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2021年アニメ総特集、平成の「ヒット曲」、民藝、呪術廻戦、シビックテック……11~12月の生放送・動画のお知らせです
2021-11-30 07:00おはようございます。PLANETS編集部です。 今日は、11~12月の生放送・アーカイブ動画と、おすすめの関連コンテンツについてご案内します。
【これから放送】
12月3日(金) 批評座談会〈2021年アニメ総特集〉
毎月一つの話題作を取り上げる「批評座談会」。年末最後の放送になる今回は、2021年のアニメ(などの)総特集です!
鬼滅の刃 無限列車編・遊郭編、劇場版 呪術廻戦 0、進撃の巨人、 機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ、シン・エヴァンゲリオン劇場版:||、 竜とそばかすの姫、ワンダーエッグ・プライオリティ、 劇場版 ソードアート・オンライン -プログレッシブ- 星なき夜のアリア 交響詩篇エウレカセブン ハイエボリューション、 アイの歌声を聴かせて、サマーゴースト、 Sonny boy、かげきしょうじょ!!、ラブライブ!スーパースター!!、スーパーカブ、 ミラベルと魔法だらけの家、 -
男と酒器 2|井上敏樹
2021-11-29 07:00
平成仮面ライダーシリーズなどでおなじみ、脚本家・井上敏樹先生のエッセイ『男と×××』。贋作を買わされたという友人の体験談から、こだわりのお酒の注ぎ方まで、前回に引き続き骨董にまつわる敏樹先生のエピソードが語られます。
「平成仮面ライダー」シリーズなどで知られる脚本家・井上敏樹先生による、初のエッセイ集『男と遊び』、好評発売中です! PLANETS公式オンラインストアでご購入いただくと、著者・井上敏樹が特撮ドラマ脚本家としての半生を振り返る特別インタビュー冊子『男と男たち』が付属します。 詳細・ご購入はこちらから。
脚本家・井上敏樹エッセイ『男と×××』第68回 男 と 酒 器 2 井上敏樹
私の友人にKという骨董好きがいる。私同様、酒器を中心に蒐集しているのだが、大きな狐に憑かれている。狐に憑かれる、とは物に執するあまり頭が変になる状態を言う。恋愛と同じだ。私もKもお互いに相手が唯一の骨董仲間であり、なんとか相手を出し抜き佳品珍品を手に入れようと骨董屋通いに余念がない。
そのKがやってしまった。贋物を掴まされたのである。しかも相手は確信犯。タチが悪い。その日、ちょっとした用事のついでにその店に立ち寄ったKだったが、ズラリと陳列された骨董の品々を見て完全にイッてしまった。マニアなら喉から手が出るような物ばかりである。しかも信じられないほど安い。後になって私もKが購入した品を見せて貰ったが、なかなかよく出来ている。とは言え、勉強家のKは骨董歴は短いが、それなりの知識もあり、普段なら騙されるようなレベルではない。Kの目を曇らせたのはやはり欲だ。狐に憑かれたKは大恋愛の真っ最中なのだ。まさにアバタもエクボ、相手が悪女であろうと魔女であろうと惚れてしまったら天使にも見える。Kは店を出て走った。銀行で金を降ろすためである。そうして大枚叩いて粉引きの筒盃、粉引きの徳利、唐津のぐい飲みを購入した。
だが、手に入れた途端、Kの脳裏に疑惑が湧いた。本物なら全部で1000万はする品々である。それを100万以下で入手できるものだろうか。自分の物にした瞬間、見えて来る物があるというのが骨董の不思議で、ここら当たりも恋愛に似ている、と言えるかもしれない。いてもたってもいられずKはタクシーで行き着けの骨董店に向かった。業界でも目利きで通っているその店主は『全て偽物です』とにべもない。さて、この場合、即座に贋物店に取って返し『この野郎、騙しやがって! 金返せ!』と怒鳴り込むのが普通の感覚かもしれないが、多くの場合、骨董好きはそうはしない。騙される方が悪いと言う暗黙のルールが業界にはあって被害者は勉強代として黙するのである。『しかし、見事に騙されたものだな』後日、Kが買った贋物披露会で私は一杯飲みながらそう言った。同情はしない。せせら笑うのが礼儀だ。しかも、その頃のKは親しい骨董屋に『少しは目が利くようになったようだが、その頃が一番危ない』と言われており、まさにドンピシャだったのだ。笑うしかない。
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12/19(日)リアル開催!2021年をまるごと振り返るトークショー「Hikarie + PLANETS 渋谷セカンドステージSPECIAL PLANETS大忘年会2021」
2021-11-27 11:30毎年恒例で開催の「PLANETS大忘年会」、今年はコロナ禍を経て、渋谷ヒカリエにて約2年ぶりのリアル開催です!
世間やSNSのタイムラインの空気に流されないPLANETSならではの切り口で、社会・文化・政治の垣根をこえて1年を総括する「PLANETS大忘年会」。
昨年以来のコロナ禍のもと、東京オリンピックの決行やアフガニスタン情勢、衆院選と岸田政権の成立など、国内外で歴史的な変化が続いた2021年。「エヴァンゲリオン」や「進撃の巨人」の完結など、文化の面でも大きな節目となる動きが目立った今年の重大ニュースを振り返りながら、これからの私たちの暮らしがどう変わっていくのか、改めて考えていく1日です。
感染症対策も油断なく続けつつ、たくさんの方のご参加をお待ちしています!
PLANETSチャンネルでは生中継もありますが、会場でのリアル参加も募集中です。
ぜひこちらからお申し込みください。
通し券 -
大西洋沿岸のインフォーマルマーケットとレバノン人ネットワーク
2021-11-26 07:00おはようございます。
今日はWebマガジン「遅いインターネット」の最新記事と、併せて読んでほしいおすすめ記事をご紹介します。
先日公開されたのは、国際コンサルタントの佐藤翔さんによる連載「インフォーマルマーケットから見る世界──七つの海をこえる非正規市場たち」。
中南米地域では地中海東岸・レバノンからの移民ネットワークがこの1世紀あまりで拡大しているなか、ブラジル出身のカルロス・ゴーンやメキシコの富豪カルロス・スリムなど、国際ビジネスの表舞台でも存在感を発揮するレバノン人たちの活動が、いかに大西洋西岸のインフォーマルマーケットを牽引しているかにスポットを当てます。
今回の記事と併せて、こちらの記事も(もういちど)読んでみませんか?
この国の未来のために「ほんとうに大事なこと」は、どのように決められているのでしょうか。Government Curation略して「GQ」では、現役官僚の橘宏 -
正義を振りかざす「極端な人」から社会を守る|山口真一
2021-11-25 07:00
今朝のメルマガは、PLANETSのインターネット番組「遅いインターネット会議」の登壇ゲストによる自著解説をお届けします。今回は、経済学者としてネット炎上分析に携わる山口真一さんをゲストにお迎えした「正義を振りかざす『極端な人』から社会を守る」(放送日:2020年10月27日)内で紹介された、『正義を振りかざす「極端な人」の正体』について。ネット上の過激な世論を形成する「極端な人」の正体とは何か。「インフォデミック」としてのコロナ禍を通して、情報リテラシーの向上が生活上の課題として広く共有されるようになった今、改めて「炎上」のメカニズムを統計的に分析します。(構成:徳田要太)
正義を振りかざす「極端な人」から社会を守る|山口真一
経済学者として、ネット炎上の分析を計量経済学的に行ってきた山口真一さん。 攻撃的なネット世論を形成する「極端な人」の影響力と実際の人数、そして「極端な人」が生まれる背景を論じた『正義を振りかざす「極端な人」の正体』(光文社新書、2020)の概略について、ご本人より詳しく解説していただきます。
山口真一 『正義を振りかざす「極端な人」の正体』 光文社新書/2020年9月16日発売/ソフトカバー 216頁
【目次】 はじめに 第1章 ネットに「極端な人」があふれる理由 第2章 ネットだけでない「極端な人」 第3章 「極端な人」の正体 第4章 「極端な人」が力を持つ社会でどう対処するか 第5章 「極端な人」にならないための5箇条 あとがき
最近、「社会が不寛容になった」とか、あるいは「攻撃的な人が多くてすごく怖い」というふうに思ったことはないでしょうか? 私はたまにあります。インターネットを見ると「こいつは頭おかしいだろう」とか「○○は人間の最下層だ、非国民だ」というような罵倒や誹謗中傷はあふれていて、探しに行かなくても見えるような状態です。
実際、「ネット炎上」についてデジタルクライシス総合研究所が調査した結果、2019年には炎上が約1200件発生していることがわかりました。1年間は365日ですので、だいたい1日に平均して3件以上炎上が発生していて、今日もどこかで誰かが燃えていると言えます。
もちろん「炎上」と言ってもその定義は明確に定められるものではないですが、それでも「誹謗中傷」というレベルでは、もっとはるかに多くの数が発生していると考えられます。2020年の5月には、あるリアリティ番組に出演したプロレスラーの方がネットの誹謗中傷を機に亡くなってしまったという非常に悲しい事件も起きました。
そして新型コロナウイルスの感染対策として対面での交流制限が常態化したなか、こうした社会の不寛容さがさらに加速するのではないかということが指摘されています。例えばある駄菓子屋に「子供集めるな、お店閉めろ、マスクの無駄」とマーカー文字で書かれた怪文書が店頭に貼られるような事例が発生していました。その駄菓子屋はたまたま営業していなかったのですが、営業をしているお店に同じような文書を送りつけたり、あるいはライブハウスなどに対して電話で抗議したり、いわゆる「自粛警察」と呼ばれる人たちの活動が取りざたされていたこともありました。
あるいは昨年、ある女性のコロナ感染者が感染を疑われているにも関わらず遠出をして、感染が明らかになった後も大勢が集まる場所に行っていたということが自治体の発表で詳細に明らかにされ、さらにそれをマスメディアがこぞって取り上げるといった山梨県での騒動が起こりました。その結果、メディアの発信だけを情報源に彼女に対する誹謗中傷をネット上に書き込んだり、あるいは個人情報を特定する動きが活発になったりといったことが大量に発生しました。
そういったことを象徴するように、ネット炎上件数をカウントすると2020年4月時点での炎上件数は、前年同月比でなんと3.4倍に増えているということがわかりました。それくらいコロナ禍で炎上というものが頻発していると言えます。
攻撃的な投稿を行う「極端な人」
このように様々な誹謗中傷やネット炎上が頻発するようになったわけですが、その影響を考えると、例えばネット炎上によって実際に進学や結婚が取り消しになった人もいます。あるいはネットでの発言に傷ついて引きこもるようになった人や活動自粛に追い込まれた芸能人、中には倒産してしまった企業などもあります。
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生命と宇宙を貫く法則を体感させたい|猪子寿之
2021-11-24 07:00
チームラボの代表・猪子寿之さんの連載「連続するものすべては美しい」。今回は、岡山の福岡醤油ギャラリーで開催中の展覧会「Teamlab: Tea Time in the Soy Sauce Storehouse」をめぐる対話です。「自分自身でありながら、世界の一部にもなれる」感覚を味わえる作品、近くと遠くで見え方が変わる新しい色。不思議な感覚の先に現れる、自分と世界の「ととのう」が重なり合う体験について語り合います。(構成:小池真幸)※「連続するものすべては美しい」の第1回~第5回はPLANETSのWebマガジン「遅いインターネット」にて公開されています。今回からメールマガジンでの先行配信がスタートしました。
猪子寿之 連続するものすべては美しい第6回 生命と宇宙を貫く法則を体感させたい
「個vs全体」──近代人がとらわれていた二項対立を解体する
猪子 今日、宇野さんに体験してもらった企画展は、2021年4月15日から2022年3月31日まで岡山の福岡醤油ギャラリーでやっている「Teamlab: Tea Time in the Soy Sauce Storehouse」。ここはもともと、醤油製造に使われていた古い建物だったんだけど、実業家で、現代アートのコレクターでもある石川康晴さんが理事長を務めている公益財団法人石川文化振興財団が、その建物の耐震構造などを補強してギャラリーにリノベーションしたんだ。その地下の、当時、醤油蔵だった場所を作品空間にした。かつて醤油が貯蔵されていたことにちなんで、四方から黒い液体で包まれているような空間を作りたいなと思って、出入り口をトンネルにして、360度全方位が水に囲まれている場所にしたんだ。 福岡醤油ギャラリーは、芸術や地域文化の発信を行うための場所としてオープンした文化施設。石川文化振興財団は岡山市や岡山県と一緒に、岡山城・後楽園周辺ゾーンで開催される国際現代美術展「岡山芸術交流」を3年に1回開催している。そんななかで、この施設の地下ギャラリースペースで展示する最初のアーティストとしてチームラボに声をかけてもらって、とても光栄なことだと思っているよ。
▲福岡醤油ギャラリー(Photo:S.U.P.C uchida shinichiro)
▲福岡醤油ギャラリーおよび展覧会の様子(撮影:宇野常寛)
福岡醤油ギャラリーは、明治に建てられた主屋と昭和初期に建てられた離れからなる建物「旧福岡醤油建物」を改修してつくられた文化施設。展覧会の開催や一部施設の貸出とともに、瀬戸内の食文化を堪能できるスペースを運営予定。人々が集い、新たな交流が生まれる場を提供することを目指す。運営元は、公益財団法人石川文化振興財団。理事長の石川康晴さんは、ファッションブランド「earth music&ecology」などを手がけるアパレル企業・ストライプインターナショナルを創業した実業家だ。
この福岡醤油ギャラリーの源流は、2010年代の前半までさかのぼる。石川さんは2014年、「街が美術館となり、散歩がアートとの出会いになる。」をコンセプトに、「Imagineering OKAYAMA ART PROJECT」を開催した。工事現場の壁、県立美術館の壁、廃校の学校の中、街中の自然……既存の素晴らしいものと現代アートを融合させるアートイベントとして展開。世界各国から収集した現代アートの「石川コレクション」が、国内初公開の作品も含めて市内の至る場所に出現した。
「Imagineering OKAYAMA ART PROJECT」は、短期間で延べ11万人を超えるほどの来場客を集めたことを評価され、国際現代美術展「岡山芸術交流」へつながっていく。「既存のものを活かす」という中心的なコンセプトを引き継ぎながら、世界各地から多様なアーティストたちが参加。ニューヨーク在住の著名アーティストであるリアム・ギリックがアーティスティックディレクターを務めた第1回(2016年)には延べ 234,000人、フランスを代表するアーティストであるピエール・ユイグがアーティスティックディレクターを務めた第2回(2019年)には延べ312,000人が来場した。2022年秋には第3回の開催が決まっており、アーティスティックディレクターには、アルゼンチン生まれのアーティスト、リクリット・ティラヴァーニャを選任。
ただ、街中を会場とするがゆえに、会期終了後はすべて展示を撤去してしまうという。そこで、アート作品を展示する拠点を持とうと設立されたのが、この福岡醤油ギャラリーなのだ。
もともと醤油蔵だった建物を再利用することは、「潰れかけた場所に『生命(いのち)』を宿らせる」ことでもある──その考えにも照らし合わせ、こけら落としとなる展覧会の担い手に、石川さんはチームラボを選んだ。「チームラボがこんなに狭いスペースで展示を行うのは初めてではないか。それにもかかわらず、醤油蔵の文脈と生命という概念、さらにはお茶というコンセプトともつながっていく、期待以上のものをつくってくれた」と石川さん。
福岡醤油ギャラリーでは、欧米だけでなく、日本も含めたアジアのアーティストの展覧会を開催していく構想だ。「生きているアーティストの次のステップを応援するパトロンとなりたい」と石川さんは意気込みを語った。そうしてギャラリーを充実させていった先に、「既存の観光コンテンツと私たちの文化芸術のアプローチをミックスした魅力的な都市をつくりたい」とも展望している。
猪子 展示しているのは『旧醤油蔵の共鳴する浮遊ランプ』という作品で、一帯に水を張ってランプを浮かべている。
その水面と同じレベルにお客さん用のテーブルがあって、そこでEN TEAの茶が飲める。こっちはコップに入れたお茶が光をたたえてその色が変化していく『共鳴する茶 - 動的平衡色』という作品になっているというわけ。
▲Teamlab: Tea Time in the Soy Sauce Storehouseでの『旧醤油蔵の共鳴する浮遊ランプ』と『共鳴する茶』。
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霎時施(こさめときどきふる)日の物思い|菊池昌枝
2021-11-22 07:00
滋賀県のとある街で、推定築130年を超える町家に住む菊池昌枝さん。ここの連載ではひょんなことから町家に住むことになった菊池さんが、「古いもの」とともに生きる、一風変わった日々のくらしを綴ります。いよいよ肌寒くなってきたなか、古民家の隙間風に悩む菊池さん。今回はそのユニークな対処法と、最近試行錯誤している「糠漬け」をめぐる実験記です
菊池昌枝 ひびのひのにっき第5回 霎時施(こさめときどきふる)日の物思い
何でも金継ぎと気候温暖化のこと
ひと雨ごとに寒くなっていよいよストーブを引っ張り出す。日もくれる頃にはじわっと寂しくなるのである。この春から金継ぎを習い始めた。友人トムのパートナーであるのり子さんが師匠だ。美大出で金継ぎ作家の活動をしている彼女の抜群のセンスに惚れて、田舎タイムでのんびり教わってこの秋の日を楽しんでいるのだ。以前に触れたが我が家の蔵には昔の器類があり、ヒビが入っていたり欠けていたりするものもある。それを捨てずにコツコツと一体どれくらいかかるのかわからないが直していくのだ。
▲写真は金継ぎ中の5つの作品
ところで金継ぎはどういう手順で完成させるのかご存知だろうか。材料は漆と金箔、銀箔。全てのベースに漆が使われていて接着の役割をしたり箔の土台になったりすることもあるし、金や銀の代わりに色合いの役割もしたりするマルチプレーヤーだ。漆の歴史は長くて縄文時代には既に土器に漆を塗っていた。かぶれたりして扱いも面倒なこの漆と人の関係は、森林があってこその関係でもあろうけど、どうしてこの役割に気づいたのだろう。ほんとうに不思議だ。 金継ぎの魅力は何かというと、元の器を修繕するのみならず、その価値が生まれ変わることである。つまり器の風景が変わると言ったらよいのだろうか。壊れたからこその再生の魅力が、そこにはある。新品好きの現代人は「古いものにこそ価値がある」という嗜好がかつてあったことを今一度思い起こしてみてはどうかなと思う。その場合、稀有だから価値が高いだけではないのだ。そこに存在し続けるストーリーや使われている技術(おそらく現在では失われているものも多い)とか、民族的なアイデンティティや伝統、そんな類のものがあるから愛おしいしかけがえのないものになるのだと考えている。そんなことで、ついでに形が気に入っているアンティークの椅子の座面張替えもした。隣町に椅子の張替えを専門にするワカモノがいる。彼は仕事はうまいし早いしリーズナブルでなんとも言えない店構えはいかにもジブリ映画に出てきそうな雰囲気だ。布地がボロボロになってクッションがくたびれて座っても痛くなったのだが、アンティークにポップさを加えて部屋が明るく感じられるようにと選んだ布地は、寒い冬に温かみのある差し色で我が家に新しい存在感を加えたのである。
▲布地や鋲は数ある見本帳から選ぶことができる
▲ご実家の古民家を改修してお店にしたそうだ。店主のお母様が丹精込めて育てたバラが軒先に並ぶ
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視覚言語としてのグラフィックレコードが見せる世界
2021-11-19 07:00おはようございます。
今日はWebマガジン「遅いインターネット」の最新記事と、併せて読んでほしいおすすめ記事をご紹介します。
先日公開されたのは、視覚言語研究者・デザインリサーチャーの清水淳子さんによる特別寄稿です。
言葉ではうまく伝えられないことが、イラストにするとあっさり納得できる──。こうした文字言語とイラスト表現との認知の違いはどうして生まれるのでしょうか。話し言葉を視覚言語としての「グラフィックレコード」に「翻訳」する清水淳子さんに、文字言語の外側の情報認知について論じていただきました。
今回の記事と併せて、こちらの記事も(もういちど)読んでみませんか?
アート集団チームラボの代表猪子寿之さんと宇野常寛の対談「連続するものすべては美しい」。2020年8月に開始したアートプロジェクト「フラワーズ ボミング ホーム」、2019年10月より上海で実施中の常設ミュージアム「teamLa -
八王子駅から西放射ユーロード、中町、田町まで|白土晴一
2021-11-18 07:00
リサーチャー・白土晴一さんが、心のおもむくまま東京の街を歩き回る連載「東京そぞろ歩き」。今回歩いたのは八王子周辺です。横浜や山梨のお土産が(なぜか)置かれていることから、一見土着性を欠いているように思える八王子駅からたどるこの土地の歴史とは? かつての「再現」として作られた「黒塀」と、今なお現存する「黒塀」とを見比べながら、八王子の歴史を語り歩きます。
白土晴一 東京そぞろ歩き第8回 八王子駅から西放射ユーロード、中町、田町まで
コロナ禍はいろんな所に影響を与えたが、古書業界も相当にきつかったと思う。 古書屋さんは店舗で営業する場合もあるし、カタログやネットでの注文のみという無店舗で営業する業者さんも多い。 しかし、忘れてはいけないのは、「古本まつり」や「古書市」などのイベントでの販売である。 いろんな古書屋さんが集まって、屋内の会場や屋外の広場や通りにブース、本棚を並べて古書を販売するイベントは、いろんな地域で行われている。京都の「下鴨納涼古本まつり」なども有名だが、本の街である神田神保町では毎年10月下旬から行われる「神田古本まつり」が一番規模が大きいと思う。 下画像は2018年の「神田古本まつり」のもの。これは平日に撮影したものなのであまり人がいないが、土日などには古本を求めにくる人たちで大変な混雑となる。
こうした「古本まつり」などのイベントに出店して販売を行う古書屋さんも相当に多い。 しかし、ご存知のようにコロナ禍で各種イベントは中止となり、ここ2年ほどは当然「古本まつり」も見送られることが多かった。 その影響で古書屋さんがネット販売に力を入れるようになり、思わぬ珍本がネット経由で購入できたりということもあったが、やはり本好きが集まって猟書(本を探して漁ること)する、あの熱気が立ち込める「古本まつり」に行けないのは寂しい。 だが、このところの感染者の減少もあって、あちこちで少しずつ「古本まつり」が開催されるようになり、2年続けて中止になった八王子市の西放射線ユーロードで開催される「八王子古本まつり」が、今年は開催されることに! 「八王子古本まつり」は東京都内の古本イベントとしては大規模なほうで、八王子周辺や中央線沿いの古書屋さんが一堂に会する。ここで探している本を見つけたり、珍しい本にぶつかったりすることが多く、個人的には相性の良い「古本まつり」である。 古本好きとしては、待ちに待った時が来た! とばかりに、早速八王子に行ってしまった。 長い歩行者道路に一直線に並んだ古書店のテントを見ると、2年も「古本まつり」が開催できなかったコロナ禍をいろいろ思い出してしまう。
なんにせよ、この八王子のように、各地で「古本まつり」が開催できるような状況になればという思いを込めて、今回は八王子を歩いてみることにする。
駅に降りると、私は構内の売店に置かれているお菓子を見てしまう。 駅の売店には出張などに行く人がお土産を買っていくことがあるのだろう、その地域の有名なお菓子や名産品などが置かれている場合が多い。 例えば、新宿駅のキオスクでも、東京のお土産ということで「東京ばな奈」が売っていたりする。
お菓子以外にもその地域の名産品が置かれていることもある。例えば、千葉の柏駅には地ビールが販売されていて、ちょっと買おうかと思ったこともある。 こういう「この土地の推しはこれだ!」という熱意のようなものが、駅の売店や駅ナカの店舗に見てとれるので、大変に面白い。 では、JR八王子駅の推しは何か?
まず改札内には信玄餅で有名な山梨の代表的な菓子メーカー「桔梗屋」さんが出店した「桔梗信玄餅」、キオスクには地元のお菓子である「高尾ポテト」と並んで、横浜の代表的なお土産菓子である「横濱ハーバー」があるではないか。改札外のスペースには地元多摩地区だけではなく、山梨の生産物も扱う「やまたまや」さんというアンテナ物産店まである。
他の駅では地元のお土産が並ぶ場所に、八王子駅ではなぜか山梨と横浜のお土産が並んでいるのだ。 これはJR八王子駅が横浜線と甲府方面に向かう中央線のターミナル駅であるということもあるのだろう。しかし、山梨と横浜の物産が並んだ駅風景というのが、実に八王子の歴史を表しているとも言える。 その歴史の一端は、駅から出てバスターミナルからまっすぐに伸びる「桑並木通り」からも読み取ることが出来るだろう。 世界的にも珍しい桑の木を街路樹にした通りだが、これは八王子が「桑都」(そうと)と呼ばれたことに由来している。
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2年ぶりにした打ち上げ|高佐一慈
2021-11-17 07:00
お笑いコンビ、ザ・ギースの高佐一慈さんが日常で出会うふとしたおかしみを書き留めていく連載「誰にでもできる簡単なエッセイ」。今回はライブ終わりの「打ち上げ」をめぐる、とある先輩芸人とのエピソード。「売れてる芸人の基準」について議論に花を咲かせながら、彼の別れ際にこぼした「ある一言」に、高佐さんが思うことは……。
高佐一慈 誰にでもできる簡単なエッセイ第23回 2年ぶりにした打ち上げ
先日、オードリーネタライブという、オードリーの二人が不定期で開催しているライブに出させてもらった。ネタライブという名の通り、オードリー含め数組の芸人がネタを披露するだけの至ってシンプルなライブだ。特別な企画コーナーなどはなく、ある意味ストイックなライブでもある。 僕らザ・ギースは、どういうわけか毎回このライブに呼んでもらっていて、下手したら初回から一度も欠かさずに出演しているかもしれない。若林さんが本当にどういうわけだか僕らのコントを好いてくれていて、僕らがキングオブコントの決勝に残るとか残らないとか、今上り調子だとか下り調子だとか、そんな世間の風向きなど一切お構いなしに呼んでくれるのだ。同世代ということもあるかもしれないが、こんなにも義理堅い人がいるだろうか。損得勘定という概念が欠如しているのではないだろうかとさえ思う。 僕らと同じく毎回出演している芸人さんに、TAIGAさんというピン芸人がいる。 TAIGAさんは、オードリーの二人とは古くからの付き合いで、ショーパブでの下積み時代からずーっと一緒に苦楽を共にしてきた仲だ。厳密に言えばオードリーの先輩に当たり、芸歴も年齢も上になる。最近では「アメトーーク!」の「40過ぎてバイトやめられない芸人」という括りの回に出演し、苦労人として注目されたことで、今じわじわと認知度が高まり、いろんな番組に出始めている。 そんなTAIGAさんと僕らは、他のライブでもたまに会って喋ったりするのだが、正直どんな人なのか、そこまで深くは知らない。なんとなく、カッコつけてるけど抜けてるところもある、よく後輩からイジられてる先輩、といった印象だ。発言や行動に隙がある人なので、そこを突かれて笑いが起こるという、いわゆる愛されるタイプの芸人さんだ。その日のネタライブでも、歌ネタの途中で歌詞が飛んでしまい、必死に思い出そうとするが、無情にも曲は流れ続け、一向に思い出せずにあたふたする姿に客席は大爆笑だった。自分のミスで爆笑が起こるというのが不本意だったのか、相当凹んで袖に戻ってきた。大爆笑の後に、あんなに凹んだ姿で袖に戻ってきた人を初めて見た。そしてライブのエンディングでその様子を周りにイジられる。 自分に置き換えて考えてみるとゾッとする。多分僕が同じようにミスをしてもあそこまで笑いは生まれないだろう。そしてエンディングでも腫れ物に触る感じになってしまい、イジられるということはないだろう。そう考えると、人(にん)というのはお笑いにおいて本当に大事で、これこそが才能だろうなあとも思う。
ライブが終わり、楽屋でみな着替えたり、帰り支度をしていると、TAIGAさんが誰に向けるわけでもなく言った。 「打ち上げ行きたいなぁ」 今はご時世的に、どのライブでも打ち上げは解禁されていない。もちろん演者の内の数人で行く分には、2021年10月現在、規制緩和もされてきているので構わないだろうが、大人数での打ち上げはやれないのが現状だ。もうこの状況になって2年近くになる。 インドア派の僕にとっては、この打ち上げ無しの風潮はとりわけ辛くも苦しくもなかった。どちらかというと、居心地の良ささえ感じていた。人と飲むこと自体は嫌いではないが、人数が増えれば増えるほどかかってくるストレスは増える。人が揃うまで飲食に手を付けてはいけなかったり、後輩は率先して働かないといけない。気が合わない人と席が一緒になることもあるし、自分の好きなタイミングで帰りづらい。そもそも、うるさい場が苦手だ。よく「打ち上げは自分たちのためじゃなく、スタッフさんを労うためにやるものなんだよ」と言う人がいるが、仕事が終わったらすぐに帰りたいと思うスタッフさんも確実にいるはずで、その人たちのことはどう考えてるんだろう。色々考えると、人と会うより一人の方が楽だよ。 愚痴が止まらなくなってきたので、話を元に戻します。 TAIGAさんの「打ち上げ行きたいなぁ」に、その場にいた芸歴4年ほどの若手が答えた。 「僕たち、まだライブ後の打ち上げって体験したことないんですよ」 コロナによって時代の流れはこんなにも変わるのか。聞くと、これまでは当たり前のようにあった、ライブ後、劇場入り口付近にファンの方が集まる「出待ち」も経験したことがないという。 そんな新鮮な話に、僕らが一様に驚いたり、興味を惹かれたりしている中、TAIGAさんは 「オードリーネタライブも、前までは打ち上げがあったんだよ……」 と、『ALWAYS 三丁目の夕日』でも見るかのような顔つきで声を漏らした。 「あ、そうなんですね! 打ち上げという感覚がないので一度行って──」と言葉を続けようとする若手の声が耳に届かなかったのか、TAIGAさんはもう一度 「打ち上げしたいなぁ」 と、言った。そこから5分置きに「打ち上げしたいなぁ」と漏らすTAIGAさんこと打ち上げしたいなぁおじさんに、誰かが「いや、TAIGAさん。打ち上げないで今日のネタ反省してくださいよ」ともっともなことを言う。楽屋内が笑いに包まれ、この話はもうおしまい。TAIGAさん自身も参ったなぁ的な感じで笑っている。打ち上げしたいなぁおじさんの打ち上げ欲は無事、空へと打ち上がった。そしてTAIGAさんが言った。 「あぁ、打ち上げしたいなぁ」 空へと打ち上がった打ち上げ欲はUターンしてもう帰還していた。
数人で駅へ向かい、それぞれが家に帰るべく自分の路線の電車に乗る。僕とTAIGAさんと僕の事務所の後輩・ラブレターズの塚本の3人は、帰る方向が一緒だったので同じ電車に乗り、横並びで吊り革に捕まった。 「どこで乗り換えるんですか?」 TAIGAさんが聞いてきた。 「僕は乗り換えずにこのまま」 塚本が答える。 「あ、じゃあ俺と一緒だ。高佐さんは?」 「僕は新宿で乗り換えます」 「あれ、でも高佐さん、僕と家近いですよね? このまま乗ってった方がいいんじゃないですか?」 「あ、今日外寒いんで、なるべく家に近い方の駅から帰りたくて」 「少しだけ打ち上げ行きません?」 剣豪が少しの隙も逃さずに刀で斬ってくるような間合いだった。あたふたしながら僕は答えた。 「いや、どんだけ打ち上げ行きたいんですか!」 しかしその声はマスクの中で響いただけで、TAIGAさんの心には全く響かなかった。 「俺、本当に打ち上げしたいんすよ……。なんかこういうご時世になって、インドア派の人たちからはむしろありがたい、なんて声も聞くんですけど、俺本っ当にダメで。人と会って飲みたいし話したいんすよね」 後輩の芸人100人集めてバーベキューをするスーパーアウトドア派のTAIGAさんにとって、この状況は本当に苦痛らしかった。小学生が新品のサッカーボールを持ってサッカーがしたいと訴えかけるように、純粋に打ち上げがしたいと願うTAIGAさんの目に僕は心が揺らいだ。そしてそのまま3人で、たどり着いた駅前の屋外広場で、打ち上げをすることになった。
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