日本のお家芸である「アニメ」は、制作コスト10分の1ともいわれる生成AIアニメの台頭でどう変化・進化するのか。次世代メディア研究所代表の鈴木祐司さんは「カンテレが世界初のフル生成AIアニメを1月14日に発表する。今後、他のテレビ各局もアニメ制作で収益増を狙うだろう。また、生成AIアニメ技術の高まりで新たなクリエイターの出現も期待できる」という――。

カンテレがフル生成AIアニメのプレスリリースを出した。

筆者の知る限りでは、テレビ局が制作した世界初の作品となる。今回はまだ10分弱のミニ番組だが、シリーズ化され、順次発表する予定だという。近い将来、30分サイズのフルAIアニメも登場するだろう。

実は去年から今年にかけて、生成AIアニメの動きが活発だ。

アニメのプロダクションが、制作プロセスの一部を生成AIで行うと発表した。また「日本を代表するAIアニメーションスタジオを作る」と宣言した社も出てきた。

生成AIの活用でアニメ界がどう進化するのかを考えてみた。

フル生成AIアニメ

カンテレが制作したのは「八雲とセツの怪談事件簿」。主人公の八雲とセツがさまざまな難問・奇問に遭遇し、力を合わせてその謎を解き明かすショートミステリーだ(1月14日20時からYouTube「関西テレビアナウンサーチャンネル」で配信開始、全10話の予定)。

出典=カンテレ「八雲とセツの怪談事件簿」トレーラーより。AIで加工した新人アナと背景の合成
出典=カンテレ「八雲とセツの怪談事件簿」トレーラーより。AIで加工した新人アナと背景の合成
出典=カンテレ「八雲とセツの怪談事件簿」トレーラーよりアニメの主人公を演じた2人。グリーンバックのスタジオでセリフ撮影した新人の秦令欧奈アナと田中友梨奈アナ。
出典=カンテレ「八雲とセツの怪談事件簿」トレーラーより。アニメの主人公を演じた2人。グリーンバックのスタジオでセリフ撮影した新人の秦令欧奈アナと田中友梨奈アナ。

新人アナウンサーの2人が主人公を演じる様子を、グリーンバックのスタジオで撮影し、その映像を生成AIで瞬時にキャラクター化している。キービジュアル作成には「人」が必要だが、背景画像やキャラクター動作やアングルなどを生成AIによって自由自在に演出している。

主題歌の作詞作曲でも生成AIが使われた。つまり映像・音声・音楽など全てに生成AIが関わっているという意味で、テレビ局が制作する世界初のフルAIコンテンツと言えそうだ。