マンガ 『寄生獣』(完全版) 感想 (途中までネタバレ無し)
マンガ 『寄生獣』(完全版) 感想
↑ある日主人公の右手に宿った寄生獣のミギー
(どう見てもキモいですが読んだら可愛く見えるようになります)
はい、ということで、『寄生獣』読破しました。
自分が読んだのは完全版です。
原作は1990年~1995年に連載され、この完全版は2003年に発売されたものということで、結構古い作品です。
絵や時代背景もかなり古く、ケータイもなく、スケバンとかそういう時代の物語です。
大学の先輩に、「漫画とかアニメが好きなんですよね~」という話をしたところ、勧められて知りました。
Wikipediaを見てみましたが、評論家や大学教授にもかなり評価の高い作品みたいですね。
安心院さんじゃないですが、やはりマンガは10巻程度で完結しているものじゃないと集める気になりません。
その点この作品は、もともと10巻のところを完全版は8巻でまとめてあるのでグッドです。
さて、前置きはこれくらいにして、ネタバレ無しの感想を簡単に書いていこうと思います。
まずジャンルを思いつくままにずらっと。
・異能バトル
・非日常に侵食されていく日常
・人類の発展に対するアンチテーゼ
・スプラッタ
・最弱=最強
・微エロ
・バイオハザード
・SF
・主人公が2大勢力の中間地点にいる
・ミリタリー
・主人公と常に行動を共にする相棒
・大切な人の死
・四天王的な
・愚かに見えるほど勇気ある主人公
・主人公の懊悩
・力のインフレ
・キモかわいい
・練りこまれたプロット
・高校生
などなど。まあジャンルとかテーマ的には、最近溢れているよくある作品と言えるでしょう。
この作品が最近の作品たちの大元になったのかは知りませんが。
完全版には、読者からの質問に作者が答えるコーナーが挟まれているんですが、この作品に感化されて興奮して書いた質問だからか知りませんが、結構危ない質問が多くて面白かったですw
作者はそんな質問をのらりくらりとかわして無難な返事をしていましたが。
全体としてのまとまりもいい上、少ない巻数にギュッと内容が詰まっていて毎回展開が大きく動くので、出来ればまとめ買いすることをお勧めします。1冊900円なので7200円です。
ネタバレなしではこんなところですかね。とにかく面白かったですよ。財布と本棚に余裕があればぜひご一読ください。
ここからはネタバレ有りなので、これから読もうと思ってる人はまわれ右!
あと、ちょっと厳しいことも書きますので、寄生獣が好きで好きで批判されるのが絶対嫌だという方も回ってください。
さて、ここからが本感想。
・心理描写について
男性陣と寄生獣たちの心理描写がとても素晴らしかったです。
特に主人公のシンイチの心の動きには大変共感出来ました。寄生獣たちは合理的というか、田村玲子など一部を除いて目先の利益に向かって短絡的に行動するだけなので描きやすいだろうなあと思いました。
ただ、だからこそ一つ残念なのが女性の心理描写です。
といっても、よく考えてみれば加奈は自然にというか、物語が面白くなるように動いていたので文句のつけようもありませんが、やはり気になったのは正規ヒロインの村野です。
決定的に惚れて一種の崇拝に至るような出来事もなくあそこまでシンイチ一筋でいられるのはちょっと異常だと思いました。命の恩人というのもあるかもしれませんが、日に日に見るからにおかしくなっていく男をあそこまで一途に思い続けられるものでしょうかね。加奈のように危険を求めるタチでもないようですし。そこのところが少しご都合主義になってる気がしました。
・戦いについて
始めのうちは良かった。完全な寄生獣を、不完全なシンイチとミギーが知恵を使って倒していく様はハラハラどきどきしてページをめくる手が止まらなかったです。「知恵を使って勝つ」という点は最後まで貫かれていたので、そこはこの作品の良い点ですね。
でもちょっと残念なのが、後半で警察の特殊部隊が出てきて現代兵器で寄生獣たちをバッタバッタとなぎ倒していったというところです。確かに、人類の敵がいとも簡単に駆除されていくさまは、やっぱり人類つえーと思わなくはなかったですが、一言で言うと無粋だと思いました(『惑星のさみだれ』のアニムスじゃないですが)。
寄生獣の広がっていく規模を考えれば警察隊の力を借りなければならないということもわかりますが、読破してみて結局シンイチとミギーの最終的な標的は広川・田村・後藤のグループだけでしたから、シンイチとミギーが世間の知らない所で全てを片付けるという展開もあったと思います。
リアリティを追求して世間が寄生獣の登場に大騒ぎ→警官隊出動という方向に持っていったのだとしても、本当にリアリティを追求するなら広川みたいな知的グループが全国・世界にゴロゴロ出てきて世界規模の戦いに発展するのが自然な流れではないでしょうか。
というわけで、少し中途半端な展開だと思いました。
ただ、寄生獣の見分け方の髪の毛チェックやレントゲンはなるほどと感心せざるを得ませんでした。そこを使いたかったから警察の科学班が登場するような展開に持っていったのかもしれませんね。
てか、寄生獣は骨格の形に変形すればあのレントゲンの車を通過できたんじゃないかな。途中で正体がバレる仕組みが分かったみたいなのに。(後藤の、広川に対する「あんたなら包囲を抜けるのもたやすいだろう」から)
・結論について
田村の「寄生獣は人類と共存出来る道を探さないといけない」は納得。寄生獣にとってはそれしかないと思います。
でも、最終巻の最後の方の「みんな地球で生まれたんだから」っていうのはおかしいですよね。
確かにテニスボールくらいの大きさの卵が割れたのは地球上です。でもシンイチは知らないかもしれないけど、あれは全部空から降ってきたわけだから、寄生獣は地球外生命体という設定にしないとおかしい気がしました。まあこれはイチャモンなのでどうでもいいことなんですが。
それにしても終わり方はとてもよかった。読んでいるとき、この作品の完結の仕方は
「寄生獣の完全駆除」
「人類滅亡」
「人類と寄生獣の共存の道」
しかないと思っていて、上の2つだとなんの解決にもならないし、3つめは読者が納得するように描くのは難しいだろうなあって思ってましたが、結局3つめの一番難しい結論をやってくれたので大満足でした。
序盤からずっと使われていた「ミギーが眠る」という設定をうまく使って終わらせたのは素晴らしいと思います。
いきなり新しい設定が出てきてうまく終わられても納得できませんからね。
しかも完全にお別れしたわけではなく、ずっとそこにいるという優しい終わり方だったのがとても好印象でした。
その好印象を与えつつも、逃げた浦上の処理をきちんとこなしたのもうまいと思いました。
・全体として
全体的に王道を貫いている感じですが、まとまりがあって非常に良かったです。
構図としても人類VS寄生獣ではっきりしていましたし、寄生獣の顔役として人間である広川が立てられたのも王道ではありますが、描き方がうまかったので射殺されるまで気づきませんでした。
はじめのうちは、シンイチが只の人間でめちゃくちゃ弱かったのに、母親の死という一つの出来事から化けましたね。ミギーの細胞が全身に行き渡って人間でいながらも人間以上の力が出せるようになるなんて、この発想がすごいです。この設定があるのと無いのとでは、作品の面白さに雲泥の差が出るだろうと思います。
感想書いているうちに気づいたんですが、この作品は全体として、ひとつの出来事が起きるといろんなことが絡んで絡んで一つの大きな流れになっているのがわかります(なんとなくですが)。作者がどれだけプロットを練って練って練り込んだのかを感じられる気がします。
まあこんな感じですかね。もっと書きたいこともあるんですが、それらはとても細かいことなので割愛します。
高い評価を得ている理由が確かにこの作品には詰まっています。
厳しいことも書きましたが、他の記事を見ていただければ分かると思いますけど、これだけ長い感想を書くことはめったにありません。自分でもびっくりしています。多分このブログで一番長い記事なんじゃないでしょうか。
それだけいろいろ考えさせられる作品ということですね。
ではでは、財布と本棚に余裕があればぜひご一読を。
わりお
↑ある日主人公の右手に宿った寄生獣のミギー
(どう見てもキモいですが読んだら可愛く見えるようになります)
はい、ということで、『寄生獣』読破しました。
自分が読んだのは完全版です。
原作は1990年~1995年に連載され、この完全版は2003年に発売されたものということで、結構古い作品です。
絵や時代背景もかなり古く、ケータイもなく、スケバンとかそういう時代の物語です。
大学の先輩に、「漫画とかアニメが好きなんですよね~」という話をしたところ、勧められて知りました。
Wikipediaを見てみましたが、評論家や大学教授にもかなり評価の高い作品みたいですね。
安心院さんじゃないですが、やはりマンガは10巻程度で完結しているものじゃないと集める気になりません。
その点この作品は、もともと10巻のところを完全版は8巻でまとめてあるのでグッドです。
さて、前置きはこれくらいにして、ネタバレ無しの感想を簡単に書いていこうと思います。
まずジャンルを思いつくままにずらっと。
・異能バトル
・非日常に侵食されていく日常
・人類の発展に対するアンチテーゼ
・スプラッタ
・最弱=最強
・微エロ
・バイオハザード
・SF
・主人公が2大勢力の中間地点にいる
・ミリタリー
・主人公と常に行動を共にする相棒
・大切な人の死
・四天王的な
・愚かに見えるほど勇気ある主人公
・主人公の懊悩
・力のインフレ
・キモかわいい
・練りこまれたプロット
・高校生
などなど。まあジャンルとかテーマ的には、最近溢れているよくある作品と言えるでしょう。
この作品が最近の作品たちの大元になったのかは知りませんが。
完全版には、読者からの質問に作者が答えるコーナーが挟まれているんですが、この作品に感化されて興奮して書いた質問だからか知りませんが、結構危ない質問が多くて面白かったですw
作者はそんな質問をのらりくらりとかわして無難な返事をしていましたが。
全体としてのまとまりもいい上、少ない巻数にギュッと内容が詰まっていて毎回展開が大きく動くので、出来ればまとめ買いすることをお勧めします。1冊900円なので7200円です。
ネタバレなしではこんなところですかね。とにかく面白かったですよ。財布と本棚に余裕があればぜひご一読ください。
ここからはネタバレ有りなので、これから読もうと思ってる人はまわれ右!
あと、ちょっと厳しいことも書きますので、寄生獣が好きで好きで批判されるのが絶対嫌だという方も回ってください。
さて、ここからが本感想。
・心理描写について
男性陣と寄生獣たちの心理描写がとても素晴らしかったです。
特に主人公のシンイチの心の動きには大変共感出来ました。寄生獣たちは合理的というか、田村玲子など一部を除いて目先の利益に向かって短絡的に行動するだけなので描きやすいだろうなあと思いました。
ただ、だからこそ一つ残念なのが女性の心理描写です。
といっても、よく考えてみれば加奈は自然にというか、物語が面白くなるように動いていたので文句のつけようもありませんが、やはり気になったのは正規ヒロインの村野です。
決定的に惚れて一種の崇拝に至るような出来事もなくあそこまでシンイチ一筋でいられるのはちょっと異常だと思いました。命の恩人というのもあるかもしれませんが、日に日に見るからにおかしくなっていく男をあそこまで一途に思い続けられるものでしょうかね。加奈のように危険を求めるタチでもないようですし。そこのところが少しご都合主義になってる気がしました。
・戦いについて
始めのうちは良かった。完全な寄生獣を、不完全なシンイチとミギーが知恵を使って倒していく様はハラハラどきどきしてページをめくる手が止まらなかったです。「知恵を使って勝つ」という点は最後まで貫かれていたので、そこはこの作品の良い点ですね。
でもちょっと残念なのが、後半で警察の特殊部隊が出てきて現代兵器で寄生獣たちをバッタバッタとなぎ倒していったというところです。確かに、人類の敵がいとも簡単に駆除されていくさまは、やっぱり人類つえーと思わなくはなかったですが、一言で言うと無粋だと思いました(『惑星のさみだれ』のアニムスじゃないですが)。
寄生獣の広がっていく規模を考えれば警察隊の力を借りなければならないということもわかりますが、読破してみて結局シンイチとミギーの最終的な標的は広川・田村・後藤のグループだけでしたから、シンイチとミギーが世間の知らない所で全てを片付けるという展開もあったと思います。
リアリティを追求して世間が寄生獣の登場に大騒ぎ→警官隊出動という方向に持っていったのだとしても、本当にリアリティを追求するなら広川みたいな知的グループが全国・世界にゴロゴロ出てきて世界規模の戦いに発展するのが自然な流れではないでしょうか。
というわけで、少し中途半端な展開だと思いました。
ただ、寄生獣の見分け方の髪の毛チェックやレントゲンはなるほどと感心せざるを得ませんでした。そこを使いたかったから警察の科学班が登場するような展開に持っていったのかもしれませんね。
てか、寄生獣は骨格の形に変形すればあのレントゲンの車を通過できたんじゃないかな。途中で正体がバレる仕組みが分かったみたいなのに。(後藤の、広川に対する「あんたなら包囲を抜けるのもたやすいだろう」から)
・結論について
田村の「寄生獣は人類と共存出来る道を探さないといけない」は納得。寄生獣にとってはそれしかないと思います。
でも、最終巻の最後の方の「みんな地球で生まれたんだから」っていうのはおかしいですよね。
確かにテニスボールくらいの大きさの卵が割れたのは地球上です。でもシンイチは知らないかもしれないけど、あれは全部空から降ってきたわけだから、寄生獣は地球外生命体という設定にしないとおかしい気がしました。まあこれはイチャモンなのでどうでもいいことなんですが。
それにしても終わり方はとてもよかった。読んでいるとき、この作品の完結の仕方は
「寄生獣の完全駆除」
「人類滅亡」
「人類と寄生獣の共存の道」
しかないと思っていて、上の2つだとなんの解決にもならないし、3つめは読者が納得するように描くのは難しいだろうなあって思ってましたが、結局3つめの一番難しい結論をやってくれたので大満足でした。
序盤からずっと使われていた「ミギーが眠る」という設定をうまく使って終わらせたのは素晴らしいと思います。
いきなり新しい設定が出てきてうまく終わられても納得できませんからね。
しかも完全にお別れしたわけではなく、ずっとそこにいるという優しい終わり方だったのがとても好印象でした。
その好印象を与えつつも、逃げた浦上の処理をきちんとこなしたのもうまいと思いました。
・全体として
全体的に王道を貫いている感じですが、まとまりがあって非常に良かったです。
構図としても人類VS寄生獣ではっきりしていましたし、寄生獣の顔役として人間である広川が立てられたのも王道ではありますが、描き方がうまかったので射殺されるまで気づきませんでした。
はじめのうちは、シンイチが只の人間でめちゃくちゃ弱かったのに、母親の死という一つの出来事から化けましたね。ミギーの細胞が全身に行き渡って人間でいながらも人間以上の力が出せるようになるなんて、この発想がすごいです。この設定があるのと無いのとでは、作品の面白さに雲泥の差が出るだろうと思います。
感想書いているうちに気づいたんですが、この作品は全体として、ひとつの出来事が起きるといろんなことが絡んで絡んで一つの大きな流れになっているのがわかります(なんとなくですが)。作者がどれだけプロットを練って練って練り込んだのかを感じられる気がします。
まあこんな感じですかね。もっと書きたいこともあるんですが、それらはとても細かいことなので割愛します。
高い評価を得ている理由が確かにこの作品には詰まっています。
厳しいことも書きましたが、他の記事を見ていただければ分かると思いますけど、これだけ長い感想を書くことはめったにありません。自分でもびっくりしています。多分このブログで一番長い記事なんじゃないでしょうか。
それだけいろいろ考えさせられる作品ということですね。
ではでは、財布と本棚に余裕があればぜひご一読を。
わりお
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