2010年08月07日 17:08
音楽番組の本格的な冬の時代となり、今後各局の歌番組の打ち切りがみられるかもしれない。
一昔前も長寿歌番組が相次いで打ち切りとなった大きな変革期があった。
ベストテン、トップテンの相次ぐ打ち切りで最後の砦となったのが「夜のヒットスタジオ」であった。
この時期の司会は古舘伊知郎/柴 俊夫のダブル男司会という当時は珍しい形態であった。
タモリ/生島ヒロシのMステコンビは、ちびまるこちゃんのさくら家でいう「友蔵」、「ひろし」の知名度だが
柴 俊夫は残念ながら姉の「さきこ」のような陰日向な存在であった。
歌番組低迷の流れを断ち切るため起死回生となる劇薬が求められた。
そこで選出されたのが、加賀まりこであった。
最初の放送で加賀は
「歌手にこびない司会をやる」
と宣言するのだが、この言葉は嘘偽りが一切なかった事を知ることとなる
◆B'z 出演時('90.1.15)
加賀まりこ 「さっきのリハーサルの時とはえらい違う・・・いい男になってる!」
稲葉 「そうですか・・」
加賀 「あたしはね、B'zの男の・・この子、稲葉くんはいい男だと思ってたの。思い込んでたの!」
加賀 「それでさっきのリハでスッピンの顔を見たらさ、「なんだ」って思っちゃった。
でも今は綺麗ね。うん綺麗よ」
古館 「それ全然フォローになってないじゃん。それじゃスッピンがよくないみたいに・・
そんな厚化粧してないでしょ?」
稲葉 「そのつもりなんですけど」
加賀 「ちょっとしただけでこれだけ変わるってすばらしいわよ」
古館 「こうやってね言うときってね、好みなの。手口なの。この人の。
ケナしているようでホめてるようで」
「ちょとこの人がかわいそうじゃないですか、松本さん。全然話に上らなくて」
加賀 「こっちは不細工のほうね(笑)」
◆ プリンセスプリンセス 出演時
冒頭、週刊誌に載ったハウンドドッグの大友とのデートをしつこく聞く。
奥居に対して「あんたはブタね 生理中じゃないの?」プリプリ全体に大しては「なんか汚いわね」と発言。
この時は奥居もメンバーも笑っていたように記憶するがその後、 持ち歌を披露した後、楽屋に篭城し大泣きする事態となる。
奥居は自分がパーソナリティーを勤めてたラジオ番組で
「あのおばさん感じの悪い人! 本当に嫌い!」
以後の夜ヒットの出演を拒否する事態となってしまう。
しばらく後のオープニングトークでこの顛末をイジられる一幕もあっった
柴俊夫 『加賀さんは番組におじさんファンを引っ張ってきましたよね』
古舘 『その代わりプリプリのファンを失いましたけどね…』
このラジオに関してちょっと話を脱線します。
この奥居香のラジオは生放送だったと記憶してますが、リアルタイムでよく聴いていました。
当時14歳の男兄弟だったので大人の女性というのを勝手に神秘化してしまった時期でした。このラジオはいろんな意味でロックな発言が多く、女性への幻想を打ち砕かれた記憶があります。
例えば「レンタルビデオ屋でだだっ広いフロアでた~くさん借りれると思うと、毎回無性にウンコにいきたくなるんだよねーなんだろうこれは・・」というホームラン級の僻を語ってみたり
奥居が真心ブラザーズの大ファンだったようで、彼らのPVに当時デビュー前の無名だった頃のPUFFY(パフィー)が起用されていたようで、「ねぇ? だれなのあの子?」「PUFFY?知らない!なんのコネ?んも~~!! ほんと誰よ!腹立つわね」と相当妬み全開の悪態をついていた。
これを文字起こしたところで無垢な少年だった私のあの複雑な気持ちは伝わらないと思います。
いうなればシブがき隊が絶頂期にスーパージョッキーに出演した際、視聴者の質問に答えるコーナーで
質問「シブがき隊のみんなは普段どんな会話をしてるんですか?」
薬丸「無言です!」
あの時のヤッくんの真っ直ぐな瞳に感じた虚無感に似てますかね(笑)
感じたことを直感的に口に出す加賀のその姿勢は、大物小物を問わず切り捨てていった
◆南野陽子 「あら案外色黒なのね、時代劇では 綺麗な人だと思ったけど」
◆CoCo『はんぶん不思議』で出演 「このお嬢ちゃん達は挨拶しないのよ」
「あんた達の方がよっぽど不思議よ」
◆CHAGE and ASKA 「(CHAGE)Cを取ったらハゲじゃない」
◆カールスモーキー石井 「汚い、汚らしい」
◆松田聖子 「ケバくない?」
◆酒井法子 「キャバクラに行けば一番になれるわよ」
◆工藤静香 「あんた19歳でそれしかないの」
◆徳永英明 「ジョーズみたいな歯ね ブサイク」
◆久保田利伸 「あなたほんとサル顔ね」
◆高見沢(アルフィー) 「大阪国際女子マラソンあなたも走るの?」
◆矢沢永吉 「たこ八郎みたい」
当時のフジテレビの苦情電話の受信件数を塗り替えた一端が確かに伺える。
そして、ついにあの男、長渕が出演する事になったのだ。
オスとメスの頂上決戦ともいえるこの対面に、冒頭古館は「今回は加賀さんに気ぃ使って、長渕さんに気ぃ使って大変な1時間です」と発言。ブラウン管から溢れ伝わるこの緊張感はなんだろう。西村知美の結婚会見でキスの味を「ペパーミントの香り」と言い放った時のマスコミ席に広がった殺気にも似ている。でもなんだろうこのワクワク感・・
だが肩透かしを食らうことになる。
加賀は好き嫌いが相当ハッキリしているようで、長渕はかなりのお気に入りだったようだ。
「待ってたのよ~」で始まり奇声を上げたり腕を組んでみたりとベタつき、なにか安いキャバクラのようにもなり、あの長渕を一歩も二歩もひかすという事態となったのだ。
結局、加賀だけの責任ではないかもしれないがわずか1年でその長い番組の歴史に終止符を打った。
「あの頃は更年期で苛々していて…」と後に夜ヒット時代を反省しているようだが、加賀は言い過ぎがあったのは事実だが、局側に求められた役割を果たしただけなのだ。
私がもし出演者なら井上潤/芳村真理に当たり障りの無いことを聞いてもらう事を望むだろう
だが視聴者としては物足りなさを感じる。この夜ヒットの終了でフジテレビは今後の歌番組のあり方を相当研究したであろう事は後番組「MJ」の古舘伊知郎・加山雄三、田中律子という全ての視聴者層を取り込むうとした安易な抜擢にも見て取れる
NEWS ZEROとMJの違和感
このような紆余曲折を経た結果、出演者に失礼とも思える発言をそう感じさせない人柄で、尚且つ音楽に興味のない視聴者をも取り込む事のできる、松山千春をペプシマンと言って放つも当人にも視聴者にも得を配れる司会者が誕生したんだと考えます。
当時はまさかと思えた音楽知識皆無のお笑いコンビに司会が決まったことは非常に驚きでしたが、その反面聞き手でありながら一切媚びないその姿勢に面白みを感じたのも事実です。そういった意味で加賀まりこの「歌手に媚びない司会」を良い意味で継承した抜擢だったと思います。
媚びない司会もはや15年経ち、近年は懐メロ紹介番組へとシフトしてると聞きます。今回の改革で次はどの方向に向かうのでしょうか