企画設計=デザインには学べば覚えられるやり方がある

企画のやり方は単に本を読んだりして学ぶだけでなく、体感的なワークショップみたいな形式で学んでもらわないとダメなのかもしれないなって今日思いました。

保存されるべきものは、モノではない。むしろそのやり方であり、企画を立てる方法であり、出くわす問題に応じて再びやり直すことを可能にさせる柔軟な経験値である。

企画設計にかぎらず何でもそうなんだと思いますけど、身体にやり方が染み込んでないといざというときに対処できないと思うんですよね。

  • 何かの拍子にあやまって海や川などに落ちてしまっても泳ぎ方が身についていれば溺れずに済みます。
  • リストランテでの食事の際にパスタのサルサポマドーロが白いシャツに飛んでしまっても炭酸でたたくと染みがとれやすいことを知ってればそんなに慌てずに済むし帰ってすぐに家で洗濯すれば落ちます。
  • 運わるく悪い人たちにつかまって後ろ手に縛られても縄抜けの方法を知ってれば脱出できます。

企画設計=デザインでもおんなじはず。やり方を身につけておけばいざという場合になんとかなる! でも、なぜか企画設計=デザインの方法を教えるってことはあんまりやられてないですよね。考える力=方法を養う場が存在していない(ごく一部にしか)。

いっそのこと「企画のやり方教室」でも開いちゃおうかなとか思いました。有料でw

ムナーリさんによる企画設計のやり方の一般化

で、またしてもペルソナの話。
なんだか本当にどこもかしこもペルソナってなっちゃってますけど、なんだかペルソナをつくるのが目的みたいになっちゃってる場合もあるのかななんて感じてます。

僕としては何度でも、いやいや、そうじゃないですよと言いたいところです。
ペルソナはデザイン=企画設計をするための1つのやり方ですよ、と。

で、やり方っていうのにはプロセスがある。
先に『ファンタジア』から一文を引用したブルーノ・ムナーリさんは、別の本『モノからモノが生まれる』のなかで、企画設計の手順をこんな風に一般化しています。
スタートにあるのは「問題」で、企画設計のゴールは「解決」です。

  1. 問題
  2. 問題の定義
  3. 問題の構成要素の明示
  4. 構成要素を研究するためのデータ収集
  5. データの分析
  6. 創造力
  7. 企画のために用いられる素材や技術のデータ収集
  8. 素材や手段についての実験
  9. 模型作成
  10. 模型の有効性の検証
  11. 製図
  12. 解決

これって僕がよくこのブログで書いてる人間中心設計のプロセスとあまり変わりません(さらにプロセスが細分化されてますが)。

ほら。

人間中心設計プロセス


ペルソナってムナーリさんの手順でいうとどこに当たるかっていうと、6番目の「創造力」のとこなんですよね。
(ちなみにコンテキスチュアル・インクワイアリーからワークモデル分析が「構成要素を研究するためのデータ収集」から「データの分析」にあたります。「模型作成」はいうまでもなくプロトタイピング、「模型の有効性の検証」はユーザーテスト法などによるデザイン評価です)

ペルソナはWeb時代のオーダメイド企画設計法

というわけで、ペルソナっていうのは企画設計のやり方の1つ。しかも、企画設計全体でいうとほんの一部。まぁ、なかでも重要な「創造力」を担うわけですけど。

じゃあ、ペルソナはどんな類いの企画設計のやり方かというと、オーダーメイドのための企画設計のやり方、考え方だと僕は認識しています。

誰のためのデザイン?―認知科学者のデザイン原論/ドナルド・A・ノーマン」や「ペルソナをつくるのも使うのもデザイナーの大事な仕事」でも書きましたが、ペルソナを含む「ユーザー中心のデザイン」のアプローチは、マス・プロダクションの時代、Webの時代においてなお、オーダーメイドの時代のように、ものをつくる前に、それを買って使う人のことを知ることから求められる企画、設計のあり方を考えるための方法です。

オーダーメイド・テーラーが客の好みを知り、体格をメジャーを使って測り、どんなシーンで使うスーツなのかを知ったうえで、テーラリングをはじめるように、ペルソナを含む「ユーザー中心のデザイン」のアプローチでは、ユーザーの好みを知り、体格や身体の動きを知り、生活スタイルなどを知ることで、必要なものの形やあり方を決めていくわけです。

ただし、オーダーメイド・テーラーが1人の客を知ればよいのに対して、「ユーザー中心のデザイン」ではあるセグメントのユーザー群を相手にする点で、調査データをもとに架空のユーザー像とその行動を明らかにするペルソナという手法を使って、誰に何を提供するのかを創造的に理解していくところに違いがあって、そこがやり方を学ぶうえでのポイントになります。

こうやって文章とか言葉で説明してるだけだとペルソナってわかりにくいだけですけど、実際、自分たちでつくってみるとやり方自体は簡単。しかも、やってみると楽しい。もちろん、熟練してうまくなるのは別ですけど。

考える力を養うにはやっぱり体験が必要

と、まぁ、こんな風に書いているわけですけど、結局は本当にペルソナを含む「ユーザー中心のデザイン」のやり方を身につけてもらうためには、実地での体験にもとづく学びの場が必要だなとつくづく感じています。

みんなで手を使い頭を使って話し合い作業を行うなかで、企画設計をするプロセスを学んでいく、身についていく場。そういう場が必要なんじゃないかな、と。

KJ法によるユーザー行動の統合作業

最初にも書いたように、企画設計のやり方を身につけておけば、企画設計する対象がなんであろうと慌てふためいてどうにもならなくなることはないと思います。

ちなみに、横浜デジタルアーツ専門学校の浅野先生もこんな風に書いてます。

道具の持つ宿命ですね。だから、ある一定の道具の使い方ばかり勉強していても、いつか時代に置いて行かれてしまいます。考える力の方が大切なんだよね。

そうそう。考える力が大切。そして、それには学んで覚えられるちゃんとしたやり方があるということをもっと言っていかないといけないなと思いました。
創造力なんて天才の専売特許じゃなく、お金を払えば学べて身につけられる程度のスキルなんですよってことをちゃんと言っていかないといけないんです。

P.S.
デザインの方法について考察するデザインの方法:ブルーノ・ムナーリの12のプロセスの考察」シリーズを書き始めました。

   

関連エントリー

この記事へのコメント

この記事へのトラックバック