David the smart ass心のダイエット!~時には辛口メッセージを~ |
高橋鉄って、あの高橋鐵なんですか?~大阪圭吉「死の快走船」が出た!
2014-10-14-Tue
この夏から秋にかけて、久しぶりにKさんと交流を深めることができた。
といっても、Kさんとはネット上の付き合いなので、最近少し Twitterで話したって程度なのだけれど。そもそも「K」さんなどと殊更に匿名にする理由は感じない。この記事を読んでいけば、自ずと知れることなのだし。ただ、さしたる意味なく、ここではKさんと呼んでおくことにする。
Kさんは、大阪圭吉という探偵作家のファンである。たぶん、日本でといえば世界で、大阪圭吉について最もよく知る人物の一人だろう。たぶん日本一だといって過言ではないのだろうけど、ま、こういうことは一位だの、二位だの言ってもしかたのないことである。まだブログが普及する前のころ、わたしは大阪圭吉のことを調べていて、Kさんのホームページを訪れて、コメントのやりとりなどしてその時にネット上ではそれなりに親しくなった。
大阪圭吉はざっくりいえば江戸川乱歩や横溝正史と同じ世代の探偵作家だ。乱歩をして「日本のコナン・ドイル」と言わせしめたほどの期待の星だった。しかし、戦争が運命を大きく変えた。昭和18年に応召し、満州、フィリピンへ転戦、昭和20年にルソン島にて病死した。乱歩や正史が、戦後の自由なムードの中で推理小説を育て、花を咲かせていったのに対し、戦地から帰らぬ人となった圭吉には長らくスポットが当たらなかった。たらればの話だが、大阪圭吉が無事復員していたらこんな風に埋もれてしまうこともなかったはずである。
そういうわけでまとまった著作が読めるのは、国書刊行会により発刊された探偵クラブ叢書「とむらい機関車」(1992)というハードカバー単行本と、日本探偵小説全集12巻「名作集2」(創元推理文庫1989)くらいのものであった。2001年「とむらい機関車」「銀座幽霊」(創元推理文庫)が出て、次第に広く知られるようになっていった。また、「大阪圭吉探偵小説選」 (論創ミステリ叢書)なども一般書店でも購入できるようになった。
そしてこの10月新たな一冊がこのささやかなラインナップに加わった。ミステリー珍本全集の第4巻「死の快走船」である。
それまで創元推理文庫の「とむらい機関車」や「銀座幽霊」に収録されていたのは、大阪圭吉の短かった作家生活の中の前期の作品といってよい。今回の珍本全集「死の快走船」は、大阪圭吉のいわゆる代表作だけでなく、むしろ、最後期の著作を除くほとんどを集めていると言ってよい(らしい)。「らしい」というのは、わたしはまだ手にしておらず、これまた、Kさんの受け売りである。
Kさんが喜んだのは言うまでもない。そんなKさんは、圭吉のこの新刊の売れ行きをわがことのように気にかけていて、こんなツイートをなさっていた。
「おかげで順位が上がっている!」--これは、大阪圭吉のファンであるKさんをしても「(高橋鉄の)おかげ」つまり、高橋鉄の方が有名であり、人気があるという認識だととらえているのだということになろう。
え? でも、高橋鉄って?
高橋鉄なんてミステリー作家いたかな?
わたしは一瞬考えた。「たかはしてつ」と言えば、あのセクソロジスト高橋鐵しか思いつかないのだ。
そういえば、河出書房新社に「新文芸読本」というシリーズがあって「高橋鐵」が入っていた。それは、性愛文学者としての高橋鐵であって、しかも、SFっぽい冒険小説というか、秘境小説を掲載していたことを思い出した。そういう脈絡からすれば、広義の探偵小説というか、ま、冒険小説くらいの方が穏当ということになるのだろうけれど、なるほど、「高橋鉄」とは「高橋鐵」の新字体表示であったのだということに思い至った。
そうか、新字体ってこういう具合に普及してしまっているらしい……。ま、石川啄木や森鴎外はいろいろ悩んだこともあったのだけれど、そうか、高橋鉄もそうなのだ。
そこで思い出したのがこんな記事。
これは中日新聞だけでなくて、朝日新聞やその他のマスコミもしていた。そしてこれを間違い、誤表記として指摘する声さえあった。そのことを踏まえ、次のブログでは、新聞記事だけでなく官公庁の各種資料などでも「御嶽山」のことを「御岳山」と表記していることを指摘している
→ 朝日新聞が御嶽山を御岳山と誤表記誤報した、という間違い : ekesete1のブログ
こんなふうに、高橋鐵も、石川啄木、御嶽山も、もう、新字体で堂々と通っているのだ。
ああ、それにしても、高橋鉄が高橋鐵のことだったなんて、ほんと、いつの間に? という感じなのだけれど、いったい何があったのだろう。
ああ、ずいぶん脱線してしまったけれど、肝心の大阪圭吉の「死の快走船」の感想はこちらのページが詳しいので紹介しておく。sugataさんのブログである。
探偵小説三昧 大阪圭吉『死の快走船』(戎光祥出版)
脱線ついでにさらに、追記。
今回の御嶽噴火の報道をめぐって、特ダネの小倉さんやNHKのアナウンサーが「御岳山」を「おんたけさん」と読まず、「みたけさん」と読み間違えてしまうということが続いて起きたということがあったようだ。これは、全国的には木曽の御嶽山が有名だろうが、首都圏には「御岳山」と書いて「みたけさん」と読む、気軽に山登りが楽しめる身近な山があるということが関係したようだ。
→ 「御嶽山」NHKアナや小倉さんが「みたけさん」 プロが読み間違えた同情すべき事情 : J-CASTニュース
「みたけさん」の旧表記が「御嶽」であったかどうかまでは知らないのだが、なんでもかんでも新字体にすればいいというのではなくて、固有名詞ことに人名くらいは、旧字体のままでもいいのではないだろうか。
といっても、Kさんとはネット上の付き合いなので、最近少し Twitterで話したって程度なのだけれど。そもそも「K」さんなどと殊更に匿名にする理由は感じない。この記事を読んでいけば、自ずと知れることなのだし。ただ、さしたる意味なく、ここではKさんと呼んでおくことにする。
Kさんは、大阪圭吉という探偵作家のファンである。たぶん、日本でといえば世界で、大阪圭吉について最もよく知る人物の一人だろう。たぶん日本一だといって過言ではないのだろうけど、ま、こういうことは一位だの、二位だの言ってもしかたのないことである。まだブログが普及する前のころ、わたしは大阪圭吉のことを調べていて、Kさんのホームページを訪れて、コメントのやりとりなどしてその時にネット上ではそれなりに親しくなった。
大阪圭吉はざっくりいえば江戸川乱歩や横溝正史と同じ世代の探偵作家だ。乱歩をして「日本のコナン・ドイル」と言わせしめたほどの期待の星だった。しかし、戦争が運命を大きく変えた。昭和18年に応召し、満州、フィリピンへ転戦、昭和20年にルソン島にて病死した。乱歩や正史が、戦後の自由なムードの中で推理小説を育て、花を咲かせていったのに対し、戦地から帰らぬ人となった圭吉には長らくスポットが当たらなかった。たらればの話だが、大阪圭吉が無事復員していたらこんな風に埋もれてしまうこともなかったはずである。
そういうわけでまとまった著作が読めるのは、国書刊行会により発刊された探偵クラブ叢書「とむらい機関車」(1992)というハードカバー単行本と、日本探偵小説全集12巻「名作集2」(創元推理文庫1989)くらいのものであった。2001年「とむらい機関車」「銀座幽霊」(創元推理文庫)が出て、次第に広く知られるようになっていった。また、「大阪圭吉探偵小説選」 (論創ミステリ叢書)なども一般書店でも購入できるようになった。
そしてこの10月新たな一冊がこのささやかなラインナップに加わった。ミステリー珍本全集の第4巻「死の快走船」である。
それまで創元推理文庫の「とむらい機関車」や「銀座幽霊」に収録されていたのは、大阪圭吉の短かった作家生活の中の前期の作品といってよい。今回の珍本全集「死の快走船」は、大阪圭吉のいわゆる代表作だけでなく、むしろ、最後期の著作を除くほとんどを集めていると言ってよい(らしい)。「らしい」というのは、わたしはまだ手にしておらず、これまた、Kさんの受け売りである。
Kさんが喜んだのは言うまでもない。そんなKさんは、圭吉のこの新刊の売れ行きをわがことのように気にかけていて、こんなツイートをなさっていた。
高橋 鉄 『世界神秘郷』 と「よく一緒に購入されている商品」は、大阪圭吉 『 死の快走船』 (ミステリ珍本全集04)
おかげで順位が上がっている!
http://t.co/vg2QDVKgBr
— 小林文庫オーナー (@KOBAYASHI_bunko) 2014, 10月 8
「おかげで順位が上がっている!」--これは、大阪圭吉のファンであるKさんをしても「(高橋鉄の)おかげ」つまり、高橋鉄の方が有名であり、人気があるという認識だととらえているのだということになろう。
え? でも、高橋鉄って?
高橋鉄なんてミステリー作家いたかな?
わたしは一瞬考えた。「たかはしてつ」と言えば、あのセクソロジスト高橋鐵しか思いつかないのだ。
そういえば、河出書房新社に「新文芸読本」というシリーズがあって「高橋鐵」が入っていた。それは、性愛文学者としての高橋鐵であって、しかも、SFっぽい冒険小説というか、秘境小説を掲載していたことを思い出した。そういう脈絡からすれば、広義の探偵小説というか、ま、冒険小説くらいの方が穏当ということになるのだろうけれど、なるほど、「高橋鉄」とは「高橋鐵」の新字体表示であったのだということに思い至った。
そうか、新字体ってこういう具合に普及してしまっているらしい……。ま、石川啄木や森鴎外はいろいろ悩んだこともあったのだけれど、そうか、高橋鉄もそうなのだ。
そこで思い出したのがこんな記事。
本紙が「御岳山噴火」を伝えた先の日曜日、編集局に電話が相次ぎました。「岳」でなく「嶽」ではないかとの疑問です。常用漢字表にない難しい字は読みやすいよう新字体を使う。そういう社内の原則で「岳」を使いました
が、違和感を覚えた方は多いようですぐ「御嶽(おんたけ)山」に変えました。
原則でも必要に応じて旧字体を使うことがあり、早く変更しておけばよかったのかもしれません。霊峰とあがめられてきたこの山は多くの人にとって、それだけなじみ深いのだと教えられました。
→ 御嶽山:編集局デスク:中日新聞(CHUNICHI Web)
これは中日新聞だけでなくて、朝日新聞やその他のマスコミもしていた。そしてこれを間違い、誤表記として指摘する声さえあった。そのことを踏まえ、次のブログでは、新聞記事だけでなく官公庁の各種資料などでも「御嶽山」のことを「御岳山」と表記していることを指摘している
→ 朝日新聞が御嶽山を御岳山と誤表記誤報した、という間違い : ekesete1のブログ
こんなふうに、高橋鐵も、石川啄木、御嶽山も、もう、新字体で堂々と通っているのだ。
ああ、それにしても、高橋鉄が高橋鐵のことだったなんて、ほんと、いつの間に? という感じなのだけれど、いったい何があったのだろう。
ああ、ずいぶん脱線してしまったけれど、肝心の大阪圭吉の「死の快走船」の感想はこちらのページが詳しいので紹介しておく。sugataさんのブログである。
探偵小説三昧 大阪圭吉『死の快走船』(戎光祥出版)
脱線ついでにさらに、追記。
今回の御嶽噴火の報道をめぐって、特ダネの小倉さんやNHKのアナウンサーが「御岳山」を「おんたけさん」と読まず、「みたけさん」と読み間違えてしまうということが続いて起きたということがあったようだ。これは、全国的には木曽の御嶽山が有名だろうが、首都圏には「御岳山」と書いて「みたけさん」と読む、気軽に山登りが楽しめる身近な山があるということが関係したようだ。
→ 「御嶽山」NHKアナや小倉さんが「みたけさん」 プロが読み間違えた同情すべき事情 : J-CASTニュース
「みたけさん」の旧表記が「御嶽」であったかどうかまでは知らないのだが、なんでもかんでも新字体にすればいいというのではなくて、固有名詞ことに人名くらいは、旧字体のままでもいいのではないだろうか。
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