生涯教育(CE)

« 2023年3月 | トップページ | 2023年7月 »

2023/04/30

第203回コラム「雑誌を使った知識のアップデートのアイディア」

上塚 朋子

 急性期の病院の勤務経験しかない私にとって、慢性疾患の薬物治療は何となく苦手意識があります。そんな時に目にとまったのが。雑誌「medicina 602号(20232月発行)」の特集タイトル「慢性疾患診療のお悩みポイントをまとめました」です。扉のページに書かれている「カバーする範囲が広く、一つ一つの疾患の診療アップデートが追いつかない」のフレーズに大きくうなずいてしまいました。高血圧や糖尿病、脂質異常症といった生活習慣病から、慢性心不全、喘息、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、慢性腎臓病(CKD)、肝硬変、認知症、骨粗鬆症などの他、不眠や便秘と、幅広い記事が掲載されています。それぞれのタイトルを見ると、総論的というよりは、知りたくなるような質問の形式で書かれています。本コラムでは、その中の1つの記事「Ca拮抗薬、ACE阻害薬/ARB、さらにはサイアザイド系利尿薬を使用しても降圧目標に達しない場合、どうしたらよいですか?」の記事を例に挙げ、知識のアップデートの方法をご紹介したいと思います。

 記事は高血圧に対する薬物療法の概説から始まります。高血圧治療ガイドライン2019(JSH2019)に記載にもあるように、薬の選択の順序、背景因子の考慮についてまとめられています。JSH2019発表時に知識のアップデートした記憶はあるものの、自分の記憶を確認しながら、薄れつつある記憶を再度確実なものとして定着させていきます。二次性高血圧の診断に進んでいくと、原因となる疾患についての話になり、知識が限られているので、読むスピードが遅くなります。原因の1つの原発性アルドステロン症の項に関しては、精査のために入院する患者さんにかかわることもあるので、確かにそうだと納得しながら読み進めたのですが、途中でつまずいてしまいました。血漿アルドステロン濃度:PAC/血漿レニン活性: PPA(APR)の検査に影響を与える薬剤として、多くの降圧薬や低用量ピルと書かれていたためです。降圧薬はクラスによって影響のあるもの、ないものがあることは把握していたのですが、ピルに関しては初めて知りました。そこで、私は記事の欄外に“後で再確認”とメモを残し、次に進んでいきました。

 最後の項は「治療抵抗性高血圧に対する薬物治療の強化」ということで、タイトルの質問に対する答えになる内容となっています。PATHWAY-2試験という臨床試験等を引用しながら、4剤目の薬剤の効果や使用上の注意点がまとめられ、記事は終わるのですが、読んでいる私の頭の中は“そういえば、セララ以外にも、エンレストも高血圧の適応が通ったよな・・・・・”、“ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬(MRA)使用時のKに関する添付文書の記載は、それぞれの薬剤で一緒じゃなかったような・・・・”とモヤモヤが残り、また今度確認しようと思い、欄外に“禁忌などの再確認、セララ、エンレスト、ミネブロもチェック”と走り書きし、一旦記事を読み終えました。

 私のこの記事に関する学びは、このあと別日にさらに調べたり、試験のオリジナルの文献を読んだりと続いたわけなのですが、気軽に読める6ページの記事からスタートしたとは思えない、大きな収穫あるものでした。もちろん、雑誌の記事単独でも要点が簡潔にまとめられており、情報のアップデートとして有用だと思いますが、せっかくの機会なので、自分の持ち合わせている知識と結び付けて、記憶があやふやになってしまったところを明確にしたり、欠落している部分を埋め合わせるとよいのではないでしょうか?私の場合、そのためにJSH2019を手に取ったり、いくつかの降圧薬の添付文書を見たりと、それなりに時間と手間はかかりましたが、知識の整理はできました。おそらくもうそろそろ高血圧ガイドラインも改訂される頃でしょうから、治療抵抗性高血圧の項を読むのが楽しみです。

 このシリーズの1つの記事の中に、「まずは本号でとりあげられているcommonな慢性疾患とそのガイドラインについてまとめてみる。これらすべてを理解しアップデートしていくことは大事であるが、一人ではなかなか大変かもしれない。所属する組織で協力してできればよいだろう」という記載がありました。部内の勉強会や薬学生の実務実習のテーマとして取り上げてみるのも面白いと思います。代表的8疾患に含まれている疾患が多いのでお勧めです。

« 2023年3月 | トップページ | 2023年7月 »

2025年1月
      1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30 31  

薬学関連のサイト

最近のトラックバック

無料ブログはココログ