中国、新興国の「今」をお伝えする海外ニュース&コラム。
2013年02月10日
護衛艦 / keromako
■中国側公式声明がでるまでの3日間
大変な騒ぎとなったレーダー照射事件について、中国国防部が「射撃管制用レーダーは使っていない」と完全否定した。これで納得はできないが、日本側がちょっとやそっとの証拠を突きつけたぐらいでは中国側が認めるともおもえず、とりあえず収束というか、泥沼式の停滞が決まったように思える。
今回の事件については30日のレーダー照射から5日の小野寺五典防衛相の記者会見までなぜ6日間もかかったのかというのが1つの謎とされているようだが、日本政府が慎重に対応を検討したという説明にそんなに不思議は感じない。むしろ中国側公式声明が8日に出るまでの3日間という時間のほうが興味深い。
その間に中国外交部報道官が「報道で知った、主管部署に聞いて欲しい」と逃げ、そして本サイトで紹介してきたように環球時報など一部中国メディアに逆ギレ気味の反論が載るという展開もあった。
ちなみに中国外交部の回答をもって「中国政府はレーダー照射を把握していなかった」と報じた日本メディアもあったが、これはさすがにミスリードだろう。「主管部署に聞いて欲しい」は外交部記者会見ではしばしば出てくる逃げ文句であり、また人民解放軍は党の軍隊なので、国の機関である外交部が把握していなかったとしてもあまり騒ぐような話ではないのではないか。
話しを元に戻せば、中国側公式声明が出るまでの3日間とはなんだったのか、と考えるならば、ベストな言い訳を考えるまでの時間だったと言えるのではないか。
iPhone camera / くーさん
■中国にとってのベストな言い訳とは
そこで中国にとってのベストな言い訳とはなんだったのか、という点を考えてみたい。ポイントは「何が書かれなかったのか」である。実は6日付環球時報に掲載された記事「賊を捕らえろと叫ぶ日本賊は中国海軍を侮べつした=挑発は完全な茶番劇だ」に公式声明に出てくる論点は網羅されている。
だったらこれをもう少し丁寧な口調に変えて公式声明にすれば良さそうなモノだが、実際の声明と比べると、ある危険要素が削られている。それは「艦の行動を妨害する相手に対して、砲塔を向けて狙いをつけたり、射撃管制用レーダーを照射して警告するのは国際的な慣例」という部分だ。
あと「日本側の目的は安倍首相訪米に向けての地ならしだ」という部分も欠けているが、「日本側の行動は警戒、熟考に値する」と匂わせる程度にとどめたとみるべきかもしれない。付け加えるならば、「日本側がしつこく中国艦艇を追尾、監視している」という話が強調されて主軸になっている。
下記に中国国防部の公式声明全訳を掲載するのでお時間がある方は眺めていただきたい。お時間のない方は読み飛ばしを推奨。なお日付は7日となっているが、実際にウェブサイトで公開されたのは8日である。
■日本艦、機の近距離追跡、監視こそが日中の海空安全問題の根源である
火器管制レーダーを照射する行為はこれまでとは異質です。明らかにエスカレートしています。これは武力行使に至るわずか一歩手前の行為ですから。威嚇と理解していいでしょう。威嚇は、国連憲章第2条が禁止しています。国連憲章は「すべての加盟国は、その国際関係において、武力による威嚇又は武力の行使を、いかなる国の領土保全又は政治的独立に対するものも(中略)慎まなければならない」としています。レーダー照射はさらに、西太平洋海軍シンポジウムが作成した海軍間の紳士協定「CUES(Code for Unalerted Encounters at Sea)」にも違反します。このシンポジウムは日本、中国、米国、韓国のほか、ロシアやASEAN(東南アジア諸国連合)の海洋国家が参加するもの。CUESは、平時において、不測の事態を避けるための行動基準を定めています。艦船同士が保つ距離など具体的なことを規定しています。この中で、レーダー照射を禁止しているのです。
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現場の艦長が指示したんだとすれば、要はあの漁船のオヤジと同じレベルなんだと思う。