し壺に詰め込んで消火する。グループの中心に火が無くなると、みんなそわそわと自分のことをし始める。やはり暖かい場所は人を繋ぐのだろう。

ある程度歳が行ってから新たな趣味をはじめると、いろんな事がわかる。それまでの人生経験(というほど大げさなものではないけれど)と、学びつつある趣味の世界を重ね合わせていけるようなところがある。フリークライミングやロッククライミング、ボルダリングというのも、本当にいろいろなことを考えさせてくれる材料だった。

来年はもっとうえを目指すと言うことで、クライミングはさらに続く。

ちょっとした名文を紹介します。

垂直に登る、垂直を知る

英語のオリジナル文章はこちら。

Getting Vertical

オンサイト チャンス

いつも行っている人工壁にいくつか新しいルートが設定された。まだ時間がなくて登ってはいないが、こういうときはオンサイトのチャンス。オンサイトとは、初めて見たルートを、直前の下見だけでリードクライミングすること。トップロープでは意味がない。これは、そのルートを「初めて見て初めてリードで登る」時だけに許されるチャンスだ。

フリークライミングにとってオンサイトは最も価値のある登り方とされる。次に価値があるとされるのがレッドポイント。下見を十分にして初登で登れなくとも、何回かチャレンジして完登するときの呼称だ。RPコースはいつかは達成できるチャレンジだが、オンサイトは一期一会的な出来事だ。

クライミングの楽しみは幾つもあるが、リードで登るという緊張感ほど面白いものはない。終了点につくまで、特別な感覚を味わえる。心拍数が上がる緊張感と、それが高じて口がからからになる恐怖に近い感覚がそれだ。そういう感覚を越えていくのがモチベーションなのだが、クライムの数分の中で、それが枯渇しかかり、また絞り出すようにモチベーションを高めるという心理的作業は、ちょっとほかでは味わえない。

撤退するか前へ行くか。成功すればオンサイトという勲章が待っている。それを諦めるかどうか。完全に一人の世界で、岩と己がせめぎ合いつつ、登り続けるというのは、何物にも代え難い経験だろう。

オープン エア キッチン

夏と言えばバーベキュー。しかし、毎年やると飽きる。そこで趣向を凝らしたものをなんとかひとつと考えると、ダッチオーブンがある。

キャプテンスタッグ(CAPTAIN STAG) ダッチオーブン30cm<ジンギスカンリッド> 30cm M-5533キャプテンスタッグ(CAPTAIN STAG) ダッチオーブン30cm<ジンギスカンリッド> 30cm M-5533
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写真のものははっきりしないが、出来れば足つきのものが良い。
これをどう利用するかだが、まず焚き火台と炭を用意する。

スノーピーク(SNOWPEAK)焚き火台L ST032スノーピーク(SNOWPEAK)焚き火台L ST032
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上記のものが、折りたたみが出来、使いやすい。ローインパクトを考えて、地面で直接焚き火をしないでも楽しめる道具として昔からあった。丈夫であり、汎用性があるという点でもベスト。
炭はあらかじめ火起こしを使って熾しておく。

キャプテンスタッグ(CAPTAIN STAG) バーベキュー炭火起こし器 M-7568キャプテンスタッグ(CAPTAIN STAG) バーベキュー炭火起こし器 M-7568
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上記のような形状のものに、着火剤を放り込み、火を付け、十分回ったところで炭を入れる。普通の炭で十分だが、少し贅沢に備長炭でも良い。普通のものなら15分から30分くらいで火が回る。備長炭は注意が必要。熾している最中にかなりはじけて火の粉が飛ぶ。でも火起こしを用いると怖くない。熾きるまで30分以上かかるから、余裕を持って準備したい。

CAPTAINSTAG(キャプテンスタッグ) アルスター 火消しつぼ M-7567CAPTAINSTAG(キャプテンスタッグ) アルスター 火消しつぼ M-7567
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これは火消しつぼ。焚き火台の火が消えるのを待つことなくスマートに炭の火を消せる。火力調整のために、熾きた炭をすこし取り分けたいときなども便利なもの。

これだけ揃えたら、あとは実践。

熾きた炭をおもむろに焚き火台に移す。平らにならした上に、ダッチオーブンを置いて温める。蒸し焼きにする場合は、アルミホイルを底に引き(汁が垂れて焦げ付くから)、中敷きのグリッドを配置する。これを置かないと食材が焦げて大変なことになる。下ごしらえした肉や野菜を入れ、フタをする。熾きた炭のいくつかを取り分け、オーブンのフタ部分に置く。あとは待つだけ。良い香りが漂い始めるまで、火力にもよるが30分から40分というところか。ジャガイモなどは串を刺して通れば良い。

下の火を少なめ、上の火を多めにすると、焦げ付かず、野菜などもきれいに蒸し焼きに出来る。

夏といえども、信州の夜は涼しい。上記具材を蒸し焼きにしてほくほくといただくのも一興だが、実はダッチオーブンの出番はこれから秋にかけての本当に寒い時期だと思う。

ダッチオーブンは、気をつけて扱えば汁物を調理することも出来る。まず焚き火台からオーブンをおろして少しさます。下ごしらえした具材を一旦外に出し、グリッドとアルミホイルを外す。熱さがおさまったところで、サラダオイルを容器の内側に塗る。その後、(それこそお好みで何でも良いが)スープを入れ、そこに具材を放り込み、再び焚き火台に乗せる。あとは煮え上がるのを待つ。

30センチ径のダッチオーブンだと、大の大人4人が腹一杯楽しめる分量の具だくさんスープが出来る。シチューも可能。技術と余裕のあるときは、あらかじめ小振りのオーブンでパンを焼き、一緒に食べるのも楽しい。

さて、肝心のレシピだが。鶏肉の場合は、スーパーで売っている香草風味シチューの素のようなのが便利。牛肉だとビーフシチューの素を適宜。豚も同じ。ただし、カレー風味はちょっときつい。オーブンにいつまでも独特の香りが残り、その後しばらくは何を作ってもカレーっぽい香りがそこはかとなく漂うことになる。

出来た料理は、タープの下で焚き火台を囲みつつお玉で取り分けて食す。

というわけで、野外料理当番の私としては、準備怠りなく進めているところ。車でアクセスできるところなら、是非持っていきたい道具たちです。

ウォークス ウィズ サンダー

いまクライミングで付き合っている人たちの中には、本格的な山屋が多い。稼業の傍ら山岳ガイドをしているとか、山好きが高じてペンションを経営しているとかいった人たちだ。

季節は夏。うだるような暑さの中、汗まみれになって岩に登る季節。そんなとき、遠くから黒い雲が近づき、湿気を含んだ不穏な風が流れ始めると、皆一様に緊張する場面がある。そう、雷である。

信州の山麓では、梅雨の終わりから初夏にかけて雷雲が発生する確率は高い。遠雷がかすかに聞こえたあと、大粒の雨が当たり始め、一瞬にして目も開けていられないような土砂降りとなる。そういうとき雷は、はじめは遠く近く、そして確実に、その威力を秘めた光と音が、頭上にやってくる。そんなとき運悪く屋外に居ざるを得ないときは、さすがに怖い。
先日そんな話が出て、やばいよねぇなどと言い合っていた。

雷研究がすすみ、いま分かっている話だと、落雷の「射程距離」は20キロメートルほどだそうだ。それだけでは何という感慨も湧かないが、落雷のあの「ごろごろ」という音が聞こえるのは、発生源からせいぜい10キロメートルだということを知ると、事情は変わる。もしそれが本当なら、雷の音が聞こえる前に撃たれる可能性があるということだ。

雷雲の移動速度は、時速5キロから時速40キロの幅がある。人間が普通に歩く速度が平地で時速5キロほど、ジョギング速度が時速7キロほどだから、雷の音が聞こえてから回避しようと急ぎ足になっても、もう遅い。すでに射程圏内に居るわけだし、運悪く雷雲の移動方向と一致するように逃げたら、遅かれ早かれ雷雲中心に掴まる。

雷雲に掴まったときの落雷回避法は幾つかあるが、それはまた機会があったら書くことにして(確実な落雷除けなんて屋外じゃありえないし)、今回は「いかに早く雷を察知するか」ということについて。

良くやられている方法は、雷の発生しやすい時間帯での屋外活動を避けること、雷雲(積乱雲)を目視すること、気象情報に気を配ること。最近だとインターネット上でほぼリアルタイムに落雷地点を表示するサービスもある。しかしパソコンを常時携帯するとは限らない。携帯サイトで同様のサービスがあるかも知れないが、圏外だと使えない。

古典的にはラジオを付けておく、というのがあったそうだ。雷が発する電磁波が、受信時にノイズとなって拾われる。ガリガリッとかザザッといったノイズが聞こえる。それで雷の発生を知るわけだが、どのくらいの距離でどのような動きかまでは判別できない。また、最近の受信機はなるべくそういうノイズを拾わずフィルタリングするようになっているという。

そこで、雷の発生を検知する機械というものも開発されたのだそうだが、以前のものは重くてかさばり、とてもアウトドアで気軽に携行するようなものではなかったらしい。それがいまでは、携帯電話より小さく、落雷発生をリアルタイムで捉える電子機器が売られるようになった。この機械のすごいところは、最遠60キロ先の落雷を検知する。さらに、20キロ刻みで、落雷の距離を表示する。加えて、2分ごとの落雷データを解析して、雷雲が近づいているのか遠ざかっているのかを表示させることが出来る。

先日、通販でそれを手に入れた。その日に早速夕立を伴う雷があった。たしかに検知する。落雷ノイズを拾うと発光ダイオードが光って知らせる。同時にビープ音が出る設定にしておくと、ビッと鳴って教えてくれる。実際の屋外でどこまで信用できるかはまだ分からないが、ともかく落雷を教えてくれるのは確かなようだ。

早速クライミングの時に持っていった。みんなに見せると、さすがにご存じだった。興味津々で弄くり回す。でも、高いよねぇという感想があった。いえ、1万ちょっとですよ。それで雷の恐怖から逃れられる可能性を手に入れるわけですから。そんなに高い買い物じゃありませんよ。おとうさん。

どことなく通販の広告記事になってきたような気がするが。

ともあれ、アウトドアで雷にであう季節。少々お高くても、こういう機械を持つのはいいことだと思う。それをきっかけに、雷に対する興味が出てくれば、予備知識も自然と入ってくるだろう。大切なのは機械に頼ることじゃない。自然の危険性に対して興味を持つこと。レジャーであるから安心だという、根拠のない思いこみをなくし、リスクに無関心でいるという態度が少しでも変わること。

それが、例えば河の増水で中州に取り残されるとか(これも雷雨時にありがちなこと)、土砂降りの雷雨に巻き込まれテントの中で雷に怯えすすり泣くお子さんに「大丈夫」と言えずに父親の権威を失墜させる可能性や、慌てて逃げ出して外に出しておいたダッチオーブンがどうなっているか気になって仕方がないという状況を作らずにすむひとつの方法かも知れない。

予備知識と心構えが、ハッピーなレジャーにつながるんだと思う。

というわけで、ストライクアラート

良い夏を。(^^)

バーチカル ウェイ

フリークライミングのようなスポーツをやっていると、自助努力とか自己責任ということをよく考える。例えば、かなり高い地点まで登って力が尽きてしまいそうなとき。ホールドを握る手は震え、わずかな突起を支えに立ちつくす足先は頼りない。ロープとビレイヤーが自分を支えてくれていると分かっていても、墜落という事態は、人間にとってどこか根源的な恐怖を呼び覚ますものらしい。進むか、敗退するか。それを決めるのにも勇気が要ったりする。もう少し進めば楽になるかも知れないと思いつつ先に進めない時がある。ロープを握るビレイヤーに大声で「テンション!」と言えば支えてくれるのだが、ランナウトしてロープをクリップする瞬間は予期せぬ大きな墜落が待ちかまえているかも知れない。そう思った瞬間、(私の友人が言うところの)「恐怖と緊張で頭が真っ白になる」ことだってある。たかだか15メートルほどの人工壁でさえ、リードクライミング(登りつつ順次支点にロープをかけていく方法)はそういう恐怖を味わうのだから、これがゲレンデで30メートルの壁だったら恐怖が増すのは容易に想像がつくだろう。ならばなぜ登るのかと問われたら、面白いからとしか答えようがない。そして、その面白みの中には、恐怖という成分が多分に混じっている。登攀時に味わう苦痛と疲労と恐怖。それが、ルートを克服したとき、悦びと昂揚に変わる。面白いと思ってしまう。この感情を味わってしまうから、やめられなくなるようだ。

爾(なんじ)、脚あり、爾、歩むべし、爾、手あり、爾、捉(と)るべしである。幸田露伴 努力論

自分の手と、脚に、全てがかかってくるのだ。恐怖を背負い、その恐怖を面白いと思いつつ登る。

フォーリングエンジェル

先日の登攀で、久しぶりに派手な落ち方をした。

良く行く人工壁で、ルートには慣れている。難易度もさほどではない。ルート上ほぼ1メートルごとにプロテクションを付けるハンガーが設置されているから、そのぶんを登るごとにヌンチャクを設置してロープを通す、その作業の繰り返しで完登できる。

9メートルほど登ったところで、トラブルが起きた。8メートル地点のプロテクションを取り、1メートルほどランナウト(前のプロテクションから保護なしで上に行った距離)して目の前のハンガーにクリップしようとしたとき、足が滑った。ハイシーズンのためクライマーが多く、余分なチョーク(手に付ける滑り止めの粉)がホールドに残っていた。こういう場合は驚くほどソールのフリクション(抵抗)が減る。

あっと思うまもなく落下。1メートルランナウトしているから、支持地点からさらに1メートルは落ちる。しかも、ビレイヤーはロープクリップに備えてロープを余分に繰り出していたから、その分も落下。さらに、ビレイヤーはベテランなのだが、慣れた場所でもあり、最初のプロテクションからかなり離れてロープを操作していた。そのほうが繰り出したりするのに楽だからだが、まさかの墜落に慌てたらしく、2メートルほど「横に」引きずられてロープをロック。

総墜落距離5メートル以上、プロテクションからだけで都合4メートル強の落下であった。参考までに、1メートルランナウトして落ちると通常は総落下距離は2メートルプラスアルファ。いかに無駄に落ちたか、おわかりいただけるだろうか。

落ちたのが8メートル地点だからまだ良かったが、あと3メートル低い地点から落ちていたら、ロープの伸縮率も考えると、見事にグラウンドフォール、つまり地面に落下だ。

見ていたギャラリーは肝を冷やしたという。すぐ止まるかと思った距離を超えて落ち続ける私を見て、言葉が出なかったらしい。

私は、腕に若干のロープバーン(摩擦によるやけど)を負っただけ。壁に正対して落ちたから、体勢を崩すことなく宙ぶらりんになった。別に恐怖心もなく、「また登り返すのかよ、面倒だなぁ」くらいの気持ちだった。

落ちるときと言うのは、そんなものかも知れない。

私が落ちたあと、さらに続けてクライムする仲間たち。所属するチーム内で、安全確認とリードビレイのやり方に対する態度が、それまで以上に慎重かつ真剣になったのは言うまでもない。

墜ちた瞬間、フォーリングエンジェルは微笑んだに違いない。堕ち行く天使は愚かさを笑うのだ。そして、彼女がいつも救いをもたらすとは限らない。

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