Fruity Slicerプラグインの使い方(その2)
投稿日:2008-04-12 Sat
前回に引き続きFruity Slicerプラグインの使い方を紹介します。ドラムループ以外の音声(ボーカルや会話)も、Fruity Slicerを使って音をスライスし、発声タイミングや発声順序を変更することができます。また、市販のボーカル補正ソフトと比較すると相当見劣りしますが、一応ピッチを補正することもできます。
前回はドラムループの加工を中心に紹介しましたが、今回はボーカルを加工して遊んでみます。
今回紹介する内容は次のとおりです。
・ボーカルの加工例
・ボーカルのピッチを調整する
・その他の加工方法
・デモソングを参考にしよう
■ ボーカルの加工例
FL Studioに付属のボーカルを加工してみましょう。
ブラウザで Packs/Vocals/VOC_GiveYouPleasure.wav を選択し、Fruity Slicerにロードします。
ビートが分かりやすいように4つ打ちのキックも入力しておきます。
元の音声:
[ flslicer-2-1.mp3 ]
(1) 発声タイミングの調整
ビートに合わせて "Oh"、"give you"、"preasure"と発声させてみます。
スライスと確認すると
"Oh" - Slice #1
"give you" - Slice #2, #3
"preasure" - Slice #4~
となっていますので、これを参考にノートを移動します。
ビートにあわせて発声してくれるようになりました。
[ flslicer-2-2.mp3 ]
(2) ノートの分割
ノートを分割(チョップ)してみると面白い効果が得られます。
[ flslicer-2-3.mp3 ]
(3) パンポット(定位)の変更
ノート毎にパンポットを変更してみましょう。
組み込みイベントエディタの左側を右クリックし、"Note panning"メニューを選択します。
ノート毎のパンポットを変更します。
[ flslicer-2-4.mp3 ]
■ ボーカルのピッチを調整する
今度はボーカルのピッチを調整して音程をつけてみます。
ボーカルといっても適当な素材がないので、今回は音声合成で作成したものを利用します。
最初にお断りしておきますが、ピッチ補正といっても単純にピッチを変更するだけなので、市販のボーカル補正ソフトと比べると大きく見劣りします。あまり期待しないでくださいね。
(1) AquesTalkの音声を調整してみる
フリーの音声合成ソフト AquesTalk を使って作成した音声に音程をつけてみます。
元の音声はこちら:
[ flslicer-2-5-aquestalk.mp3 ]
Fruity Slicerで元の音声をロードします。
元の音が「どれみふぁそらしど」の8音節なのに、細かくスライスされすぎて扱いにくいですね。
スライスの数を減らしてみましょう。
[Slicing]ボタンを押し、[Dull auto-slicing]メニューを選択します。
今度は音節毎にスライスされました。
このように、[Slicing]ボタンのメニューでスライスの数を調整することができます。(Dull=荒く、Medium=普通、Sharp=細かく)
ピアノロールでノートの位置をビート単位に変更します。
それでは各ノートに音程をつけましょうか。
組み込みイベントエディタの左側を右クリックし、[Channel pitch]メニューを選択します。
ピッチベントイベントはcents単位であること、1半音が100centsであることを念頭におき、イベントを描きます。
演奏してみるとこんな感じになりました。元の音声に無理があるのか、あまり音程感が出ませんね。
[ flslicer-2-6-aquestalk.mp3 ]
(2) Microsoft SAPI LH Naokoの音声を調整してみる
今度はMicrosoft Office 2003に付属の音声合成ソフト Microsoft SAPI LH Naoko を使って作成した音声に音程をつけてみます。
元の音声はこちら:
[ flslicer-2-7-lhnaoko.mp3 ]
音程を付ける手順はAquesTalkのときと全く同じですので、途中の説明は省略します。
演奏した結果はこちらです。AquesTalkよりも音程感はありますが、1オクターブ以上の音程はうまく付きそうにないですね。
[ flslicer-2-8-lhnaoko.mp3 ]
(3) 初音ミクの音声を調整してみる
最後に初音ミクの音声を調整してみましょうか。
元の音声はこちら。あえて音程なしで歌ってもらいました。
[ flslicer-2-9-miku.mp3 ]
音程を付ける手順はAquesTalkのときとほぼ同じです。一部違う点だけ説明します。
Fruity Slicerでスライスする際、Dull auto-slicingを使うと全くスライスされません。ボーカロイドが音節の区切りが滑らかになるよう音を補完しているのが原因と思われます。
ですので、Medium auto-slicingを使ってスライスした後、手動で余分なスライスを削除します。
ソとシの音節が余分にスライスされています。
スライスを選択したあと、スライスプロパティを右クリックし[Remove slice]メニューを選択してスライスを削除します。
余分なスライスを削除した結果がこちらです。
演奏した結果はこちらです。元音がいいだけあって音程感は抜群です。単純にピッチ変更しているので機械っぽくなってしまいますが、意図的に機械っぽさを出すのも面白いかも知れません。
[ flslicer-2-10-miku.mp3 ]
■ その他の加工方法
Fruity Slicerでは他にも色々な加工方法を提供しています。
基本的に[Slicing]ボタンではスライスの方法を、[Dump beat to pianoroll]ボタンではスライスをピアノロールに割り当てる方法を選択することができます。細かい説明はしませんので、色々実験してみてください。
■ デモソングを参考にしよう
FL Studio 8のデモソングから、Fruity Slicerを使ってボーカルを加工している箇所をピックアップしてみます。 (残念ながらFL Studio 7のデモソングには該当箇所がありませんでした。)
(1) deadmau5-ThatsNotTrue (dream electro mix).flp
パターン what?、DRUM02でボーカルを加工しています。
1小節目と23小節目を聞いてみてください。
ボーカルじゃないのですが凄く参考になるので是非これも見てください。
Pattern4のドラムループの3小節目に注目。ベロシティを細かく変化させることでリバース音を表現しています。
(2) SolidInc-What I found.flp
パターン slicex.~ でボーカルを加工しています。
このデモソングではFruity SlicerではなくSlicexを利用していますが、音声加工の基本的な考え方に違いはないので参考になると思います。
よく聴くとボーカルっぽくないプラック音(弦を弾くような音)が入っています。
どういう仕組みか調べてみましょうか。
チャンネル Vocal Slice Map をクリックしてSlicexを開きます。
左から3つめのリージョン Maker #3を右クリックして音を確認します。普通のボーカル音ですね。
今度はチャンネル Vocal Slice Map のピアノロールを開き、Maker #3をクリックして音を確認します。こちらはプラック音になっています。
Slicexの画面に戻り、リージョン Maker #3 の[ART](アーティキュレイター)設定を見ると1になっています。
今度はアーティキュレイター1の設定を見てみましょうか。
[1]、[VOL]、[ENV]の順にクリックします。
エンベロープを見ると、他のアーティキュレーター設定とくらべて余韻が短く設定されているのがわかります。
これがプラック音の秘密のようですね。
このように、Slicexでは、Fruity Slicerではできないスライス毎の細かな設定が行えます。
このあたりの設定を取っ掛かりとして色々試せば理解が深まりそうですね。
以上
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