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2024/03/29

第210回コラム「集中治療専門薬剤師制度創設に向けて」

 前田 幹広, Pharm.D.

 2024年度より、日本集中治療医学会で集中治療薬剤師専門薬剤師制度が創設されます。私がレジデンシープログラムを受けた米国では、1970年代には集中治療室において多職種の必要性が認識され、薬剤師は、TDM・栄養サポート・回診参加などの臨床業務を構築していきました。1980年代には集中治療に従事する薬剤師の研修プログラムが開始され、1990年代には集中治療専門薬剤師レジデンシープログラムの基準が策定されました。私が米国で集中治療専門薬剤師レジデンシートレーニングを受けたのは2009年ですが、当時の2年目レジデンシープログラム(PGY2)では、すべての領域の中で集中治療専門薬剤師レジデントの募集人数が最も多くありました。それだけ、集中治療専門薬剤師が米国では根付いている現状があります。

 一方で、日本では2008年に薬剤管理指導料の算定が集中治療室でも可能となり、2010年に日本臨床救急医学会で救急認定薬剤師制度が設立されたことにより、集中治療室で従事する薬剤師が取得できる認定制度として広まっていきました。一方で、集中治療室で薬剤師が行う業務については標準化されておらず、配置薬の管理などの対物業務のみを行っている病院もあり、集中治療室で薬剤師が何の業務を行えばよいかという相談をされることも多かったため、2020年に日本集中治療医学会の集中治療における薬剤師のあり方検討委員会(現 薬剤委員会)で集中治療室における薬剤師の活動指針を発表しました1。活動指針が発表されてまだ4年のため、行動指針がどこまで浸透し標準化されたかの評価は行っていませんので、今後の課題です。

 すでに、2022年度に特定集中治療管理料を取っている集中治療室では、90%以上の施設で兼務/専任/専従の薬剤師を配置しており、集中治療医がいる集中治療室では薬剤師が何らかの形で関与していることが分かります。しかしながら、中小の市中病院などでは薬剤師の配置が進んでいない現状もあるため、集中治療専門薬剤師には、病院単位ではなく、地域や全国単位で集中治療室の薬剤師を育成することに寄与してほしいと期待しています。また、集中治療の薬剤に関するエビデンスを作ったり、診療ガイドラインの策定に関わることも期待しています。

 今後の集中治療専門薬剤師制度にご期待ください!

参考文献

  1. 集中治療室における薬剤師の活動指針. 日本集中治療医学会集中治療における薬剤師のあり方検討委員会. 日集中医誌 2020;27:244-7.

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