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咲 -Saki- 阿知賀編 episode of side-A

咲 -Saki- 阿知賀編 episode of side-A 2話 『始動』 感想

 咲2話 シーン1

全てを “あの場所” へ置いてきたわけじゃない。
繋がって、引き継がれて、確かにこの感覚はその手に刻まれてる。



栄光と挫折、そして今... 麻雀を愛し、麻雀に愛された阿知賀のエース故にその相思相愛の相手に翻弄された赤土晴絵のこの物語はもう何とも言えない苦しさと悲壮感が詰まっていて、まるでスラムダンクにおける三井寿を思い出してしまったというかね。

もちろん、境遇とか経緯とか全くと言っていいほど違う部分もあるのだけれど、全体像としてはそれこそ酷似しているんじゃないかなと個人的には感じるところでもあって、まぁスラダンとか読んだことねーよって方に分かり易く説明すると、つまりは 「挫折と孤独」 とでも言えばいいんですかね。

牌をまた握りたい、また躍動したいと願う彼女の想い。それはあの全国の舞台で大敗を喫したその時からきっと抱き続けていたはずの想いでもあって...


咲2話 シーン2咲2話 シーン3


けれど、彼女が “あの場所” で植え付けられたトラウマはそんな想いとは裏腹に彼女の体を麻雀から遠ざけることに一役買ってしまっていたわけで、そこにこそ彼女の悲運って詰まっていたのではとも考えることが出来る。牌にすら触れられない時期が長引き、栄光はただの過去に成り果て、彼女自身の大部分を構築していたはずの 『それ』 はもはや手の届かない場所に行ってしまって...

ただ、そうであってもやはり彼女は麻雀を愛し、麻雀に恋焦がれていたわけで、だからこそ麻雀教室という名のリハビリを始め、一歩でもまたあの時に近づこうとしたんですよね。また、その延長線上で実業団にも加入することができ、段々とまた麻雀という存在に近づくことが出来ていた。そう、思えていた。。

けれどその実、蓋を開けてみればまだまだ彼女はあの頃の自分には程遠く、トラウマにも解消されないまま下を俯くことしか出来なかったわけで、その辛さや苦しみといった部分はまさに彼女の 「その麻雀にだって... 私はまだ...」 といったあの台詞にぎゅっと凝縮されていたのではないかと思います。


 咲2話 シーン4


でもね、どんな状況だってやっぱり赤土晴絵は麻雀が大好きなんですよ。それは穏乃や憧、玄がその深層心理ではずっとあの頃の麻雀を愛し続けていたことと同じように、彼女にとっても麻雀はもはや人生そのものなわけで、それはもう切っても切り離せない存在でもあった。

麻雀牌のストラップを付けていたり、やっぱり“ここ”が好きだと言えるその真意だったりを加味すれば、それはもう当然のように行き着くことが出来る答えなんですよね。

故に、その場に響き渡る牌が打たれる音、擦れる音というのは彼女の心に大きな波紋を広げる上に、『その場』 が過去の遺物となっているはずの 『自分が居た場所』 であることが彼女の胸を大きく振るわせる。あの輝かしい日々が詰まったまま時が止まっていたこの場所で、またあの感覚が蘇る。そんな高揚感と期待感。そして、不安感。


咲2話 シーン5咲2話 シーン6


そして、そこで彼女が再度出会うは“あの頃の自分のような化身たち”の姿であり、きっと彼女もそう口にしていたであろう「インハイへ!」の力強い一言だったわけで、それを見て、聞いた彼女の心が再燃しないなどはるはずもなかった。

どんなトラウマを抱えていたって、どんな不安を抱いていたって、どんなに彼女があの舞台に何かを置いてきてしまったのだと悲観的になったって、その手に刻まれた『最高の感覚』と、あの頃に抱いていた『麻雀への情熱の灯火』は誰にだって消せるものではなかったのだと。

また、何もかもをあの場所に置いてきたわけじゃ決してなく、むしろ彼女はその胸中に残していた小さな想いをあの麻雀教室という場所を通して彼女達に託してもいたんです。それは例え偶発的な結果論であったとしても、確かに、今、こうして新たな芽を芽生えさせることに繋がった大きな起因となっていて、そうして力強く花開いたそれぞれの芽は晴絵の麻雀に対する想いの強さをも反映する鏡としても機能する。


 咲2話 シーン7


また、それは灼という一人の少女の物語を辿っても行き着く一つの答えでもあって、彼女もまた晴絵の麻雀に恋焦がれた一人として確実にその血筋は受け継がれていたはずなんですよね。

インハイで負けたって、勝ったって、あなたの麻雀が好き。あなたのことが大好きだと、迷わず言って見せた灼のその熱意と想いは今も彼女の中にしっかりと根付いていて、あの日に晴絵が彼女に分け与えたその襷(たすき)をずっと灼は握り締めていた。

じゃあ逆に何故、灼は晴絵が“変わってしまっても”その想いをその胸中に留めることが出来たのかということを考える。それは彼女が晴絵に対し幻想を抱いていたから?灼がただ彼女に固執していただけ?


咲2話 シーン7咲2話 シーン8


いや、違う。そんな難しいことじゃない。晴絵の打つ麻雀はそれだけ魅力的で、彼女の麻雀に対する熱い想いは第三者の心をも躍動させる衝動そのものだったから... ただ、それだけのことなんですよ。

でもだからこそ、灼はまた晴絵に “自分の手で打って欲しい” と懇願した。そんなあなたが好きだから、魅力的だから、私の目標だから、夢だから。それは何の打算も駆け引きもない、ただたただ単純な 『憧れ』 そのものであることに変わりはないんです。


咲2話 シーン9咲2話 シーン10


けれど、晴絵はそうすることを選ばなかった。もちろん、その理由としては彼女が述べたように 『あの舞台』 に自分の麻雀を置いてきてしまったからという部分が大半を占めていたのでしょう。

でも彼女にとって、この阿知賀高校新生麻雀部はむしろ自分自身を見ているような直感もあったんじゃないかなって思うんです。自分の教え子が、自分を慕ってくれた後輩が、自分を見て、自分に影響された結果、今こうして同じ舞台に立とうとしているんだという一つの事実。

故に、彼女は彼女達を見守っていくことであの頃に回帰し、もう一度自身が恋焦がれる “麻雀” という絶対的な存在の前に凛と背を伸ばした状態で立ちたいと望んだのかも知れない。何より、それこそが自分が自分として在り続けるための最大の近道なのだと。

もちろん、そんな晴絵の想いの全てを灼が汲み取ったわけではないのでしょうけど、それでもそういった熱い想い、信念のようなものは確実に彼女に届いていて、だからこそ彼女はまた再度、赤土晴絵という雀士の存在を自分の夢として承認することが出来たのだと思います。そして、それは幼き日の彼女が晴絵に憧れたその過程と重なる部分でもあったわけで、つまり晴絵の情熱という部分だけをとってみれば彼女はこの時既に、あの輝いていた頃の自分に辿り着くことが出来ていたのでしょう。


 咲2話 シーン11


そして、それは阿知賀高校麻雀部という存在にとっても、彼女達一人一人にとっても同じことが言えたりして、それぞれが胸の奥底で大切にしまっていた想いを、彼女達はようやく堂々と胸を張ってみんなの前に曝け出すことができた。

一人は怖い。一人じゃ何もできなかった。けど、みんながいる。幼き日に夢を抱いて、前だけを見てひたすら麻雀に熱中していたあの頃の自分とあなたが確かに今、この場所に存在してる。そういった事実こそが、今の彼女達をこんなにも自信と活気に満ち溢れさせ、まるで恐れを知らない者たちのように映し出すのでしょう。

何より、「晩成がなんだ、今の私たちは一味違う」 と意気込む終盤の彼女達の姿を観ると、それこそ阿知賀高校麻雀部はこれからが本番なんだという彼女達の意志の強さを感じ取れる気がして、もう今回のラストの展開には身震いしっぱなしでしたね。本当に素晴らしいの一言です。


 咲2話 シーン12


というわけで、最後は一番「イイッ!」と感じた穏乃の自信と希望に満ち溢れるキメ顔シーンで締め括らせてもらおうと思います。彼女達がこれから進む道にはそれこそ大きな壁が多く立ちはだかることでしょうけど、そんな時こそ今回のようにその大切な想いと仲間の存在を思い返し、こうして自信を持って前に向かい進み続けていって欲しいものですね。

まずは県予選。そして、打倒・晩成。その不敗神話に2度目の風穴を開けてくれることを願って...!




次回  「接触


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咲 -Saki- 阿知賀編 episode of side-A 第2話 「始動」 感想

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