弁護士 猪野 亨のブログ

　文科省の諮問機関「中央教育審議会」は法科大学院の定員削減を2500人とすることにしたそうです。
「法科大学院の定員を大幅減へ　文科省、２５００人程度に」（朝日新聞2015年11月24日）

　現状の定員が募集停止校の分を除くと2724人で、これから比べればさらなる削減ということになります。
　しかし、実際の今年度の法科大学院の入学者数は2201人（定員3169人）であり、まだ定員の方が上回っている状態です。しかも競争倍率が2倍を切っており、1.87倍です。
　まだまだ実情にあいません。
（文科省ホームページより）


　2500人としたのは、おおよそこのようなイメージです。
　法科大学院に入学しても全学生がその課程を修了できるわけではありません。7割程度です。
　1750人のうち7～8割が司法試験に合格する（させる）ことを想定し、その数は、1225人から1400人。政府の最低限の目標とされた1500人ですが、その他は予備試験組ということを想定しているものと思われます。
　未だに2500人もの人材が法科大学院に集まると考えていること自体、法科大学院の惨状を理解していないということでもありますが、仮に2500人が集まったとしても、果たしてどの程度の人材が集まってくるのかという問題が全く考慮されていないということが一番、恐ろしいことです。
　予備試験組による司法試験合格者の方が、法科大学院修了者よりも優遇されているのは、もはや周知の事実であり、動かしようのないことです。予備試験を目指すならともかく、法科大学院そのものを目指すということ自体、一体、どのような動機に基づくものなのかということが非常に重要になってきています（志望者の一部は予備試験の滑り止めという動機がありますが、あくまで一部の有名法科大学院に限られます）。
　ここまで見放されてしまった法科大学院に期待するような人材が集まろうはずがなく、それが法曹を支える人材ということになると、司法制度そのものが劣化して行かざるを得なくなります。

　他方で法科大学院受験に当たっては適性試験を受験することになっていますが、志望者の減少により、その受験料が値上げになります。
「法科大学院の適性試験、受験料上げ　志願者減で」（日経新聞2015年11月24日）
16,200円から21,600円への大幅な値上げとなっていますが、5,000円の値上げそれだけで志望者の減少を招くことはないとしても末期的な法科大学院制度の象徴的な出来事といえます。
「法科大学院制度　適性試験の崩壊により制度が瓦解する」

　早晩、法科大学院の全国での配置はこのようになります。



　もはや法科大学院制度が浮上することはなく、法曹（司法）制度が機能しなくなってしまうのですから、法科大学院制度の廃止は緊急の課題です。


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