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DATE: CATEGORY: お嫁本編
 こんばんは、すいもうです。
 気が付けば、もう六月も終わりですねぇ。
 あっという間の上半期でしたね。
 下半期もあっという間なんでしょうね←しみじみ
 まぁ、それはさておき。
 今回もたぬきさんです。
 たぬきさんの察しよすぎ、とツッコまれそうな気がします。
 どういうことなのかは、追記にて。
 では、お黄泉ください。


 夢、吹きすぎし~月想う~ 百七十七話

 王さまの目は相変わらず悲しそうだった。
 でもいまなら、そのまなざしに宿る光の意味を、理解できる。クレアとシンシア。その名前だけであれば、ありふれた名前だった。どこにでもいそうな女の子の名前。
 けれど王さまの話を聞いたあとでは、とてもではないが、ありふれたなんて言えるわけがない。だってクレアとシンシアは、あたしの親友たちの娘の名前だった。そして王さまの話にも出てきた少女とその妹もまたクレアとシンシアだった。これが偶然の一致だ、なんて言えるわけがなかった。
 同時に気づいた。王さまがずっと悲しそうな目をしていたのは、どういうことだったのかもまた。クレアとシンシア。このふたりがあたしの親友たちの娘の前世であるのであれば、クレアの夫だった騎士の名前がなんであるのかは、おのずと想像できた。だからこそ王さまはあえて名前を言わずに、話してくれた。最後の最後まで名前を隠し続けてくれた。それが王さまなりの気遣いだったというのは、もう疑いようもなかった。
「シンシアちゃんだけが、生まれ変わった、とは思えんね」
 王さまの気遣いに感謝しつつも、続く言葉を言うか否かで迷ってしまった。言えばもう後戻りはできない。もっとも後戻りができないという意味であれば、もうとっくに後戻りなんてできない状況に、あたしは追い込まれている。いや追い込まれたわけじゃない。みずから踏み込んでいた。それをいまさら怖いから戻ります、なんてどの口で言えるだろうか。言えるわけがない。言っていいわけがない。だからあたしは迷いながらも、その言葉を口にした。
「「クレア」はクレアちゃん、なんやね?」
 王さまはなにも言わなかった。ただ小さく頷いた。その時点で、あたしの中で、もうほぼ確定してしまっていた。半ば勝手な思い込みという可能性もなきにしもあらず、ではあった。けれど、ここまでお膳立てのようなことをされているのに、実は違いましたなんて答えはあるわけがない。それこそ勝手な思い込みだろう。いやそうであってほしいという願いなのかもしれない。そんな悲しい過去を、「あの子」が背負っているなんて、あたしは思いたくなかった。けれど現実はいつだって、こんなはずじゃなかったことばっかりだ。ならみずから踏み込むとしよう。傷つくとわかっているのであれば、傷つけられるのを待つのではなく、みずから傷つきに行こう。それが一番傷を浅くする方法だと思うから。
「そして、「クレア」の夫の名前は、「ガザニア」やね?」
 王さまはまたまぶたを閉じた。まぶたを閉じたまま、王さまはなにも言わなかった。短くも長い時間が、過ぎていく。やがて王さまはまぶたを閉じたまま、その通りだ、と呟いた。
「彼の方は、ガザニア・グラディウス・クライシス。ベルカ王家における、史上最強の剣にして、我やリィンフォースにとっては、上司であったよ。まぁ雲の上の上司ではあったがな」
 王さまはうっすらとまぶたを開けていた。懐かしそうな口ぶりだった。いつもの尊大な態度ではない。これが素の王さまなのかもしれない。不思議とそう思えた。でもいまそれはどうでもいい。大事なのは、その先だった。いやもうすでに答えは出ているようなものだった。それでもあたしは聞かずにはいられなかった。
「その「ガザニア」はガっくん、なんか?」
 恐る恐ると尋ねた。あの子が背負ったもの。いや背負わされたもの。その重さを父親としてあたしは確かめなければならなかった。たとえもうすでに答えが出ているも同然だったとしても、それでもあたしは父親としての仕事をしなければならなかった。覚悟を抱きながら、王さまの答えを待った。
「半分は、正解だ」
 やがて王さまが答えを口にした。でもそれはあたしの予想していたものとは、少し違っていた。ある意味当たってはいた。けれど微妙に異なってもいた。そもそも半分とはどういうことなのか。なにを以て半分と王さまは言っているのか。それがまるでわからなかった。
「どういうこと?」
「貴様の息子であるガザニアは「閣下」だ。だがそれは半分にしかすぎぬのだよ」
「だから、半分ってどういうことや? それじゃまるで別の誰かが」
 そこまで言って、ひとつの可能性に至ってしまった。その可能性はそもそもあたしが、あの子を愛せなかった理由でもあった。そしてその理由が、王さまの言う半分と関係しているとすれば、王さまの答えの意味も、そしてあたしが愛せなかった理由もまたすべて納得がついてしまう。そして同時にまたひとつ気づいた。もしあたしの予想通りであるのであれば、「彼女」もまたそうなのではないのか、と思った。同じ外見の娘を産んだ「彼女」。遺伝子学的には別に不思議ではないことなのだろうけれど、あたしが行きついた「可能性」を踏まえるとすれば、はたして本当に不思議ではないことなのだろうか。もしかしたら、「彼女」もまた。いままで一度たりとも考えたことのなかった答えが、不思議と導き出されていた。その答えは、あたしは口にしてしまっていた。
「なのはちゃんも「ガザニア」なんか? そしてフェイトちゃんは「クレア」なんか?」
 口にした答え。その答えを聞いた王さまは、また静かに頷いてくれるのだった……。

テーマ : 二次創作 - ジャンル : 小説・文学

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