シュプレヒコールの波 - 80年代後半~90年代前半を回顧するブログ


シュプレヒコールの波

2006年07月27日 21:07

金八先生第2シリーズ(1981年放送)の 「卒業式前の暴力」の回

腐ったミカンの方程式で覚えている方も多いと思います。
個人的にドラマを観て鳥肌がたったのはこの放送が最初で最後でした。

この当時はまだ小学生で生徒目線でしか物を見ることが出来ず、それでも何かわからず涙したものです。今大人になって金八先生目線で見るとまた当時と違う部分で感銘を受ける部分があります。よく考えれば坂本金八(武田鉄矢)はこの撮影当時30歳で、今の私と年齢が近いことに驚きました。


<簡単なあらすじ>
荒谷二中の番長で学校を追い出された加藤勝は、桜中学の金八先生のクラスに転入してきた。卒業間近、就職も無事決まり後は卒業を待つだけの時期に荒谷二中の不良たちが卒業式をぶちこわす計画を立てている事を知る。仲間を無事卒業させてやりたいと願う加藤はそれを阻止すべく、校長達の謝罪を言わす事が防止に繋がると考え、松浦と一緒に荒谷二中に乗り込む。


加藤、松浦が逮捕されるまでのシーンはあまりにも有名な為簡略させてもらいます。

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「かとうぉー!!まつうらぁー!!」

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警察強行突入

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シュプレヒコールの波~ 通り過ぎてゆく~

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護送車で運ばれる息子を追う加藤の母親




ここが一回目の泣き所ですね。ここで流れ出す涙は一体何の涙なのか未だにわかりません。
悔しさでもなければ無念とも違う、感動ともちょっと違う・・うまく言葉で説明できません。

ちなみにここで流れる中島みゆきの世情ですが、元々学生運動をテーマ作った曲だそうで、サビに出てくるシュプレヒコールとはドイツ語で「デモや集会で、参加者がメッセージやスローガンを一斉に唱えること」という意味です。どおりで恐ろしくこのシーンとマッチングしてくる訳ですね。


ここから本題なんですがちょと長くなってしまったので、
後半ご興味ある方は↓からどうぞ


ここからが今回書きたかった本題で、大人になってからまた泣ける名シーンです。

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舞台はこの部屋の討論のみで、ドラマ史上類を見ない名シーンとなります。
加藤 松浦の両親、坂本先生を含む桜中学関係者、荒谷二中関係、PTA、保護監、 警察がそれぞれの立場で主義主張をぶつけていきます


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初盤10分ほどずっと下を向き、何もしゃべらなく押し黙る金八さん
中盤から怒涛の様にしゃべりだす伏線となってます。



ちょと余談になりますが、先日「日本沈没」を観て来たのですが、その中で総理代理が悪そうな顔して「沈没して(日本人が)8千万人ぐらい死んでくれれば、我々は助かるから好都合だな(ニヤリ)」と総理とは思えぬありえない事を言うシーンがかなり最初の方にあって、もうその時点で私は興冷めで、途中で退席したくなるほどでした。あまりにも現実と離れたセリフで物語が一気に台無しになる事は多いのですが、この場合の警察や荒二中の言い分はごもっともで桜中学の方が詭弁じゃないかと思わせるほど現実味があり、それ故に議論は白熱していきます。

金八 「加藤が言っていたでしょう。我々(生徒)は教育を受ける権利者だと・・
     あれは私が加藤に言った言葉でなんです!」
警察 「それはまずいことを教えましたね 
    子供達は都合の良い方に解釈する だから問題が起こる

金八 「問題が起こっても良いじゃないですか! 彼らはまだ未熟なんです!
     だから間違えるんです!それは間違いだと繰り返し教えてやるんです! 
     それが教育じゃないですか!」


荒谷二中校長 「私達には一般の生徒を守る義務もあるんですよ」
金八       「だから腐ったミカン放り出せという論理ですか? 
          我々はミカンや機械を作ってるんじゃないんです!
          我々は毎日人間をつくってるんです!」



視聴者は暴動を起こすまでの経緯を観ているので金八さんによった見方をしますが、実際は第三者立場で生徒達が器物破損を繰り返しながら校長先生を監禁したなんて事を知れば、即釈放しろという桜中学や親の言い分はふざけるな!甘やかすな!というのが今の世論じゃないでしょうか?この言い分一体どちらに分があるのでしょうか?

朝まで生テレビなどで教育がテーマで討論となるとおのずと現実主義と理想論に分かれて議論が平行線を辿るものです。極端な例をあげると、ひきこもりをまとめて預かりその親をも怒鳴り散らす事で有名な長田さんみたいな人と、子供に対して「いいんだよ」と説き続ければ心を開くと考える夜回り先生みたいな考えで、これはどちらが正しいという事もなく決して交わらない議論なのです

この状況でも釈放するしないの議論は平行線で、情状酌量の余地無しと考える警察が話を打ち切ろうとすると、桜中学の校長が突然警察の担当者をフルネームで呼ぶ事により状況は一変します。

校長 「アキタ トシキくん・・・  あなたはどうだったの?」
さわぁ・・・ざわぁ・・

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動揺する警察担当者

校長 「あなたが規則一点張りになるんなら私はあの時かばうべきじゃなかった」
警察 「先生それは・・」
校長 「いや!あれは出来心だと思ったから不問にしたの」
    「私は点数稼ぎのようなあなたを教育した訳ではありません」

詳しい経緯の説明は無かったですが、察するに校長が教師だった頃にこの警察の人が生徒で、何か悪さを起こしたのですが、将来を考えて見逃してあげたのでしょう

脅した様にも思えましたが、この事がきっかけで釈放される3B生徒達


ここで金八先生は抱きしめるだけの台本だったのですが、
とっさのアドリブで本気ビンタを付け加えます。

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予定にないビンタにビビる松浦(左)


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「貴様らはオレのせいとっ・・・  X■$#・・・忘れんなよ・・・忘れんなよ・・」


アドリブだった為にこのセリフもビックリするような噛み方をしますが、
結果としてよりリアルなシーンとなり、観るものを2度目の涙へと誘うのです。



警察が生徒達を釈放する時に 「(今回釈放したのは)ここにいる大人達がそれこそ捨て身でお前達の人生を真剣に考えてくれたからだ!」と怒鳴ります。子供は親の気持ちを切々と説明したところでなかなかわかってくれません(かつて自分もそうでした)。しかし捨て身で何かを行うというのは少なからず子供にも伝わるものがあると思います。

昔恩師に言われた言葉で「親になるには予行演習はない。いきなり本番なんだ」とおっしゃってた言葉が今でも胸に残ってます。練習はない、いきなり本番で自分の鏡とも言える息子をどうやって育てていくのか・・・。秋田の事件の様に何の覚悟も無く、無自覚に親となっていく大人達の事件が増えてきています。私は(自分の)子供が思春期になったら黙ってこの放送の回を見せ、そして「自分が親になる年齢になったらもう一度見なさい」と言うつもりです。ここで書いた様なこんな大げさなことじゃなくて良いので、何かを感じ取ってもらえば良いと願います。



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コメント

  1. tecchi | URL | -

    何度もすみません。今久しぶりに見て、また涙したところですw ど~でもいいことですが柳葉敏郎がすべるのは学校から引き返すときでした。
    沖田浩之、古尾谷雅人、直江喜一。。彼は俳優を辞めただけですが、私を含めて加藤優の呪縛から逃れられなくなってしまったのは悲劇でしたよね。。

  2. きくりん | URL | -

    tecchiさん
    私も何度もこの放送を観ているのですが、柳葉敏郎のバイクがスベるシーンは見逃していたようです(笑)。私も泣きたくなったらこのビデオを持ち出しますね。
    シュプレヒコールの波で検索をかけるなんて、tecchiさん・・ステキですねw

    こういったコメントいただくと嬉しいですね
    コメントありがとうございます。

  3. tecchi | URL | -

    はじめまして。「シュプレヒコールの波」検索から来ました。思い出すだけで泣けてきましたよw 後にも先にもこんな感動的なドラマはないんでしょうね。でも「アキタトシキくん。。あなたはどうだったの?」発言だけはどう見ても脅しですよね!ww 私は1年に1度はこの作品を「泣くため」に見てますw
    あと、校庭にバイクで応援に来る場面、柳葉敏郎の運転するバイクがズルッとすべる所、気になりますww 
    他の記事も読みました。すべての記事がツボすぎてバカウケですw 朝生関連も面白いですし、「ダイエースプレー」という言葉を久しぶりに聞いただけで笑えましたw 「奴は死ぬまで保留」は私も初めて読んだときはショックで数時間は立ち直れませんでしたよ。。
    長文すみません。今後も期待しております!

  4. 菊リン | URL | -

    こんばんわ

    >だんご3姉妹さん

    こんばんわ はじめまして<(_ _)>
    「入れ墨をした教え子」って回ありましたねー。確かSPだったと記憶してります。メガネかけた内気な感じの子だったのに・・・
    そこでも金八の演技はテンパってましたか(笑)是非改めて観たいですね。武田鉄矢がすごいなと思うのが、このビンタのアドリブも何故やったかという理由が「俺が主人公なのにこの放送は加藤や松浦の方が目立っていてなんか悔しかった!」と言ってました(w 今度金八語録と裏金八語録でも作ってみることにします。書くネタがひとつ増えましたw コメントありがとうございます<(_ _)>

  5. こんばんは

    確かに同シーンは珠玉のシーンで、自分も当時を思い出してジーンとしました。余談ですが続編で「入れ墨をした教え子」ってのがあって、加藤・松浦の同級生が進学した高校の方針になじめず反発して墨を入れ、それを知った金八が・・・というシーンがありましたが、そこでの金八の演技もかなりヤバいですよ(笑)

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