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« 橋口昌治・肥下彰男・伊田広行『<働く>ときの完全装備─15歳から学ぶ労働者の権利』解放出版社 | トップページ | きわめて穏和な人間ですが・・・ »

2010年8月17日 (火)

地方公務員に対する不当労働行為法制

阿久根市の仙波副市長が「労組脱退しなければ異動」と言ってるそうです。

http://www.yomiuri.co.jp/politics/news/20100816-OYT1T00848.htm?from=top

政治学的には、警察の内部告発で「正義の味方」となった仙波氏が、「実態を相当超えるかたちで、社会の悪役にさせられている。一歩誤ればウヨクからもリベサヨからも非国民扱いである」(@黒川滋氏)自治労叩きという「正義」芝居に乗り出したということになるのでしょうが、各論なしの総論だけでものを考える政治学者や政治評論家や政治部記者程度の知性だけで事態が進むかどうかは、もう少し法務担当者(が阿久根市にいるかどうか知りませんが)と相談された方がよいようにも思われます。

ここでは、とりあえず法制的な観点から。

公務員には労働基本権がないといわれますが、それでも警察と消防を除けば団結権はあるわけで、仙波氏の所属していた警察みたいに団結権がないのがデフォルトルールというわけではありません。

ただ、民間労働者及び現業公務員の場合には、労働組合法が適用されるので、使用者が団結権に反する行為をした場合には不当労働行為となり、労働委員会に訴えると救済命令が出されることになります。

ところが非現業公務員の場合には労働組合法は適用されません。

しかし、第56条には、労組法第7条の第1号に類する規定があります。

http://law.e-gov.go.jp/cgi-bin/idxselect.cgi?IDX_OPT=2&H_NAME=&H_NAME_YOMI=%82%bf&H_NO_GENGO=H&H_NO_YEAR=&H_NO_TYPE=2&H_NO_NO=&H_FILE_NAME=S25HO261&H_RYAKU=1&H_CTG=1&H_YOMI_GUN=1&H_CTG_GUN=1

(不利益取扱の禁止)
第五十六条  職員は、職員団体の構成員であること、職員団体を結成しようとしたこと、若しくはこれに加入しようとしたこと又は職員団体のために正当な行為をしたことの故をもつて不利益な取扱を受けることはない。

もっとも、「受けることはない」といいながら、そういう違法なことをやった地方公共団体の当局に対して、労組法の不当労働行為制度のような制裁措置はないのですね。

まあ、総務省あたりの人に解説させれば、地方公共団体は「公共」なんだから、そんな違法なことを平然とやるような馬鹿なことがあるはずがないから、そういう措置はおいていないんだということになるのでしょうが、あに図らんや、そういうことを平然とやっちゃう地方公共団体が出てきたわけですから、法律上「受けることはない」はずなんだけど「受けちゃった」場合にどうするかを、まじめに考えないといけなくなるということになるのでしょう。

実は、これは現在公務員制度改革において議論されるべくしてされていないところであり、立派な法律学者や立派な法律実務家からすれば「法律でちゃんと団結権は十全に認めているんだから、それ以上何を論ずることがあろうか」と思われていたところなんですが、世の中それほど立派にできていないというどろどろの現実に近い立場の人間からすれば、そこに落とし穴があったということになるのでしょう。

まあ、何にせよ、公務員制度改革の問題は団体交渉権(労働協約締結権)の問題だけではなく、(消防等を除けば)解決済みのはずの団結権にも実は問題がはらまれていた、ということを、世に広く知らしめたという意味において、仙波副市長の功績は大いなるものがあると思うところです。

(追記)

その後、昨年12月に国家公務員制度改革推進本部労使関係制度検討委員会がとりまとめた「自律的労使関係制度の措置に向けて」という大部の報告書を改めてじっくり読むと、不当労働行為制度の必要性についての議論もちゃんと書いてありました。「第三者機関のあり方」というところです。先生方、スミマセン。

http://www.gyoukaku.go.jp/koumuin/kentou/houkokusyo.pdf

ただ、そこで取り上げられているのは、あくまでも団体交渉制度を新たに導入することを前提に、労組法第7条第3号の団交拒否という不当労働行為をどうするかという論点でして、現行法で認められている団結権を地方公共団体自身が否定するという自体が発生しうるという発想はさすがにないようです。

(参考)

上の「総務省あたりの人に解説させれば」を、橋本勇『逐条地方公務員法』から若干引用。

>使用者が勤労者の団結に不当な勧奨を行ってはならないことは、近代国家における基本原則であり、まして地方公共団体の当局は法令を実施し、公益を実現する立場にあるものであるから、なおさらそのようなことがあってはならないものである。本条について、不当労働行為制度のように所定の機関による行政命令や罰則の制度がないのは、地方公共団体の当局は悪をなさずという前提があるからであるといってよいであろう。しかしながら、公共部門を含め、労使関係全体において、使用者が時として勤労者が団結し行動することを嫌い、これを妨害しようとする傾向も絶無とはいえない。法律があえて明文の規定を設けたのは、こうしたことの絶無を期するようさらに当局を戒めたものといってよいであろう

>当局と職員団体との関係は、このような消極的禁止の範囲にとどまるべきものではなく、当局は進んで職員団体の持つ意義を積極的に評価しなければならないものである。・・・職員は団体活動を通じて、あるいは団体の力を背景として従来よりも自由かつ率直にその意見を表明するようになり、当局はその意見を知ることによって相互の意思疎通が一層円滑に行われることとなるのであって、このことが職場の民主化と公務能率の増進に少なからず寄与することは疑いないところである。成熟した労使関係の下においては、正常な労働運動とともに使用者の労働団体に対する積極的な姿勢が確立されており、地方公共団体においてもこうした関係が樹立されるよう労使双方が努力すべきものといえよう

本書は、一家に一冊どころか、地方自治体には必ず何冊も備え付けられ、毎日のように読まれ、活用されている定番のリファレンスブックですから、まともな自治体である限り、何かしようというときには必ず参照されているはずです。まともな自治体であれば、ですが。

(念のため追記)

コメント欄に、変なイナゴさんが沸いているので、念のため、地方自治体の人事委員会や公平委員会が法律のどの規定に基づいて規則を作ることができるのかを挙げておきます。

「総務、企画調整、財政の3課の職員」がすべてこの「管理職員等」に該当すると日本国の裁判所が認めてくれるとでも思いこんでいるのかどうか。

市長はともかく、副市長は、阿久根市も日本国の司法権のもとにあるということを認識しているはずなので。

というか、そもそも記事ではわざわざ規則を作るという話にもなっていませんでしたが、どこまで法律の仕組みを判って喋っているのか、よく分かりかねるところはありますね。

第五十二条  ・・・
 職員は、職員団体を結成し、若しくは結成せず、又はこれに加入し、若しくは加入しないことができる。ただし、重要な行政上の決定を行う職員、重要な行政上の決定に参画する管理的地位にある職員、職員の任免に関して直接の権限を持つ監督的地位にある職員、職員の任免、分限、懲戒若しくは服務、職員の給与その他の勤務条件又は職員団体との関係についての当局の計画及び方針に関する機密の事項に接し、そのためにその職務上の義務と責任とが職員団体の構成員としての誠意と責任とに直接に抵触すると認められる監督的地位にある職員その他職員団体との関係において当局の立場に立つて遂行すべき職務を担当する職員(以下「管理職員等」という。)と管理職員等以外の職員とは、同一の職員団体を組織することができず、管理職員等と管理職員等以外の職員とが組織する団体は、この法律にいう「職員団体」ではない

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コメント

民間では当たり前の発想。
ユニオンショップ協定で、
このての部署を適用除外にすると明記されることが多いはず。
それを公務員にどう持ち込むか考えていなかったとしたら、
やはりhamachanを含む学者の怠慢であろう。

申し訳ありませんが、こういうコメントは晒すことにします。一知半解で知ったかぶりをするとどういうことになるかを、よくご認識いただくためにも。

国家公務員については、下記人事院規則で、国家公務員法108条の2第3項に規定する職員団体に加入できない「管理職員等」の範囲が定められています。

http://law.e-gov.go.jp/htmldata/S41/S41F04517000.html">http://law.e-gov.go.jp/htmldata/S41/S41F04517000.html(人事院規則一七―〇(管理職員等の範囲))

公務員法を所管する総務省については次の通りです。

>事務次官 総務審議官 官房長 局長 政策統括官 部長 局次長 総括審議官 政策評価審議官 地域力創造審議官 審議官 参事官 審理官 課長 管理官 政策評価官 評価監視官 統計企画管理官 統計審査官 国際統計管理官 企画官(大臣官房に所属する者のうち大臣官房の特定の課若しくは室の所掌事務に関する重要事項についての企画及び立案に関する事務を担当する者、人事・恩給局総務課若しくは企画調整課に所属する者のうち人事若しくは人事制度に関する事務を担当する者、会計課、公務員高齢対策課、行政評価局総務課、統計局総務課若しくは統計情報システム課に所属する者又は人事・恩給局参事官若しくは統計企画管理官の職務全般についてこれを直接補佐する者に限る。) 調査官(人事、職員団体、組織及び法規又は予算に関する事務を担当する者に限る。) 庁舎管理室長 厚生企画管理室長 広報室長 恩給審理官 人事企画官 経理室長 恩給相談官 普通扶助料室長 受給・債権調査室長 支給管理室長 情報処理調整官 行政手続・制度調査室長 情報システム管理室長 共同利用センター長 個人情報保護室長 情報システム企画官 地方業務室長 業務情報化推進室長 政策評価審議室長 評価監視企画官 行政相談業務室長 総務室長 行政経営支援室長 地域情報政策室長 国際室長 地域振興室長 人材力活性化・連携交流室長 過疎対策室長 給与能率推進室長 高齢対策室長 安全厚生推進室長 収支公開室長 支出情報開示室長 政党助成室長 財務調査官 公営企業経営企画室長 地域企業経営企画室長 資産評価室長 管理室長 情報通信経済室長 研究推進室長 宇宙通信調査室長 多国間経済室長 国際展開支援室長 情報流通高度化推進室長 情報セキュリティ対策室長 地方情報化推進室長 デジタル放送受信推進室長 国際放送推進室長 地域放送推進室長 検査監理室長 国際企画室長 番号企画室長 国際周波数政策室長 電波利用料企画室長 重要無線室長 監視管理室長 保険計理監理官 地理情報室長 首席統計情報官 首席分類銘柄情報官 首席精度管理情報官 労働力人口統計室長 物価統計室長 課長補佐(総括) 課長補佐(管理)(大臣官房、人事・恩給局、行政課、公務員課、福利課、財政課、自治税務局企画課、情報通信政策課、情報流通行政局総務課、総合通信基盤局総務課又は統計局総務課に所属する者に限る。) 参事官補佐(人事制度に関する事務を担当する者に限る。) 統計企画管理官補佐(人事及び予算に関する事務を担当する者に限る。) 専門官(人事、争訟問題又は職員団体に関する事務を担当する者に限る。) 専門職(人事又は職員団体に関する事務を担当する者に限る。) 人事係長 予算係長 文書係長 庁舎係長 宿舎係長 庶務係長(統計局に所属する者に限る。) 主査(人事に関する事務を担当する者に限る。) 秘書 人事係員 労働係員 守衛長


地方共団体の場合、これを人事委員会規則で定めることになります。

ある部分まではいいのですよ。「人事係員」とか「労働係員」とかは、管理職でなくても職務上職員団体には入れない。しかし、「総務、企画調整、財政の3課の職員」が全部これで読めるかどうかは、かなり疑わしいところでしょう。

ちゃんと阿久根市役所にあてはめて説明しないとずるい。
話をすりかえないで。
私の意見は「3課の職員全部としておいても、とりあえずOKにみえる」としておこう。
ただし公平委員会(あそこは人事委員会ではないよ)の
規則はすぐ見つからなかったので、
そこはごめんなさい。
ま、「専決処分」でどうにかなりますかね。

やっぱ「つぶやき」はしないほうがいいよ。
この問題ならともかく、いつかはひどい炎上で
「仕分け」されるだろうから。

で総務省の例はそれで必要十分?
(それほどヒマじゃないなので読んでいない)

はじめまして。

いつも、楽しみに拝見しております。

今回の事例、先生の指摘のとおりです。

しかし、地方公務員の管理職員の範囲の指定は、自治体によって異なり、恣意的に広く指定しているところも見られます。

阿久根市も公平委員会で決めれば、労使協議の必要性もないので、なぜ、わざわざ課長会で出したのかわかりません。

公平委員もすでに、市長の恣意的な人が就任していそうですし。

いっそうのこと、全職員管理職員の指定をしていただければ、みんなまた再度同じ組合を結成できるので、それはそれで、珍しいと思いますが。

あくまでも、地方公務員法は、管理職員と管理職員以外が一緒の組合を作っては、公平委員会へ登録できないというだけだったはずですので。全員管理職員になれば、また同一の組合で登録も可能です。

でも、阿久根市の事例は、地方公務員法が抱えている問題点を浮き彫りにさせてくれる、事例です。

読売新聞によると「3課の職員数は35人。このうち、市職労(190人)に所属するのは課長ら管理職6人を除く29人。地方公務員法52条は、管理職などを除いて職員団体(労組)の結成や加入を認めている。」
この「など」が曲者というわけですね。
3課の「課長+管理職1名」以外の全員が、「管理職でなくても職務上職員団体には入れない」人ではない、というのは民間の感覚からみて明らかにおかしいでしょう。
それを無視して、こんな記事をかいたら、まずくありませんか?
もし、公平委員会の規則が、そのように書かれているなら、地方自治の名のもとに、「労組支配」(少なくとも労使癒着)を制度的に認める余地を残していることになると思います。
別の可能性は、規則に罰則がないか何かで、本来「市職労」に入れない人が、堂々と入っていることですよね。これも常識からいって、やっぱりよくないでしょう。
というより、そういう場合に中央から対応がとれないなら、一連の阿久根市長の行動と大して変わらないと思います。市長ならだめで組合なら正しいなんてありえない。
想定外、とかいったら、やっぱり学者の怠慢も少しは影響していることになるでしょう。
阿久根市役所の組織構成と公平委員会規則とを付き合わせた上で、どなたか解説していただけませんか?
副市長に逆らってとばされた「総務、企画調整、財政の3課の職員」が、「管理職員等」に該当すると日本国の裁判所が認めてくれる可能性はじゅうぶんあると考えますので。

民間の感覚、民間では当たり前の発想、って、法も基準も公正もない感覚だけで議論されてもしょうがないですね。

労働組合法はこうなっています。
労働組合法第二条 一 役員、雇入解雇昇進又は異動に関して直接の権限を持つ監督的地位にある労働者、使用者の労働関係についての計画と方針とに関する機密の事項に接し、そのためにその職務上の義務と責任とが当該労働組合の組合員としての誠意と責任とに直接にて、い、触する監督的地位にある労働者その他使用者の利益を代表する者の参加を許すもの

とかなり限定されています。御用組合を排除するというのが本来の目的で、だれが労働組合に入る資格がないか、ということを決めるための条項ではありません。
サービス残業をめぐる管理監督者の議論を知っていれば、かなり限定されると解するべきでしょう。

公務員の労使関係の特殊性にもとづき、地方公務員法があるとして、総務、企画調整、財務以外が市長の指揮下にある課とも読み取れませんし、それぞれの課がそれなりに市長の指揮下にあり、公権力を行使している以上、どの部門やどの階級の職員が労働組合に参加する権利があるやなしや一律に決めることは難しいというものです。

公平委員会の規則を変更しない限り、市長や副市長のさるさるの一声で管理職員の範囲を変更したのではだめですし、あまりにも労働組合を敵視してやれば不当労働行為で裁判で敗北する危険性もあります(そういった事例もあります)。担当職員が組合に入っていて、その職務について組合の介入をおそらく受けないであろう財政課や企画調整課の職員まで入れてしまったのは勇み足が過ぎるのでしょう。

考えて書きましょうさんのコメントについては、理路整然としているものの、その前提が日本国内における一部の常識や感覚だけに依存していることを指摘しておきたいと思います。
行政全般のマネジメントに組合が介入しているなどと安倍晋三や阿比留瑠以あたりの妄想でしょうね。普通の文科系の学生以上に勉強して公務員試験で入って処分を恐れる公務員が構成し、現下の激しいネガティブキャンペーンでスケープゴートにされている中で公務員労組がそんなに政治力があったら大したものだし、今頃保育所不足だとか、児童相談所の能力不足とか、介護人材の不足とか、社会保障関連のありとあらゆる事象の問題が解決していることでしょう。

陰謀論ではなくて政治を理解できるようになればいいのではないかと思います。

阿久根市の管理職員等の範囲は

阿久根市ホームページ [http://www.city.akune.kagoshima.jp/]
→市例規集
→目次検索
→第4編人事 第6章職員団体
→管理職員等の範囲を定める規則

で、確認できますよ。

論ずべきことについては、上の黒川滋さんのコメントで尽くされていますので特に付け加えるべきことはないでしょう。
何かにつけて「民間ではありえねえ」とか言いたがる民間出羽の守に限って、肝心の民間労働者に適用される労働法制に無知蒙昧であるか、やたらに敵対的であるかというのは、この分野一般によく見られる現象ですね。

ここでは、一応資料的意味から、阿久根市公平委員会の定めた「管理職員等の範囲を定める規則」を見ておきましょう。


https://www3.e-reikinet.jp/akune/d1w_reiki/341952100002000000MH/341952100002000000MH/341952100002000000MH.html">https://www3.e-reikinet.jp/akune/d1w_reiki/341952100002000000MH/341952100002000000MH/341952100002000000MH.html

本庁では次の通りです。

>課長,所長,室長,参事,技監

総務課長補佐,職員係長,秘書広報係長,総務課職員係の人事担当の職員及び職員団体担当の職員

人事院規則とよく対応しているきわめて標準的な規定ですね。

これを変えろといわれて、唯々諾々と変えるような公平委員会に存在意味があるかどうか、全国の注目が集まっていますよ。

いや、考えてみれば、今年2月、この阿久根市公平委員会は、阿久根民主主義人民共和国において唯一まともな機関であることを全国に示したのでしたっけ。

http://www.asahi.com/national/update/0225/SEB201002250031.html">http://www.asahi.com/national/update/0225/SEB201002250031.html(ブログ市長による降格人事は「違法」 市公平委員会判定)

>鹿児島県阿久根市の竹原信一市長が昨年4月1日に行った職員人事異動について、「降格人事だ」として市職員3人が市公平委員会に不服を申し立てていた問題で、同委員会は「違法かつ不当な降任。適材適所の人事異動とは認められない」として23日付で降格人事を取り消す判定をした。市職労の上部組織、自治労鹿児島県本部が明らかにした。

 3人は課長級から課長補佐級に降格させられるなどした50代の男性職員。判定では、(1)降格にする理由がない(2)地方公務員法には「不利益な処分を行う場合には、処分理由を書いた説明書を交付しなければならない」と定めているが、説明書を示していない――とした。

私は、以下の理由により、管理人様のご見解に賛成の立場です。

まず、通常公務員労組と呼ばれる団体のうち非現業職員の団体は、労組法による労組でなく地公法による職員団体である事が大前提ですよね。

で、地公法では「管理職員等とその他の職員が同一の団体を結成した場合は、地公法上の職員団体として扱われない」旨の規定しかない&労組法の適用が無いので、管理職員等だけの団体は地公法上の職員団体として扱われると解釈可能かと。

となると、今回の対象となった職員だけで新規に職員団体を結成することは、理屈の上では可能であると。「既存の職員団体から脱退させる」という判断が妥当であっても、その対象者だけで別の職員団体は結成できる話だという。

そうすると、「職員団体に加入する事は罷り成らん」という話は、対象者全員が管理職員等の範囲として妥当か否かの問題とは別に、適法性に疑義が生じる(裁判すれば勝てる?)可能性があると思います。要は無茶な話と言うことで。

#地公法が想定する管理職員等(報道では「管理職員など」とか書かれてましたか)の範囲は、最終的には各地方公共団体の人事委員会(or公平委員会)に委任されるものの、『重要な行政上の決定を行う職員、重要な行政上の決定に参画する管理的地位にある職員、職員の任免に関して直接の権限を持つ監督的地位にある職員、職員の任免、分限、懲戒若しくは服務、職員の給与その他の勤務条件又は職員団体との関係についての当局の計画及び方針に関する機密の事項に接し、そのためにその職務上の義務と責任とが職員団体の構成員としての誠意と責任とに直接に抵触すると認められる監督的地位にある職員その他職員団体との関係において当局の立場に立つて遂行すべき職務を担当する職員』とあるわけで、今回の事案では対象範囲が広すぎるような気がします。

まず、公務員法についてはその通りです。

実際、かつて建設省管理職ユニオンが結成され、現在は国土交通省管理職ユニオンと名乗っています。
「理屈の上」だけでなく、実際に可能です。

http://www7.ocn.ne.jp/~k-union/uniontowa/uniontowa.html">http://www7.ocn.ne.jp/~k-union/uniontowa/uniontowa.html

仮に阿久根市が無理無体な公平委員会規則改正を強行しても、その規則で定めるところの管理職員等が「管理職員等組合」を結成することを禁止できません(当該規則が違法であることを前提とすると混合組合になってしまいますけど)。

次に民間部門について。

現行労働組合法上は明文の規定はありませんが、1949年の改正時の原案になった労働省試案では、第2条第4項として、次のような規定が含まれていました。

>前2項の規定は、使用者の利益を代表すると認められる労働者が、その加入することができない労働組合(以下本条において「一般労働組合」という。)と別に一般労働組合の組合員である労働者の加入を許さない労働組合(以下本条において「幹部労働組合」という。)を組織し、又はこれに加入することを妨げるものではない。但し、幹部労働組合は、一般労働組合とともに労働組合を組織し、一般労働組合が加入する労働組合に加入し、又は第25条の規定による団体交渉をするための適当な単位であって一般労働組合が含まれているものに含まれることができない。


最後のところは、結局改正に盛り込まれなかった交渉単位制を前提にした規定なので意味がとりにくいと思いますが、前半は明快でしょう。

この改正では、交渉単位制をあきらめるとともに、規定ぶりを簡素化したため、この幹部労働組合の規定もなくなりましたが、そういうのを禁止する考え方に転換したわけではないことは、当時の資料から明らかです。
つまり、現行労働組合法においても、管理職だけでつくる幹部労働組合は可能と考えられます。

まあ、なんでも「民間では」と金科玉条のようにのたまう方が多いのですが、その「民間で」行われていることがはたして正しいのかどうか、それをまず検証してから主張してほしいですわ。

「民間では」あたりまえのようにみんな管理職にして残業代不支給にしたり、、、とかね(公務員でもサービス残業だらけで労働関係法令を思いっきり守っていないことは奈良県立病院の産科医の訴訟で明らかになりましたが)

> hamachan 先生(8/18 11:00分)

諸々、ありがとうございました。m(__)m
勉強になりました。(._.) φ メモメモ

国交省に管理職員等の団体があることは、近年側聞しておりました。が、恥ずかしながら建設省の時代から既にあった事は知りませんでした。(知識が一つ増えました。ペコリ。

阿久根市の事案に関して、管理職員等の団体を「理屈の上で」と書いたのは、先生が仰るとおり”当該規則が違法であることを前提”とした場合や、現実の状況に鑑みると、あっさり決着するという事は無いだろうな。という含意がありました。(私の著述の力量不足ですね。)

最後の労組法の関係について、非常に勉強になりました。ご紹介のような改正案が存在はしてたんですね。
実は、民間企業体にも管理職労組が皆無というわけではないと理解しておりましたので、労組法上は想定の範囲内だろうと思ってはいました。

「交渉単位」という概念については、そういう考え方もあるだろうと思いますので、改正案の条文については難儀せずに読めました(読めたつもりにはなりました。)。m(__)m

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