■AP通信：貴重インタビュー：チベットの村人が従兄弟の焼身に関する中国政府の報告を否定■

AP通信記者がチベット・アムド地方で、焼身者の従兄弟の僧侶にインタビューした。言及されている焼身者は2012年10月6日にアムド地方ツォエ（ツゥ、合作）で焼身、死亡したサンゲ・ギャンツォだ。

チベットの村人が従兄弟の焼身に関する中国政府の報告を否定
AP、2013年10月23日

（中国・甘南チベット族自治州電）
中国のチベット人居住区でサンゲ・ギャンツォが焼身し死亡した後、警察が彼の家族のドアを叩き、尋問した。もっとも答えはあらかじめ用意されていたようであった。

27歳になる農民の焼身自殺はあらかじめ計画されていたのか？彼は外国の分裂主義者と繋がっていたのか？家族は焼身抗議の報償金として300万元（約50万ドル、約4810万円）を受け取ったのか？

遺族が受けた質問はこうしたものだったと、サンゲ・ギャンツォの従兄弟は語る。訊問の後、“サンゲ・ギャンツォ、この手に負えない泥棒にして、女狂いであった２人の子供の父親は、民族憎悪を煽るための入念で残酷な計画に煽動された”と政府は報告している。

焼身者の従兄弟である１人のチベット人僧侶は報復を恐れ、匿名を条件にインタビューに答えた。「（当局の）話しはすべて全くのナンセンスだ」と彼は言う。チベット高原に向かう丘が広がる甘南州の村でインタビューは行われた。彼は料理と暖をとるための両方に使われるストーブの近くに座っていた。窓の近くの欄間にはダライ・ラマ法王の写真が飾られていた。

チベット人居住区で行われたこの貴重なインタビューで、従兄弟はAP通信に対してこう告げている。サンゲ・ギャンツォは2012年10月6日、村の近くにある白い仏塔のかたわらで焼身した。チベット人の権利が保証されていないことへの個人的な抗議だった。海外のチベット人グループと関係があったわけではない、と。「サンゲ・ギャンツォをはじめ、焼身した人々について多くの嘘が広められている」と彼は話した。

海外のチベット人権団体は2009年初頭以降、僧侶・俗人、男性・女性、年少者・年長者120人以上が焼身していると報告している。焼身者の大半は死亡した。人権団体はヒマラヤ地域における中国の強硬支配に対する内発的抗議だと指摘している。

焼身のニュースは中国のイメージを傷つけるものだとして、当初中国政府は情報を封鎖しようとした。しかし焼身のレポートが絶え間なく外部に漏れ続けることを知り、方針を変えた。

政府は焼身者たちを、分裂をもくろむダライやその支援者たちの煽動に乗せられたくず人間たちであるということにしたのだ。共産党がコントロールするメディアは、焼身者たちをギャンブル狂い、泥棒、女狂い、あるいは社会の落ちこぼれ、身体的障害に苦しんでいた者たちだと書き立てた。

1959年に北インドに逃れたチベット仏教のリーダーであるダライ・ラマは自殺への関与を一切否定。命が失われることを悲しみ、中国政府が国際的監視下で事態を調査することを求めている。またダライ・ラマはチベットの独立ではなく、自治を求めているという。

中国政府の厳しい監視により、現地から独立したレポートをすることはほぼ不可能に等しい。外国人ジャーナリストが甘南チベット州を訪問すること自体は許されているものの、今回の旅行中も警官たちがAP通信記者を監視し続け、現地チベット人へのインタビューを止めさせようとしていた。

遺族たちは沈黙を余儀なくさせられている。それゆえにサンゲ・ギャンツォの物語はいまだはっきりとは分からない。従兄弟や近隣の人々はAP記者に、サンゲ・ギャンツォの村に近づかない方がいいと助言した。政府のスパイがいる、家族が話をすることを妨害するであろう、と。

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＊本記事はブログ「チベットNOW@ルンタ」の2013年10月27日付記事を許可を得て転載したものです。