高齢者になったら、いろんなことができなくなるのではと心配する人は多い。90歳にして医師として高齢者施設で週4日勤務する折茂肇さんは「白髪が生える、シミやシワが増えるなどの生理的老化は避けられない。しかし病的な老化は、ある程度、予防する方法がある」という――。

※本稿は、折茂肇『ほったらかし快老術』(朝日新書)の一部を再編集したものです。

関節痛に悩まされる高齢の日本人男性
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「生理的な老化」と「病的な老化」は入り混じる

老化現象には、大きく分けて2種類ある。一つは、早いか遅いかの違いはあっても、誰にでもみられる変化で、これを「生理的老化現象」という。もう一つが、長年にわたる生活習慣や環境的な要因、あるいは病気などによって起こる変化、「病的老化現象」と呼ばれるものだ。ただし、両方が複雑に入り混じって起こることもあり、どちらか区別がつきにくいことも多いだろう。

一般的に、年をとると、体のさまざまな臓器を形成し、その働きを担っている細胞の数が減っていく。そのため、臓器も小さく縮こまっていき、働きも少しずつ低下していく。ただし、臓器による違いや個人差はあるが、細胞が減っていくスピードはゆっくりであるため、日常生活に支障をきたすほどの急激な機能の低下がみられることは少ないといえるだろう。

病気がなく健康な人でも、年をとればさまざまな老化現象は現れる。若者と異なる最も特徴的な現象は、外見の変化だろう。例えば、白髪や脱毛症(はげ)、皮膚のしわ、しみなどだ。

次いで、「予備力の低下」という変化もある。過度な運動や過剰なストレスなどによって、障害が起こりやすくなる。例えば、若いときは仕事で多少の無理をしても一晩寝れば次の日には元気になっていたのが、寝ても疲れがとれなくなる、激しい運動をすればひざや腰が痛くなるなど、いわゆる「無理がきかなくなる」という状態だ。

生理的な老化現象は、健康でも、どんな人にも現われる

また、運動の機能や姿勢を保つ働き、環境に適応して体内の状態を一定に保つ働き(生体恒常性=ホメオスタシス)も低下する。生体恒常性とは、体温や血糖値、電解質など体内の状態が何らかの原因で変化したときに、正常に戻す働きのこと。例えば、外が暑かったり、寒かったりしても、体温をほぼ一定に保っていられるような働きのことだ。しかし、老化によってその機能がうまく働かなくなるため、変化が生じたときに元に戻らなくなることが起こる。

さらに、免疫力も低下する。体内に病原体などが入り込んだとき、防御するシステムがうまく動かなくなるため、高齢になるとさまざまな感染症にかかりやすくなる。

これらが高齢者に起こる生理的な老化現象だ。健康な人でも、年をとればこのような変化は起こるのが自然なのだ。

一方で、病的な老化現象は、食生活や生活習慣、生活環境といった、若いころから長年にわたり蓄積されてきたものが原因で、あるいは動脈硬化症など高齢になると増える病気に起因してみられるもので、一般的には生理的な老化現象が早く進む。加えて、アルツハイマー型や認知症や白内障、骨粗鬆症などの病気もその一種と考えられる。これらは病気として治療が必要なものである。