頭のいい人はどんな勉強法を実践しているのか。現役東大生の西岡壱誠さんは「記憶に定着させたいなら、丁寧に進めるより大雑把に頭に読み込ませるほうが大事だ。どんどん覚えて、どんどん忘れたほうがいい」という。西岡さんと東大カルペ・ディエムの共著『自分にあった方法が見つかる!勉強法図鑑』(TAC出版)から一部を再編集して紹介する――。
英語の単語帳とノート
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「なんで忘れたの」と怒るのはNG

中高生や小学生に勉強に関する指導や助言をしていると、親御さんも子供に対して何かしらの指導をする場面を見ることがあります。特に年齢が小さいうちだと、親御さんのお子さんに対する関わり方は非常に重要だと感じますが、中でも「これだけはやってはいけない」という指導があります。それは、「忘れたことを怒る」という指導です。

例えば、「この単語の意味、昨日勉強したよね? どういう意味だった?」と聞いて、「え、忘れちゃった!」と子供から言われた時に、「なんで忘れたの! 覚えておかなきゃダメでしょ?」と怒った経験のある親御さんは多いのではないでしょうか?

特に、親御さんがお子さんの教育に対して熱心であればあるほど、「どうして忘れたの!」と怒る傾向があります。お子さんのテストの結果を見て、一緒に勉強したはずの箇所が間違えていると、「これ一緒にやったじゃん! なんで忘れたの!」と怒っていたり。

中学受験の勉強をしているお子さんが、毎回同じところを間違ってしまっていることに対して「どうして毎回同じところを忘れるんだ! やる気がないから忘れるんだ!」と怒っていたり。

「どうしてこんな簡単なことが覚えられないんだ」と考えたくなる気持ちはわかりますが、「忘れたことを怒る」という指導をしていると、子供はむしろどんどん物事を覚えられなくなっていってしまうのです。

「覚えて、忘れて、覚えて……」を繰り返すといい

そもそも人間の記憶というのは、忘れるようにできています。今記憶したことでも、24時間経ったら約90%は記憶から消えている場合が多い、なんて話もあるくらいです。でも、本来記憶を定着させるためには、一度忘れたとしても根気よく思い出すということをしなければなりません。覚えて、忘れて、また覚えて、また忘れて……ということを繰り返す中で、人間の記憶は作られていきます。

一度記憶したことを、ずっと覚え続けられる人はいません。復習したり、一度忘れてしまったものを思い出したりしていく中で、記憶が定着していくわけです。

逆に言えば、「一度忘れて、思い出す」ということ自体も、記憶を定着させるためのプロセスの一部なのです。「この単語の意味、どういう意味だった?」と親御さんから聞かれて、「なんだったっけ! 昨日やったはずなのに思い出せない! えーと、えーと」と苦労して思い出そうとするその行為自体も、実は記憶を定着させるために必要なことなのです。

ちょっと話は逸れますが、みなさんは筋肉痛になったことはありますか? 筋肉痛は、一般的には、運動した後日に筋繊維に裂け目ができたりすることで痛みが発生することを言います。

でもこの痛みは決して悪いものではなく、筋繊維の裂け目が修復される中で、以前よりも強い筋肉が出来上がるため、筋肉をつけたい人にとってはむしろ筋肉痛は良いものである、という考え方もあります。