1000万円超えの高年収は、医師、大学教授、パイロット
どんな職業で働くか、判断材料の最大項目のひとつは「収入」だろう。また、社会的に信頼されているか職業かどうかも働きがいに直結するので、職業選択の際に意識するポイントだろう。
そこで、今回は、職業別の年収比較と、各職業への信頼度の国際比較を見てみよう。
まず、厚生労働省の「賃金センサス」(賃金構造基本統計調査)を基に、職種・職業別の平均年収(男女計)とその変化を図表1に示した(年収=決まって支給する現金給与額×12+前年1年間の特別給与額)。データは最新のもので2023年版があるが、前回までと職種分類が変更となり過去分と比較できないため、2005年、2012年、2019年のデータを使った。2020年以降のコロナ禍の影響については反映されていないが、そうした影響を受ける前の「本来の職種評価」を見ることができるはずだ。
多くの職種が300万~500万円の年収水準に収まっている。
1000万円超えの高年収職種は、医師、大学教授、航空機操縦士(パイロット)である(2019年の数字では、順番に1169万円、1101万円、1695万円)。歯科医師も2005年当時は1000万円近かったが、現在では、かなり下がってしまっている(905万円→570万円)。
医師とパイロットは、養成にかかる期間や費用が多くかかる高度な職業である点やその職種への需要と供給の面から高収入の説明がつきそうであるが、大学教授の場合は、独占的地位を維持しているがゆえの高収入のきらいがなくもない。
これに次ぐ800万円かそれに近い高収入職種としては、弁護士、公認会計士・税理士、不動産鑑定士、記者が挙げられる。記者を除くといわゆる士業(注)と呼ばれる職種である。士業が高収入であるのは、それだけ社会の専門職種化が進んで来ているせいだろう。
(注)士業とは、弁護士や社会保険労務士など、専門的な資格が必要な職業の俗称であり、資格名称の末尾が「士」で終わるため士業(サムライ業とも)と呼ばれる。
なお、データの対象は、従業員10人以上の民営事業所で働く者なので、個人営業で高収入のケースは含まれていない点に留意が必要である。例えば、パイロットは調査対象として全員が含まれていようが、医師の場合は開業医の多くが含まれていない。2023年に厚生労働省が実施した「医療経済実態調査報告」では開業医の年収は勤務医の約1.8倍とされる。2019年の「医師」の年収が1169万円なので開業医は約2104万円となるが、経営費用もかかるので単純に比較することはできない。