こんばんは、すいもうです。
昨日は夕飯にドミノピザを頼みました。
Lサイズ二枚をふたりで食べるとか、わけのわからんことをしていました←笑
いやぁ、多かったです←汗
まぁ、それはさておき。
今回は、王さま視点ですね。
王さまの王理論が展開されます。加えて、とあるふたりの名前が出てきます。
誰のことなのかは追記にて。
では、お黄泉ください。
夢、吹きすぎし~月想う~ 百七十五話
どこまで話していいものやら。
そもそもこれは話すべき内容なのか。話したところで信じてもらえるかどうかもわからなかった。そもそもすでに子鴉は怪しんでいた。我が意味のない嘘を吐かないことを知っていても、信じられないでいるのだろう。
無理もない。なにせ前世など言われても普通は納得などできるわけもない。我がこやつの立場であれば、とうてい信じられるものでもなく、よって納得などできるわけもない。だが事実だった。そもそも子鴉のそばには前世からの縁ゆえに結ばれたふたりがいる。あのふたりの存在が、前世があるということを示している。もっともそれを子鴉は知らぬし、話すべきことではないから、前世が実在するということを証明することはできない。なかなかに難儀な話だった。
でもその難儀な話をするように頼まれた。断ることはできただろうが、それでも我は受けた。ならばいくら難儀とはいえ、放り出すわけには行かない。そんなことをすれば、あやつらに対して、王として接することができなくなってしまう。いやあやつらの王でいられなくなってしまう。
臣下なくして王は成り立たない。そして王がいなくては、臣下は存在しない。王と臣下はともにあるからこそ、成り立ち、そして存在しえる。それは国と民の関係にも似ている。国あってこその民であり、民がいてこそ国が成り立つ。民がいない国など存在しないし、民がひとりしかいなければ、それは国にはならない。そして王は、国の長であり、臣下や民をまとめし者。たとえ国がなくとも、臣下がいてくれさえすれば、王は王たりえる。その臣下から見放されてしまえば、王はただの人に成り下がる。王という超越者は、臣下がいて初めて成り立つのだから。ゆえに、あやつらに見放されるようなことを、断じて行うわけにはいかない。それがどんなに無理難題であろうと、我は王として、王の責務を果たさねばならない。王として、我の背中を見つめるあやつらふたりの、臣下のまなざしを一身に受けながら、どんな難題であろう果敢に立ち向かっていく。そうしてはじめて臣下は王の背中を追ってくれるのだから。
あやつらの、臣下のためであれば、この程度の難題などたやすく片づけてみせよう。それが我の、王としての責務である。
「信じられぬ。そういう顔をしておるな、子鴉よ」
「……まぁ、いきなり前世とか言われたら、頭大丈夫か、と言いたくなるのが心情やね」
子鴉は後ろ髪を掻きながら言う。たしかに我も同じ立場であれば、同じことを言う。だから子鴉の言っていることに腹は立たなかった。むしろ同情する。こんな難儀な話を聞かされるなど、我ならば拒否しているだろう。
しかし、ことはそう単純ではない。今回のことは、子鴉自身とも深く関係している。なにせ、こやつの娘のことだった。それを関係ないなどと言えるような薄情者ではない。こやつのこういうところを、我は嫌いではない。王としては優しすぎるだろうが、人として間違っているわけではない。むしろ人としてであれば、好ましいほどだ。もっともそんなことを言えば、こやつのことだ。調子に乗るのが目に見えているので、口に出しはせぬが。
「我も貴様と同じ立場であれば、同じことを言っているだろうな。だがな、子鴉よ。これは事実だ。貴様が納得する、しないなど関係ない。難儀であろうが、事実として認識し、理解しろ。納得はできなくても構わぬ」
「……つまり、そういうものだと思っておけ、ということ?」
「ありていに言えば、だな」
いきなり前世を信じろ、と言われても、そんなものすぐに信じられる方がおかしい。むしろそっちの方が、頭大丈夫か、と言いたくなるレベルだし、言われても無理もない。だからこそ、そういうものなのだと一応の理解だけしておけばいい。そういう認識だけであれば、信じる、信じないもなく、たやすく行えることだ。あとは最終的に子鴉が、それを信じるかどうかの話であって、そこまで我は介入する気はない。あくまでも現状において、そういう認識だけをしておいてもらえればそれでいい。我が言いたいことを、子鴉はわかってくれたようだ。まぁ子鴉でなくても、理解できるようなことだから、こやつであれば、すぐに理解を示してくれるのも、ある意味道理である。だから驚きはしなかった。あたり前のことだから、あたり前として我は受け入れた。
「まぁ、そういうわけだから、納得するかどうかは、貴様自身に任せよう。そこまで我が介入することでもない」
「そやね。納得するかどうかは、あたしの問題であって、王さまには関係ないしな」
「そういうことだ」
理解が早くて、助かる。口にはしないが、しみじみとそう思った。まぁ、いまはそのことはどうでもよい。いま大事なのは、あのお方たちのことをどこまで話すべきかだった。個人名は完全にアウトだから、ぼかしつつ、どうにか説明するしかないだろう。やはり難儀ではあるが、さっきよりかはましだろう。そういうものだ、という一応の理解を子鴉がしてくれているから、詳しいことまでは聞かれることもないだろう。そう思いながら、我は続きを話すことにした。そう、あの方たちのはじまりをだ。かなり端折ることにはなるだろうが、あまり長々と話をするのも問題だった。
「ひとまず、その夫と妻の話をしよう。でなければ理解もなにもないからのぅ」
そう言うと、子鴉はなにも言わなかった。王さまに任せるよ、とだけ言って、我の話を聞く態勢になったようだ。内心で、本当に理解が早く助かる。そう思いながら、我はあのお方たち──ガザニア閣下とクレア様の話を始めた……。
テーマ : 二次創作 - ジャンル : 小説・文学
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