公共調達条例の基準や趣旨以下の労働者報酬
下限額の設定 「住宅費」・「設計労務単価」のあり方を問う
総務部の説明では、労働者報酬の下限額について審議会へ諮問し、その答申を受けて先日、市長が決定。
条例の適用開始は10月からで、内容は、①特定工事請負契約の予定価格1億5千万円以上の工事の場合は、労働者報酬下限額は720円。また、同じ工事契約でひとり親方の場合は設計労務単価の80%です。②特定業務委託契約の予定価格500万円以上の委託業務や指定管理事業の場合は下限額720円との報告。
では、下限額720円が本当に妥当かどうか
設定基準の根拠について総務部に伺うと、審議会は生活保護基準を目安にするとしましたが、その生活保護基準とは、協議の結果、「住宅費なし」を採用。他都市で生活保護を設定基準としているところは一部にあるが、「住宅費なし」はない。「住宅費あり」と「住宅費なし」の差額は1ヵ月3万5,600円。 労働者にとって、住宅費は、当然、考慮されるべきもの。 下限額の全体基準に、生活保護を目安にするとしながら「住宅費なし」を市長も認めている点は、多くの下請け労働者のみなさんから不満の声。今回の設定内容は、憲法25条の最低生活ラインを壊すようなものである。
さらに問題なのは、高知市の公共調達条例で示す労働者報酬の下限額の基準からみても、それを下回るものになっている点です。
条例では特定工事請負契約の場合は、「市が工事費の積算に用いる公共工事設計労務単価において、職種ごとの単価として定められた額」となっているのに、実際は受注者等に雇用される者については業務委託の下限額と同額(時給720円)とされている点。
また、清掃業務等の特定業務委託契約の場合は「生活保護法第8条第1項に規定する厚生労働大臣の定める基準において本市に適用される額」としながら、実際は生活保護の「住宅費なし」を採用している点である。
これを審議会が認めたとしても、最終決定をするのは、市長ですから、判断の際、十分な精査さが必要。
しかし、総務委員会での報告では、審議会の答申を、市長もよしと、したとの事。
公共工事設計労務単価で示されている職種のうち一番賃金が低いのは、交通警備員です。
一日の賃金目安は8300円です。 高知市はこの場合も含めすべて一律、労働者報酬を720円としました。
例:① 8300円×80%で計算した1時間単価830円。 ② 8300円×75%で計算した1時間単価は778円 ③ 8300円×70%で計算した時給単価は726円。
このことからも、公共工事にたずさわる、あらゆる業種のみなさんの下限額を720円とすることは問題です。
異常な低さであるということも示しています。
本来、条例で示されている通り、公共工事の労働者の下限額の基礎は職種ごとの「設計労務単価」とし、その割合も全国平均90%台にする必要があります。
改善が必要な点
① 下限額の設定において、生活保護基準の「住宅費なし」を採用している問題。
② 特定工事請負契約における、受注者に雇用される方の下限額は条例で示している通り、
公共工事設計労務単価の職種ごとで設定する必要性がある。
③ ひとり親方の場合は「設計労務単価×80%」としているが、全国の90%に改善が必要。
④ 審議会の開き方について、開催の根拠となる内容規定が条例の中には、具体的に位置づけられ
てない。 (毎年開くとはあるが、どのような変化に対応するかがない)
条例にてらしても、現状の基準は問題ではないかと改善を求めました。答弁は「条例に規定している額、つまり公共工事設計労務単価や生活保護基準額と『その他の事情』を勘案して定めるものとされており、審議会でも賃金の実態や市の調達への影響等を勘案して答申をまとめていただいた。額の設定が条例の趣旨とは違うものになっているとは考えていません」と。
条例の趣旨とはちがわないという市の答弁、見解なのですが、全国ではどうか、調べてみました。
以下、調査の結果からも、実態は、非常に高知市が遅れている事は明らかになっています。
2015年度、公契約条例の適用範囲と労働者報酬下限額 全国状況の資料から
市は契約工事の場合1億5千万円からとしているが、ほとんどが1億円未満(4000万円など)の契約額の工事を対象とし、多くの労働者に恩恵があるよう努力している。(足立区は1億8千万円、高知市を越える額はここだけ)
また、労働者報酬下限額についても公共工事の場合に生活保護を採用した自治体は川崎市、多摩市、厚木市、があるが、「住宅費なし」を採用しているとこはない。 高知市のようなところはないのが実態。そして、設計労務単価についても、その多くは90%としているところです。高知市は75%(ひとり親方は80%)と異常な低さが浮き彫りになっています。