こんばんは、すいもうです。
昨日夕飯に杉並区の荻窪近くの大勝軒に行ってきました。
大勝軒は美味しいんですけど、ご飯ものがないんですよねぇ←しみじみ
ちなみに食べたのは、油そばです。
大勝軒にも油そばあるんだなぁと思いつつ、選びました。
魚粉テイストの油そばでしたが、なかなかに美味しかったです。
まぁ、それはさておき。
今回もたぬきさんです。
徐々に真実を知るたぬきさん。
どういうことなのかは、追記にて。
では、お黄泉ください。
夢、吹きすぎし~月想う~ 百七十四話
「過去、同じ体験をした?」
王さまが言った言葉を、うまく理解することができなかった。
だって明らかにおかしいじゃないか。ノっちゃんも、シンシアちゃんも、アリッサちゃんも産まれたばかりの赤ん坊だ。その赤ん坊たちが、過去に体験した出来事を繰り返さないようにするだなんて。誰がどう聞いてもおかしいと思う。産まれたばかりの赤ん坊たちには、繰り返したくないような悲しい過去なんてあるわけがない。
仮にあったとしても、それは産まれてきたときの記憶くらいのものだろう。それにしたって、繰り返したくないような出来事ではない。でもそれ以外にあの三人が共通している過去なんてない。もっとも共通していると言っても、あくまでも大雑把に言えば、そうなるという程度のことだ。
シンシアちゃんは、フェイトちゃんが里帰りして、地球で産んだ子。ノっちゃんはミッドチルダで産まれた。アリッサちゃんもやはり地球で産声を上げた。シンシアちゃんとアリッサちゃんだけであれば、地球で産まれたという共通点があっても、ノっちゃんにはなかった。
そんな三人の共通点が、産まれてきたときの記憶というのもかなり苦しい。それでも、あえて言えばそれくらいしかなかった。それ以外に三人に共通点があるとは、あたしには思えない。それも過去同じ体験をしたなんて、どうしても信じることができなかった。
「納得してなさそうだな、子鴉」
王さまがあたしをまっすぐに見つめながら言う。納得していない。たしかにあたしは納得なんてしていない。というか納得できるわけがない。そもそもなにを以て王さまはこんなよくわからないことを言っているのか。そっちの方があたしには不思議でならない。
王さまがこういう類の嘘を吐くとは思えないけれど、現時点では嘘を吐かれているとしかあたしには思えなかった。
「納得するもしないもないわ。そもそも王さまはなんでそんな与太話を」
「与太話ではない。事実を言ったまでのことだ」
「その事実っちゅーんが、あたしには信じられんのよ。王さまのことを疑いたくはないけれど、この話ばかりは信じられんよ」
「まぁ無理もないな。事実を知らない貴様では、そう言うのも無理もなかろう」
「事実を知らない?」
どういう意味だろうか。思わせぶりな言葉でもあり、同時にあたしの中ではけりがついたことを、また問題にしようとでもしているのだろうか。正直それは勘弁してほしいのだけど。というか、けりがついた以上、あの子のことをこれ以上問題にしてほしくない。まだ時間はかかるけれど、いつか必ずあたしはあの子を愛せるようになろうと決めているのだから。だからこれ以上は、あの子のことで誰かに首を突っ込んでほしくなかった。
「言っておくが、貴様の息子のことを言ったのではないぞ? 我が言っているのは、また別の話よ。そう、気が遠くなるほどに昔の話だ」
目を細めながら王さまが言う。どことなく辛そうだった。これから話す内容が、辛いものなのだろうか。それともやはりあたしに関係することで、その内容を話せばあたしが傷つくとか考えてくれているのだろうか。王さまらしくない優しさだった。王さまはあたし相手には、いつもツンギレだから、こういう優しさを向けられると、なんとも言えなくなってしまいそうだ。
「……おい、貴様。いま気持ち悪いことを考えなかったか?」
王さまがさらに目を細めた。たださっきとは違って、射殺すようにその目がとても鋭いということ。うん、どうにも王さまを怒らせてしまったみたい。そんなつもりはかったのだけど、モテる女は辛いなぁ。
「……まぁ、いい。貴様のバカ話に付き合っていたら日が暮れるわ。有限の時間をそんな無駄なことに使いたくない。続きを話すぞ」
咳払いひとつとため息をやはりひとつ吐きながら、王さまは佇まいをまた直した。脱線してしまったのだから、それも無理もない。まぁちょっと場の空気を改めたかったから、あえて脱線させたのだけど、あんまり効果はなかったみたいだ。
「さて、あの三人の共通点だが、あの三人は過去とても悲しいものを見てしまったのだ」
「とても悲しいもの?」
「うむ。大恋愛を経て結ばれた、とあるふたりの最期だ。夫が妻の胸を貫き殺してしまった、という最期を、な」
「妻を殺した?」
なんて言っていいのかわからなかった。おうむ返しすることしかできなかった。それでも王さまは静かに頷いた。そのまなざしはやはり悲しそうなものだった。
「なんでそんなものを」
「……手違い、としか言いようがないのぅ。その夫が手にかけようとしていたのは、別の者だった。しかしその妻は夫がそれ以上に手を汚すのを見たくなかった。だからこそ妻は身を投げ打った。そして刃は妻の胸を貫き、夫は妻を殺すことになった」
いまいちわからない内容だった。だが、その夫とやらが妻を殺したくて殺したわけじゃないことだけはわかった。大恋愛の果てに結ばれた相手を、手に掛けることなんてできわけがなかった。あたしだって、カリムにそんなことをしようとは思わないし、そもそも考えたこともない。それはその夫もまた同じなのだろう。でも結果的に夫は妻の命を奪ってしまった。それをあの子たちは見た。
でもそれをあの子たちはいつ見たのか。それがわからない。そもそも気が遠くなるほどの昔の話というのはどういうことなのか。それじゃまるで──。
「前世の記憶を受け継いで産まれているのだよ、彼女たちは」
あたしの心を読んだかのように王さまが言う。あたしを見る目はやはり悲しげだ。それでいてなにかしらのためらいが見えた。それがなんであるのか、あたしにはまるでわからなかった……。
テーマ : 二次創作 - ジャンル : 小説・文学
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