中国で躍進を遂げた新興電気自動車(EV)ブランド「Zeekr(ジーカー)」だが、2025年以降も勢いを維持し続けられるかは未知数だ。中国では価格競争が激化。足元ではトップ企業である中国・比亜迪(BYD)がサプライヤーに対して1割のコストダウンを要求したとの報道もある。Zeekr自身、価格競争の波にさらされており、24年7~9月期は販売台数が拡大したものの、売上高は前四半期(4~6月期)を下回った。
生き残りをかけ、Zeekrも新たな一手に動く。24年11月15日に広東省広州市で開幕した「広州国際汽車展覧会(広州モーターショー)」。プレス向け発表会相次ぐ初日の朝、吉利グループの若者向けブランド「Lynk&Co(リンク・アンド・コー)」の展示ブースには同ブランドとZeekrのロゴ、そして「最強合体」の文字が掲げられていた。
グループ再編で50万台規模へ
これは前日の11月14日に吉利グループが打ち出したグループ再編を受けてのアクションだ。ZeekrがLynk&Coの株式の51%を取得し、傘下に置く体制を発表した。24年1~11月の2ブランドの販売台数を合算すると45万台超。年間ベースで50万台規模の自動車メーカーが誕生することになる。「規模がなければ競争が激しい中国市場で生き残れない」とZeekrの林金文副総裁は危機感を口にする。
事業統合により、第2の強みに挙げたグループ内の効率化に磨きをかける。研究開発や人事などの間接部門は一体化していく考え。みずほ銀行の湯進湯進上席主任研究員は、「研究開発費は2割削減、製造コストは5~8%削減、工場の稼働率も3~5%高まる」と見る。ただそれでも、「電池を含めた垂直統合を進めるBYDほどのシナジーが生み出せていない」(同氏)という中でどこまで競争力を高められるかが焦点となる。
Zeekrの製品ラインアップも拡充する。Lynk&Coはプラグインハイブリッド車(PHV)が主力だ。足元の中国ではEVのように「電池切れ」の心配がないPHVの人気が高まっており、BYDや理想汽車などの販売が好調だ。Lynk&Coの技術を生かして、Zeekrブランドの高級PHVを25年にも市場投入する。
■本連載のラインアップ
・[新連載]ギガキャストで先行、中国新興EV「Zeekr」の最新工場に潜入
・テスラ・BYD追撃 世界EVトップ10入り、中国新興EV「Zeekr」の3つの強さ
・海外展開でBYDに遅れ 中国EV「Zeekr」が吉利グループ再編で100万台へ(今回)
【初割・2カ月無料】お申し込みで…
- 専門記者によるオリジナルコンテンツが読み放題
- 著名経営者や有識者による動画、ウェビナーが見放題
- 日経ビジネス最新号12年分のバックナンバーが読み放題