2024年下半期(7月~12月)、プレジデントオンラインで反響の大きかった人気記事ベスト5をお届けします。ビジネス部門の第2位は――。
▼第1位 日本のメディアは「営業」をナメすぎている…ホリエモンが「倒産寸前のラジオ局」を3カ月で黒字化できた理由
▼第2位 「唐揚げ定食880円→1000円」で1年後に閉店に追い込まれた店が値上げより先にやるべきだったこと
▼第3位 だからファミリー客が次々と来店している…快進撃を続ける「丸源ラーメン」と競合チェーンの決定的違い
▼第4位 愛想を尽かしたイーロン・マスクは自宅ごと移住…米大企業が「トランプが支配する田舎州」に続々移転する理由
▼第5位 NECや日立はかつて「エヌビディア的存在」だった…世界一を誇った日本の半導体産業を潰した"犯人"
※本稿は、難波三郎『小さな飲食店のお客が減らない値上げ』(秀和システム)の一部を再編集したものです。
銀行から「2割値上げで利益が出る」と言われて実行
ここからは、値上げの前にすることについてお話しします。
あるとき、商工会議所から和風レストランの調査、助言を依頼されました。この半年ほど売上が激減していて、そろそろ危険なので助言がほしいとのことでした。
お店に行き、売れ筋だという唐揚げ定食を食べました。唐揚げがまずいお店はないのでメインはOK、量も多かったです。
ただ添え物は、既製品のポテトサラダにピンクの漬物、雑な煮物だけでした。レストランなので席間が広く落ち着けますが、全体に殺風景です。会計は1000円ちょっとでした。
その後、社長と面談しました。話によると、8カ月前に銀行から、「今の売上と経費のバランスでは利益が出ないから、全体の価格を2割上げるといい。そうすれば利益が出る」と言われて実行したそうです。そこから客数が減り、そろそろ危険だということでした。
いくつか、ポイントを整理します。
①「なぜお客に選ばれているか」が見えていない
私が食べた唐揚げ定食は、もともと880円だったそうです。この価格であれば、今まで来ていたお客は、「安くて、ゆっくりできるお店」「使いやすい場所にあって、安いお店」といった理由で、お店を利用してくれたでしょう。
しかし、今の価格だと、安くはありません。
この理由で選ばれていたお店が、急な値上げをするのは危険です。
今は安さで選ばれているお店は、商品力や接客、雰囲気を高めて、別の理由でお店を選んでもらえるようにする必要があります。
②原価率の基本がわかっていない
このお店の原価率は、高かったです。こういうお店の場合、原価率の悪化は、「動物性たんぱく質の質と量」の影響が大きいです。売上のメインはランチタイムで、客層が中高年の女性。その割に量が多いと感じました。
また添え物の部分は、少し手間をかけても、質を上げても全体の原価率への影響は小さいです。これを理解して、商品を改善してから値上げをすべきだったと思います。