JR渋谷駅から東急百貨店本店に向かって進んでいくと左手に見えてくる、大手雑貨チェーン「ドン・キホーテ」渋谷店。1年で最も活況をみせるのが、ハロウィーンの時期だ。店内は、仮装用のコスチュームやメイク用品を買う人で大混雑し、レジ待ちの長い行列ができる。この時期、渋谷店は、全店で最もにぎわう。

東京・渋谷で10月31日まで出店する特設店。来年にも新規出店する予定の場所で、渋谷店よりもJR渋谷駅寄りにある
東京・渋谷で10月31日まで出店する特設店。来年にも新規出店する予定の場所で、渋谷店よりもJR渋谷駅寄りにある

 こうした嬉しい悲鳴の反面、周辺ではトラブルも起こっている。ここ数年、10月31日の夜は、渋谷駅前のスクランブル交差点が仮装する人で大混乱。泥酔して倒れる人や大量のごみ、割れた酒の瓶の破片などが散乱するなど、周辺からの苦情が相次いだ。警視庁は、昨年以上の人出が見込まれるとして、10月28日から31日まで、混雑状況に応じて、駅周辺を車両規制するという。

「ハロウィーンが健全に盛り上がってほしい」

 そんな中、ドン・キホーテを展開するドンキホーテホールディングスは、トラブル解消への取り組みを強化する。昨年から「ハロウィーンごみゼロ大作戦 in 渋谷」(主催:ハロウィーンごみゼロ大作戦 in 渋谷 実行委員会/共催:渋谷区)に協賛し、店舗周辺を自主的に清掃しているが、今年は近隣で不足するトイレを貸し出す。「ハロウィーンが健全に盛り上がることを手助けしたい」とドン・キホーテのサポート本部営業支援室の島貫洋輔室長は話す。イベントのイメージがダウンすれば、来年以降の売り上げに水を差しかねないという危機感がうかがえる。

ドン・キホーテが期間限定で渋谷に出店した店舗は、更衣室やトイレを貸し出す(左)。店内で撮影を楽しめる工夫も施した(右)
ドン・キホーテが期間限定で渋谷に出店した店舗は、更衣室やトイレを貸し出す(左)。店内で撮影を楽しめる工夫も施した(右)

 一方で、ハロウィーン商戦に乗った売り上げ増加にも余念がない。渋谷駅寄りに特設店を出店。売れ筋のコスチュームや、通常の半額程度の関連アウトレット商品などを揃えた。商品数は1000以上に及ぶ。品ぞろえは各店に任されているが本部では今年、ハロウィーン関連のアイテム数を前年比1.2倍に増やし、ディスニーキャラクターやカウボーイといった子供向けと、海賊などの男性向けのコスチュームを充実させた。

 また、特設店の店内ではハロウィーン関連の映像を流したり、大きなかぼちゃを置いて撮影を楽しめる工夫をするなど、小さなテーマパークのようにハロウィーン気分を盛り上げる。モノを売るだけでなく、「体験」の提供にも一役買おうとしている。

「ただ騒ぐだけ」という声も…

 ハロウィーンの市場規模については、千数百億円でバレンタインデーを超えたという推計もある。

 秋の収穫を祝い、悪霊を追い出すという欧州発祥のハロウィーン文化を日本に知らしめたのは、「東京ディズニーランド」だ。初めてイベントを開いたのは、今から20年ほど前で、当初は子ども向けのイベントにすぎなかった。だが、「日本式ハロウィーンの『黎明期』に幼少時代を過ごした世代が大人になり、いわば『ハロウィーンネーティブ』としてお金を使うようになった」と三菱UFJリサーチ&コンサルティングの妹尾康志主任研究員は解説する(関連記事:ハロウィーン商戦「ネーティブ世代」登場で大化け)。

 最近では、中高生を中心に友達同士でお揃いの洋服を着た姿を撮影し、インスタグラムなどのSNS(交流サイト)でアップするのが流行している。東京ディズニーランドや東京ディズニーシーでも、こうした光景は頻繁に見られる。実際、「ハロウィーンの時期は仮装の意向が高まるのか、手軽に楽しめるカチューシャやキャップ、サングラスが若者のグループで人気」(広報担当)という。

 渋谷でハロウィーンを楽しむ若者も、集まって写真に撮ったり、道行く人とハイタッチをしたりなど、その場の雰囲気を楽しんでいる。一部の外食店では仮装での入店をOKにするなど、イベントを企画して集客につなげようとする動きも目立つが、「ただ歩いて仲間と騒ぐだけの人も多く、全員がお金を落としてくれるわけではない」との声も聞こえてくる。

 年々広がりを見せているハロウィーン商戦。モノにとどまらず、消費者の心を掴むサービスなど、ビジネスチャンスをいかに広げていくか、知恵が求められている。

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