ブラック★ロックシューター 第八話(最終回)「世界を超えて」 キャプ付き感想!
痛みの肯定。
傷つきたくない、傷つけたくない
傷つけられるのは嫌だ、人を傷つけるのは嫌だ。
それは当然の感情なんですよね。
100人が100人そうとは言えないけど、望んで傷つけられたい人なんていない。望んで人を傷つけたい人なんていない。
誰だって痛みはなしに生活したいし、誰かに痛みを強いたりもしたくない。
だからユウは、思念世界に逃げたのでした。
ユウは一方的に傷つけられる側だったけど、その痛みは想像を絶するものだった。
学校では陰湿ないじめに苦しみ、家に帰ってからも家庭環境は崩壊、唯一まともに接してくれたサヤちゃんでさえ、家が火事になると「もしかしてあの子がやったんじゃ」と疑う。
そんな時、ただただ戦い、肉体の痛みのみが伴う世界の存在を知った。
ユウの今回の独白は壮絶なものでした。
自分の心が傷つけられるくらいなら、自分自身が傷つく方がマシだ。
現実にも、リストカットという心の病があります。思念世界に飛んだユウは、いわばリストカットのようなものなのでしょう。心の痛みから逃げるために、体を傷つける。
余談ですが、僕はこういった「逃げ」を悪い事だとは思っていません。
小学生の頃、まぁユウほどじゃないですが、僕もいじめられていました。あまりの苦しみに、教室から逃げ出した事もあります。
でも、僕は比較的強い方だからよかった。本当にどうしようもない、本当に弱くて、ただ強者に虐げられるしかない人たちは、逃げる事すらできないのです。
周りの人に相談するなんてもっての外。やろうと思えば走って逃げられる場面でも、絶対に逃げる事なんてできない。
ユウはそういった子だったのでしょう。サヤちゃんが声をかけてきたのは僥倖としか言いようがない。
そんな中、思念世界という逃げ道を見つけた。だからユウは逃げた。
僕はこの判断を、この逃げを、否定したくはありません。だって、誰だって苦しいのは嫌だから。痛いのは嫌だから。
マトは、痛みや苦しみそのものを憎む。これは前回ストレングスが言っていた事でした。
それは、傷つきたくないから。傷つけたくないから。
ストレングスが前回言った通り、そしてブラックロックシューターが今回言った通り、それでいいのです。傷つきたくないから、他人が心の中に入ってくるのを妨げる。傷つけたくないから、ずっといい子でいる。傷ついてほしくないから、人の痛みはぬぐってあげる。
そんなマトだからこそ、ヨミはマトを好きになったのでしょうね。
傷つきたい、そして傷つける
しかしマトは、一連の事を受け、今回「傷つきたい」と叫びました。
ブラックロックシューターに、思念体に、痛みを押し付ける事なんてしたくない。
痛みは自分で引き受けたい。
そうじゃないと、いろんな色が見えないから。たくさんの色を見たいから。
こはっち先輩の考え方が同じですね。
人のせいにしたくない。人のせいにしたら、もう自分ではどうしようもなくなる。自分のせいにしたら、自分でどうとでもできる。
傷つくから、いろんな色が見える。いろんな事ができる。いろんな事がわかる。
ことりとりはいろんな色が混ざって、黒ずんで、最後に死んでしまうけど、それはいろんな色を見たから。いろんな事を経験できたから。
その結果黒ずんでしまうのだとしても、それは数々のステキを経た結果だから。
でも、自分だけ傷ついて、他人を傷つけないというのはずるい。ブラックロックシューターはそう言った。
それはやはり、以前のマトなのですよね。相手の事を思いやって、思いやって、傷つけないようにするだけ。
だからマトは、ヨミが苦しんでいる事に気が付けなかった。自分の事しか考えていなかったから。相手を思いやるという自分に酔っていたから。
時には、相手を傷つける事も必要。
傷つけようとして傷つけるんじゃない。傷をつけるのを恐れていては、仲よくなんてなれない。
気の置けない仲というのは、そういう事。
傷つけ合って、でも支え合って、つながる。つながりたい。
そんなマトの、ヨミの、カガリの想いがとてもステキだと思いました。
誰だって傷つきたくない。それは当たり前だ。
誰だって傷つけたくない。それも当たり前だ。
でも、そうしないと仲よくできないから。そうしないといろんな色を見れないから。
ならば、痛みを肯定しよう。痛みも苦しみも全部自分で引き受けて、それ以外のステキな事も全部感じよう。
痛みから逃げずに進んだ先には、きっと幸せがあるはずだから。
僕は昔、母に連れられてある偉い心理学の先生の講演を聞きに行った事がありました。
行く前は乗り気がしなくて、でも聞き終わったらとてもいい気持になれた素晴らしい講演だったのですが、そこで一つ強烈に脳裏に焼き付いている思い出があるのです。
僕の前に座っていた女性が、リストカットをしていたのでした。
彼女の事なんて何も分かりません。でも、とても辛かったんだろうな、というのは分かります。だってその子、半袖のシャツを着けていたのですから。
普通リストカットをしている人は、長そでをつけます。傷を隠すためです。
でもその子は、半袖を着けていた。苦しいのを我慢して、辛いのを我慢して、自分をさらけ出していたのでしょう。その子は手首だけじゃなく、ひじの上にまで傷が及んでいました。
隣には母親らしき人がいました。たぶん、二人で痛みを乗り越えて、この講演に来たのでしょう。
先生の講演が終わった時、その子はボロボロ泣いていました。
辛くても、苦しくても、痛くても、でも生きている。生きている限り、人生は素晴らしい。そんな講演でした。
その子は今までリストカットに逃げていましたが、これからは心の痛みと向き合い、前を向いて生きていくんだろうなぁ、と、僕は思ったものです。
そんな事を思い出した、今回のBRS。
素晴らしかったです。難解で、結局どういう事になっているのか分からない事柄もいっぱい残っているけど、それでも心が震えました。
4人に痛みあれ。そして、4人に幸せあれ。
ああ、サヤちゃん先生も忘れずにね。
気になるカット
総評はキャプのあとに~
今回は作画パートは監督の吉岡忍、CGパートは特技監督の今石洋之、という特別仕様でありました。
さすがにこの二人がそろうと映像演出のレベルが桁違い。作画の最終回クオリティも相まって、素晴らしい映像美でした。
今回は表情の動きを激しく、そして繊細に表現するためか、CGパートの中に作画パートが混じっていました。
特にユウの表情がすごかった。
そして、CGと作画をまぜこぜにしてもCGが浮かない事に改めて驚愕。
インセイン・ブラックロックシューターにぼこぼこにやられるマト。
思念体はそれぞれのイメージカラーと同じ色の血を流していましたが、ここでは普通の赤ですね。
いろんな色を見るためには、とロックカノンを召喚するマト。
こういうところがいちいちかっこいい。
どうでもいいけど、ロックカノンはさっき壊されたばかりですが、あっさり再生できるのですね。
もはやBRSの特徴と言っていいこのカメラワーク。相変わらずとんでもねぇぜ。
もしかしてグレンラガンとかもこんな感じなのかな?
忘れていた執着を思い出して、涙を流すこはっち先輩。
カガリもヨミも泣いていましたが、このカットがいちばんグッときました。
あの男の子はタクでしたっけ?
忘れていた恋心を思い出したのでしょうね。
そして同時に、からかわれた時の痛みも思い出したのでしょうね。
痛いけど。あの時は辛かったけど。
でも、ラブレターを渡した時の気持ちは本物だから。
痛くても、好きだから。
痛いほど、好きだから。
周りでおろおろするチームメイトたちもいい味出しています。
デッドマスターたちの光を受け、新たに武器を創造するマト。
光の収束がかっこよすぎて惚れた。
「ことりとりいろいろのいろ」」も思い出しちゃう、素晴らしいカットでした。今までもCGパートはかっこいい映像の連発だったけど、このシーンが一番好きかも知れない。
このカラフルさは素直に綺麗だし、ストーリーとも合致しているしね。
そしてインセインさんへぶっ放す超巨大ビーム。
迫力満点すぎます。どれだけこちらの心臓をブルブル振るわせれば気が済むん?w
あらいいフトモモ、とか思ったなんて口が裂けても言えないよ。
マトがブラックロックシューターの服を着ている図は新鮮。
ちなみにこの一つになった世界では、全部手書きですかね?
いや、瞳とかはCGか。でも手書きベースでCGのような美しさが出ていました。たぶんこれは撮影の仕事だけど、BRSは映像面では本当に時代の先を行っていると思う。
手書きverのブラックロックシューター。
髪などに余計な影をつけない、のっぺりとした色合いが逆に綺麗。こういう作画は『時をかける少女』が先駆けですかね?
にしても凛々しい。ブラックロックシューターの造形はいつ見ても惚れ惚れします。
ユウが帰ってきて、涙を流すサヤちゃん先生。
家に火をつけたのはユウなんじゃないか、と疑ってしまうのは状況的に仕方のない事。サヤちゃん先生は本当にユウの事を思って、ユウを守ろうとしていたのですよね。
少女たちを苦しみに追いやる数々のシーンが嫌悪感をもよおすほどの描写だった分、この涙は素直に「いいね」と思えます。
こんなにも想ってくれる人がいるんだから、現実世界も悪くないよ、ユウ。
なんて可愛いんだこはっち先輩……
ジャージじゃないのもいいですね。彼氏の前で野暮ったい格好なんてできませんもんね。
カガリがあまりにも可愛すぎて吹いた。
このアニメで最強はカガリだと思うんだ。
身長が微妙に高いところがいい。というか初めてだぜ、身長高いから萌えるっていうのは。僕は小さい子が好きなのに。
最初の頃は車椅子だったからね、その時のギャップがカガリを伸び伸びと見させているんだろうね。
腕を上げるのに特に意味はないシーンだけど、ステキだなと思えました。
いろいろのいろ。いろんな色の手作り腕輪。
4人はずっと仲良しでいられそうですね。
総評
さて、ブラックロックシューターのテレビアニメ、全8話、終わってしまいました。短ッ。
ちょうど三年前の今、『空を見上げる少女の瞳に映る世界』がやっていましたね。あちらは9話でした。
僕はBRSのアニメシリーズは全て追いかけており、アニメに関するディスクは今のところ全て揃えています。その事もあり、このテレビアニメも非常に楽しみにしていました。
OVAで展開されたストーリーを下地に、岡田磨里流のアレンジが加えられて、ところどころは難解で結局分からないところもありますが、この8話、非常に楽しめました。
ストーリー面では、少女たちの苦しみや痛みを真正面から描き、えげつない描写もためらいなく行ってしまうところが魅力でした。人間の暗いところをまざまざと見せつけられたからこそ、最後は「よかったね」と思えるような、綺麗なラストになったと感じています。
作画面では、これはアニメ界でも革新的なんじゃないかと言えるクオリティを発揮してくれました。
一見CGには見えない、作画のように動くCGパートが特にすごくて、毎回体中が震える興奮を与えてくれました。
手書きパートでも、元京アニの吉岡忍率いる演出陣の巧みな演出がこれでもかと活き、特にキャラのさまざまな表情はそれだけでおなか一杯になれます。
Orbetとサンジゲンの初元請制作のテレビアニメでしたが、とんでもなく素晴らしい作品が出来上がったものだと感じています。
今までのディスクをそろえている事から、僕はテレビシリーズのBDも最初から買うつもりでいましたが、一応は「ちゃんと見てから決めよう」と考えていました。僕が映像パッケージを買う一番の理由は「映像美」にあるので、ストーリーが面白くても、映像面でそうでもなければわざわざ買う事もないかな、と。
しかしこれは確実に買いです。
揃えます。
発売開始が6月というのは、遅いですが、僕には逆に助かりました。新しいパソコンを買ったばかりで、今僕の財布はすっからかんなのです。手元には10円しかないぜ。
というか、各巻発売の他にBOXも6月に出るのですね。できればBOXも単巻も全て揃えたいのだけど、お金間に合うかしら。Amazon価格でどうにかなるか……?
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