グラクソ・スミスクラインコマーシャル企画部門のフィリップ・オヴァロ部門長と同カンファランス&プロモーションサービス部の小野晃一プロモーションサービスマネージャー
グラクソ・スミスクラインコマーシャル企画部門のフィリップ・オヴァロ部門長と同カンファランス&プロモーションサービス部の小野晃一プロモーションサービスマネージャー
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 製薬大手のグラクソ・スミスクラインは、取引先の医師に配布するための説明資料などの「仕分け」に2010年1月から取り組み、倉庫内の資料の量を半年間で34%減らすことに成功した。保管スペースの節約などによる直接的な効果だけでも、年間で1000万~2000万円のコスト削減効果になるという。

 今回、資料削減に取り組んだのは、処方せんを必要とする医薬品を取り扱う部門。従来は医師からの突然の資料請求にも即応すべく、ほぼすべての資料を倉庫に保管。その数は1000種類に達していた。「1カ月に10枚出るかどうかの使用頻度の少ない資料でも倉庫の棚を1つ占領していた」(コマーシャル企画部門カンファランス&プロモーションサービス部の小野晃一プロモーションサービスマネージャー)。こうした体制を敷いてきたために無駄が多かった。例えば大量の資料配布を見込んだのに予想が外れて在庫を抱え込んだり、規制の改正や新しい効能の発見によって文面が古くなったときに、大量の廃棄資料が生じたりしていた。

 そこで同社はまずヤマトシステム開発が提供する「販促品オンデマンドサービス」を2009年8月に採用した。グラクソ・スミスクラインのMR(医薬情報担当者)が必要な資料と配送先を指定すると、ヤマトシステム開発の拠点から宅配便で配送するASP(ソフトの期間貸し)型のサービスだ。同サービスを活用することで、それぞれの資料の使用量を把握できるようになったうえ、出荷頻度の少ない資料については電子データとして保存しておいて必要に応じて印刷・製本できるようになった。印刷業者に発注するより小ロットで印刷・製本できるうえ、最短で翌日午前中にMRの指定した場所(MRの自宅や営業所など)に届く。

 ASPで各資料の利用状況のデータが蓄積されると、2010年1月からグラクソ・スミスクラインは資料の仕分けを始めた。(1)使用頻度が低くそもそも資料として利用できないものは廃棄、(2)使用頻度が低いがまだ資料として使われる可能性があるものは電子データ化、(3)使用頻度が高いものは従来通り倉庫に保管、の方針で3種類に分類した。その結果、(1)と(2)に分類された資料はおよそ2割の約200種類に上り、34%の在庫削減につながった。コマーシャル企画部門のフィリップ・オヴァロ部門長は「当面は100万円分で済むような資料を、印刷業者に頼んでわざわざ500万円分も印刷して保管するような無駄な投資が不要になり、別な案件に投資できるキャッシュが生まれる」とオンデマンド印刷サービスの価値を高く評価している。

 使い始めてからある程度の期間が経過すると、現場も利便性を理解して活用の工夫を考え始めた。例えば新薬の発売に際して初めて印刷する資料の場合、医師からの請求量は予測が難しい。そこで、通常の印刷数量を控えめに見積もり、反響が大きく超過した際には追加印刷するまではオンデマンド印刷で対応するアイデアが生まれた。

 このような試行を繰り返すと、「資料の需要を予測し、改善するPDCA(計画・実行・検証・見直し)サイクルを回せるようになる」(オヴァロ部門長)。コスト意識の高い人材が育つ効果にもオヴァロ部門長は期待を寄せている。

■変更履歴
第3段落に「(MRの自宅や営業所、コンビニエンスストアの店頭など)」とありましたが、実際にはコンビニエンスストアの店頭には対応していませんでした。 正しくは「(MRの自宅や営業所など)」です。お詫びして修正いたします。 [2010/07/22 16:10]