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2006.11.16

胡錦涛政権の最大の支援者は小泉元総理だったかもね

 この話も書くまでもないかと思ったけど、どうも基本の構図が分かってないのか分かっていて必死だな勢力もいるのか……まそれはないでしょとは思うけど、先日の朝日新聞記事”中国共産党、党大会代表を増員 候補者も増やす”(参照)を読みながら、胡錦涛政権の最大の支援者は小泉元総理だったかもねという話をフカシておこうかなと少し思った。
 ちなみに記事はこう。


 来年後半に開かれる中国共産党の第17回党大会に出席する代表選びが始まった。13日付の中国各紙によれば、党員数の拡大を受けて代表数は2220人に増える。代表になるための候補者も増やして、「幅広い意見を反映させる」(党組織部)という。

 これがどういうことかというと……という話にもなる。
 こんなことは多少なりとも中国ワッチしている人には当たり前じゃんではあるけど、陳良宇第16期中国共産党中央政治局委員、前上海市党委員会書記(参照)が九月二四日に汚職ということで潰されたあたりで、中国権力の構図が一気に潮目を変えた。そのあたりの変化がじわっと世界のメディアにも影響しだしているようすがどうもわかってねー人が多いような気がする。まあ、そこまで話を進めず、陳良宇だが、ウィキペディアの説明がわかりやすい。

その間も陳良宇は汚職撲滅をアピールし、解任5日前の9月19日にも市党委常務委員会を主催して「中央の指示に基づいてやれ」との演説もしていた。ところが24日に党中央政治局会議で「社会保障基金の不正使用」「地位を利用した縁者の優遇」などの嫌疑により、党委書記など上海市の一切の職務は免職され、中央政治局委員、中央委員の職務を停止された。党委書記は市長で常務副書記の韓正が代行。 規律委員会が陳良宇解任後上海汚職疑惑を調査しているが、後になり陳氏の側近が新たに調査対象になるなど疑惑が拡大の一途をたどっている。

 別に陰謀論とか言わなくてもこれはついに上海閥追討の最終フェーズになってきたということで、こう続くのも理解しやすい。

陳希同以来となる政治局局員の失脚だが、理由が「汚職」である点や、大物の庇護下で「独立王国」を建設している点などが極めて類似している。中国共産党の政争の道具がイデオロギーから汚職のなすりつけに変わったことを印象付けるものである。

 さらっと書いているが、これはけっこう含蓄が深い。政治局局員の失脚であることと、大物の庇護下という点が重要だ。簡単にいえば、天安門以降、天安門事件を奇貨として膨れた上海閥の解体が始まる。なお、この事件の余波については、イザ!”中国汚職疑惑拡大「上海閥」切り崩しへ、 書記解任は序章”(参照)が詳しい、まとめは次のように穏和だが。

消息筋は、今回の事件について、来年の第17回党大会で権力基盤を強固にする必要に迫られている胡主席が、反腐敗闘争を掲げ、「上海閥」に切り込んだと指摘する。対日外交同様、胡主席が主導権確立のため、江前主席につながる上海閥の弱体化を意図したとの見方だ。

 闘争の構図は同じくイザ!”北京・伊藤正 上海閥からの奪権に着手”(参照)がわかりやすい。

 胡錦濤政権といいながら、実体は上海閥支配が続いてきた。現在の指導体制や路線は02年秋の第16回党大会で決められたが、それを決めたのは江沢民前政権であり、トップ9人で構成する政治局常務委員会の過半数は上海閥が占めた。
 来年秋の第17回党大会で、初めて胡錦濤氏独自の体制ができる。その前哨戦は8日から開く党中央委員会総会(6中総会)であり、これを前に胡氏には上海閥との「闘争」が必要だったと中国筋は言う。

 具体的に政治局常務委員会のメンツを並べるとこうだ(参照)。

胡錦濤 中共中央総書記、中華人民共和国国家主席、中共中央軍事委員会主席、中華人民共和国中央軍事委員会主席
呉邦国 全人代常務委員長
温家宝 中華人民共和国国務院総理
賈慶林 全国政治協商会議主席
曽慶紅 中華人民共和国国家副主席 中共中央書記処書記第一書記
黄菊  国務院常務副総理
呉官正 中国共産党中央紀律検査委員会書記
李長春 意識形態を主管。
羅幹  中央政法委員会書記

 で、来秋にはこういう構図になるだろうと推測されている。

胡錦濤 バッチグー
呉邦国 全人代常務委員長
温家宝 中華人民共和国国務院総理
賈慶林 引退か?
曽慶紅 引退か?
黄菊  引退
呉官正 引退
李長春 意識形態を主管。
羅幹  引退

 温家宝はすでに胡錦涛寄り。李長春はむしろアンチ上海閥。上海閥は呉邦国だけといってもこのオッサン・エンジニアみたいな人。残るはあと一年足らずで、江沢民派の賈慶林(参照)とべたな江沢民派の曽慶紅(参照)の追い込みか、と。
 ほいで、上海閥の穴ですでに事実上埋まっているのはこのあたり。

李克強 遼寧省委書記
劉延東 中共中央統一戦線部部長
李源潮 江蘇省委書記

 他の穴も中国共産主義青年団(共青団)など胡耀邦チルドレンで固めることになるだろう。
 ということは、今見ておくべきことは。来秋の中国共産党の第17回党大会まで、上海閥が窮鼠猫を噛むの行動に出てくるか?
 というか、昨年の反日暴動がその窮鼠の類だったのだろう。とすれば、その構図をつっぱねて胡錦涛政権の最大の支援者だったのは小泉元総理だったかもね、である。
 権力の委譲がうまく行くとして中国はどうなるか。基本的なところでは胡耀邦路線に戻るのだろうと思う。日本にも友好的になるだろう。
 あと、今回の米国議会選挙の米国民主党の勝利は、中国の現政権にとっては余り好ましいものではない。そのあたりで、本音では日本を引きつけておきたいだろうが、これまで上海閥が使ってきた日本の反日勢力ではちと使えねーなということになってきているのだろう。むしろ、日本には朝日新聞とかにも胡耀邦人脈が濃そうなので、へぇ、ほぉとかいった弾がこれからメディアから出てくるんじゃないか、フィナンシャル・タイムズみたいに。

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コメント

小泉を出した意味が不明。単に言いたいだけじゃん。
そんなこと言い出したら、ネオコンの最大の支援者はソ連ということになるでしょ。

新聞の上っ面舐めてフカしこくより、地にアシ付けて考えたほうがいいよ。

マヨネーズの話のほうがよっぽど面白い。正直。

投稿: | 2006.11.16 16:03

 現代中国について私の蒙を開いてくれた『中国に再び喰われる日本企業』(青木直人著小学館文庫)を思い出しました。江沢民・李鵬・朱鎔基の権力闘争の時代から中国の政治の季節は一回りしたんですねえ。
 「中国の汚職撲滅キャンペーンは権力闘争の道具である」・・・この見方を知ってから中国情報についてドライに考えることが出来るようになりましたが、同時に中国に対するセンチメンタルなロマンも薄れてしまいました。

 ところで、胡耀邦路線に回帰するのは自然な流れに見えますが、天安門事件があった以上簡単な回帰ではないでしょう。監視や統制を強めた上での回帰・・・なんとも具体的イメージがわきませんが共産党支配を正当化する道具だった愛国主義も暴走の危険性がある以上多用は危険ですし、経済成長だけで政治的求心力を維持できるとは思えませんが。

投稿: nanbu_somosomo | 2006.11.16 16:32

 今日の添削

>……まそれはないでしょとは思うけど
→……ま、それはないでしょとは思うけど

※句読点を入れたほうが読み易いかと。

投稿: ハナ毛 | 2006.11.16 18:54

ま、民主化方向へソフトランディング目指してよく頑張っているのではないか、という事ですね。
せっかく築いたモノを失いたくはないでしょうからね。

投稿: トリル | 2006.11.17 05:36

ハナ毛もさっさと改名しる。

×ハナ毛
○花毛

※これなら見目麗しくなるかと。

投稿: とり | 2006.11.17 17:28

見目麗しくなる必要は無いから改名の必要も無いね。

投稿: ハナ毛 | 2006.11.17 18:23

小泉を出した意味は、小泉が靖国参拝→中国人怒る→怒ってる中国人てのは江沢民派→世界中が中国を冷ややかな眼で見る→江沢民派に打撃→胡錦涛ウマー
って話でしょ。そんな意味不明な文章じゃないと思いますよ。

投稿: 天魔 | 2006.11.18 17:38

「反日暴動」の「反日」は,煽り用のお題目でしかないでしょうし,当の中共と日本以外ではそれほど話題にもなっていないでしょう。「暴動」となってコントロールできなかった,ということで,「責任」のシンボルにはなっているでしょうけれど。

投稿: るね | 2006.11.19 00:16

finalventさんの分析は深いですね。大変参考になりました。なお、FTの記事については、リンク先の翻訳も見てみましたが、finalventさんとどちらが正確に文意を伝えているのかは判断が難しい。ご紹介の週刊新潮の該当部分も誤訳とは言いがたいような面もあり、結局、英語文脈で考えないと、FTの主張に関しては正しくはないのでしょうが、いかに誤解し、誤解させるかも大事なことですが、誤解に誤解を重ねてゆくと最後はすっぽ抜けるか、とんでもない結果になってしまう。ただ、小泉氏の靖国参拝に中国がこだわりすぎたことが選択肢を狭めてしまったというのは、いかにもイギリス人らしいシニカルな指摘ですが、したがって、また、余り真に受けるわけにも行かないでしょう。ところで、中国の統治関連で起きていることに対するのも難しいことでしょう。当座は見当が付いたとし、一応は、権力争い、理念闘争として整理できても、例えば、10年20年のスパンで考えたとき、それが通用するのか。国内事情、国外事情もさまざまでしょうし、それらの効果がどういう時間軸で出てくるのか、中国に限らないこととは言いながら、素人にはへえとしか言いようのないことばかりです。

投稿: matheux-naif | 2007.10.06 23:05

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