写真1●KDDIが開発中のM2M向け通信技術「すきま通信」
写真1●KDDIが開発中のM2M向け通信技術「すきま通信」
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写真2●デモで使っているのはLinuxをインストールした組み込み端末
写真2●デモで使っているのはLinuxをインストールした組み込み端末
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写真3●組み込み用のすきま通信モジュールの試作機も展示している
写真3●組み込み用のすきま通信モジュールの試作機も展示している
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 2011年5月25日から27日まで、無線通信関連の展示会「ワイヤレスジャパン2011」が東京ビッグサイトで開催されている。会場内のKDDIの展示ブースでは、通信回線やアクセス先サーバーの込み具合を端末に自ら計測させ、空いている時間を狙って通信させるという「すきま通信」という興味深い開発中技術のデモを実施している(写真1)。

 機械同士がIPネットワークを介して相互に通信し合う「M2M」(Machine to Machine)の世界では、例えば多数のセンサー付き端末をネットワーク上に分散配置してデータを収集し、特定の時間帯になったらサーバーにデータを一斉送信させるといったケースが考えられる。

 こうしたケースにおいて、全端末がほぼ同時にデータを送信しようとすると、通信回線やサーバーに過大な負荷がかかって回線がふくそうしたりサーバーがダウンしたりする危険がある。KDDIが開発中のすきま通信は、こうした事態に陥るのを未然に防ぐため、端末が自ら回線やサーバーの込み具合を計測し、込んでいない「すきま」を狙って自律的に通信させるというものだ。

 具体的には、各端末がサーバーに対して実際のデータを送信する前に、「お試し」的にサーバーから小さな(デモのケースでは50Kバイトほど)のデータをダウンロードしてスループットを測る。スループットが低い場合、込んでいると判断し、結果を学習しつつサーバーに対してデータを送信するのをしばらく待つ。

 この“しばらく”が一定時間だと、他に同様な判断をした端末による再送信の試み(リトライ)が集中して再び込み合う可能性が高くなる。このため、待ち時間をランダムに設定する工夫などをしているという。このあたりは、LANなどの通信技術で使われている衝突検知(あるいは衝突回避)の考え方と同様である。

 展示会場では、Linuxをインストールした組み込み向けの箱型端末を使ってすきま通信のデモを実施していたが(写真2)、実用化する際には、同機能を備えた小型の専用モジュール(写真3)などを端末に搭載する形になるという。

 なお、デモでは込み具合の判断につかう材料として、データをダウンロードする際のスループットを利用していたが、仕組み的にはその他の情報を使うことも可能だ。例えばサーバーが接続要求に応答するまでの時間や、パケットが往復する時間(ラウンドトリップタイム、RTT)およびその変化、パケットロスをはじめとするエラー発生率などが考えられる。